セフレと頼れるお姉さんとの関係を断ち切れずに…純粋な本命彼女との恋の行方 超長編

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彼女と再会したのは入学式直後の事でした。

彼女【エリカ】とは幼稚園から小学3年生までは同じクラスだったが、エリカは彼女の父親の転勤の都合でアメリカに転校していった。

高校は県内で唯一の英語科で、半分近くが帰国子女のクラス。

しかも40人中4人が男というある意味異様と言える配分でした。

本当はエリカと気さくに話をしたかったけど、男は四人しかいないので女の子の視線には注意する必要があった。

3年間クラス替えがないという事は人間関係に失敗すると学校を辞める事を意味していたからでした。

俺のスタンスは用事がある時以外には女の子に話しかけない、出来るだけ男子で固まるというものでした。

それが正解だと気付いたのは夏休み前の事。

四人の中の一人に彼女が出来、最初は良かったがすぐに破局。

以降は女子の大半がそいつを犯罪者扱い…いわゆるイジメをしたからです。

そいつは2学期から登校しなくなりました。

俺もモテない訳でなく、それなりにラブレターを貰ったり告られたりしたが、そいつと同じ轍を踏むのは嫌だったし…何よりエリカが気になって仕方なかった。

俺の初キスは中学時代に同じ塾に通っていた女の子で、初体験もその女の子が相手だった。

高校に入ってからはセフレのような関係で、週に1回から2回の割合でセックスしていたし、それは卒業まで続いた。

夏休みの間の事、俺は偶然にもエリカと本屋であった。

「久しぶり」俺はバイク雑誌を片手にエリカに近付いた。

彼女は学校ではどのグループにも属していなかったが、疎まれているのとは違い大人の落着きがあった。

「何読んでるの?」俺はエリカの持っている本を覗いた。

その本は初級中学生用の漢字の本だった。

「漢字苦手だから。」エリカは笑顔で答えた。

小学3年以来の笑顔のような気がした。

「しょうがないよ、6年近くもアメリカにいたんだし」
「そうよね。でも古典は最低。現代文の文法が怪しいのに体言や用言なんてね」

「俺は最初から諦めてるよ。古典なんてこれから先、必要ないしね。単位は現文と合わせるから大丈夫だし」

「シンジ君はいいわよ、現代文で点が取れるもの。」
「使えるかどうかわからないけど、中学ん時の問題集をあげようか?まだ処分してないし」

彼女は喜びそのまま問題集を取りに来る事になった。

本屋から俺の家までは自転車で5分、彼女は歩きだったので後ろに乗せた。

「何がいる?」俺は二階から声をかけた。

「国語と社会は欲しいな。」彼女の声は俺に届かない。

同じ質問を繰返す俺。

すると母がエリカを制止したらしく「全部持って降りておいで!」

俺は暫くして段ボールに詰まった参考書や問題集を抱えておりた。

「コレが使ってたやつだからレベルは低いだろうけど、殆どサラだから全部持っていってくれていいわよ」

俺は紙袋を用意し、教科書を詰め始めた。全部で3袋になったが、袋を自転車のカゴとハンドルに引掛けてエリカを送っていく事にした。

彼女の家は俺の家から、そう遠くはなかったが少し遠回りをした。

エリカと少しでも一緒にいたかった。

食事を終えると俺はすぐに風呂に入った。

上でも入れるが、遅くまで風呂に入らないと母がうるさかった。

「おやすみ」

時計はまだ9時過ぎだった。俺は二階に上がると階段のドアの鍵を締め、部屋に入った。

