突然消えたセフレと再会で…デリヘル嬢をしていた彼女との未来 超長編

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オレと彼女と変なおっさんの話を書いてみる。
最初はスゴク重い話になるけど、途中からは明るいエロ話です。

彼女との出会いは大学時代で、同じサークルに所属してたこともあって、何度か一緒に酒を飲む機会に恵まれ、その勢いでセックスをしたことがあった。

セフレとまではいかないけど、片手で数えるのには足りないくらいの回数は体を重ねたと思う。

仮にマドカとします。
初めてヤったときマドカは処女だった。
そして俺にはマドカとは別に彼女がいた。

マドカは、顔は中の上くらい。
決して美人でも可愛くもない気がするが、愛くるしい笑顔が素敵だった。

化粧っけがなくて、いつもスッピンでいるようなとこが好印象で、男にも女にもモテてた。

身長がデカく180くらいあって、胸も最大でIcupのときがあったらしいが、俺と知り合った頃はGcupだった。

それでもまぁ超デカかったけど。
ちなみにデブじゃなかった。元デブらしいけど。
首から下はワールドクラスとか、当時、仲間内でよくからかわれていた。

マドカに彼氏ができて俺とは本当に体の関係だけって感じ。

彼氏は何人か入れ替わった気がするけど、それでも俺との関係は細々と続いてた。

前述したけど、セフレとも呼べないような間柄で、俺としては出会うのが遅かったかなって思うこともあった。

俺も身長が180半ばくらいで、彼女いわく「私と立ちバックできるのはアンタだけ」なんて冗談っぽく笑ってた。

身長は俺の方が高いけど、脚は彼女の方が長くて、腰の位置がすごく高かった。

俺でも立ちバックにちょっと苦労してたけど、彼女はソレが好きらしく、フィニッシュはいつも立ちバック。

身長がお互い高かったってことが理由だったのか、体の相性は抜群で、一晩で5~6回ヤったこともあった。

所属する学部が違ったので、毎日大学で顔を合わせるわけではなく、週1くらいでサークルで会う感じ。

それからしばらくすると、サークルでも見かけなくなって、その数ヵ月後くらいに大学を辞めたと耳にした。

え?って思って携帯に連絡したけど「この番号は現在使わ(ry」みたいなアナウンスだった。

人伝に、彼女の父親が亡くなって、しかもけっこうな借金を残したとか、そんな嘘か本当かわからない噂も聞いた。

マドカの彼氏って奴も、最後は唐突に別れを切り出されたらしく、それからずっと音信不通と嘆いてた。

俺の場合は、何の連絡もくれなかったから、俺なんてその程度の存在でしかなかったんだろな、ってすぐ諦めた。

まぁ連絡を取りたくても実家を知っているわけでもなく、携帯を解約または番号を変えたってとこからも、なにか事情があっての事なんだろうと察したので、それ以上は何も出来なかったし、しなかった。

マドカと再会するのは、数年後で、俺が社会人となり部下ってやつを2名ほど抱えた頃だった。

たまたま髪を切りに行った店に、どういう経緯を経たのかわからないけど、美容師としてマドカがそこに居た。

雇われ店長だったらしいけど、いつか自分の店を持つんだ!って熱く語るマドカに、俺はすぐ夢中になった。

お互いフリーだったので今度こそ真剣に付き合い始めるものの、大学時代の時よりも微妙な関係になっていく。

くっついたり離れたりを繰り返し、そのあいだに俺は他の女とヤったりもした。

一応別れたつもりになってたのでそれは浮気とは言えないと思ってたし、距離を置いているときに他の異性と何かがあったとしても、お互い何も聞かなかったし、気にも留めてなかった。

マドカはマドカで、社会人になって色気も増してたし、俺なんか居なくても俺の代わりになる相手が居るのかもなって、そんな風に気にしちゃうこともあったけど、中高生のガキの淡い恋じゃあるまいしって俺は割り切ってた。

それにもうひとつ割り切れる理由があった。
マドカは再会後に俺が交際を申し込んだ際に、なかなか返事をくれなかった。

俺のことが好きだし、大学時代から実は好きだったと言ってくれた。
だからこそ最後に連絡が出来なかったとも、彼女は言った。

それなら今はお互いフリーだし、尚更、付き合っても問題はないはずだったのだけど、それでも彼女は首を縦に振らなかった。

彼女の言葉を借りれば「大学中退後の数年間は、色々苦労したもので。」って言ってた。

それは、父親の死、残された借金、っていう嘘か本当か不明だったキーワードと残念ながら時期的に合致した。

そこらへんの事情は詳しくは聞かなかったけど、マドカは、約2年のあいだ風俗の世界に身を投じたと話してくれた。

自分とその家族の為にやれる事を無我夢中でやった、とマドカは真剣な表情で言った。

それに、その当時のことはアンタとは無関係なのでソレを許して欲しいだなんて言い方をするつもりはないし、その過去を恥じる気持ちはない、とも付け足した。

「ひいた?ドンびきでしょ?w」
自嘲気味に彼女は笑ってた。

「うーん…。」
俺は寝取られM属性とか、そんな体質ではなかったとは思うのだけど、その話を告白されても平気だった。

俺自身が大学時代に若気の至りで割と派手な女性関係があったし、そのせいでマドカと出会ったってこともある。

マドカと出会った当時に俺は特定の彼女がいながらもマドカに手を出したってことも負い目に感じてた。

そんな俺がマドカの過去に関して何か言えるわけもなく、まして何か言おうとも思わなかった。

「それって俺に言わなくても良かったんじゃないの?」
「隠しておこうとも思ったんだけど、このまま言わずにいたら頭が狂っちゃうかもなって…」

「じゃ、教えてくれたってことは、付き合いたい気持ちはあるってことだよね?」
「・・・。」

「ソレを聞かせたってことは、ソレを知った上で俺が大丈夫なら、マドカはOKってことだよね?」
「うん・・・。」

その日のうちに結論は出さないことにして、とりあえずヤった。
マドカは芯が強い女性というのか、けっこう物事をハッキリ言うタイプ。

「フェラとか上手くなってたらごめんなwww」
って、冗談っぽくだけど、風呂上がりに言ってた。

「俺もクンニとか超絶上手くなってたらすいませんwww」
とか一応言い返して、シックスナインは死闘だった。

今までのことを全て忘れて、これから2人で色々と築き上げようって、そういうセックスだった気がする。
やっぱり体の相性は抜群で、超気持ちよかった。

結局、俺の方から再度交際を申し込んで二人は付き合い始める。
まぁ、半年もすると、くっついたり離れたりし始めるわけだけど。
男女関係はいつも面倒です。

とにかく喧嘩が絶えなかった。
原因は細かいところがいっぱいあったけど、根底にあるのはお互いの異性関係に対しての不信感かな。

マドカは短い大学生活の中でも、俺がダレソレとヤったとか、そういう噂を聞いていたらしく、そのダレソレから珍しく連絡が来たりすると、今でも関係が続いてるのかもしれないと俺を疑ってた。

口に出しては言わないんだけど、なんとなくわかるよね、そういうのって。

俺は俺で、マドカの風俗時代のこととか。
聞きたくないような聞きたいような、もうどうしようもなくジレンマで。

マドカは「聞かないで」とは言うものの、俺が「教えて」というと必要以上にちゃんと詳しく教えてくれるので、俺は超ドキドキしながら嫉妬や欝勃起で苦しんでいた。

そういう感情って、お互いの為にプラスになる時もあるんだけど、マイナスに転じたときはもうどうしようもなくて、その結果が、くっついたり離れたりになってしまう。

そして、離れている時にお互いが誰とどこで何をして過ごしていようが、無関心を装うようになっていった。

マドカとは今度こそ終わったつもりで、俺は職場の若い娘と一夜限りの関係を結んだり。

でも心のどこかで、マドカといつか結婚するんだろうな、なんて楽観的に思ってた。

マドカだって今はどこの馬の骨とも分からぬ男と共に過ごしていても、最後は俺のとこに戻ってくるだろう、とか。
そんなユルい感じの距離感を保ったまま2年くらい過ぎていった。

その間、俺は今でも後悔しているんだけど、マドカの風俗時代のことをアレコレ調べてしまった。

マドカとうまくいってる時は、ちょっとずつだけど、風俗時代の話をするようになった。

やがてあっけらかんと風俗の話題を持ち出すようになり、元々Sっ気が強いマドカが時々それをネタに俺を言葉責めとか、そんな風に楽しめる時もあった。いじめられて超興奮した。

彼女は地元を離れて、地方のデリヘルに籍を置いていたらしい。
店のホームページにまだ写真も掲載されていなかった数日間の体験入店で、一気に人気爆発。

そりゃそうだ、Gcupの胸だけでも客は呼べるだろうけど、
身長180近いデリヘル嬢なんて滅多にいない。

興味本位で呼ぼうとする客だけでも、結構な数になったことだろうと思う。

マドカは謙遜気味に「そんなに人気なかったよ」って言ってたけど、それが嘘だということは後日俺がネットで調べてすぐに判明する。

そして、ホームページに写真掲載後はさらに人気沸騰、リピーターだけで予約完了みたいな状態。

化粧映えする顔立ちだったし、その卓越したスタイルも含め、ぶっちゃけ風俗嬢としては完璧だったと思う。

んで、なんだかよくわかんないけど。
マドカとヤると、なぜかパチンコパチスロ競馬など、主にギャンブルで御利益があった。

いわゆるアゲマンってやつなのかもしれないけど、俺自身大学時代にマドカにそれを指摘したことがあった。

そんなことを思い出して、俺はパソコンを立ち上げ、唯一の趣味とも言える競馬の収支管理ソフトをチェック。

パチスロパチンコは卒業して、お小遣いの範囲で時々馬券だけは購入してたんだ。

すると、マドカと再会後は、やはり収支が上向いている。

賭け金がしょぼいからまとまった金にはなってないけど、よくよく考えてみると、ここ最近競馬専用の口座の残高がゼロになった記憶がない。
以前はちょこちょこ遊ぶ金がなくなって追加してたのだけど。

「マドカ様、相変わらずアゲマンですなwww」
「は?なんだっけソレ、聞いたことある言葉だ」
「いやいや競馬絶好調ですwww」

「あー、なんかソレ、昔のお客さんからも言われてた気がする」
「だろ?間違いないよ、きっとw」
けっこう耐性がついてきてた俺は、「昔の客」とか言われても、平然としてた。

「マドカちゃんとヤると、パチンコ連勝するわwww とか言われること多かった…かも」
彼女は遠い目をして過去を振り返るようにしてそう言った。

「女神さまですなwww あははw あはw あれ?」
なんか今、聞き逃せない言葉があった気がして、違和感を感じた。

「デリヘル…って…ヤっちゃう…の…?」
風俗未経験の俺だったけど、本番ってやつはソープでしか出来ないことは知っていた。

実際に客にはなったことはないけど、客の立場になって考えれば、フェラやシックスナイン、素股ってやつも「マドカちゃんとヤる」って言い方や表現はしないだろうと、その違和感の正体に気付いた。

マドカは一瞬(((( ;゜д゜)))アワワワワって感じになってたけど、すぐにキリリとした表情になった。

「後出しジャンケンみたいな告白になってしまうのだけど…」
そう前置きしたあとに、マドカはため息をついて次の言葉を口にした。

「当時は、本当にお金のために割り切ってて、とにかく金を稼ぐんだって、明確な目標金額を決めてた」
「うん…」

俺は彼女が今から言うことがどんな内容なのかは想像はついていたけど、黙ってその先を促す。

「金払いの良いお客さんとは、別料金で本番もしたよ…」
「うん…」

「目標クリアしたらすぐやめたかったし、目標金額を稼ぐことだけが当時の私の全てだったんだ」
「そうか…」

辛いこと思い出させてごめんなって謝って、その夜初めてマドカと生でセックスした。
なんだか2人ともいつも以上に燃えてしまった気がする。

体は燃えても、心の中は複雑だった。

正直に言えば、デリ嬢やってたってことだけでもかなりのダメージだったのだけど、本来はヤってはいけない、いや、ヤらなくていいはずの本番行為をしてたって告白は、俺の心をかき乱した。

マドカに対する理不尽な怒りが唐突にメラメラと湧き上がったり萎んだり。
俺の心を反映するかのように、チンポもビンビンになったりションボリしたり。

最初はマドカが他の男とヤってる姿なんて想像もしたくなかったのだけど、少し時間を置くと冷静にそういうことを考えられるようになってきた。

元はと言えば、大学時代だって他に彼氏がいたわけだし、他の男ともヤってたって事実は風俗の世界に身を置くそれ以前からすでにあったことなんだって自分に言い聞かせたよ。

それに時間が経つにつれて、想像したくなかったはずのその姿が気になり始めるんだよね。

他の男の前でどんなふうに喘いだろうとか、そういうことを考えるのが日課になった。
嫌でも頭に浮かんできてなかなか振り払えなかったし、ちょっとだけ質問したりもした。

「別に。普通のセックス。心まで抱かれてたつもりは微塵もない」

彼女は冷静にそう答えるのだけど、心ではそう思っていても、感度良好なその体は俺以外が相手でもしっかりと感じたはずだろうな、って俺はそう思ってた。

心と体が裏腹だってことは、寝取られМ属性に目覚めつある俺の心と体が証明してた。

他の男にヤられているマドカの姿を想像すると、勃起してしまうのが何よりもその証拠だった。

これは言い換えると、彼女のことは何でも知りたい、たとえ悲しいことでも共有したいっていう、歪んだ愛の形ではないのかと、自分に都合がよくテキトーに美化するようになってた。

そして俺はその彼女の告白がキッカケというわけではないのだけど、風俗に興味を持ち出す。

自分が使ってみたかったわけではない。
彼女が在籍していた店、そして彼女の評判が気になったのだ。

マドカと喧嘩したりすると、フテ腐れた俺はインターネットカフェで時間を潰した。

あるとき「全国の風俗掲示板」みたいなサイトを目にして、心の中がザワつき始めた。

彼女が在籍してた店の名前と、在籍当時の源氏名ってやつは教えてもらってなかったけど、それを知らないってことが逆に謎解きみたいなスリルを生んで、探偵みたいな気分になった。

住んでた土地は教えてもらってた。
その「市町村名」と「デリヘル」を検索ワードにして、ググる。

店別掲示板とか、個人嬢別掲示板とか、全国各地の都道府県別にまとめてあるサイトがあった。

1時間もすると、それっぽい店、それっぽい嬢、がいくつか絞られてくる。

※便宜上、源氏名もマドカにします。

2chでいうところのスレッドが並んでいて、「もう一度会いたいあの嬢」「復活して欲しいあの嬢」とか、そんな名前のスレッドでチラホラ見かける「マドカ」という嬢がいた。

高身長とおっぱいがデカい、っていう特徴も一致し、やがてどの店に在籍していたのか判明した。
つか、180近い高身長ってだけで、探す自信はあったのだけど。

そして次に個人嬢別掲示板で「マドカ」を検索する。

複数名のヒットがあって、下から2番目くらいで最終書き込み日時が1年前くらいになってる、

「~プリティウーマン(仮店名)~マドカちゃん☆彡 Part4」

みたいなスレッドをとうとう発見した。

ただ、その最終書き込みの日時が1年前ってこともあって、かなり廃スレ化してた。

直近の書き込みも『もう一度会いたい』『今どこの店にいるの?』とか、本人はもう退店して結構時間が経っていると思われるレスが目立ってた。

ただ、俺の目は「Part4」っていう文字に注がれていて、他のデリ嬢のスレッドと比べてもその数字は突出しているものがあり、いかにマドカが人気嬢だったのかを思い知り、この数字だけで欝勃起した。

怖いもの見たさで、今度は店名、源氏名でググった。
Googleってやつは、本当に便利なもので、残酷すぎるほどに色々と出てきた。

何から見ようか超迷ったけど、画像を閲覧してみた。
在籍当時掲載されていたと思われる写真が数枚見つかり、下着姿で四つん這いになってるマドカがいた。

それは携帯用のホームページの画像だったらしく、小さいものだったが、マドカ本人に間違いないと確信した。

絶対に大きな画像もあるはずだと思っていくつかクリックしてたら、さっきの四つん這い写真の元画像と思われる大きな写真を発見した。

そのURLを削って、その先に飛んでみると、在籍していた店のトップページに飛ばされた。

驚いたことに、マドカは現在も在籍中であるかのように「大人気嬢」ってハート型のポップアップとともに掲載されていた。

後日聞いた話だけど、もう辞めた嬢が客寄せパンダ的にずっと掲載されることは、この業界ではよくあることらしい。

実際に呼ぼうとすると、長期休暇ですとか言われて、他の嬢をお勧めされるって話だ。

迷わずマドカ嬢の画像をクリックし、7枚くらいあった画像を舐めるようにして見た。

1枚目は普段着で、3枚目くらいが四つん這いで下着姿のあの写真、4枚目は胸の谷間を強調した感じだった。

5枚目~7枚目は見るのが怖いような気がしたけど、指が勝手にマウスを操作してしまった気がした。

どんどん肌の露出が高くなって、最後の1枚は乳首と陰毛はかろうじて隠してあったけど、ほぼ全裸だった。

顔はモザイク処理されていたけど、この世のどこかに無修正のモノが存在してるんだろうと思うと吐き気がした。

もう諦めにも似た心境で、マドカのそういう写真が残ってることに関しては、どうでもよかった。

彼女がそういう写真を撮らせたっていうのは、嫌々だったかもしれなかったけど、より効率よくお金を稼ぐための手段として、並々ならぬ決意を持ってその仕事に臨んだことが読み取れた。

