元彼さんから投稿頂いた「彼女と歩いた小径を10年ぶりに一人で歩いてみたよ」。
10年前に勤務してた支店で会議があって、行ってきた。
会議が終わり、直帰だったから、懐かしい街を歩いてみた。
10年前に住んでたアパート、そして、当時の彼女とデートした場所…
その近くに消防署があって、突如消防車が出動していくと、彼女が消防車に敬礼してたのを思い出す。
そんな彼女といたとき、俺は幸せだなと思えた人だった。
素直な人で、自分から「今日は抱いて欲しい」と口にする人だった。
セックスが好きなスケベな人ではなく、裸で抱き合い一つになることが、とても素敵なひとときなんだと思わせてくれた人だった。
たとえ入れなくても、裸で触れ合うことが、男と女の愛情を確かめ合うことだと俺に教えてくれた人だった。
彼女が生理の時は、入れることはできなくても、裸で抱き合ってた。
もちろん勃起するし、入れたい願望もあるけど、入れなくても愛を確かめることの素晴らしさを知った。
男と女が裸を見せ合うことは、それだけで特別なことだ。
彼女と会うまでは、そんなことにも気づかずただ興奮してセックスしてたような気がする。
精液もそう、彼女は、射精した後の精液を大事そうに手に取って眺めて、
「いつか、私の中にもらえる日が来るのかなあ…」
って言ってた。
今思えば、彼女はそんな日は来ないことを予見して、あんなことを言ってたんだなあと気づかされて、切なくなる。
彼女とは、なぜあのとき気が付いてやれなかったんだと思うことが、何かとある。
こうして、彼女と歩いた道を一人歩くと、隣に彼女がいない寂しさを噛み締める。
何気に彼女が住んでたアパートの前に佇んでるけど、もちろん彼女はもう住んじゃいない。
俺がこの地を去ると決まったとき、彼女は、
「そう…残念ね。週末に中間点で会うこともできるけど、交通費とか、お泊りとかするとお金かかるし、お別れしよう。」
明るく言ってたけど、出来れば一緒に来てほしかった。
でも、彼女はそのセリフを俺に言わせなかった。
いや、言おうと思えば言えたのに、俺は言わなかったんだ。
なぜあのとき…彼女とはそんなことばかりだった。
懐かしい街…
10年前、この橋のたもとに渡ってきた白鳥がいて、彼女がパンをちぎってあげてたのを思い出した。
彼女、今どこにいるんだろう。
「私より素敵な彼女、見つけてね。元気でね。」
さよならを言わない別れだった。
初めて勤務した土地、初めての異動、若かったから、彼女を連れて行くという発想がなかった。
別れたくない気持ちでいっぱいだったのに、彼女を失うのが怖かったのに、俺は臆病者だった。
こうして、彼女が住んでたアパートの前に佇むと、車に乗り込んだ俺に手を振っていた彼女を思い出す。
最後のデートをして、彼女を送り届け、俺は勤務地に向けてこの地を去った。
バックミラーに映る手を振る彼女が、小さくなって、見えなくなった。
涙が溢れて、途中、コンビニの駐車場で泣いた。
声を上げて泣いた。
彼女は、いつ、この街を出たのだろう。
離れてから、ラインの一つもしなかった。
この街を離れ、次の勤務地で嫁さんと巡り合った。
嫁さんと言い雰囲気になった時、彼女を思い出して、嫁さんと初めてキスした時、彼女にゴメンと謝った。
考えてみれば、車で2時間の距離、会おうと思えば会えなくもなかったのに、一度くらい尋ねても良かったのに、頑なにそれをしなかったのは、会うと別れが辛いから、そしてそれが、もしかしたら新しい相手がいるんじゃないかとか、結局それは会いに行かない言い訳でしかなかった。
でも、俺が前向きになるときは、必ず彼女と過ごした若かりし頃の思い出が支えていることを感じる。
今でも、彼女が俺の心の中に住んでいる。
嫁さんは大切な人だし、燃え上がるような恋ではなかったけど、一緒にいると落ち着く人で、ああ、この人と穏やかな人生を歩むんだろうなと思った。
彼女とは、好きで好きで仕方なかったけど、将来をイメージすることはなかった。
激しい恋心だけが燃えていて、それは多分、青春の残り火だったんだと思う。
嫁さんとの恋愛は、もう、青春時代を過ぎてて、穏やかな大人の恋愛だった。
彼女を忘れられないのは、そんな青春の恋愛だったからなのかもしれない。
だとしたら、彼女も同じように、俺のことを思い出してくれているかもしれない。
彼女もこの地を訪れて、俺と歩いたこの道で立ち止まり、少し昔を振り返ったかもしれない。
もう、二度と交差することがない俺と彼女の人生だけど、彼女と出会えてよかったと心から思える人だった。

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コメント一覧 (11件)
失くしてしまったものへの哀惜、きっと彼女も同じだよ。
素敵なエピソードですね。
いいお話をありがとう。
切ない思い出ですね
辛えな
素敵な元カノさんだわ
エエ話やね
素敵なエピソードでした。
いい話ですね
分かるなあ…
分かる…
俺は、元カノを見送る途中、一緒に歩いた参道が忘れられない。
出会った場所でお別れ。
去り行く元カノを鳥居の下で見送った。