10時前にはセフレが来る筈だった。そしてセフレは10時にもう一つの玄関の呼鈴を鳴らした。

俺はセフレを部屋に入れるとキツク抱締めた。

「シンジ…苦しいよ、ねぇシンちゃん…」

俺はセフレの言葉を飲込むかのようにキスをした。

そしてベッドに押倒すとセフレのタンクトップをたくしあげ、乱暴にブラを外した。

「アン、…シンジ。ちょ、どうしたの?変よ…」

俺は乳首にむしゃぶりつくと、あいた手でジーンズを脱がし始めた。

「ダメ、クラブが終わってシャワーを浴びてないから…シャワーに行かして。ね、シンちゃん…お願い」

俺は無言でセフレのジーンズを脱がし、乱暴にパンティの中に指をすべらせた。

セフレのマンコはぐっしょり濡れていた。

俺は嫌がるセフレを無視して足を開かせ、パンティのクロッチ部分を捲りむしゃぶりついた。

汗の匂いとかすかなアンモニア臭が混じってるが、愛液の匂いは強烈だった。

指を腟にめり込ませかき混ぜりるようにし、舌はクリを執拗に転がした。

「シン…ちゃんヒドい…よ…」セフレは喘ぎと共に呟いた。

俺はセフレの声を無視し…無言でチンポを取出すと無理やりに挿入した。

初めての生だった。セフレも気付いていたと思うが、咎める事はなかった。

ただ、俺の名前を時々呼びながら、セフレは快楽を貪っていた。

セフレを抱いてはいたが、俺の頭の中はエリカで一杯だった。

もちろん、セフレには失礼な話だが俺はエリカに対する気持ちをセフレにブツケルかのように腰を動かした。 イク瞬間、俺はかろうじて理性を取戻して腹の上に出した。

激しい息遣いだけが交錯する。

暫くの時間が過ぎたあと、セフレが口を開いた。

「今日のシンちゃんは激しいよ。でも…もう少しでイキそうだったよ。」

俺は上の空でセフレの話を聞き、頭の中はエリカで一杯だった。

エリカの事を考えていると俺はまた欲情してきた。

セフレにフェラを促すと、彼女の愛液がテラテラに濡れ光っているチンポをシャブラせた。

その後はゴムを着けて2回セックスをした。

12時近くになり、セフレはよろよろと起きるとシャワーを浴びに行った。

「シンジ、帰るね…」セフレはそう言うと帰っていった。

セフレが帰った後、激しい罪悪感が俺を襲った。

今でこそセフレなどと言う言葉はあるが、当時はなかったし一応彼女であった筈。

それを一方的にオモチャのように扱ったんだから最低だった。

次の日、インターホン越しに母から起こされた俺は昨夜のままの姿だった。

とりあえずTシャツを着て、短パンを履いた俺は顔を洗って階下に降りた。

朝食を済ませ、居間に行くと一人なのを確認してセフレに電話した。

セフレは昨夜は驚いたが、「たまにはスリルがあるね」って答えた。

電話を切り、上に上がると俺はエリカの事を思い出した。

エリカの事を考えると俺はすぐにチンポを触るように立たせた。

俺はエリカの事をぼんやり考えながら午前中を過ごした。

昼前になり母がインターホン越しに呼ぶので返事をすると 「鮎川さんがお菓子を持って来てくれたよ、降りておいで」

俺は慌てて着替えて下に降りた。 エリカはリビングでジュースを飲んでいた。

白いワンピースに素足の彼女は楽しそうに話していた。

俺は少しモジモジしながらエリカと向い合うように座った。

「シンジ君、昨日はありがとうね。夏休みの間に追いつかないとダメだから頑張らなきゃ」

それから暫く三人で話をした。エリカは実はアメリカで生まれたから二重国籍だって話には驚いたが、俺はずっとエリカが気になってた。 暫くして昼時になったので、母が昼飯に誘ったがエリカは遠慮した。