そして、一番見るのが怖かったモノをクリックした。
そこには「~プリティウーマン(仮店名)~マドカちゃん☆彡 Part4」の過去ログで、Part1~3のおよそ3千個ものレスが今でも読める状態で、山のように残っていた。

全部読み終わるのに、数時間を要した。

けれどもその殆どはくだらない宣伝やワケのわからない書き込みで、本当に読むべき価値がある書き込みは、実際のところ10分の1にも満たなかったかもしれない。

まぁそれを見極めるのにも、それなりに時間がかかったし、読み終わった頃にはグッタリしてた。

でも読んでるあいだはハラハラドキドキで、探偵気分だったことも手伝い、大冒険してる感じだった。

マドカがデビューしてから引退するまでの流れがダイジェストで紹介されているような気もして、読み物として面白くもあった。

うわコレは知りたくなかったって、そう思える書き込みもたくさん目にしたけど。

体験デビューしたと思われるその日に、さっそくスレッドが立ってた。
でもこれは宣伝の意味合いで、店のスタッフが立てたものであろうことは察しがついた。

『衝撃の体験デビュー!!!マドカちゃん!!!
174-96G-59-88 リアル不二子ちゃん現るっ!!!』

みたいな文字が踊ってて、ちょっと笑った。
身長に関しては逆サバ読んでるじゃねえかって突っ込んだ。

最初はみんな様子を伺ってて、『誰か呼んだ?』『オマエ呼んで報告しろや』なんて書き込みばかりだった。

『最高でした』とかいう書き込みがあっても、『店の自作自演おつ』とか書いてあって面白かった。

数日経つと「体験入店」から「入店決定」に煽り文句が変わったらしく、どうやら写真も掲載されたらしい。

『ちょw これCGだろwww』 『こんなの実在するわけねーw』とかそんな書き込みが増えた。

それとともに、『マジだった』『176cmの俺より大きかったけど超満足』
なんて書き込みがチラホラ。

以降、書き込みの数は驚異的に伸び続け、お祭り状態を経てカオスになってた。

ノリは2chと似た雰囲気で、ファンとアンチが入り乱れて互いを攻撃するようなそんな光景も。

『蟻ですか?』とかそんな暗号めいた文字も乱れ飛び、『梨』と答える者もいれば、『追加で蟻、ゴム必須』とかそんな風に答える者もいた。

それが風俗業界で言う淫語?のことで本番をする嬢かどうかの情報交換であることは察しがついた。

マドカ本人から本番もしたって聞いていたから耐えられたけど、動揺は隠せなかった。

次ページ、次ページとクリックするたびに心臓が破裂しそうなほどに鼓動が高鳴った。

勃起もしたし、我慢汁も出まくってる俺がいて、頭が狂いそうだった。

どうしようもなくなって、俺は掲載されていたマドカの画像と、マドカと本番をしたと思われる奴らの書き込みを見ながらオナニーをした。
大量の精子をティッシュに吐き出して、ドス黒い満足感を得た。

ちょっとだけ落ち着きを取り戻して、さらに読み進めていった。
自分が今、オナニーをしたことに関しては不思議に思わなかったし、いつも以上に気持ちよかったとすら思った。

『ヤった』とか『ヤれなかった』とかそんな書き込みは気にならなくなって、プレイ内容に関しての書き込みが目を惹き始める。

『フェラ下手だった』とか『パイズリ気持ちよかったぁ~』って書いてあるのが悔しかった。

でも読んでて一番辛かったのは『マドカちゃん今日はありがとう、また呼ぶからね』なんていう淡々とした書き込みだった。

コイツは本当にマドカを呼びやがったな、ってのが如実に伝わってきて不気味な感じがした。

しかも、なんと言ったらいいのかその「精神的に癒されました~」的な雰囲気にイライラさせられた。

そしてマドカは、退店ファイナルイベントとかいうお祭り騒ぎで見送られ、風俗業界を去っていったらしい。

読まなきゃよかったって気持ちと、読んでよかったって気持ちが半々。

オナニーしてしまったのはちょっと想定外だったけど、それも含めて、ありのままの現状を受け入れようと思った。

デリ嬢だったマドカのこともそうだし、それを考えるとちょっと興奮する俺のことも。

なんか妄想だけで悶々としていた毎日だったけど、デリ嬢時代のマドカの姿をこうして掲示板を通して垣間見れて、ちょっとだけ安心した気がした。

俺の知らないところで俺の知らないマドカが
他の男に抱かれていたって過去を、
この先もずっと知らないままで過ごしていくよりも、
今日思い切って知ってしまったほうが精神衛生上、健全な気もした。

結果的に俺は、よりリアルに他の男とヤってるマドカの姿を想像できるようになったし。

想像だけでボンヤリしていたものが具体化すると、
それに対抗すべく忍耐力だって備わるはず。

こうして俺は、より強靭な寝取られМ属性を手に入れていくことになる。
(まぁ半分はヤケっぱち

マドカとは、仲が良いときは本当に仲が良かったんだ。
同じ市内に別々にアパートを借りてはいたものの、
ウマくいっている時は同棲も同然だった。

ただ、合鍵を渡したり、お互いの部屋に私物や生活用具が
置きっ放しになっているような状態にはしてなかった。

親しき仲にも礼儀ありってやつだ。
それに車で5分も走れば行き来できる距離だったので特に不自由は感じてなかった。

月に2回くらいは休みを合わせて一緒に過ごす。
その日はその一緒に取った休みってやつで、前日の夜から一緒に過ごし、
特にどこかに出掛ける予定も組んでいなかったので1日中ゴロゴロしてた。

膝枕で耳掃除をしてもらうという、
そんな至福の時を過ごしつつマドカに質問をする。

「お客さんに…耳掃除してあげたこと…ある?」
「え? それって、どっちのお客さんって意味?」
マドカは美容師で、今現在も「客商売」なのだ。

そう言われて考えてみれば、美容室や理容室って、
店舗によっては耳掃除のサービスを実施してる場合もある。

「デリのほうの…客…」
「うーん…」
彼女はデリ嬢時代のことを思い出すとき、遠い目をする。

俺はその表情がなぜか好きだったし、
どんなことを思い出してるんだろうって想像すると、
胸が張り裂けそうなくらいにドキドキするものがあった。

マドカは、時々俺が我慢できなくなって聞いてしまう
デリ嬢時代に関する質問に対して、答えることを嫌がってはいなかった、と思う。

むしろ積極的に答えることすらもあった。
そもそもイヤなことはイヤってハッキリ言える性格なので、
本当にイヤなら質問は却下されてもおかしくない。

「したことないねぇ」
「あ、そうなんだ」
なんだか少し安心した。

エロサービスは勿論いやだけど、
こんな風に恋人っぽく客と過ごしていたとすれば、それはそれで嫌なんだ。

でも知りたくないようなことでも、俺は知っておきたいのだ。
そういう矛盾を、俺は心に抱えていた。
あるいは、その矛盾に心を蝕まれつつあったのだろう。

そして、俺がそういう矛盾を心に抱えて色々葛藤していることを
マドカはきっと見抜いていた。

だから俺が知りたいことに素直に答えてくれるのは、マドカなりの優しさであり、
ある意味、謝罪だったのかもしれないとも思う。

「時間は限られてるからね。そもそも綿棒とか、なかったし」
「そっかぁ」

「あ、綿棒はあったかも。ラブホの洗面所って、けっこうそういう備品揃ってるよね」
「あーそういえばあるねぇ」

マドカの口から「ラブホ」っていう単語が出てきて、ちょっとだけ胸が苦しくなる。
俺自身はこれまで一度も、マドカとラブホに行ったことがなかったから…。

「一番長いコース頼むお客さんって、どのくらいだったの?」
「時間? んっとね、最高で12時間って人がいたwww」

「は?半日?」
「笑っちゃうよね。え?12時間ですか?本当ですか?って3回くらい聞き直したよw」

「ちょっと、それ料金いくら?」
「えー。あんま覚えてないな。ロングになるほど割引率高かったんだよなぁ確か…」

別に金額なんてどうでもよかった。
12時間ものあいだ密室で客と2人きりかよ…って凹んでた。

「18万くらい? 20万までいかなかった気がするw」

金額なんてどうでもよかったはずの俺でもさすがに唖然とした。
金って、あるところにはあるんだな…。

「その12時間のうち、プレイ時間って…どのくらいなの…?」

恐ろしく不安な気持ち。でも聞かずにはいられない。
すぐに違う言葉で聞き直した。

「つか…何回…イかせてあげ…た…の…?」

さすがにコレは聞いても良い話題なのかどうか、
果たして聞くべき事だったのか、質問したあとになって少し後悔した。

語尾は消え入りそうになってたし、ちょっと泣き入ってたかもしれない。

「な・い・しょ・w」

俺の不安な気持ちと、だがしかし、それを上回ってしまう知りたいって気持ちを、
マドカは理解した上であえて茶化してくれたのだと俺は思う。

重苦しい質問に対して、重苦しい答え方になったら、
お通夜みたいな2人になってしまう。

マドカが冗談っぽく茶化してくれたおかげで、適度に全身の力が抜けた気がする。

「イジワルすんなーw そんな言い方されたらますます俺が知りたがるってわかってるだろーw」
「うふふwww」

マドカは片方の耳掃除を終えて、今度は反対の耳ね、って感じで
俺を誘導しながら微笑んでた。

話している内容はエグいが、ポカポカ陽気の午後で、マッタリとした雰囲気もあった。

俺は体を反対向きに入れ替え、再び膝枕をしてもらう。チンコが勃ってた。

「教えてくれないの?」
「大人しくしてないと、綿棒、奥まで突っ込むぞ」
「怖い…」

俺は図体こそデカいけど、普段の生活においては
マドカに結構イジメられたり、イジられたり。
尻に敷かれてた方が気楽だったし、そのぶん思い切り甘えられるという利点もある。

「そういうのって、本気で知りたいの?それとも単なる興味本位?」
「え、うーんと。正直言うと、本当は知りたくないのかも」

耳掃除をするマドカの手が止まって、俺の話の続きを待っているような感じだった。

「でも知らないままでいるのも辛いんだよ、なんか仕事中もイライラしたり…」
「そっかぁ…ごめんね…」

謝られるのも本当は辛い。
そしてマドカのほうが辛いってこともちゃんと理解はしてた。

「でもね、私がヒロシの立場なら、やっぱり根掘り葉掘り聞いちゃうと思うなぁ」
「でしょでしょ?」
「でも、知りたいって思う理由が微妙に違うかも」
「え?どういうこと?」
「私なら、そんな女とこの先もずっと一緒に過ごしていけるのかどうか、その判断材料に使うかなぁ」

マドカのそのセリフは、どこか寂しげで、憂いを帯びていたように思う。
俺は何も言ってあげることが出来なくて、
マドカが吹っ切れたように逆に明るい声で話し出す。

「私、聞かれて困るようなことないし、ヒロシが本当に聞きたいならなんでも話すよ?」

世の中には知らない方が幸せ、ってことがたくさんあると思う。
でも、マドカに関して、他の男が知っているのに、俺が知らないことがあるということ。

俺はただそれだけで不幸なんだ。
そんなことを一生懸命伝えた気がする。

「わかった。じゃ正直に話すよ。耳掃除終わってからでいいよね」

彼女はそう言うと、再び綿棒を動かし始める。
ちょっとイジワルな感じで痛かった(ノД`)

「はーい、おしまーい」そう言って
マドカは、フーって俺の耳元に息を吹きかけた。

俺は時々彼女に子供みたいに扱われることがあって、
でもそんな時のマドカはすごく優しい感じがした。

それは包容力っていうやつなのか、そんなところも
デリ嬢として人気が出た理由の一つだったのかもしれない。

元々生まれながらに持っていた資質なのか、
それとも色々と苦労を背負った結果身に付いたものなのか。

そのどちらなのかはわからなかったけれど、
一緒に居るとすごく安らぎを与えてくれたのは間違いない。

飲み物とお菓子なんかを準備して、場合によっては険悪な雰囲気をもたらす
これからの話題に備えた。2人とも努めて明るく振舞っていたような気もする。

「ってゆうか、私のデリ時代の話を聞きたがるときのヒロシって、ちょっと興奮気味だよね?w」
「え?w あ、うんw バレてたかw ごめん…」

「耳掃除してるときも、ちんちん勃ってたでしょw」
「・・・すいませんwww (まだ勃起中です)」
「ま、人それぞれ、色々な性癖があるからねぇ…」

色々な性癖、マドカのその言葉に俺は更にチンポを硬くしてしまった気がした。
確かに彼女は色々な男たちの色々な性癖を目にしてきたに違いない。

勿論、それは目で見る程度、だけのことじゃない。
その手で、その体で、性癖を受け止め、男達の性欲を解消する役割を担ってきたのだ。

勿論俺だって、大学時代を含め、こうやって再会した今でも、
マドカをそういう目で見るときがある。

俺はマドカの彼氏だから特別な存在、なんてことはなく、
俺もマドカに欲望をぶつけてきた男達の一人なのだ。

「で、どうする?私が勝手に話す?それともヒロシが質問して私が答える?」

飲み物をちょっとだけ口にした彼女が本題に戻す。
どうやら話題をうやむやにするつもりはないようだ。

「ちょっと待って。あのさ…本当は話したくないなら、別にいいんだよ言わなくても」
「ペラペラ話すようなことじゃないけど、だいじょうぶだよ」

マドカが無理してないか見極めようと、
その本心がどこにあるのかを探ろうと、俺は集中する。

「それに、色々と知ってもらって、その上でヒロシにはもう一度選ぶ権利があると思うし…」

そういうことか。
そうだ、彼女は「判断材料」だなんてそんな言葉をさっき口にしてた。

要するに、全部打ち明けた上で受け入れてもらえないようなら、
この先はないって思ってる。

彼女がデリ時代の話を隠さずに話してくれるのは、そういうところに本心があるのだ。

「べ、別に俺、色々聞いても、それを判断材料にしようとかそういうつもりはな…」
「わかってる。でも、きっと、この先もずっとずぅううっと気になることだと思うんだよ」

マドカはわかってる。
俺なんかよりも、その過去をずっと気にしてる。

「ヒロシはもうギリギリなんだよ。私がデリしてたってことに関して。ギリギリのとこで精神の均衡を保ってる」

彼女は真っ直ぐに俺の目を見つめながら話を続ける。

「見ててわかるもん。ちょっと興奮しちゃうところなんか、もう末期だよねw 末期www」

ちょうどいいタイミングで茶化してくれる。
これも彼女なりの気遣いなんだろう。
でもギリギリなのはきっとマドカも一緒だったと思う。

「じゃ、私が話すね。テキトーに。聞きたいことがあればその都度答えるから、質問して」
「う、うん。わかった…」

ああ、ついにこの時が来てしまった。

俺はネットカフェで、デリ嬢としてのマドカを検索して、
ある程度把握したつもりではいた。
でも、直接本人の口からそれを語られるのは、重みが違いすぎる。

手のひらが汗で凄いことになってた。
それ以上に、パンツの中で我慢汁がひどいことになっていた。

「とは言っても、何から話せばいいんだかw」
困ったように笑う彼女は、とても綺麗な気がした。

大学生だった頃よりも体重はさらに落ち、
美容師としての自覚がそうさせたのか、お洒落さんになった気がする。

大学時代はお互いジャージで過ごしてるような感じだったが、
今では俺の服装のダサさを指摘してくる程だ。

「まず誤解を解いておこう。ヒロシは自分が風俗使ったことないから、わからないことのほうが多いよね」

それはある。俺は自分が客になったことがないから
すべてが想像や妄想で、それがイライラする原因の一つだ。

「例えばさ、3時間コースを選んだお客さんがいるとします」
「はい」

「その3時間、ずっとエッチなことをしっぱなしなんだろうって不安に思ってるよね?」「(´;ω;`)ウン」

「ハッキリ言ってそれは誤解なんだぞ?」

彼女は俺をなぐさめるように優しい言い方をしてくれた。

「え? ほんとに? 違うんですか?」

まるで先生と出来の悪い生徒みたいで、これはこれで萌えてきた。

「あくまでも私個人の経験上の話ね。他の女の子はどうなのか知らないし」
「うん」

「それにこれは、デリ、の話で、お客さんがお店に通うタイプの店舗型ヘルスだと違うかもしれない」
「はぁ」

なんか風俗に詳しい彼女ってのも、趣があって宜しいかと…_| ̄|○

「だいたい2時間以上のコースから、ロングコースって呼んでたんだけど」
「うん」

「ロングを頼むお客さんって、お金にも、心にも、余裕があるんだよ」
「へー」

「だから、ガツガツしてないの。遊び方がスマートな感じ」
「よくわからん」

「簡単に言うと、プレイ以外の時間が長い。喋ったりしてる時間が長いってこと」
「むむ」

「場合によっては、カラオケしたり、ルームサービスで食事したり、お酒飲んだり」
「そうなんだ」

「旅行に行ってお土産持ってきてくれたり、その旅行の話ばかりで終わったりする人もいた」「なんか安心したw」

デリヘルって、楽しみ方はそれぞれなんだな。
店に行くんじゃなくて、ホテルに呼ぶってのは、自由度が高いってことか。

「安心させておいて、突き落とすけど、例外なお客さんも勿論いるからね」
「あい…」

「ロング頼めばプレイ時間も長いんだろ、色々エロエロだろ、的なお客さんのことね」「・゜・(ノД`)・゜・」

「さらにどん底に突き落とすけど、短いコースを頼むお客さんほど、エロい」
「・・・。」

「短い時間内ギリギリまで粘るというか、最後にシャワー浴び終わったあとでもう1回って言われたり」
「・・・。」

「何回でも求めていいの?」
「一応、店のプレイ内容の説明には、時間内発射無制限って書いてるから…」

「多い人で何回くらい?」
「50分コースで5回イった人がいたw」
「うわぁwww」

笑い事じゃないよね…。
この時も2人で一緒に笑ったあと、( ゜д゜)ハッ!ってなった。

「2~3時間のロングコースを頼む客層は、平均1.5回するって感じかな」
「うん」

「のんびりしてたら2回するのは時間的に無理です、みたいな」「うんうん」
「でもどうしても2回したい!って場合は、延長してくれたりとか」

「あの…」
「ん?」

「さっきから頻繁に出てくる、する、とか、したい、ってのは…その…本番のこと…?」
「ん?まぁいいから今は黙って私の話を聞いてなさい」
「は、はい…」

なんだかマドカが饒舌になってきて、
俺は借りてきた猫みたいにおとなしくなった。

ちょっぴり悔しい気がしたけど、
マドカの話は風俗童貞の俺には新鮮で面白かったかもしれない。

「ちなみに延長すると、料金は割高になる。そういう意味でもお金にも心にも余裕があるお客さんってこと」
「なるほど」

「一応ここでも言っておくけど、例外もいるからね。都合の良いことばかり話すつもりはないし」
「あい…」

「それってつまり、ロングコースでいっぱい発射して帰った客もいるってことね…」
「そう。でも、お客さんは勝手に自動でイったりしないからね?わかる?」
「うん…」

「この際だからハッキリ言うけど、それは私が頑張ってイかせたってことだからね?」「・・・。」

都合の良いことばかり話すつもりはないってのは、楽な仕事じゃなかったって事。

勿論、楽なお客さんもいたけど、その逆のお客さんもいたんだよ、って
マドカは何回も強調してた。

彼女がそれを強調するのは、それが俺に一番苦しみを与えるってわかってるからこそ。

そういうことを聞いても、この先一緒にいられるのかどうか、
きちんと選びなさいって、そういう意味だったんだろうな。

それと、そういう話で俺が興奮するのを知った上でイジメてた気もする。
Sなマドカの遊び心だ。

「それと、発射ゼロで帰っちゃうお客さんも意外に多い」
「まじ?」

「酔っ払った勢いで呼んだものの、アルコールのせいでちんちんが勃たないってことがよくある」
「へー」

「あとはやっぱり、一緒にいるだけでいいって感じで遊びに来るお客さん」
「うんうん」

「前者は一応プレイを頑張るけど、後者はプレイすらしなくて済む」
「後者イイねえ、俺にとってもマドカにとっても」

「でも裸にはなるよ。何もしなくていいって言うお客さんでも必ず一緒にお風呂入りたがる」
「・・・。」

「俺も今日マドカと一緒にお風呂入りたい><」 なぜか急にそんなことを言いたくなる。 「いっつも一緒に入ってるじゃんかwww」 そう言って彼女は笑ったけど、俺の心は穏やかじゃなかった。 俺は後者( ・∀・) イイネ!なんて言いつつも、 酔っ払って勃起しないっていう前者のほうこそ気になる存在だった。 マドカが言ってた「前者は一応プレイを頑張る」ってのは、 勃たないチンポを勃たせるために頑張ったってことだ。 射精って、そのほとんどは勃起してから起きる現象なわけで。 そして客のほとんどは射精することが目的なわけで。 勃起しなければ、おそらくほぼ、射精もしないのだろう。 マドカが言ってた発射ゼロで帰っちゃうお客さんってのは、そういうお客さんのはず。 これは一見、お金を払ったのにも関わらず 射精しないまま帰ってしまった可哀想な客にも思える。 でも俺の立場から言わせてもらえばそれは違う。 逆に羨ましくて、憎たらしい客だ。 マドカは、根は真面目だし、責任感も強い。 お金のために割り切って働いてたと言ってはいたが、 金に執着するぶん、金を払ってまで自分に会いに来てくれたお客様を 大切にしないわけがなかったと思うんだ。 だから彼女はなんとかして勃起させよう射精させようって、 一生懸命プレイしたと思う。 そう考えると、マドカはずっとチンポを素直にしゃぶってたような気がして 苦しくてたまんなかった。 興奮したけど。 「ちなみのちなみに」 俺ではない男のチンポをマドカがフェラしているシーンを妄想してた俺は、 現実に引き戻された。 「聞いてる?私の話」 「き、き、聞いてたよ」 マドカのそのクチビルが気になる。 普段、何気なくキスしたりしてたそのクチビルが。 「ちなみのちなみにね、プレイしなくていいよーって言ってくれるそういうタイプのお客さんなんだけどさ」 なんだろう、ちょっとマドカが嬉しそうに話してる。 「私の場合、常連さんの中でもそういうお客さんが占める割合がすごく多かったと思うの」「へー」 「べつにヒロシを安心させるために言ってるわけじゃないよ?」 「うん」 確かにそうだろうと思う。 都合の良い話ばかりを話すつもりはないって断言したマドカが、 俺を安心させようって理由で 「自分は癒し系だったから濃厚なプレイはあまりしませんでした」とか過去を捏造するわけもない。 まして自分自身の保身をはかりたいがために そんな嘘をつくにしても、もう遅すぎる気もする。 それに俺は掲示板で見たんだ。 マドカに対するコメントはそのほとんどが好意的なものか、 または、予約が取れねー、という嘆き。 そして、確かに「マドカちゃんに癒されました」的なコメントも多かったけど、 プレイもしっかりしてるという意見が大多数を占めていた。 勿論、本番できたからそれが単純に満足、って意見もあっただろうけど。 ネットカフェでオナニーしたあと、その冷静になった頭で、 デリ嬢としてのマドカを考えてみた。 その結果、彼女はお客さんの「心」も「身体」も 癒すことができる稀有な存在だったのだと、俺は分析した。 この場合の「身体を癒す」ってのは、当然ながらエロ行為の意味だ。 掲示板を読んでて、俺が最も興奮させられたのは、 最初は「下手」だと低評価されてたマドカのフェラが、時間が経つにつれて 『フェラ絶品』『上のお口のほうが俺は好きだw』などと 高評価する書き込みが増えていった点だった…。 『くちまんこさいこー』だなんていう下品な書き込みですら、 マドカに対する賛辞の言葉だってことが信じられなくて、 俺は興奮と悔しさの狭間で悶えた。 マドカと再会後、初めてセックスしたあの時、 「フェラとか上手くなってたらごめんなwww」って彼女は冗談っぽく笑った。 実際上手だったけど、それが本当に意味するところは ネットカフェで風俗掲示板を見て初めて知った。 マドカにフェラしてもらった連中が騒いでいて、 オマエら一体なんなんだよ、ってとりあえず思った。 俺だけが知っていればいいはずの事実を、そいつら全員が知ってて、 しかも直接味わったことがあるんだ。 その時の俺のショックと興奮は、ちょっとなんて書いたらいいのかわからない。 でもチンポはガチガチで、さっき1度オナニーを終えたはずなのに、 すぐにガチガチだったし。 マドカはデリ嬢としてお客さんから求められるプレイは平均点以上の出来だったようだ。 いや、掲示板の評価を真に受ければ、かなりの高水準なプレーで 客を満足させていたようにも思える。 とにかく、男達の心も癒し、その身体をも悦ばせる行為を きっちりこなしていたのは事実だろう。 それでもプレーしなくていいよっていうお客さんが多かったと、 マドカが言うのが不思議だった。 「ま、他の女の子たちがどういうお客さんを抱えてたかは知りようもないんだけど…」 「うん」 「でも、私のお客さんは絶対にまともなお客さんが多かった自信がある!」 「なんだそれ」 「ってか、他の女の子と顔を合わせる機会とかなかったの?」 「あったよ、女の子の待機所っていうのがあったし」 「そういう場で、あの客はこうだったああだった、とかそんな話にならないの?」 「うーん…他の女の子達はそういう話をしてたんだとは思う」 「マドカは?しなかったの?」 「私…ほとんど予約で埋まってたから、待機所に戻る暇なかった。なんかごめんなさい」 「え?ああ、うん。人気だったんだね…。」 「そうだったのかも…」 デリ嬢だった過去を告白した当初は、 自分はあんまり人気なかったよって謙遜してたはず。 でもこの時は、自分が人気デリ嬢だったということをマドカは否定はしなかった。 「癒し系が売りだったてこと?」 ただそれだけじゃなかったってことは確信しつつも、あえて聞いてみた。 「それは絶対に違う、私はそんなんじゃなかった」 いやそこはあまり強く否定しないで…、 私はエロが売りでしたって言われてるみたいで俺が悲しい…。 「私に言わせれば、自分で癒し系ですなんて言うデリ嬢は、仕事サボりたいんだってば」「ほぉ」 『一緒にいるだけで癒されるぅ~、だから私のお客様はイかなくていいっていう人が多いんですぅ~』 マドカは自分で想像したムカつくデリ嬢の姿を、 身振り手振りを交えて滑稽なモノマネとして披露してみせた。 おそらく同じ店で働いていた女の子にそんな奴がいて、 そいつをモデルにアレンジを加えてデフォルメしたと推測。 「私はそんな事をお客さんの前で言ったりしたことは一度もない」 「そっか」 「そりゃお客さんの方から、心が癒された、とかそう言ってくれることはあったよ」 「うん」 「でもその言葉はさ、裏を返せば、体も満足させてくれって言ってるんだよ」 「・・・。」 「もしくは、プレイもちゃんとこなせれば満点だよ、だから現状、貴女は満点ではないですよってこと」 「・・・。」 「ワザワザお金払ってまで呼ぶんだよ?どんなに体裁を整えてもスケベなんだよ」「・・・。」 「癒されるのも大事だろうけど、エッチなこといっぱいしたいに決まってるじゃん?」「・・・。」 「目的は絶対にそこ。ヤりたいに決まってる。男って最終的にはそういう生き物」「なんかごめんなさい」 俺が男を代表して謝っておいたわ。なぜか。なんでだおい。 「だからね、私はデリ始めたばかりの頃…」 「・・・。」 「男ってこういう生き物なんだ、って毎日のように自分に言い聞かせてた」 「…ごめん」 「1分が10分に感じたし、10分が1時間に感じた。辛かった」 「…ごめんなさい」 「ちょとw ヒロシに謝ってもらっても困るw」 「いやなんとなくw」 また謝っておいたわ。なんでだろ。よくわからんけど。 でもお互い緊張感もほぐれてきて、なんか重い話をしている感じはなくなってた。 「んっとねぇ、私はね、ヒロシはエライと思うんだよなぁ」 「エロい?」 「どんな耳してんだよ。さっき掃除したばっかりなのに」 「え?なに?」 「え・ら・い! って言ったの!」 「ん?なんで?」 「だって風俗経験ないんでしょう、それだけでも褒める価値はある」 「えへへ」 「まぁそのぶんそこらへんの女の子にちょっかい出してきたんでしょうけどね」 「・・・。」 「そういうヒロシはハッキリ言って、私は嫌い」 「・・・。」 「ちょっと…なんか話が脇道に逸れてきたよ…。戻して戻してw」 まどかは俺をひと睨みしたあと、飲み物を口にして、また元の表情に戻った。 「でもね、そういう男の人たちがいなかったら、私はお金を稼げなかった」 「ですね」 「たぶん今こうしてココに存在してなかったかもだし、ヒロシとも再会してなかったかも」 「うん」 「あ、そういえば。私大学1年間休学してたんだよ」 「え?辞めたんじゃなかったの?」 「まぁ休学後に辞めちゃったけど」 「そういうことだったのか」 「単位は落としてたから確実に留年はするけど、また大学に戻れるといいなぁって思ってたからさ」 マドカがそんなことをつぶやくと、急に場の雰囲気が暗くなった。 自分の彼女が過去にデリ嬢をやってたって話の方が、よっぽど辛いはずの話なのに。 そう感じたのは俺だけじゃなかったらしく、マドカが強引に話題を元に戻した。 「やめよやめよ、こんな話題。デリの話の方がまだ明るく話せる気がしてきたwww」 「で、質問はなんだっけ?」 「あ、えーと…」 聞きたいことは多いけど、聞く順番を間違えると大変なことになりそう。 なるべく小さいダメージで済みそうなものから消化していくべきか。 