母も無理には勧めず、代わりにナイスな提案をした。

「良かったらシンジと勉強してくれない?この子はロクに勉強もしないでゴロゴロしているだけだから…上には使ってない部屋があるから落ち着いて勉強出来るわよ。」

エリカは喜んでくれた。

俺は母が昼飯を作っている間にエリカを自転車で送って行く事になった。

「シンジ君が同じクラスで良かった。」

「あぁ、俺もだよ。クラスって何か変な雰囲気だろ?だから鮎川が居てくれてラッキーだよ」

ものの5分で彼女の家についた。

3時に約束をしたが、迎えに行こうかと提案すると「用事を済ませてから行くから大丈夫よ」との返事だった。

俺は腰からお腹にかけてのエリカの腕の感触が消えないように自転車を漕いで帰宅した。

家に戻ると母の作った焼飯を急いでかきこみ、部屋の掃除を始めた。

そこは元々使ってない部屋だから掃除機をかける程度で充分だった。暇なのでついでに自分の部屋も片付けた。

元々セフレがよく来るから部屋は整理していたので、空気を入替えて掃除機をかけただけだった。

それでも暇なので洗濯とトイレ掃除をする事にした。二階を貰った時点で自由を得た代わりに掃除と自分の服やシーツの洗濯は自分でする約束だった。

洗濯機が脱水をしている頃にエリカは訪ねてきた。

「自分で洗濯するんだ?」
「手伝うよ」

俺は適当に座ってて、と促した。

ベランダから戻るとエリカは真面目に漢字に取組んでいた。俺は少し残念に思いながらも、真面目に取組んだ。

2時間近く経ち俺が休憩を提案し、エリカが持ってきてくれたアイスをとりに下に降りた。

ちょっとして戻ってくるとエリカは難しい顔をしながら「夏休みが終わるまでに追いつかないなぁ」と呟いた。

アイスを食べながら俺は「鮎川さえ良かったら、いつでもおいでよ。俺は暇だし」って提案した。

エリカは喜んで提案を受入れてくれた。

俺達はその後7時過ぎまでお互いな教えながら勉強した。

勉強道具の一部は置いていけばいいと提案し、俺はエリカを送って行った。

帰り道、エリカが「私も自転車を買おうかな…」と呟いた。

「いつもシンジ君に送って貰うの、悪いし。自転車があればいつでもシンジ君の家に行けるし」

俺は少しだけ勇気を振り絞って「俺は鮎川を送りたいよ。」って言った。

エリカは暫くだまっていたが、着く頃に「うん、そうだね」って返事した。

俺はエリカを送り届けるとエリカのお母さんが出てきたので、挨拶をして帰った。

帰宅途中、俺は公園に立ち寄り公衆電話からセフレに電話をかけた。

帰宅すると母が喜んでいた。

「別に見る気はなかったんだけどね、食器を取りに行ったらノートが開いたままだったから。アンタも頑張ったんだね」

俺は夕飯を食べたら風呂に入り「おやすみ」と言い残して上に上がった。親父はナイターを見ていた。

勉強していた部屋を簡単に片付けてたら、玄関のインターホンが鳴った。

セフレを部屋に上げると俺は切り出した。

「昨日はごめん、どうかしてたよ」
「ううん、いいよ。きっと疲れてたんだよ」
「どっか行く?カラオケでもボーリングでも…」
「いいよ、ここで。今日は私がシンちゃんを襲っちゃおうかなぁ」