それとも最初にデカいダメージ喰らって、 細かいことなど気にならない境地に達するべきか。 それにマドカは、たぶん、俺がここまで質問した内容をちゃんと覚えてる。 その質問に答えるということが俺にダメージを与えることをわかった上で、 もう一度俺に心の準備をさせようと、質問はなんなのか?と 忘れたフリして問いかけているような気がした。 「んっとね、12時間コースの人は何回だったのか、って質問と」 「うん」 「その、何回した、とか、したい、とか。その中身が…本番…だったのか…って質問…」 だめだ。俺はどうしても「本番」って言葉を口にするとき動揺が隠せない。 普段使い慣れていない単語ってこともあるけど、その言葉の意味するところが嫌すぎる。 俺の心の揺らぎをいち早く察知したかのように、マドカが言葉をかぶせてくる。 「あのね、いつでも誰とでも、本番してたわけじゃないからね」 「うん…」 「ま、回数の問題じゃなくて、していたという事、それ自体が問題なんだろうけど」 「はい」 「それに、本番だけじゃなく、他の行為だってヒロシに聞かせるような話ではないはずだもんね」 マドカは淡々と語る。けっこうドライだ。 俺が本当に聞きたがるならば、それに答える覚悟はすでに出来ている。 「本当に聞きたい?ヒロシ大丈夫?」 「大丈夫じゃない気がするけど、なぜか勃起してる…」 「なんなんだろね、それw」 「わからんw」 「今…エッチしちゃう?」 「え?」 マドカの方からそんな風に誘ってくるのは、ハッキリ言って珍しかった。 いや、もしかすると初めてだったかもしれない。それなのにこのタイミングでなぜ? 「色々聞いちゃったら、ヒロシはもう私となんかするの嫌になるかも…」 ああ、マドカは俺よりもずっと先のことまで考えているんだな、って思った。 過去のことを寝掘り葉掘り聞いてみたいような聞かないほうがいいような、 なんて迷ってる俺。 過去に関してちゃんと答える覚悟があって、問題はそのあとだって見定めているマドカ。 なんだか俺だけ前に進めなくなってしまうような気がして、慌ててマドカを追いかける。 「いや、全部聞く。全部聞いた上でエッチする」 それ聞いてマドカは苦笑いしてたけど、俺は大真面目だった。 ようやく覚悟ができた。 マドカはクローゼットを開けて、奥の方に体を突っ込んでた。 荷物を出したり、出てきた荷物をまた元に戻したり、しばらくそんなことをやってた。 そして、ノートを5,6冊持って戻ってきた。 テーブルの上に重ねられたそれらは、一般的な大学ノートってやつより、一回り小さかった。 B5サイズってやつかもしれない。表紙にタイトルがあるわけでもなく、質素な感じだ。 「なにそれ?」 「はぁ…。 緊張してきた…」 ここまで俺なんかよりもずっと平静を保ってきていたマドカの、大きなため息とその言葉。 「自分で見返すとも思ってなかったし、まさか他人に見せる時が来るとは思いもしなかったなぁ」 「そのノート何?」 「このノートでお客さんの管理をしてた…」 思わず手を伸ばした俺の手をマドカが払い除け、「キャー」って悲鳴を上げた。 「まだだめ、まだだめ、心の準備が出来てないっ。待って待って」 マドカもそれほど屈強なハートの持ち主ではなかった。だがそれでいい。 本来は見られたくないものであるならば、淡々と見せられるよりも、 2人でドキドキを共有したかった。 「ちょっと待ってね」 マドカは大袈裟なくらいに深呼吸を繰り返し、数秒目を閉じて、 その目が再び開いた時には凛としてた。 「これね、本当に色々書いてあるの」 「うん」 「本当は、パソコンで顧客管理ソフトとか使おうかとも思ってたんだけど」 「うん」 「全て終わった時に、思いっきり盛大に燃やしてやろうとか思って手書きにしたw」 「うんw」 「じゃ、今日燃やそうか、一緒に」 「え…。う、うん」 マドカが嬉しそうに微笑んで、同意する。 「全部読み尽くしてからね」って付け足したらスゲー嫌そうな顔してたけど。 「ちょっと心の準備しながら、もう少し話してもよい?」 「うん」 俺はノートの中身が気になって気になって、もう勃起しまくりだったけど、 このノートの存在が明るみになってしまった以上、マドカももう後には退けないだろう。 彼女のデリ嬢時代の全てが白日の下にさらされるのはもう時間の問題。 「さっきのさ、ヒロシの質問に答える形になるけど、12時間で何回?ってやつ」 「うん」 「その人はさ、心にもお金にも余裕があるお客さんの典型で」 「ほぉ」 「12時間のうち、8時間くらい寝てた。ま、一緒に添い寝って感じだけど」 「まじ?」 「残り4時間でしょ?12時間もいればゴハンも食べるじゃん?」 「まぁね」 「それでだいたい1時間。んでカラオケ2時間くらい。そしたらもう残り1時間だよね」「だね」 「その1時間は、最初と最後に、お風呂30分ずつ。以上が12時間の中身」 「・・・。」 「え?プレイは?」 「してない」 「発射ゼロ?」 「ゼロ…」 「ってゆうか、12時間はさすがにその時だけだったけど、いつでも何もしないんだ、その人」 「しかもさ、お風呂で体洗ってあげるじゃん?」 「洗ってあげないといけないのか?」 「ま、一応仕事だし、洗わないままでプレイとか無理だし」 「そだね」 「その人さ、普通にお風呂入るみたいに自分で体洗って、自分でシャンプーしてさ、私の仕事がない」 20万近く払って、それだけ? しかもマドカの体に触れもしないらしかった。 常連さんだったらしいが、ある意味本当の変態なのか…。 金持ちの考えることはよくわからん。 「嘘っぽいけど、本当の話」 マドカはそう言って、12時間で何回したの?っていう俺の質問に対する答えを結んだ。 「信じられない?嘘ついてると思う?」 「うーん…」 「ってことで、このノートが役に立つわけだよ」 「あ…」 「探そうと思えば、このノートにその12時間のことが書いてある」 「なるほど」 「それともうひとつの質問のほうだけど、1回するとか2回したいとか、それが本番だったかとか」 やっぱりマドカは俺の質問内容を事細かく覚えてた。 あの時点で、このノートを俺に見せるっていう前提が、 すでにマドカの心の中にあったんだとここで気付く。 「私もそれがどういうプレイだったかなんて覚えてるわけないw」 「そかw」 「ってことで、それもこのノートに書いてある」 「え? 回数とか? 何でイカせたかとか?」 「うん…」 「マジかー。なにそれー。すげぇ。うぉおおおお!」 マドカはそこですごく不安そうな表情をしてたけど、俺はなんだか浮かれていた。 彼女がデリヘルをやっていたというショックより、 その全てを知ることが出来るという期待が上回った。 「なに嬉しそうにしてるの…」 「いや、全然うれしく、なんか、ない」 「あのさ、最初に言っておくけど、すごく生々しいよ?マジで」 「生々しいのか…(;゜д゜)ゴクリ…」 「エッチな意味ばかりじゃなくて!金額とか、そういうのもリアルに書いてある!の!」 マドカが少しだけ、声を荒げた。そして俺も正気に戻る。 マドカの言う金額ってのは、コース料金ではなく、別料金のことだろう。 本番するのに、別料金をもらってたって言ってた。 それはネットの掲示板でも、実際に払った奴らが書いていた。 それがいくらなのかは暗黙の了解なのか誰も言及してなかったけど。 ちょっとだけ反省した、興奮のあまり自分を見失うところだった。 「マドカ、これ見るか見ないかは、やっぱりマドカに任せるよ、俺」 「え、なんで? いや、そういうことなら2人で決めようよ。2人で!」 「俺は見たいw」 「即答かよw」 「でも、俺、思った。そんなにリアルに細かく生々しく書いてあるならば」 「うん」 「俺の受けるショックも相当デカいと思う」 「・・・。」 「でも、それを見て、見られて、嫌なことや辛いことをマドカも思い出すと思うんだ」 「だろうね」 ってことで、あまりシーンと真剣に見るのはやめて、 ワイワイ騒ぐ感じで見ようと、2人で決めた。 (そのノートを触るのはマドカ本人だけ。俺は一切勝手に触らない。ページをめくるのもマドカのみ。) そんなルールを予め決めて、どっちかが精神的に耐えられなくなったら、 もう全部燃やそうとも決めた。 、 けっこう2人とも、限界ギリギリなとこまで来てたと思う。あらゆる意味で。 マドカが1冊目のノートを手に取る。 よくよく見れば、表紙に『①』ってだけ小さく書いてあった。 マドカが1ページ目を開くと、 ドデカい文字で『目標金額○円!』って書いてあった。 ああ、リアルな金額って稼がなければいけない目標金額とか、 そういうことかって一瞬思った。 「金額ってこれのこと?」 「あはw 違うけど。ある意味これが一番見られたくなかったかもw ページ開くまで忘れてたw」 それは思っていたほど大きな金額ではないようにも思えた。 まぁ何のためにお金が必要だったのかとか、 それまで聞いたこともなかったし、聞けなかった。 「意外と目標金額が少ない… ちょっと安心した気もする…」 「そう? 世間知らずの大学生だった私には気が遠くなる金額だったけどな」 確かに、社会人となった今と、大学生だった頃では、 その金額に対する価値観は変わるかもしれない。 「それにローンを組むって話じゃないし、時間は限られていたからさー」 「そっか」 あまり深入りすべきところじゃない。もう終わったことなのだから。 今はとりあえず次ページが見たい。 「ぶはっw」まどかがいきなり吹いた。 「これ見て、私いきなり弱音吐いてるんだけど」 マドカが指差したのは、1ページ目の下の方にあった数行。 ドデカく書かれていた目標金額とは対照的な小さく薄い文字が並んでた。 『面接および初仕事完了…いきなり今日からだなんて思ってなかった…』 『恥ずかしかった…ちょっと続けられそうにない…自信がない…』 『とりあえず優しいお客さんで助かった…』 なんかリアルだった。 マドカが言ってたプレイ内容とかが皆無で、それが逆にリアルすぎた。 「入店初日の私は、こんな感じでしたw」 マドカは笑ってたけど、俺には急にプレッシャーが襲ってきた。 「次、いくよ? だいじょうぶ?」 「うん…」 最初の方は俺にとっては特に問題はなかったように思う。 もちろんマドカは恥ずかしがってたけど、それがやけに可愛くも思えた。 まだまだ顧客管理ノートと呼べるほどの体を成してはいなくて、書式もバラバラ。 日付、時刻、お客さんの見た目の特徴、選んだコース。 それらに付け足されるように、マドカが一言添える感じだった。 『忙しかった、ゴハン食べる暇がなかった』『ある意味これはダイエット』 『コスプレ無理』『寝そうだった』『何度もシャワー浴びすぎて乾燥肌』 言ってみればそれは、日記みたいなもので、 そこにはまだ俺の知りたいマドカの姿は無かった。 そりゃコスプレはその体格じゃ無理だろ、ってちょっと笑い合ったりもしてた。 日付、時刻、客の特徴、選んだコースだけだった管理項目が、いくつか増えだした。 ホテル名、部屋番号、客の車のナンバー。 「携帯カメラ使ったり、覚えられることは全部覚えて帰ってきてたよ?」 そのへんの情報は店が管理するべきことのような気もしたが、 自分で覚えて記録してるあたりが根が真面目なマドカっぽいなって思った。 そして、少しずつ生々しいコメントが載るようになる。 『アゴが痛い』『手で喜ぶお客さんが意外に多い』 『おっぱいが役に立った』『初めて素股で喜んでもらえた』 『フェラはやっぱり苦手だ』『上に乗る素股、重くないのか不安』 『おっぱいで喜ぶお客さんが増えてきた、微妙』 「喜ぶ、って表現…、もしかしてイかせたってこと?」 「バレたか…(・ω<)テヘペロ  ごめんなさい…」 「いや、まぁ、うん」 「おっぱいで喜ぶって…もしかして…」 「パイズリ」 俺パイズリなんかしてもらったことないのに!って言おうと思ったけどやめた。 虚しすぎる。 次から次へとページはめくられていく。 「このあたりで体験入店が終わったと思う。たぶん2週間くらいかな、実質の出勤日数は10日くらい?」 マドカがそう言った頃には、ノートは罫線が引かれて、管理項目が出揃った感じだった。 プレイ内容に関しての記述も増えたが、 その日稼いだ金額に関して触れていることも多かった。 『いっぱい稼いだ』『今までで一番忙しかったし疲れたけど、お金すごいもらえた』 『明日銀行行こう』『やったー○円貯まったぞー』『残り目標金額○円、気が遠くなる』 1日あたりのお客さんの数がいきなり増えて、マドカが弱音を吐くコメントが目立ち出す。 それが店のホームページに写真が掲載されたことによる効果なのだと すぐに察したけどマドカには言わなかった。 良くも悪くも写真掲載は絶大な影響があったようだ。 マドカのコメントが物語る。 『今日は最悪だった、明日も予約でいっぱいだけど、ドタキャンすると決めた』 このあたりで、ノート1冊分がほとんど終わりに近づいてた。 そして、マドカが書くプレイ内容のメモに、変化が現れ始める。 それまでは自分の言葉で 『時間ギリギリ、素股で喜んでもらえてよかった』などと文章で書いていた。 『喜んでもらえた』なんて遠まわしに書いてあったものが、 『素股1』とか『フェラ1』なんて書くように。 それはやがて、『ス1』とか『フェ2』だとか『パ1』だなんて、 簡略化されるようになった。 未完成の『正』の文字を使って数えていたこともあったが、 数日間でまた『フェ2』とかに戻った。 「ス、と、フェ、はわかるけど、パ、って何?」 「パイズリ」 俺は1冊目のノートを読み終えて、マドカがそれを閉じた時に言ってやったよ。 「今日パイズリしてください…」 「はい…」 ちょっと俺は怒ってて、マドカはちょっと萎縮してた。 これじゃこの先が思いやられる、って感じは2人とも気付いていて、 先にマドカが口を開いた。 「怒ってるよね?」「怒ってない」 「嘘だー」 「怒ったってしかたがない。もう終わってしまったことで、過去は変えられない」 マドカがガックリと肩を落とした。 女性にしては大きなその体が、本当に小さくなってた。 「1冊目でこうなるなら、2冊目以降はもう見ないほうがいいと思う…」 気まずいなんてもんじゃなかった。 ポカポカ陽気のなかでマッタリとした空気が漂っていたその部屋は、 暗雲が立ち込め始めてた。 「なんで?」 「わかってるくせに…」 もちろん判ってた。 1冊目のノートにはまだ書かれていないことがある。 マドカがいつからソレを始めるのかは知らないが、 俺がソレを目にするのはそう遠くはなさそうだ。 2冊目以降は見ないほうがいい、 ってマドカの言葉からもなんとなく察しがつく。 マドカの様子を伺いつつ、ソレにはまだ、今は触れないでおこうと思う。 もう一つ気になっていたことがあったので、そっちのほうから問い質してみる。 「あのさ、ちょっと気になったんだけど」 「はい…」 「1冊目って、体験入店も含めて、たぶん2ヶ月くらいの中身だよね?」 「うん…」 俺は最初のページと、最後のページの日付を何気なく目にしてて、それを覚えていたんだ。 「2年くらいデリやってたって最初に聞いたんだけど、単純計算で、ノート12冊ないとおかしくないか?」 マドカはスゲー驚いた顔してて、俺はこれは地雷を踏んでしまったと思った。 その時俺は、マドカが予めノートの中身を見返して自分に都合の悪いものが書いてある ノートは既に処分した上で、目の前にある数冊を残したのではないかと、そう勘繰った。 でも、もしその予想が的中していたとしたら、 マドカから次のような反応は返ってこないはずだった。 「ヒロシ…頭良いね、鋭いっ!!!」 マドカはビシッと俺を指差して、カッコよくポーズを決めてた。 俺はポカーンとしてたけど。 「あ、ごめん。空気読めって感じだよね…」 「いや、だいじょぶw」 正直助かった。重苦しかった雰囲気を 一瞬だけ能天気になったマドカが打ち払ってくれた。 「どういうこと?説明求む」 「わかった」 マドカは1冊目のノートを再びめくり始めて、その手は中盤あたりで止まった。 そこは、罫線が引かれ始め顧客管理ノートとしての体裁を整え始めたあたりのページ。 「こことか」「これとか」「こういうのとか」 マドカはページをめくりながら、 『お客様の特徴』って書いてる欄を時々俺に指し示す。 そこには『話しかけても無言 ×』『クサい…ワキガ? ×』『痛い ×』などと書いてあった。 時にはいきなり『×』のみ書いてあったり、 デカい字で『ヘタクソっ!!! ×』とか辛辣だった。 「ヘタクソってw」 「笑いごとじゃないよ、それは私が痛かったって意味だぞ」 「あ、ごめん、ごめんな」 「うん。それに本当に我慢できないときは、痛いです、ってちゃんと言うし」 やっぱり楽な仕事ではない。俺は理解不足であった自分を戒めた。 「ヒロシはさ、たぶんこういうとこばかり見てたでしょ」 マドカがそう言って指差したところには『フェ1』って記入してあった。 「特に回数とか、そんなとこばっか見ちゃってさ。バーカ」 図星である。 マドカがどうやってイカせたのか、何回イカせたのか、それは何分コースだったのか。 俺はそういうところを主に見ていた。悶々としながら。 「そのうち『NG』ってのが出てくると思うんだけど」 「うん」 マドカが最後の方までページをめくって、 ようやくその単語が記入してあるページがあった。 『とにかく無理 NG』 「生理的に受け付けないって意味かなコレ?」 「俺に聞かれてもwww」 「あはwww まぁ何かしらの理由で次回からNGに登録してもらってたんだよ」 「登録?」 「受付する店の電話番号あるでしょ?まぁほとんど店が携帯で受けるんだけど」 「うん」 「一度利用したお客さんの番号は全部登録されるの」 「ふーん」 「で、私がNGでお願いしたお客さんは、電話帳の登録名を『○○さん(マドカNG)』にしておく」 「ソイツから電話が来て、またマドカを指名するような場合は予約で一杯ですってなるわけだ」 「そうそう。または、本日急遽お休みです、とか。理由はどうあれ、とにかく私は行かなくて済む」 「お客さんによっては複数の女の子がNGにしてたり、店自体がNGにして、着信拒否したりするわけ」 なるほど理解。 「ああ、ここにもあるね」 最後のページにもその単語はあった。『ヘタクソ、痛い NG』 痛いっていう文字は、なんだかすごく俺も心が痛かった。 でもそれと同時に、ちょっと別な疑問を俺に投げかけてくる。 