そう言うと俺の短パンに手をかけ、優しく股間を撫で始めた。

結局俺はその日はセフレのなすがままに快楽に浸った。

俺は四つん這いにされ背中に舌を這わされながら、チンポを扱かれたり。仁王立ちの姿勢でフェラをされたり…。

ただ頭の中は昨日よりも鮮明にエリカの事が浮かんだ。

セックスが終わり、抱合って眠っていると夜中になった。

「今日は送って行くよ。」

俺はセフレを自宅まで送り届けた。途中で花火がしたいと言うので、コンビニに寄り花火を買い…公園で花火をした。

自宅に届けたら俺はまっすぐに帰らずにエリカの家の前にまで行った。

別に立ち止まる事もなく、漠然と通りすぎた俺は部屋に戻りCDを聴きながら雑誌を読み、いつの間にか眠ってしまった。

次の日、昨日と同じように朝食を食べ、午前中は中学時代の同級生の家に行き、アレコレ雑談をした。

プールに誘われたが、エリカが勉強しに来るので昼過ぎには家に戻った。

そして3時前にエリカはスイカをぶら下げてやってきた。

四時間近くたっぷりと勉強をした俺とエリカはスイカを食べながら好きな音楽の話をした。

俺はデュランデュランが好きだと言い、エリカはフーが好きって言ってた。

エリカは続けて「ジュニアの時にボーイフレンドが好きで、私もつられて好きになったの。」

エリカ程の美人だ。しかもこの前までアメリカに住んでいたんだから、ボーイフレンドの一人ぐらい居て当然だった。

俺は落込んだ。悟られないように落込んだ。昨日も一昨日もガンガンセックスしたのに…落込んだ。

が、すぐに気をとりなおし、俺はテレビの話に話題をすり替えた。

とんねるずや宮沢りえがかわいいねって話をしていた気がする。エリカはデビュー当時の松雪泰子を少し優しくしたような感じの女の子だった。

8時前になり、俺はエリカを自宅に送って行った。

「明日は親戚が来るから行けそうにないわ。」

俺は残念だったが、「それじゃ俺はプールにでも行くよ」って答えた。

「夜に時間が取れたらシンジ君に電話してもいい?」
「もちろん!鮎川が暇な時はいつでも電話してこいよ」

そう話しているとエリカの家についた。

まっすぐに帰らずに俺はレンタルビデオ店に行き、「フーのCDありますか?」って店員に聴いた。

SUBSTITUTEって曲を聴きながら…和訳の歌詞を見ていたら涙が出てきた。

次の日

俺は目が覚めるとツレに遊びに行かないか?と誘った。

久しぶりに神戸の街に出た俺達は吉兵衛でかつ丼を食べると元町に向かった。

デニムを物色したりシャツを見たりして、昼からはメリケンパークでスケボーをして過ごした。

夕方までたっぷりグラブの練習をした後、俺達は阪急に乗って芦屋川に戻った。

家に戻ると晩ご飯の用意が出来ていたので、シャワーを浴びてから食卓についた。

食事が終わった頃に知人から電話があり、週末のサンボウル地下で行われるスケボーナイトに誘われた。

「ガスボーイズとトンペイズが出るぞ」

俺は「出たいけど、朝までは…」と曖昧な返事をして電話を切った。

暫くしてまた電話が鳴った。

エリカからだった。

「電話しちゃった。」

それから少しスケボーの話をしていたら…

「今から会わない?」

俺はすぐに用意をして自転車に乗り待ち合わせ場所のモスに向かった。

彼女の方が少し早く着いたらしく、店の前で待っていた。

「こんな時間に大丈夫?」
「シンジ君とモスに行くって言ったから11時迄に帰れば大丈夫」

エリカはモスもいいけど、海を見たいって提案をしたので僕達はモスで飲み物をテイクアウトして、芦屋川沿いに芦屋浜まで下った。

テトラポットのある海辺に着き、俺達はテトラポットに登った。

テトラポットに登る時、初めて手を握った。そしてエリカは登った後も暫くは手を放さなかった。そして10時過ぎまでいろんな事を話した。

テトラポットを手を繋いで慎重に降りると自転車に乗り、ゆっくりと彼女の家に戻った。

「もう少し、近くなれたらいいな」

俺は聞こえていたけど、聞こえていない振りをした。

緩やかな坂道を登り、エリカの家に近付くと「明日は家族で出掛けるの、明後日勉強しに行ってもいい?」「もちろん。」今度はハッキリと答えた。

彼女を送り届けて俺はまっすぐに家に帰った。

部屋に戻り右手を見ると、まだエリカの掌の感触が残っているような気がした。

次の日は高校の同級生に呼び出された。

前出だが、四人の中の一人が高校を辞めるって事で、なんとか思いとどまるように説得しようとの事だった。確かに男三人で乗切るのは辛いが、辞めたい気持ちも理解出来た。そして女子も四人が辞めるらしいって聞いた。

四人とも日本語があやふやで国語もだが、社会も理解出来ないし理科も生物が無理らしくて、卒業も難しいと悲観していたそうだ。

そのうちの二人はアメリカとカナダに戻り、二人はどうするか未定との事だった。

答えが見つからないまま、とりあえず説得しようとの事でクラスメートの一人が女子に連絡を取った。

俺はダルくなり、何かあったら協力するから…と言い残して家に帰った。

夜になりエリカからの電話がかかってきた時に、一応彼女にも伝えた。

エリカが言うにはその女の子達は日本人学校に通った事はあっても、日本の学校は今が初めてだから馴染めないんじゃないか…との事だった。

その後はとりとめのない話をして電話を切った。

次の日からは暫く真面目に勉強をする日が続いた。

そして芦屋の花火大会にエリカと二人で行く事になった。

その頃、セフレとはセフレのクラブが合宿に入ったりで予定が合わずにセックスはしていなかった。内心ホッとしていたし、気持ちは完全にエリカに傾いていた。

花火大会の当日、俺はスケボーで彼女の家まで迎えに行った。彼女は浴衣姿で出迎えてくれ、俺はボードを庭の隅に置かせて貰った。

花火を見るには海辺と山手の二つのスポットがあったが、海辺の方が賑やかだから海辺に行く事にした。

浴衣姿の彼女は綺麗で、短パン姿の俺は不釣合いのような気がした。

少しだけ距離をとり、俺達は歩いた。

「竹園のコロッケを食べよう」とのエリカの提案でコロッケ屋の前で並んでいたら、クラスの女子達と遭遇した。

多少はやしたてられたりしたが、俺は満更でもなかった。反面、それ以上の苦痛も覚悟しなきゃならない時が来るような気もした。

エリカはそれを察したのか、幼馴染みで昔からの友達だったとフォローしてくれた。

結局みんなで花火を見る事になり、俺とエリカの物理的な距離は少し離れた。

話題は2学期からの事に集中した。辞める可能性があるのは7人に増えていたのには驚いたが、俺にはあまり関係なかった。

鑑賞地点に着き、俺とエリカは微妙に離れた場所に居た。

そして花火が始まるとエリカはそっと俺のそばにやってきて、俺の小指をそっと握ってきた。

「迷子になろうか?」

俺は一人ごとのように囁くと、エリカは強く指を握った。

二人はそっと木立ちの方に移動した。今は完全に手を繋いでいた。

「どこかに行こ」

僕達は木立を離れ、喧騒から逃れるように人気のない砂浜に移動した。

「みんなにどう思われてるかな?」
「どうって?」
「ううん、二人で抜け出してきちゃったし…探してないかな?」
「気にすることなんてないよ」

この時間が永遠に続けばいいのだが、それ以上に不安を感じていた。

俺は自分で心のバランスを崩し始めているのに気付いてはいたけど、時計の針は戻せなかった。

それに対してエリカは時計の針を進めようとしているように思えた。

音のない花火が上がっていた。

何とかしなければならないのに、勇気さえ湧かなかった。

いたずらに時間だけが過ぎていき、花火は終わっていた。

「もう少し…そばにいてもいい?」
「うん」

波の音が間を取り持ってくれている…。

僕達の距離は確実に近付いているのに…逃げ出したい気持ちになった。

「そろそろ帰ろうか?それかアルファルファでお茶でもする?」

俺の提案には答えずにエリカはそっと立ち上がった。

「…意気地なし…」エリカが…そう呟いたような気がした。

結局…僕は彼女を送り届けただけだった。

部屋に戻った俺はぼんやりとしていた…。クリスタルウォーターズのジプシーウーマンが流れていた。

ぼんやり聞いていたら「シンジぃ!ハルホちゃんから電話よ!」インターホン越しに母が呼んでいた。内線を繋いで、電話に出た。

「シンジ、今日どこに居た?○○が花火大会でシンジを見掛けたって!」

俺はどう答えるか迷った。別れるにはいいタイミングだった。

「あぁ、学校の連中と…いたよ」
「…そう。今から行ってもいい?」

断る理由は見つからなかったし、断る術も持ち合わせてなかった…