「あの…もしかして、ヘタクソじゃないお客さん…ってのもメモってたりする?」 遠まわしな表現をしたつもりだったけど、すぐにピンとくるものがあったらしい。 マドカは俺のほうは一切見ることなく、ノートに目を落としたまま静かにこう言った。 「それは、2冊目のノートを見る覚悟があるなら、そのときにちゃんと正直に教える」 俺達はフリダシに戻ってきた。 もちろん「見る」と答えたし、ノートを全部見ないまま 燃やして処分してしまうなどという選択肢は、俺には最初からなかった。 「じゃ、2人で一緒に見ようね」 別に喧嘩したつもりはなかったけど、マドカのその言葉に、 仲直りしたかのような安堵を覚えた。 その安堵は決して長続きしなかったけども。 「ちょっと飲み物持ってくる」 いつの間にか2人ともコップが空っぽになってた。 きっと緊張のために、喉が乾いてしかたなかったのかもしれない。 「1冊目のノートなら、もう俺が勝手に見てもいい?」 冷蔵庫に向かってたマドカが振り返って、一瞬の間を置いてから、「いいよ」と答えた。 パラパラとページをめくりながら特定の項目をチェックする。 すると、60分コースの客と、90分コースの客が、ほぼ1回しかイってない。 120分以上のコースになるとさすがに2回って客がいたけど、 それでも平均1.5回にも届いてない気がした。 マドカが言っていた通り、発射ゼロのお客さんも確かにチラホラいた。 どうやら、まだ1冊目のノートの時点では、 掲示板で絶賛されるほどの高水準な仕事は出来ていなかったらしい。 それは俺をすごーく安心させたけど、マドカのコメントが 『もうちょっと頑張れた気がする』『なんか申し訳なかった』 とか書いてある日もあって、それが俺をムシャクシャさせた。 マドカの話だと、短いコースを選ぶ客の方がエロく、 ロングのお客さんは逆に回数が少ないようなニュアンスのことを言っていた。 俺はこのあたりも2冊目以降は注目しようと虎視眈々だった。 お茶のペットボトルを片手に戻ってきたマドカが「ちんちんは?」って聞いてくる。 「ギンギン」って俺は答えて、マドカが割と真面目な表情で、 「2冊目のノートでちんちん縮んじゃったらどうしよう…そんなのやだなぁ…」って不安そうに笑った。 「パイズリしてもらうから大丈夫」 「ずいぶんそれにこだわるねw」 「あたりめーだよ、オマエなぁ…」 「ごめんなさい、ごめんなさい」 マドカが本当に怯えるようにして謝ってたので、俺はグッとこらえた。 「あ、忘れてた。ノートが少ないんじゃないかっていう、その理由」 「あ、そうだ」 「でも、薄々気付いてはいるよね?ヒロシ鋭かったし」 「いやまったく」 何となく気付き始めてはいたが、マドカの言葉で言ってもらうことに意義がある。 「だからさ、NGのお客さんが増えるわけだよ」 「だよね」 「それと、最初の方の私は、出来るだけ早くお金稼いでやめたいって思ってたから」 「うん」 「ある意味張り切り過ぎて、働きすぎていたのだ」 「どのくらい?」 「生理のとき以外毎日…オープン~ラストみたいな」 「まじか…」 「でもそれじゃ、体がもたないし、NGの客を増やしつつ」 「うん」 「時間も夕方まで、とか、夕方から、とか、そういう出勤時間にしたら自然とちょうどよい感じになった」 「そういうわけで、1冊目のペースでノートの冊数が増えたわけではない」 「なるほど」 ちょっと意地悪したくなって、俺は1冊目のノートをパラパラめくりながら言った。 「でもそれじゃ、収入が減るんじゃ? まぁ、別な収入が増えるってことだろうけど」 俺のその質問、というよりは自問自答に、マドカの表情がちょっとだけ歪んだ。 さっきまだ触れないでおこうと思った「本番」に関して、俺は我慢できずに言及した。 マドカはコップをお茶で満たしたあとに、「ごめんね」って言った。 俺は罪悪感でいっぱいだった。 ワザと意地悪な言い方をしたんだって正直に言って、俺も謝った。 「でもね、本当にこれだけは信じて欲しいんだけど、ソレだけで稼いでたわけじゃないの」 「わかってるよ、マドカの魅力は俺が一番わかってる」 「ありがと…」 「ま、デリ嬢としても魅力的だったってのは、俺としては嬉しくないんだけどな」 「うん…わかってる」 「あのね、私すごく色々なこと覚えて帰ってきてたじゃん?」 「うん」 ノートの『お客さんの特徴』って項目には、小さい字ですごく事細かく色々書いてあった。 その日何を話したのかその話題はもちろん、 一緒に食べたもの、一緒に見たテレビ、 時には、お客さんの家族構成まで書いてあることも。 『奥さんと子供在り』、『バツイチ』とか。 マドカが言うには、稼ぐための一番の近道は、 安心安全なお客さんにいかにリピートしてもらうかが勝負だったらしく、 前回呼ばれた時にどんな話をしたかを覚えていたりすると、 客はその「自分のことを覚えていてくれた、忘れないでいてくれた」ってところをメチャクチャ喜ぶらしい。 確かにそれって、嬉しいかもしれない。 自分は数多くいるであろう客の男達の中でも、 もしかすると印象深い特別な存在だったのかも、 っていう優越感をくすぐられる仕様だ。 まぁ勘違いなわけだが。俺としては勘違いだと断言してやりたいし。 「だから、私はこのノートを使って、どんなお客さんなのかを徹底的に管理したの」 「うん」 前もって予約が入った場合は、それがリピーターなら 前回いつ呼ばれたのかをスタッフに聞けばわかる。 それがわかれば、ノートと照合して、どんな客だったかがわかる。 もちろん、あまり気乗りのしない客だったら、その時点でNG登録もできただろうし、 「金を稼ぐために我慢だ!」って気合を入れ直すことも出来たと、マドカは言う。 そして、前述した金にも心にも余裕があるっていう客層を 優先的にチョイスしていったと。 「これを根気よく繰り返してたら、店にとっても私にとっても「優良客」と呼べる客が残る」 「うん」 「私のお客さんは絶対にまともなお客さんが多かった自信があるっていうのはそう言う意味」 「なるほど」 「理解してもらえた?」 「すげーよくわかった。努力したってことね」 「努力ではないかもしれない。なんか努力って言葉を使っちゃいけないジャンルの気もする」 マドカが必死だったってのは伝わってきてた。 「でもね、私と店にとって優良客だったとすれば」 「うん」 「それはヒロシにとってはイヤな客な場合の方が多いと思う」 「だろうなぁ」 「3冊目、4冊目ってなればなるほど、そういうお客さんばかりだよ?リピーターばかりだし」 「・・・。」 それには、今言われてみて初めて気付いた。 1冊目のノートなんてまだまだほんの序の口だってことはわかってたつもり。 でも俺を本当に苦しめる敵は、1冊目、2冊目あたりのノートでマドカに NG登録されずに生き残り、リピーターとして、3冊目~のノートに登場する奴らなのだ。 だがしかしソイツらは、俺の知らないデリ嬢としてのマドカの姿を、 ノートを通す形で俺に赤裸々に語ってくれる貴重な存在でもあるのだ。 なんだか微妙にやっかいな奴ら。 心の底から憎たらしくもあり、逆に羨ましくもある。 「さっきヒロシが言ってた、ヘタクソじゃない、人もいるかもしれない」 「うん」 「本番する人もいるかもしれない…」 「それは確実にいるってわかってるけど…」 「なんかもう早く楽になりたい、そろそろ見ようか…」 「うん…」 マドカが言ってた「楽になる」ってどう言う意味だったのかなって時々思い出す。 俺がマドカと別れるっていう選択肢を選んだのならば、それがある意味、 「マドカを一番楽にしてあげられた」のではないかと、俺はそう思うこともあったりする。 2冊目のノートが開かれた。 その1ページ目には、目標金額の残高などは記入されていなくて、 いきなり顧客管理データがズラズラと並べられていた。 最初の客が、いきなり240分コースで『フェ1』だった。 『歌が上手』『薬指に指輪の跡があった、たぶん既婚者?』『超ハゲ』 2冊目のスタートとしては、なんだかすごく安心した気がする。 2~3ページ目でまた未完成の「正」の文字で数えてあったりして、 マドカなりにこのノートの書き方、およびその運用方法を探っていた様子が垣間見れた。 2冊目のノートが中盤に差し掛かった頃に、ノートの記入方法は、一応の完成を見た。 プレイ内容は記号化され『フェ↑』 『ス↑』 『パ↑』などと書かれていた。 矢印の数がそのまま回数を表すらしい。 矢印の初登場は、60分で『フェ↑↑↑』という、これまた初登場の3回発射だった。 このページに関してマドカは、 自分が3回も頑張ってしまったのがすごく悲しかったし、 なんだか悔しかったし、どうしても『3』っていう数字を書きたくなかったんだと言った。 この客以降のページは、すべて矢印で統一される。 「なんで上向き矢印なの?」「昇天したって意味w」だそうだ。 俺はマドカほど笑えなかった。 そして、『手』っていう記入が少なくなり始める。 ノート1冊目に書いてあった『手で喜ぶお客さんが意外に多い』って言葉通り、 1冊目のノートと2冊目のノートの序盤あたりは、『手2』とか『テ1フェ1』 なんて記入が、実はとても多かったんだ。 でもそれは、俺が思うにマドカがフェラやスマタが下手だったからで、 それでも客はなんとかして射精をしようとした結果、 不本意ながら手コキでイったというのが真相だろう。 その推論を裏付けるかのように、 2冊目終盤になる頃は『テ』はほとんど見かけなくなり、 『フェ』に取って代わられることになるのだ。 これは、下手だったマドカのフェラがやがて絶賛され始めるという、 掲示板で俺が見た流れと残念ながらぴったりとリンクしてしまっていた。 「お客さんにフェラ褒められたりした?」 「最後のほうは上手だって言われてた…、自分でも上手くなってしまったと思う…ごめん」 それは俺にとって辛いことだったけど、 マドカの言葉に嘘がないことが唯一の救いだった。 神経が擦り切れてきているのがわかった。喉も乾く。頭も痛いような気がする。 マドカがチラチラと、何度か俺の顔色を気にする素振りを見せてた。 やがてマドカがある記号を無言で指差した。 『↓』 っていう下向きの矢印がそこにはあって、違和感たっぷりだった。 マドカが言うには既に何度かその記号は出現していたのだが、 俺は気付かずスルーしていたらしい。 どうやら俺はよほど集中力が途切れてしまっていたようだ。 「それは何の記号?」「昇天の反対…」 そう言われてもボンヤリしていて、一体何のことなのかピンと来ない。 マドカの次の言葉を待っていると、 「私が…イった…」と彼女は消え入りそうな声で呟いた。 「初めてそうなったときはショックだっなぁ…」 彼女はいつもそうするように、遠い目をして、そして静かに語った。 「お客さんってお金を払っているせいか、けっこう受身の人が多いのね」 「そうなんだ」 「だから私は、私が頑張ってさえいればいいんだって、そう思ってたの」 「うん」 なんとなく、俺もそう思ってた。 俺の妄想ではマドカはいつも攻める側で。 客は「俺は客だ!!!」と言わんばかりに大の字に寝てる。 そんな状況で、限られた時間の中、マドカは精一杯の仕事をする。 そして俺は、マドカが何でイカせたのか、何回イカせたのか、 とかそんなことばかり気にしてた。 「でも、攻め好きなお客さんってのもいてさぁ…」 「…だよね…」 「自分はイかなくてもいいから、マドカちゃんはおとなしく寝ててなんて言われたり」 「うん…」 ある意味、発射ゼロで帰っていくというのは、こういう客も含めてのことなのだろう。 マドカは、俺が見逃したと思われるページまで戻って、 初期の頃の『↓』を見せてくれた。 そこには『試練だ…』ってマドカの苦悩が吐露してあった。 「正直、触られるなら触るほうがマシだし、舐められるなら舐めるほうが気が楽だった」 マドカはそう言ったあと「ヒロシには申し訳ないけど」って付け足した。 俺以外の誰かをフェラしているマドカと、俺以外の誰かにクンニされているマドカを、 俺は頭の中で交互に想像してみる。 どっちも嫌だったけど、今まで散々フェラしてる姿は想像し尽くしてきた。 でもクンニされてる姿を想像するのはそれが初めてで、うまく想像できないぶん、 その未知のダメージが押し寄せてきて俺は打ちのめされた。 「やっぱ、気持ちよくなっちゃうもんなの?」 「うーん…頭では全力で拒否してるんだけどね…」 掲示板で情報集めしてる時は、まったく想像してなかった。 マドカの情報を書き込んだりしてる奴らの中に、マドカをイカせた奴が潜んでいるなんて。 掲示板では主に、実際にマドカをまだ呼んだことがない奴らが、 マドカがどんな嬢なのか、果たして本当に掲載された写真通りの嬢なのか、 って疑問を書き込んでた。 すでに呼んだことがある奴らは、それぞれ感想を述べて、 そのプレイの質の高さを評価してた。 感想はそのほとんどが、受身であり、フェラとパイズリ、が気持ちよかったというのが大半を占めてた。 俺はその書き込みを見て、デリヘルってやつをわかったつもりになっていたけど、甘かった。 デリヘル嬢としてのマドカのことも把握したつもりになっていたけど、全然わかっちゃいなかった。 密室で男と女が裸で過ごすのだ。 そもそも裸で抱き合うのが当たり前の前提となるのだ。 原則として本番行為は禁止されているのだから、本番はしないと仮定すればどうなる? 俺ならどうするだろう? そう、客の立場になって考えたら、自ずと答えは出た。 誰だって本番ギリギリまでのプロセスを大いに楽しむに違いない。 手コキはもちろん、フェラだってしてもらえる。 時間内なら何度でも求めていいって話だ。 おっぱい、特に乳首は念入りに舐めるだろ。 そしてマンコだって触るはず。指も挿れたくなるだろう。 そして、いざ本番したくなったってときに、その代用プレイとして素股があるのだ。 それは男と女がいかにもセックスしているような雰囲気を味わうための擬似本番ってやつなのだ。 そして、それらのプレイの全ては、本番がないからこそ、 より濃密になってしまうような気がする。 ここまで考えが及んだ時に、目の前にいるマドカの その大きな胸のふくらみが突然気になった。 これまで幾度となく『パ1』とか『パ↑↑』なんて記号めいたものを目にしてきた。 マドカは『おっぱいが役に立った』などと自虐的と思えるコメントを残していたし、 その本人の口からも「パイズリ」という単語を耳にした。 俺は、今日パイズリしてくれと半ば強引にお願いし、マドカがそれを了承する形で、 燃え上がった嫉妬の炎を消し止めることができたように錯覚してた。 でも、その嫉妬って、そもそも何だったのか? マドカを指名して呼ぶような奴らは、マドカのおっぱい目当てだったに決まっているのだ。 そしてパイズリでイカせてもらったような連中が、 その前後にマドカのおっぱいを触らなかったはずがないじゃないか…。 目の前にいるマドカを見知らぬ男が後ろから抱きかかえ、 その胸を自由に揉んでいるのが簡単に想像できた。 それはエスカレートして妄想となり、 やがて複数の男たちがマドカの胸に群がるようにして乳首を舐め始める。 その男たちの一人がこちらを振り向き、 その顔が自分とソックリであるような気がして俺の思考は停止した。 なんでこの土壇場になるまで、気付かなかったんだろう。 俺はマドカのおっぱいが大好きだということに。 そしてマドカを指名した奴らもきっと大好きだったんだろうということに。 集中力が途切れ始めていた俺に力が漲る。 そのエネルギーが嫉妬と寝取られM属性という、 相反する感情が昇華されたパワーであることはもはや疑いようもない。 俺は、マドカが他の男におっぱい揉まれてる姿が見てみたい、とすらちょっと思った。 でも、それは現実的に不可能だし、 だからこそノートから読み取ろうと、集中力を研ぎ澄ました。 俺の想像が及ばないところは、マドカの言葉が補う。 「わかってるとは思うけど、私を指名するのはいわゆるおっぱい星人なわけ」 「はい」 「やっぱここまで大きいのは珍しいらしく、みんなビックリしてた」 「だろうね」 「で、私もお金を稼ぐためにはこのおっぱいが武器になる、とは思ったのよ」 「武器…」 「だからパイズリとか、お客さんに教えてもらいながら、頑張ってたの」 「あ、ちょっとちょっとマドカ」 「ん?」 パイズリの話はどうでもよくなってきたので制止する。 マドカがそのおっぱいでどんな風に客を気持ちよくさせたのかではなく、 マドカのそのおっぱいが客からどんな感じで色々されちゃったのかを知りたいのだ。 今の俺の興味は、そこに尽きる。 「お客さんって、やっぱりおっぱい触りたがった?」 「なんかヒロシ、顔つきエロくなったし…」 「ちょ、何言ってんの… す、すいません…w」 「ま、いいけどw」 マドカには、「自分は聞かれたことには正直に答えるしかない」から、 「ヒロシが凹まない程度にちゃんと自分でブレーキかけてね」って念を押された。 が、しかし。たとえ俺がフルブレーキで止まろうとしても、 その全てが書いてある顧客管理ノートが目の前にある限り、俺はもう立ち止まれない。 玉砕あるのみ。 マドカの制止を振り切り、逆にアクセルを踏み込んでいく。 「おっぱいかぁ…」 そう言いながらマドカが、その日何度目かの「遠い目」をする。 セリフを伴っているぶん、マドカが今確実に、 客の男たちのことを思い出しているってのが、俺にもリアルに伝わってくる。 「んでんで?」 マドカの「遠い目」が「白い目」となって俺に向けられる。 どうやら俺のワクワク感を出し過ぎな感じが気に食わないらしい。 それでも、マドカは話を続けてくれた。 「最初はやっぱみんな私のおっぱい見てウワーってなって驚く」 「うん」 「頬っぺたくっつけて、胸に顔を埋めるって言うのかな、そういうのって?」 「うんうん」 「落ち着くー!とかそんなことを言いながら」 「わかるw わかりすぎて逆に辛いわw」 「男の人ってさ、けっこう当たり前にマザコンなとこあるじゃん?」 「うん、まぁ」 「それからほとんどの人は決まって赤ちゃんみたいになるんだ」 「んむ」 「赤ちゃんだから、当然、乳首に吸い付くわな?」 「え?う、うん」 「でも当然、ホントは赤ちゃんじゃないから、舐め始めるわな?」 「は、はい…」 マドカはちょっとぶっきらぼうな言い方を選択して、そうやって俺をイジメる。 客とのプレイを詳細に語るということに、照れという感情もあったのかもしれない。 それと同時に、意味ありげな視線を俺に向けて、大丈夫か?って気遣ってもくれる。 大丈夫だから続けたまへ的な視線を俺も返して、マドカは話を再開する。 「私も勝手にビクンッとかなっちゃうんだ」 「うん…」 「アンッとか声も出ちゃうときもある、残念ながら」 「出ちゃうのか…」 「さっきも言ったけど、頭では拒絶してるんだよ、それはわかってね?」 「も、もちろん」 それはわかってはいるが、ビクンってなったり喘ぎ声を出したりするマドカ、 そしてマドカをそうさせているのが、自分以外の他の誰かであることに興奮を隠せない。 「お客さんはもう完全に赤ちゃんじゃなくなってくるじゃん?」 「うん」 「言ってる意味わかる?」 「わ、わかってるよ」 マドカは時々こうやって俺に覚悟を促してくる。 その度に俺は気を引き締め直した。 「いっぱい触られたし、後ろから鷲掴みにするお客さんが多かった気がする」 マドカのその言葉を聞いて、俺はすごく納得させられるものがあった。 おっぱいって、その感触を十分に楽しむには、 寝てる状態よりも起きてる状態のほうがいい。 寝てるとどうしても左右にこぼれ落ちちゃうし、 後ろから両の手のひらで包み込むのが、 マドカのおっぱいのボリュームを味わうベストなやり方なのだ。 それに背後から見下ろすおっぱいの谷間がこれまた絶景なんだ。 何言ってんだ俺は。 「鷲掴みとか、けっこう乱暴な感じの触り方をされると、私はムカついた」 「俺もムカつく」 「だよね? んじゃ、もうこの話は終わりだ」 「え?終わっちゃうの?」 「だってヒロシ、なんか楽しそうなんだもん。私はそんなに楽しくないし」 マドカはそう言い残してまた飲み物を取りに行く。 俺のお茶はまだ残っていたけど、マドカのコップは空っぽだった。 俺よりもマドカのほうがプレッシャー感じてるんだって思った。 飲み物を持って戻ってきたマドカが、また俺のチンポの状態を確認する。 「ちんちんは?」 「ギンギン」 「あとでちゃんと勃つの?」 「大丈夫」 さっきも同じやりとりがあったような気がするが、また繰り返してた。 「つか、マドカが勃たせてくれよ、パイズリ期待してるwww」 「わかったw 頑張るwww」 その日のマドカは、なんだかやけに俺のチンポを気にしてた。 その理由は夕方頃になって判明する。 水分補給したマドカが、何事もなかったかのように話を続ける。 「でさ、お客さんがアレコレ始めると、私は心を閉ざすの」 「うん」 「体は勝手に反応しちゃうから、心は『無』で体は『素の私』って感じ」 「はい」 「でも、濡れたりしないわけ。ハッキリ言って苦痛だし」 「そうか」 「いや、わからん。もしかすると濡れてることもあったかもしれない…」 「大丈夫、わかってる」 いわゆる自己防衛反応だ。いや防衛「本能」というべきか。 それは単なる潤滑油であり、気持ちが伴っていなくても、発生するメカニズム。 女性の体は、自分の痛みを和らげる意味でも、愛液を分泌するのだ。 「口では嫌がっててもアソコは濡れるじゃねぇかよ」 などというアホな考えを持つ男は、無知で身勝手で傲慢であり、 そんな男どもは死刑でもおかしくないレベルの人間なのだ。 それをマドカに説明すると、彼女は当然身を以て体験しているので、すぐに理解した。 「当然、痛いの。ノートにヘタクソとか愚痴っちゃうくらいにw」 「うんw」 「おっぱいはまだ我慢できるんだけど、アソコは無理」 「うん…」 あー、とうとうマンコかよー、って俺は思った。欝勃起レベル80まで到達。 「でもローションとかいう便利なものを持参していくわけじゃん?」 「ほぉ」 「わかる?ローション?ヌルヌルのやつ」 「俺だってローションくらいわかるわwww」 「誰と使ったの?」 ( ̄- ̄) シーン… 時々こういう話題がないと、場が持たない。 マドカが茶化すタイミングは絶妙で、そういうトークが上手いのもデリ嬢として必要な要素なのかも。 それに、今は美容師としても成功を収めているわけで、 「客と話す」というスキルは高いのかもしれない。 よくよく思い返せば、掲示板には『癒される』の他に 『一緒にいて楽しい』って書き込みもあった気がする。 「そしてそのローションってやつが、ある意味、非常にやっかいなの」 「へー」 「どんなにヘタクソなお客さんでも、2割増くらいにレベルアップしちゃう」 「テク?」 「テクってwww まぁ痛くはなくなる程度にね。根本的にダメなものはダメ」 「あいw」 「んで、相手によっては、本当にイカされてしまったこともある、ただそれだけの話」 マドカは『↓』の記号に関しての説明をちょっと強引に終わらせるように話を結んだ。 それでも俺は質問を続ける。 「そ、それは、気持ちよかったのでしょうか…?」 マドカはすごーくエロい顔つきで、 「気持ちよかったよって、ヒロシを興奮させたほうがいい?」 「それとも気持ちよくなかったよ、って安心させて欲しい?」 「ねぇ…どっちなの?」って俺を挑発するように言った。 寝取られM属性をマドカに完全に見抜かれたうえで、手玉に取られている俺がいた。 メチャ興奮した。 「え? えっ!? 俺はえっと、その…」 パニクって挙動不審になってしまった俺をマドカがからかうように笑ってた。 「正直に話すって言ったでしょw 99%苦痛だったってば」 「あ、うん…え、残り1%は…」 「あとさ、計算高い女だって思われるかもしれないけどー」 マドカは俺の質問を遮るかのように話を続けようとした。 あとで聞けばいいかぁ、いや、きっとタイミングを見て マドカのほうから話すつもりなんだろう。 「感じてるフリ、イったフリ、ってのは当たり前のようにしてた。要するに演技」 「へー」 「男の人みたいに単純じゃないじゃん?見た目で判断できないというか」 「うん、そだね」 男はいたってシンプル。 ドピュって白いものが放出すれば、それがイった証拠とみなされる。 「イったって思わせないと、いつまでも終わらないんだよ、苦痛の時間が」 「なるほど」 「それにさ、下手に声が出るのを我慢したり、堪えたりするとするじゃん?」 「うん」 「女が必死に耐えてる姿に男の人って興奮しちゃうもんなの?」 「なんとなくわかるような気もする…」 「で、男の人ってなんとかして喘ぎ声出せようって思うのか、ますます頑張り始めるんだよね」 「うん…」 「そうなると強引で乱暴っていうか、逆に女は、特に私の場合は、嫌がるってのがわかってない」 「そっか…」 やっぱり楽な仕事ではない。 ただでさえ嫌なことをされるのに、それがさも嫌じゃないことであるかのように演じ、 あたかもそうされることで気持ちよくなったとその相手に思わせなくてはいけないなんて。 そう思いながらも、俺は客の視点で、その一連のマドカの行為を思い浮かべてみる。 本人は自分の身を守るためにしていることでも、 客目線で見れば、目の前でマドカが喘いでいるのだ。 小刻みに体を震わせ、声にならない声を上げ、最終的に絶頂に達するのだ。 たとえ演技だとしても、結果的にお客さんを悦ばせてた気がして、欝だわw マドカは、そんな自分のことを計算高いとか腹黒いだとか、 あるいは悪賢いだなんて言ってた。 俺は決してそうではないと思った。 心の内はどうあれ、少なくとも表面上はお客さんを不快にさせる要素は見当たらない。 デリ嬢の中には、「地雷」などと呼ばれる女の子もいて、 体すら触らせなかったりする場合もあると聞く。 そんなもんと比べたら、マドカの圧勝に違いないし、客だってマドカを支持するだろう。 ま、俺が言うまでもなく、大絶賛で支持を受けていましたが…。 そんな、客達のことなのだが。 マドカが言うには、客は大きく分けると、2種類いて。 プライベートで女性と接する機会がほとんどなく、 お金を払ってでもエロいことがしたいと、鼻息を荒くしてやってくるタイプの客。 お世辞にも女性にモテるタイプとは言い難い方々。 プレイは粗雑、AV見すぎ、自分勝手、清潔感もない、社交性もない、 NGになることが多い。 指定するコースは50分~60分と短く、 とにかくエロ一直線で、何回でもイキたがる。 ただマドカとしては、仕事だと割り切って考えた場合、 こういう客は単純で扱いやすいのだそうだ。 事務的に淡々と仕事をこなしてさえいれば、 時間はあっという間に過ぎてゆき、短く感じると。 「私が思うに、条件さえ揃えば、男も女もイク。 そんなの結果でしかないし、気持ちなんか関係ない」 マドカは冷めた表情でそう言い放った。 ちょっと言葉には怒気も込められていたようにも思う。 その怒りは、そういう客に向けられているものではなく、 おそらくマドカ自身に対する己への怒り。 それは、そんな客たちからも不本意ながらイカされてしまった、 という過去を物語ってた気がした。 気持ちなんか関係ないのは、俺にもよくわかってた。 好きでも何でもない女を抱いてきたし、 時には射精だけが目的の虚しいフェラも味わったこともある。 なんでコイツとヤってしまったのだろうとか、 今考えると、相手の女の子に大変失礼なことを思ったこともあった。 でも俺は「イク瞬間」だけは快感があったし、 マドカに「その瞬間」はなかったのかなって、疑問に思った。 それを聞こうか聞くまいか迷っていると、それを察したのか、 それとも最初から正直に話す予定でいたのか、 そのどちらなのかはわからないけれど、 マドカがちょっと言い難そうに言葉を発するのだった。 「でもね…」 その『でもね』って言葉を聞いたときに、背すじがゾクゾクした。 その逆接の接続詞は、おそらくさっき俺が言いかけた 「残り1%」に関することだと瞬時に理解した。 嫌な予感と、ドキドキ感が、俺の心の中は複雑に絡み合って混在してた。 「上手いヒトってやっぱりいるんだよね。なんか理屈抜きで」 「・・・。」 「さっきヒロシが言ってた、テクニックとかそういうことじゃないの」 「ん?」 「もちろんそれも含めてだけど、女の扱い方全般が上手いっていう感じ?」 「へ、へぇ…」 客を大きく分けると、2種類いて。 今から特徴を挙げるコイツらは、さっきのアイツらとは対極に位置する客たち。 プライベートでもそこそこ女にモテるタイプで、鼻息を荒くするようなことはない。 わざわざデリなど頼むのは、風俗はお金を払って楽しむモノと 割り切っているので、遊びに来る感じ。 清潔感も社交性もあり、おそらくはNG登録されていることなどない、 根本的に前者とは違う人種。 AVは男視点の作り物だときっちり理解してるので、AV男優の真似事など決してしない。 自分勝手なところもなく、逆に嬢を気遣うことができる、分別のある大人の男性たち。 平均年齢もある程度高く、そのため女性経験や風俗経験も豊富なのか、 プレイにおいてはとにかく優しく扱ってくれるらしい。 そしてロングコースを選ぶ確率が高く、 お釣りは要らないから的なチップをくれる場合も非常に多い。 簡単に言えば、心にも金にも余裕があるって、マドカがそう例えた客層のことだ。 最初は何のことかわからなかった「遊び方がスマート」ってマドカの表現が、俺にも分かりかけてた。 あくまでも、極端に大きく2つに分けた場合、と強調しておきます。 前者にも後者にも、もちろん例外がいるし、他にも細かく分けられるはずだし。 このスレを見ている方々にも風俗利用者はたくさんいるだろうし、気を悪くしないでね。 「そういうお客さんって、そもそもの絶対数が少ないから、呼ばれたらラッキーって感じ」「うん」 「私だけに言えることじゃなくて、デリ嬢にとっては歓迎すべきお客さんって意味ね」 「はい」 「安心安全な相手っていうか、それでも警戒心を解くことはなかったけど」 「うむ」 「でもやっぱり、私はただでさえ不安な毎日過ごしてたから」 「だろうね」 「呼ばれても嫌じゃないっていうか、ちょっとホッとしちゃう相手もいたんだよね」「・・・。」 そういう客はたいていの場合、既婚者で、年齢も一回りくらいは上だったそうだ。 人生の酸いも甘いも噛み分けてきたところが、マドカにとっては魅力的に思えたのかもしれない。 若くても30代半ば。70代後半~80代前半っていう猛者もいたそうだ。 「私おじいちゃんのお客さん大好きで、介護みたいで楽しかったwww」 「介護ってwww」 「でもすごくスケベなんだよw」 「え?チンポ勃つの?」 「勃つ勃つw 孫みてぇだ~とか言いつつ、孫相手にハッスルしてたw」 「俺もそうありたいわw」 なんかマドカは本当に楽しそうに話してて、俺は相手がおじいちゃんなら不思議と許せた。 スケベだったとは言われても、きっとマドカを可愛がってくれたんじゃないかなって、そう思えた。 「ヒロシ、それでね…」 一時の和やかな雰囲気も、マドカのその一言で急に緊張が張り詰める。 「そういう雰囲気を持ったお客さんの中に、ごく稀に、その…上手な…人がいると…」 「おじいちゃん連中の中にか?www」 ここは俺が茶化してあげるべきところだなって思って、あえて冗談を言ったよ。 喉がカラカラだった。 「違うよwww おじいちゃんは違うwww」 「いや匠の技なのかとwww」 「おじいちゃん無理させたら死んじゃうwww」 「ちょwww」 爆笑したあとに、ちょっとだけ間を置いて、俺はこう聞いた。 「で、マドカを気持ちよくイカせちゃうのは、30代~40代くらいの人だったのか?」 今更だけど、マドカにそう言わせるのは酷なような気がして、俺のほうから言ってみた。 「え…。うん…まぁそのくらいの人たちだったかなぁ…」 マドカは一瞬だけ固まったけど、すぐにそう答えた。 心なしか安堵の表情が見て取れた。 マドカを気遣ったつもりで、強気に「気持ちよくイカせちゃう」なんて表現を 使った俺だったけど、マドカはそれを否定せずにあっさり認めてしまった…。 「マドカ…、バカ正直に答えすぎ… (´;ω;`)」 「あわわ、ご、ごめん。嘘つくよりは正直なほうがいいのかと思って…ごめん」 まぁいい。わかってはいたことだから。 それにマドカが仮に「イったけど全然気持ちよくなかった」って言ってくれたとしても、、 おそらく俺はこの先もずっと 「本当は気持ちよかった瞬間があったんだろう?」って思い続ける。 マドカに対してそんな疑念を抱きつつこの先も一緒に過ごすくらいなら、 いっそのことこの場で洗いざらい白状してもらったほうがいいし、 まさに今がそういう場として設けられた機会なのだ。 それでもショックは隠しきれず、ちょっとヤケクソ気味で聞いてみる。 「イクぅぅぅ、とか言ったりしたの?」 「言うわけ無いでしょ、勘違いしないで」 マドカは不機嫌そうに俺を睨んだあと、落ち着かない様子でソワソワしてた。 「イったフリでも、本当にイったとしても、それをワザワザお客さんに伝えたりしないよ」「うん」 「そりゃまぁ、相手からイった?って聞かれたときはさ」 「「うん、聞かれたときは?」 「待ってました!とばかりに、ハイって答えてたよ」 「そうなんだ…」 なんだよそれ、どんだけ従順な女を演じてたんだよ、 って思ってしまった俺はやはり鈍感だった。 「だってそうでしょう、ヒロシはまだわかってないな」 「え?」 「イったってことにしとけば、たいていの場合そこで終わりになるんだってば」 「そうだった…」 「でも本当にイったときは、あとでそれを思い出すと自分を許せなくなるんだ」 「うん…」 マドカが残していた『試練だ…』ってコメントが脳裏をよぎる。 俺はこれ以上は可哀想な気がしてきて、違う話題に進もうかとも思ったけど、 その違う話題ってのは、今度は俺が可哀想になっちゃう話なので、迷いが生じる。 しかし、俺の迷いをよそに、マドカはまだ言い足りないことがあるのか、話を続けた。 「誰が相手でも、苦痛は苦痛なんだってば!!フリでも、本当だとしても!」 「うん…」 「私さっきも心を閉ざしてたって言ったでしょう!!!」 「う、うん。言ってた…ね…」 思いのほかヒートアップしてきたマドカを落ち着かせる意味も兼ねて、 俺はもう一度勝負にでる。 「『お気に』って言葉あるじゃん、俺も少しだけ風俗の掲示板とか見てみたんだけど」 「あーそういう言葉あるねぇ。お気に入りのデリ嬢って意味でしょう?ん?掲示板って?」 俺はマドカがデリ嬢だった頃の情報を アレコレ調べてしまったということは伏せていたので、 この時点ではそれはテキトーに誤魔化した。ちょっとドギマギした。 後日、きちんと話したら、マドカも自分のスレッドを閲覧したことがあったらしいけど。 「女の子に対して使われる言葉だったみたいだったけど」 「うん」 「俺が聞きたいのは、マドカがNG登録をしないままに」 「うんうん」 「リピートされてもいいかなって思った客たちは、マドカにとって」 「あー」 「お気に入りのお客さんたちだったってことなの?」 「それは違うかな」 「マドカ落ち着いて。今は苦痛だったとか、心を閉ざしたって話じゃないよね?」 「え?なんの話ししてたんだっけ?」 「気持ちよくイカせられた話」 「あ、そか。そうだった。そういう話をしてたんだったね。取り乱しました…」 俺は勝負に負けた。 またマドカは気持ちよくイカせられちゃったことに関して否定しなかった…。 打ちのめされつつも、ノってきた。 「大丈夫か?」 「私は大丈夫、ヒロシは?」 「マドカがまだ話せるなら、俺は聞きたいけど」 「だいじょうぶ。いいよ、質問は?」 俺はちょっと目先を変えて、プレイ以外のことに焦点を当てた。 本当に知りたい話を聞く前に、どうしても知っておきたいことがある。 要するに、これは嫉妬丸出しの質問だった。 俺は、心にも金にも余裕があるっていう客たちに、心から嫉妬してた。 客としてではなく、人間としても、 羨望の眼差しで見てしまっていたのかもしれないのだ。 とにかくなんか気に食わんなかった。 マドカは、何回も求めてくる客の方が仕事と割り切れば扱いやすいって言ってた。 それなのに、NGにしちゃう場合も多かったと俺に教えている。 その一方で、ロングコースの客からは、何回もリピートされたりして、 仲良くイイ関係を築いていたかのような、そんな印象を俺に与えていたんだ。 「ソイツらってさ、自分でマドカを選んできてるように見えて」 「うん」 「実は、マドカにも選ばれてるよね?」 「え?それどういう意味?」 「だってNGにされないで、生き残るわけでしょ?」 「そうか」 「ノートで管理してた中で、マドカがこの人はOKって選別したわけじゃん」 「まぁね」 俺の嫉妬を察したであろうマドカは、 また先生みたいな感じになって優しい口調になる。 「あのね、遊び方がスマートってのは、決して褒め言葉ではないんだぞ?」 「え?そうなの?」 遊び方がスマートじゃないほうの客、つまりは短時間コースで何回でも イキたがるような客は、忙しいし、疲れるし、もちろん仕事の量は多くなる。 でも、それでも、マドカにとっては精神的にそれほどキツくはなくなっていくらしい。 それは、事務的に淡々とプレイをこなすほうが、心を閉ざすには都合が良いという意味。 そして、気持ちよかった、っていうただその1点のみでリピートされるのであれば、 次回も同じことを繰り返せばいいだけなので、そう言う意味でも扱いやすいと。 それに対して、心と金に余裕がある客の場合はロングの割に仕事の量は少なくて済む。 呼ばれて安心安全ってのは、疲れないからラク、休憩時間が長いからラク、 という意味合いが強かったらしい。 ただし、精神的にはどうかというと。 頼んだコースが長いのに、プレイ時間が短い客が相手だと、 それはそれで緊張感を伴うらしく、 何もしないでただ話している時間が精神的に疲労する時間でもあったという。 それは、デリ嬢としてのマドカではなく、マドカをひとりの人間として評価されたり、 試されているように思える時間で、とても怖かったと彼女は真剣に言っていた。 「どっちもどっちだよね。お金を稼ぐため、私にはどっちも必要だったし」 「そっかぁ」 でも最終的に、金払いが良い客の方が生き残るのは間違いない。 でもそれは、マドカが選んだ、というよりも、自然淘汰に近い形だったのだろう。 「というわけで、心にもお金にも余裕があるお客さんが」 「うん」 「私のお気に入りだったなんて、そんなことはないわけです」 「はい」 「ヒロシが嫉妬しちゃうような観点で選んでいたわけではありませーん」 そういう言葉を待っていた。 マドカは俺の嫉妬を見抜いた上で、俺を一番納得安心させる言葉を使ってくれた。 金にも心にも余裕があるっていうソイツらに、 俺は嫉妬とともに劣等感を抱いていたのかもしれない。 人生でもウマいこと成功しているかのような、そういう勝手な想像で、 ワザワザ敵を大きくしてしまってた。。 ソイツらにマドカの心も体も奪われてしまったって、ガキみたいに拗ねてる俺がいたんだ。 つまり、「女の扱いが上手い」とマドカに言わしめたソイツらに、 口説き落とされるような形でマドカは体を許してしまったんじゃないかって、 俺はそういう観点で心配してた。 でもどうやらそれは違ってた。 これでようやく本当に知りたいことに踏み込める。 「でも、痛くしたり乱暴にしたりしない人たちっていう意味では」 「うん」 「余裕を持って遊びに来てくれるお客さんが好きでした」 「そうか」 「好きっていう言葉を使うとおかしいけど」 「うんまぁね」 おかしいと思うならそんな表現使わないでよ、って悲しくなる。 と、同時に、もうひとつ気になった表現があったことを思い出す。 「ちょっとホッとしちゃう相手って?どっちのお客さん?」 「それはおじいちゃんでしょwww」 「おじいちゃんだったのかよwww」 もう出番はないと思ってたおじいちゃんの思わぬ再登場で、またちょっとだけ和んだ。 悩みの種が解決した俺は、いよいよノリにノってきた。 寝取られM属性の本領発揮である。 「お、お茶をくだせぇ…w」 「は、はいw」 一旦冷蔵庫に戻しておいたペットボトルをマドカが取りに行く。 テーブルの上には開きっぱなしのノート。 マドカは油断してるのか、それとも俺を凹ませてしまった事でそれどころではないのか、 「ノートは勝手に見ちゃダメ」とかそんな警告もないままにその場を去った。 勝手に盗み見る気はなかったけど、自然と目に入ってきた『↑』や『↓』の記号が、 さっきまでよりも全然気にならなくなっていた。 それくらいシックスナインのダメージが大きいということだ。 それに俺もちょっとノートの存在を忘れかけてた。 掲示板よりも、ノートよりも、マドカの口から直接語られるほうが威力は絶大で、 俺に与えるダメージも、そして興奮も大きくて、もうヘトヘトだった。気力を振り絞る。 マドカが戻ってくる。 「なんか、俺たちノートそっちのけで喋ってたな…」 「あら、ほんとだ」 空っぽになった2つのコップにお茶を注ぎながら、清ました顔でマドカが言う。 「もう燃やしちゃう?」 「ダメ」 即答で却下した俺に、マドカがチッと舌打ちで応戦した。 おそらく早く燃やしてしまいたいとは思ってて、でもそれを俺が許さないこともわかってる。 テーブルの片隅にタバコとセットで置いてあったライターをカチカチさせながら、 「燃やしちゃうぞー?w」ってマドカがまた笑う。 俺が嫌がるとわかってて発したその脅しの言葉は、すぐに冗談だとわかるものであり、、 それはマドカにまだ余裕があることを意味してるような気がした。 でも俺にもう余裕はない。 さっき口にした「ちゃんとした説明をさせて!」って言葉にも、 どこか冷静なものを感じたし、 マドカとしてはシックスナインという行為は、まだ通過点でしかないのかもしれない。 そりゃそうだ。 密室で過ごす裸の男女がここまできたら、もう向かう先はアレしかない。 「ちゃんとした説明って?」 呆然唖然としながらも聞き逃してはいなかったその言葉の意味を話すよう、マドカに促す。 「まぁ、とりあえず飲めや」 「お、おう…」 思わず乾杯でもしてしまいそうな雰囲気があったのは、マドカの気遣いのおかげ。 でも、その気遣いを腹立たしく思ってる俺がいて、自分でも不思議だった。 「ちゃんとしてるかどうかはわかんないけど」 「うん」 「順序よく説明させて?正直に本当のことだけを言うし」 「はい」 やっぱりマドカは冷静で、それに釣られるように俺も落ち着きを取り戻…せない。 「お客さんにアレコレ…じゃなくて…、お客さんに私が舐められてる時にさ」 「うん」 ワザワザ言い直すところがバカ正直で律儀だ。 でもなんだかイジメたくなる。 「クンニねクンニ?」 「はいはいそうです、クンニされてる時ですぅ」 再びノってきた。 ようなフリをしてた。俺の気持ちは晴れていない。なんかおかしいんだ。 「俺なりに整理したい」 「うん」 「思い出すのが辛いようなことをもう1度確認するけど大丈夫か?」 って聞いたら、マドカは黙って頷いた。そのあとに俺の手を握った。 「ヒロシがイヤじゃないなら、私もイヤじゃないから」 そう言って彼女は俺の手を口元に持っていって、親指の根元あたりに噛み付いた。 数秒間、そんなワケのわからない行動をしたあと、マドカはハッて我に返ってた。 俺にもよくわからなかったけど、それが愛情表現であることは伝わってきた。 俺は心を鬼にし、再びマドカの過去へと、思いを巡らせるのだった。 「誰が相手でも苦痛は苦痛だった?」 「うん」 「ハッキリとはわからないけど、濡れたかも?」 「かも…」 「頭では拒絶してるのに、相手によっては、本当にイクこともあったと?」 「はい」 「イクーなんて言ったりしたことは?」 「そんなこと言うもんか」 「じゃ、どんな感じでイったの?」 「コッソリとイきました…静かに…」 顔を赤らめてそう言ったマドカは、 メチャクチャ可愛くて今すぐにでも抱きしめたかった。 でも、今はマドカ本人のその口から、マドカの言葉で、 その時何があったのかを語らせたかった。 さっきまでヒートアップしてたマドカもだいぶ落ち着いてきたので、 そうしても大丈夫そうだなって思った。 それに俺が質問を続けると尋問みたいな雰囲気になって嫌だったので、 トークの主導権をマドカに譲った。 「お客さんにアレコレされてる時は、本当に心は閉ざしてて」 「うん」 「それでも心のどこかで、この人ヤバいなぁって思う時があって」 「ヤバいってのは?」 「まぁ、上手いってことだよね、結局は」 「それも含めて女の扱い方が全般的に、だろ?」 俺はとても冷静だった。 「うん。とても手馴れてる感じ。それはそれでイヤだった」 「うん」 そしてマドカもとても冷静だった気がする。 「そういう時ってさ…」 「あ、ちょっと待ったマドカ…」 客に「アレコレ」されてる時っていう表現が俺はなんだか気に食わなくて。 知りたいようで知りたくないような事、ってのはまさにその「アレコレ」の部分。 マドカがそういう部分を隠さずにハッキリ言えば、俺は凹んでしまう。 だけど、うやむやにオブラートに包んだ表現をされると、俺はムカつくのだ。 これから先は、マドカにとっては、一番知られたくない内容が含まれてくるはず。 でもそれは同時に、さっさと話し終えてしまったほうが楽になれるのかもしれないとも思う。 じゃ俺は?俺にとってはどうだ? さっさと聞き終えてしまったほうが楽なのか? いやそれは違う。 聞く前、聞いてる途中、聞き終えたあと、 となるにつれて俺のテンションはガタ落ちになっていくはず。 だけど、サラッと駆け足でテンポよくマドカが話し終えてしまうのでは、納得がいかないのだ。 マドカは自分に都合の良いことばかりを言うつもりはない、 と最初に宣言してくれてたけど、 プレイ内容に関しては時々ボンヤリとした表現で誤魔化そうとしてた。 それが俺に対する気遣いだとわかってはいたのだが、俺はついつい踏み込んでしまう。 なかなかさじ加減が難しい問題だった。 だがしかし。 ボンヤリとした表現をハッキリとした表現で言い直されると、その度に俺は興奮してた。 ある意味それはちょっとしたプレイのようで、俺にとってもマドカにとっても、 言葉責めのような状態になるときもあった。 「アレコレって?ハッキリ言ってよ」 「え、それは…」 もちろんマドカは俺が質問したことには、きっちり答える覚悟はあるんだ。 「おっぱい触られたり、舐められたり…」 「それだけなわけないよね?」 マドカは俺の視線をちょっと気にしながら、今度は俺を追い込む側に回る。 「アソコもいじられたよ。舐められる時もあったし」 「ガ━━(;゜Д゜)━━ン!!」 俺は少しだけ大袈裟に驚いてみせたり、あるいは本当に凹んだり。 まどかはそんな俺を適度に気遣いながらも、ちょっとだけ焦らしたり弄んだり。 あんまりシーンとするのは嫌だったから、 お互いに明るく振舞うようにはしてたんだと思う。 「でも舐める人は少ない。ってかほとんどいない」 「そうなのか」 「私はお金払ってもらう側だし、仕事だし?」 「うん」 「当然のようにフェラでちんちん舐めないといけないけど」 「はい…」 「金を払う側であるお客さんには、選択権があるからねぇ」 「たしかに」 「ワザワザお金払ってまで舐めるようなとこでもない気もするんだけど?」 「「うーん…」 「まぁずっと舐めてる人もいたけどね」 「うわぁぁん」 俺の想像では、いつも攻める側で、エッチなことをしてあげる側だったマドカ。 大の字でただ寝ているだけの客。その客に覆い被さるようにしてマドカが仕事をするんだ。 でもそれは、デリ嬢としてのマドカ、の半分しか捉えていなかった。 俺はマドカの「生の声」を聞きながら、掲示板で得た情報を元に構築していた 「想像上のマドカ嬢」の姿に修正を加えていく。 「私、舐められるの結構好きだったかも…」 「え…」 「手で強引に痛くされるよりはマシだったって意味でねw」 「…いじわるすんなよw」 「それにさ、舐められる=クサくない、って事かなって」 「うん」 「そんな風に解釈してるとこもあってさ」 「そんなこと気にしてたんだ」 「女の子ならみんな誰でも気にしてることですぅー。べーだ」 マドカはちょっと舌を出してアッカンベーみたいな仕草で俺に悪態をつく。 「好きでもなんでもない客相手でも、そんなこと気になるもんなの?」 「相手が好きな人なら尚更気にするけど、一応、客商売ですから?」 「俺としては臭いマンコ舐めさせてやれって感じだわw」 「わははw って、え?」 マドカはそこでフッと気付いたように、不安な目で俺を見つめる。 「あれ?あ、あの、私ってクサくな…いよ…ね?え?クサい?」 「教えない」 「そっちこそいじわるしないでよぉー」 「今日いっぱい嗅ぐ」 「ちょw なにそれw いやだw まじでw」 「ってゆうかさ、マドカの体、俺今日ゴシゴシ洗いたい」 静寂が訪れた。俺が放った一言は結構重かった。 (いやクサイって意味じゃないからね 「ごめんなさい」 「いや、今更洗うのも手遅れなんだけどもwww」 「いや、そんなことないゴシゴシしてください・゜・(ノД`)・゜・」 「洗いっこしよ、洗いっこ。2人で。一緒にお風呂入って、ね?」 「うん><」 笑ってばかりではなかった。時々こうして虚しい怒りと悲しみにも襲われたよ。 でも、言いたいことは言いたかったし、 終わったこと過去のことだって割り切れない部分もあった。 これが本来の正しい姿であるような気もしたし、こうあるべきだとも思った。 今考えると、体洗わせろって、結構ヒドいこと言っちゃったかなとも思う。 でも「エッチなことをしてきたマドカ」への耐性はあったんだけど、 「エッチなことをされてきたマドカ」に対する耐性は俺にはまだ備わってなくてさ…。 それでも必死に頭の中で、デリ嬢マドカ、を再構築してた。 マドカも全裸で大の字に寝せられてて、客がジロジロその姿を見てる。 大の字だったマドカが、くの字になって、後ろから客が体を重ねて、 おっぱい揉まれたり、首筋に舌を這わせられ、ビクンってなったり。 やがてマドカは両脚を広いて、その付け根に客が顔を埋め、貪るように舐めてる。 その男がゆっくりと振り返ると、その顔は、今度こそ本当に俺じゃなかった…。 掲示板には載ってなかったデリ嬢としてのマドカのもう半分の姿を想像しながら、俺は悶々としてた。 気まずい雰囲気になりつつも。 最後まで話をする、最後まで話を聞く、ということに関しては、 大部分で俺とマドカの利害は一致してるので、とりあえずは前に進む。 「あ、ヒロシ。ちょっと訂正する」 「ん?」 「アソコ舐める人はほとんどいない、って言ったでしょ?」 「クンニ?」 「う、うんw それ私のお客さんに限って言えば、多かったかも」 「え…」 「だってしょうがないじゃん。リピーターが増えるんだもん」 「うん」 「1回そういうことした人はまたするんだもん」 「クサくないってことじゃん」 「あ。でも、それは私には分かんないからノーコメント」 「じゃ夜にでも俺が教えてあげます」 「お、お願いします…」 マドカは不満そうにしつつも、力なく承諾した。 俺はマドカとくっついたり離れたりを繰り返してはいたものの、 やっぱりコイツとはウマくやっていけるんじゃないかなって、そんな気がしてた。 「んでんで?マドカ、続き続き!」 「あいw」 俺は単純で馬鹿だから、凹んでも凹んでも続きを心待ちにしてた。 「あれ?どこまで話したっけ?」 「ん?なんだっけ」 「忘れちゃった」 「じゃ、ちょっと質問。本当にイっちゃう時は何されてたの?」 「え?あ、えっと…ク、クンニ…?」 「疑問系にすんなよ、俺に聞かれても知らねーよ」 「ぎ、疑問系にしたんじゃないよ。クンニって言うの恥ずかしかったんだよ!」 「うん…w」 俺の頭の中では、客に大股開きにされてるマドカの姿が、もはやハッキリと想像できた。 心は閉ざしているようだが、客の舌の動きに合わせて、かすかに反応してるようにも思える。 だが次の瞬間、俺の頭の中のマドカが、体勢を変えることになる。 「あー、私ね。シックスナインのときにイっちゃう時が多かったかも」 「・・・。」 _| ̄|○ シックスナイン…。 「本番」って単語の次に、俺はこの単語が苦手だった。 しかも「クンニ」って言うのを恥ずかしがったマドカなのに、 「シックスナイン」は結構ハッキリ堂々と言いやがった…。 シックスナインは、相当マズイです、これ。俺的に。 だってそうだろう?フェラやクンニって、どちらかが一方的にする行為だもの! 「自分はお金を払ってもらう側」だから 「当然のようにフェラでちんちん舐めないといけない」 「リピーターが増える」のだから「1回クンニした客はまたする」 確かにマドカの言ってたことには一理ある。 納得できるし許す。いや許すしかない。 でも、シックスナインはぁあああ、なんかぁああ、客との共同作業という感じで、 かなり凹む。 それに。俺は「客にフェラをするマドカ」を想像して、 「客にクンニされてるマドカ」ってやつも、 ついさっきようやく想像できるようになったばかりのとこだった。 その2つの想像、2人のマドカを、 いきなり組み合わせて想像しろと?同時進行させて? いや客も合わせて実質4人だこのやろう。 2+2は4なのに、2+2は2だぞ。頭大混乱。 そんなわけで、俺の頭の中でクンニされてるマドカは突然、 体勢を変えられ、四つん這いになった。 その日一番の心の乱れ。 思えば大した覚悟もなしに、何気なく質問してしまった気もする。 「本当にイっちゃう時は何されてたの?」だなんて、 聞き方もマヌケだったように思えてくる。 返ってきた答えは「されてる」時じゃなく「されながら、してあげてる」時だった。 コレはキツかった。 それは、あまりの興奮でチンポが弾け飛びそうだったって意味でも。 俺の凹み方は尋常じゃなかったらしく、マドカがとんでもなく慌ててた。 「ヒロシ、戻ってきて!お願い!これに関してはちゃんとした説明をさせて!」 肩を揺すられ、ほぼ魂が抜けかけてた俺に、マドカのその言葉が遠くから聞こえた。 いやこれは結構ダメージがデカい。 どんな説明をされても、決してそれが軽減されることは無いだろうと確信に近いものがある。 それでも俺は耳を傾けねばならない。俺にはマドカの話を聞く権利も義務もある。 だって、俺が質問したんだもの…。聞かなきゃよかった…。 それでもビンビンになってるチンポが憎たらしい。 オマエはなぜ萎えないのか…。 「さっきもちょっと言ったけど、ヤバいなぁって瞬間があるわけです」 そこまで聞いて、思わず口を挟みたくなる。 「それはあれだろ、クリを優しく舐められたりとかしてるときだろ?」 俺は偉そうに、そう言ってた。ダメだ、こんな言い方するつもりないのに…って思いながら。 俺だってそんなの知ってる! 俺こそがマドカの体のことを一番知り尽くしている男なんだ! って、そう自己主張してやりたかったんだ。 今考えると、すごく惨め。余計なチャチャを入れ、空回りしたような気がした。 なんか本当におかしくなってきた。手が震えてて、額に汗をかいていた。 「そうだね、それに関してはヒロシが一番よくわかってることだよねー」 俺の空回りは、それでも俺の意図をマドカが見事に汲み取ってくれたことで、 それほど醜態を晒さずに済んだようにも思えた。 マドカはまるで赤ん坊をあやす母親であるかのように優しく微笑んでくれてる。 でも、マドカに優しくされても、心のモヤモヤが晴れない。 「デリ始めた当初はさ、私がイカせてあげればいいもんだ、って思ってたの」 「うんさっきも聞いた」 「でも実際はそうじゃなくて、私もそういう扱いを受けるじゃん?」 「そういう扱い?」 「あ。ごめん。私もお客さんにエッチなことをいっぱいされるじゃん?に訂正」 「許可します」 ここまでのやりとりは、およそ2時間弱くらいかな。 そのあいだに、マドカは、どういう言葉や表現を使えば、 俺が納得、安心、そして興奮してしまうのかを巧みに理解したようで、 話すテンポもテンションもちょっとずつ上がっていく。 「私はお金も払ってもらうし、仕事だから、頑張ってイかせてた」 「うん」 「でも自分がイっちゃうのは絶対ありえない!って思ってたの」 「なぜ?」 「だって相手は見ず知らずの人だし。さっき会ったばかりだし」 「は?」 「え?」 「つか、それは客側からマドカを見ても同じことだろ?」 自分でも、なんか言葉にトゲがあるなって、気付いてた。 「そ、それはそうだけど」 「初対面でも、現金を介して、そういう役割を果たすんだろ?」 「う、うん…」 「そういう仕事だったんだろうが」 ちょっとだけキレ始めた俺に、マドカは違和感を感じ、怯えてたように思う。 そして、俺はさっきから自分がなんでイライラしてるのか、その理由に気付き始めた。 「それにさ、オマエ、俺と初めて会ったときだって、そうなったじゃねぇかよ…」 「はぁあああああ!?『それ』と『これ』とを一緒にしないでよ!!!アッタマきた!!!」 テンポ、テンションだけではなく、マドカの怒りのボルテージも急上昇。 冒頭で書いたとおり、俺がマドカと初めてヤったとき、彼女は処女だった。 でも、その行為中に俺はマドカを何度かイカせたりもして、 マドカは初めて味わうその感覚を 「こんなに気持ちいいのかぁ、ビックリだなぁ」って子供っぽい表現で教えてくれた。 そして、俺とマドカがそういう関係に至ったのは、 サークルの集まりで初めて出会ってからわずか数時間後のことだった。 初対面ですぐ、って意味ではデリと大差ないのだ。 俺はそこに気付いたときに絶望的な気持ちになった。 マドカは、金を稼ぐために色んな事をしたし、 金を払った男たちも色んな事をマドカにしたんだろう。 俺は金こそ払わないけど、金を払った客たちと同じようなことを、 マドカにするしマドカからしてもらえる。 初めて会った時もすぐヤった。 数年後に再会した時も、それほど時間はかからずに、セックスした。 面識があり、かつてヤったことがあるから、その延長戦みたいなもんで、 俺とマドカはまたそういう関係になっただけのような気もする。 それって、デリで言うところのリピーターみたいだな、と俺は思ってしまった。 そう考えると、俺と客の明確な差ってなんだろうって、自信がなくなってきてた。 怒りに震えるマドカ。その目はちょっと潤んでいるようにも見えた。 「マドカ?」 「もういい。帰って。やっぱりダメだ。一緒にはいられない」 書き忘れてたけど、マドカの部屋で過ごしてた。 テーブルの上のタバコは俺のもの。 タバコに火を灯す。それは、俺は帰ったりしないという意思表示。 「一応、聞くけど。『それ』と『これ』とを一緒にしないで』の言葉の意味」 「うるさい」 「『それ』ってなに?っていうか『誰』?」 「…ヒロシだよ」 「んじゃ『これ』ていうのは?」 「デリのお客さん達…」 「どうちがうの?」 「違うに決まってるじゃん。うっさいな、もういいってば」 「ちゃんと答えて」 「ヒロシとは好きだったからそうなったに決まってるでしょぉおおおぉ」 俺は泣いた。 好きだったからそうなった、というその一言で。 俺はその他大勢の客とは違うんだぁあああ、って大声で叫びたかった。 それまで怒ってたマドカも急に泣いた。 2人とも少しずつ少しずつ溜め込んでいたダメージが一気に溢れた。 「ありがと。そう言って欲しかったんだ俺」 「…え?」 「いや、俺と客との決定的な差を、見い出したかったもので」 「…は?」 「それにマドカの本音を聞きたかったし。ワザとあんなこと言ったゴメン」 「・・・。」 マドカは、キョトンとしてて。 その表情からは、憑き物が取れた、的なモノが読み取れた。 俺は淡々と語るマドカが機械的でちょっと怖いときがあって、 それは覚悟を決めた大人の女性の姿だったのかもしれないけど、それが逆に不満だった。 マドカが俺のことを好きで、一緒にいたいと思ってくれている事は伝わってきてたけど、 直接マドカの口からは「好きだからずっと一緒にいたい」とは絶対に言ってくれなかった。 「選んで」とか「判断材料にして」とか、そして時には 「色々知っちゃったらヒロシは私とエッチしたくなくなる」みたいな事まで言うし。 そうじゃなくて、もっと感情を剥き出しにして欲しかったんだ。 そんなに構えずに「これからも一緒にいたい」って言って欲しかったし、 「選んで」なんて言い回しを使わず、むしろ「私を捨てないで」って 縋り付いてくれたほうが、どんなに気が楽だったことか。 まぁ、当時の俺が、マドカにとって それだけ頼りない男だったってことなんだろうけど(´・ω・`) 「なんで、好き、とかそういう感情だしてくれないの?」 「だって私デリしてたし」 「元デリ嬢は人を好きになっちゃダメなのか?」 「色々嫌な思いさせるし」 「過去は過去だろ。マドカだって過去を恥じる気はないって言ってただろ」 「嘘だもん」 「嘘かよ、じゃ言わないで秘密にしてればよかったじゃん」 「それもイヤなんだもん」 マドカも随分と複雑な感情を抱えている。 話したくないけど、話したい。そして受け入れてもらいたい。 でも受け入れてくれるわけがない。 永遠とそのループでマドカは雁字搦めになっているような気がした。 「あのさ、マドカ」 「…はい」 マドカは涙と鼻水でクシャクシャになってた。 「元デリ嬢ってことに関して、ずいぶん負い目を感じてるようだけど」 「うん」 「そんなこと言ったら、その他大勢の元デリ嬢に対して失礼だ」 「・・・。」 「と、俺は思う。そういう仕事をしていた、または今もしている女性への偏見だし?」「・・・。」 「マドカ自身もそういう偏見を持って彼女たちを見ていることになる」 「・・・。」 「そして自分自身をも縛ってるよね、たぶん。いや、間違いなく」 「うん…」 何言ってるのか自分でもよくわかんなかったけど、デリ嬢にも、 元デリ嬢って肩書きにも俺は偏見など持っていなかったし、 体張って生きていく強さみたいなものを感じてた。 「自分とその家族の為にやれる事を無我夢中でやった」って 真剣に語ったマドカが俺はとてもカッコイイと思ってたし、 そういうとこに惹かれたことも伝えた。 「それに、俺さ」 「うん」 「なんか受け入れる自信、あるんだよね」 「変態だから?」 「ちょw その言い方やだw まぁ、そうなのかもしれないけど」 「うんw」 「うまく言えないけど、マドカの過去を受け入れるのに、最適の人材というか」 「人材w」 「ちょっと興奮しちゃったりとか…病気かな?」 「末期だよねw」 マドカの口数も少しづつ増えだして、 俺をちょっとからかってくれるのが心地よい。 「なんか俺のそういうとこも、マドカに受け入れて欲しいというか…」 「とっくに受け入れてます。ってゆうか、ヒロシのそういうとこにちょっと期待してたり…」 こうして、俺の寝取られM属性は、ちょっぴりマドカの公認となる。 「なんか、悔しいんですけど。うまく丸め込まれたみたいで」 怒りとショックで感情を爆発させたマドカは、 冷静さを取り戻し、顔つきもちょっと変わった。 丸め込んだつもりも、機転を利かせたつもりもなかったけど、事態は良い方向で収束した。 「ごめんな。怒っちゃったか?」 「怒ってはいない。逆にスッキリした。ありがとう」 俺が伝えたかったことを、マドカにもう一度話して、 「ありのままのマドカ、素直なマドカを見せてくれていいから」 って、最後に付け足し、 「わかった。私も素直に言いたいことは言うね。自分の気持ち」 マドカはそう約束してくれた。 「それに言いたくないことは言わなくてもいいよ、本当に」 「いや、それはダメだ。ケジメとして全部話す。その上で言いたいことも言う」 「わかった。んじゃそういうことで、続き続き!」 「スケベ」 「はいぃ?」 「言いたいことは言うから」 素直に言いたいことは言うと約束して、即、マドカが言ったのは「スケベ」だった。 「あ、それからさ。ヒロシ、しばらく正座してて」 「え?」 「私を泣かせた罰として正座。」 「え?俺も泣いたし」 「早くして」 「は、はい…」 俺は正座で座り直し、お茶を一口くちにした。 そこで、2時間近く勃起してたチンポが、小さくなっていることに気付く。 なんだかやけにお茶が美味かった。 マドカの根っこの部分を引き出したくて、手荒な賭けに出た。 ギリギリのところで賭けには勝った気がするけど、帰って、って言われたときは超焦った。 おそらくそのとき、チンポが縮んだのかもなって、思った。 これでいいんだ。正座させられたけど。 今からどんな辛いモノを目にしようとも、俺はマドカとずっと一緒にいようと心に決めた。 それに今思い出すと、正座させられてマドカの過去を聞かせられるなんて、 なんという素晴らしい御褒美だったのか…、とも思ったり思わなかったり。 そしてマドカはちょっとだけ饒舌になる。ノってきたのかもしれない。 俺を「変態」呼ばわりしたり「スケベ」と言ったり「正座させた」り、 そんなことを考えつくのも、マドカがノってきた証拠なんだろうと思う。 「んで、ヒロシくん。どっから話せばいいのかな?(キリリ」 なんで急に「君」付けになりやがった…と思いつつ、 メガネをキリリと持ち上げるその姿に萌えた。 「シ、シックスナインのとこからです、マドカさん」 俺も「さん」付けで返して、マドカが笑う。シックスナインって単語も慌てずに言えた。 余談ですが。マドカは普段はコンタクトで、休日はメガネっ娘だった。 デリ時代は、あまり見えすぎると緊張しすぎてしまう、って理由から、 メガネはバッグに入れて持ち歩き、コンタクトなしで出勤していたそうな。 ロングコースのお客さんとまったりとDVDを見ることになって、メガネを装着したら、 メガネかけたままフェラしてとか、そういうリクエストをされたこともあったらしい。 こんなこともあった、そういえばあんなこともあった、って。 マドカはこの日に限らず、色々と思い出したことがあればその都度、 教えてくれる感じだった。 俺にとっちゃ、全く迷惑な話だったぜ…。  (´Д`)ハァハァ… 日が落ち始め、部屋に差し込んできた西日が俺たちをマッタリとした雰囲気に戻してくれた。 「順序よく話すね」 「うん」 「私さ、お客さんに舐められたりしてる時とかって」 「うん」 「体はビクンってなったりはするけど、心は閉ざしてて」 「うん」 「でも頭のどこかでは結構冷静で、ぼ~っと天井を見上げながら」 「うん…?」 「残り時間のこととか考えてたの」 「ってゆうか天井?シックスナイン中なのに天井?」 「あw まだそこまでいってない。ちょっと待って、順序よく話すからw」 「あいw」 さきほど急に四つん這いになってしまった俺の頭の中のマドカ嬢が、 再び大の字に寝せられて、大きく脚を開いた。 ただ、目を閉じているもんだと思ってたマドカが、目を開けてたことは意外だった。 俺の妄想の中での視点が、ふっとマドカの主観視点での映像に切り替わり、 そこにはマドカのアソコを舐めてる男の顔がアップで映し出され、 とても嫌な気持ちになる。 マドカが天井を見上げてしまってた理由が、ちょっとわかった気がした。 「でね、やっぱり自分でそういう感覚わかるじゃん?」 「ん?」 「あーこのままだと私イっちゃうかもしれないな、って」 「う、うん…」 「もちろんそんなの望んでないし、無理無理って思って」 「うん」 「だから最初は、そういう感覚になったときは」 「ときは?」 「役割を交代したんだ。要するに強引にフェラにもっていった…w」 「え…w」 マドカはテヘペロな感じで笑ってたたけど、 俺は自ら積極的にフェラをしようとするマドカを想像してしまい、ドキっとしてた。 お客さんを押し倒し?チンポを奪うようにして?このマドカが…? その姿は、意外に似合ってるような気がして、欝だった。 体デカいしね…w 「そろそろ私が頑張ります!とか」 「う、うん…」 「タッチ交代です~、とか言いながら」 「なんか簡単に想像できる…」 「どういう意味?」「いやなんでもないです」 「そうやって最初はうまいことピンチを凌いでたw」 「ピンチだったのかw」 「そりゃそうだよ。何回でも言うけど、私は望んでなかったし」 「うん」 「知らない人にイカせられちゃうなんて、すごーくイヤだったもん」 「はい」 俺はイカせたけどね。 ちょっと場違いな優越感を得て、俺は自己満足に浸った。 「でも、結局はイっちゃうんだけどね。ショックだった」 「あううう…」 俺の優越感はあっという間に壊れ落ちてしまうのだけど、それでも 「結局はイっちゃう」っていうマドカの言葉に、何か違う種類の高揚感を覚えた。 「それでね本当にイっちゃったときは、もうタッチ交代できない状態だったの…」 無理矢理押さえつけられてクンニされてるマドカを想像してた。 でも違ってた。 「そのときはもうシックスナインだったから。意味わかる?」「わ、わ、わかっちゃいました…」 それは、体勢を入れ替えたり、攻守を切り替えたりすることが、 不可能であることを意味してた。 まさに「されながら、してあげてる」状況。 マドカ絶体絶命のピンチである。 つまり、マドカが得意としてたと思われる、 「自分からフェラへと切り替えて、イカせられちゃうピンチから脱する」 って方法が通用しないのだ。 シックスナイン恐るべし…。 もうやだ…w 「私、逃げられなかった…」 「そうか…」 おそらくマドカは本当に逃げられなかったし、そして逃げなかったのだ、と思う。 自分はデリ嬢で、それが仕事で、金を稼ぐためなんだって、覚悟した瞬間があったのだと、俺は思った。 それを確かめたかったわけじゃないけど、次に俺がした質問に対するマドカの答えが、 俺の予想があながちハズレてはいなかったことを証明するんだ。 「ってかさ。シックスナインそれ自体を、拒むとか?しなかったの?」 「しない。お店がホームページに掲げてる『基本プレー』ってのは…」 「うん」 「私は…一生懸命頑張った。だって仕事だもん。お金も払ってもらったし」 「そっか…」 マドカの、根は真面目、なところが仇となる形で、 手を抜いたりサボったりは出来なかったし、しなかったのだろう。 掲示板の「プレイもしっかりしてる」という評価はこういうところを意味していたのだ。 俺としては複雑だったなぁ。 掲示板の他のスレッドでは、いわゆる「地雷嬢」が基本プレーも ロクに出来ないし、する気もない、と連日のように叩かれてた。 客の書き込んだ内容を見る限りでは、 仕事をナメてるとしか言い様がない嬢もたくさんいたんだ。 そんな地雷嬢でも、時間あたりに稼ぐ単価がマドカと変わらないのかと思うと、悔しかった。 まぁ地雷嬢も自然淘汰されていく運命で、結果的に、稼げてなかっただろうけど。 で、そんな地雷嬢たちとは対極に位置していた元・人気デリ嬢は、 さっき泣いた時に鼻をかみすぎたせいか、鼻のアタマを真っ赤にさせて、のほほんとお茶を飲んでた。 学生の頃にゴールデンレトリバー似だとか、褒められてんだか貶されてるんだか よくわからない評価をされてたような、こんなトボけた顔した奴が、大人気だったとは…。 「ヒロシ聞いてるの?」 「あ、はい」 犬顔の女がなにか話してたっぽい。俺もお茶を飲んで続きを待つ。 「お客さんとカラダの向きが反対でしょう?あれって」 「うん」 俺の頭の中のマドカ嬢がまた四つん這いになる。 本物のマドカが放った「カラダの向きが反対」って言葉に触発されたのか そのシーンにはマドカとは逆向きで待ち構える男が現れた。 その2人はまるでパズルの欠片みたいにピッタリ噛み合い、 そしてシックスナインが完成した。 「されながら、してあげてる」マドカを、初めて上手に想像できてしまった。 しかも、その部屋の片隅には、その様子をコッソリ覗いている俺がいるような気がした。 「お互い顔がよく見えないでしょう?逆向きだし」 「まぁね、顔の位置遠いしね」 「んで、これならイってもお客さんに気付かれないかなって、そう思った私は…」 「うん…」 「本当にイっちゃいました…馬鹿でごめんなさい」 「・・・。」 素早い動作で正座になったマドカが、ペコリと頭を下げた。 間髪いれずに謝罪したその仕草は、なんだかコミカルで、とても可愛らしかった。 どこの誰なのかもわからない男とシックスナイン中にイっちゃったって過去を告白されて、 それでもマドカを愛しいと感じてしまった俺は、やっぱり末期症状なのかもしれない。 「とりあえず、マドカもしばらく正座な」 「は、はい…」 そう言ってやることが、その時の俺の精一杯の愛情表現だったように思う。

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コメント

  1. ポチ君 より:

    いやあ、風俗で本番やってたら普通は付き合えないでしょう。

  2. 読者 より:

    ありがとうございます
    長くつきあっている女性が,昔、いろいろな事情で売春をしていたことがあるのですが、その辛さが、やっとわかった気がしました

  3. ふぅ より:

    あなたが居れば大丈夫

    良き未来を

  4. ポチ君 より:

    長かった。。やっと終わったわ。
    まあ、ソープ嬢を嫁さんにした作家もおるくらいやからねえ。

  5. 匿名 より:

    これの続きあったよな
    探しきらんかったけど

  6. 匿名 より:

    中途半端なところで終わったな。続きないの?

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