程なくして彼女はやってきた。夏にしては空気は重かった…Dee-liteの陽気な音楽が流れるなか、僕は俯いていた。

「元気ないなぁ、失恋でもしたぁ?」ハルホはワザと陽気に振舞い、わさビーフの袋を取出した。

「スケーターズナイトに出るんでしょ?見に行こっかなぁ?」
「…出るかどうかわかんないよ」

沈黙が流れるが、セフレは意に介さなかった。

俺はベッドにくの字に横になり、両手を太股の間に挟んでいた。

「…ふーん、悩んでいるんだ。シンジがそんなカッコしてる時は面倒なんだよね」
「………」

ハルホは全てを知っていた。コンビニの袋にはオロナミンが入っている。好きな音楽も、空き缶を相手にオーリーの練習をしていたのも、意気地なしなのも…。

吉兵衛のかつ丼や三馬力のラーメンが好きなのも、マイケルJ’sクラブのパイが好きなのも…セディショナリーズの服が好きなのも。そして僕の気持ちいいトコも…

僕はそんなハルホが好きだったし、そして果てしなく重かった…。

「…キモチヨクしてあげようか?それとも帰った方がいい?」

そう言うとハルホは僕のそばに座りなおした。

ハルホの気持ちは痛い程にわかった…。

「シンジ、ウチの事…嫌ならそう言っていいんだよ…」
「そんなんじゃないよ…」

ハルホはそっと近付いてきて、キスをしてきた…。

………。

「やっぱり…好きだよ。」
「…うん。」

ハルホは優しく僕を抱きしめてくれた。…僕も、抱きしめた。ハルホの嗚咽が聞こえる…。背中が小刻みに震えていた。当時の僕には抱きしめるしか出来なかった。

「シンちゃん…キモチヨクしてあげる」

ハルホは身体を起こすと僕のTシャツをまくりあげた。上半身にキス。それは優しいキスだった…。そしてハルホはゆっくりと下半身に降りてきた…。

「シンジ…」

ハルホは短パンをズラすと俺の…を取り出した。そして掌で先を優しく包んだ。

………。

脳ミソが溶けていくようで、もう何も考えられなかった。俺はぼんやりと頭を動かすハルホを見ていた…。

僕がハルホの中に入っている最中…ハルホが小さな声で…

「お人形さんみたいな女の子だね…」

一瞬、心臓が凍付いたようだった。

「…シンジ、ウン…愛してるヨ…」今までにハルホから「好き」って言葉は何度も聞いていたが、初めて「愛してる」といえ言葉を聞かされた。

何度も何度も反芻するように「愛してる」を繰返すハルホ。無言の僕…

二人の荒い息が呼応しているようだった。

リサスタンスフィールドの切ない音楽が流れていた。

暫くしてハルホがノソノソと起きて、窓を開けた。電気を消す…

「いい風が入ってくるよ…」

俺が芦屋浜の事を聞くのを遮るように鼻歌を歌っていた…

ハルホが帰ったあと「お人形さんみたい…」の言葉が俺を支配した。

そして次の日からハルホはエリカの存在など知らないかのように振舞った。もちろんエリカはハルホの存在は知らないし、昼過ぎから夕方まで勉強しに来ていた。

変わった事といえば、俺の部屋で音楽を聴きながら勉強するようになった事だけだった。

エリカの笑顔は相変わらず眩しかった。

お盆の間、エリカは家族で帰省し…ハルホは夏合宿に行った。

俺はする事がなく…毎日アメ村や三宮にスケボーをしに行ってた。そこで知り合いや友達とダラダラ過ごしていた。

知り合いのDJが「明日ハネたら林崎海岸で朝からバーベキューするからシンジもおいでよ」と誘ってくれた。他の面子は年上ばかりだったけど、みな顔見知りだったし、楽しそうだった。

次の日、僕が海岸に着いたらみんな昼寝していた。起こすのも悪いし…ブラブラする事にした。

突堤をボードでガリガリ滑っていたら…向こうに4、5人の集団がいた。何の気なしに近付くとグループの中に…ハルホがいた。

合宿に行ってる筈なのに…。

俺に彼女を咎める資格はなかったが、それでも喩えようのない不安が襲ってきた。

なにげに身を隠し、様子を伺った。女の子の一人は中学の同級生だったが、あとは知らなかった。

男達は雰囲気から大学生ぐらいに見えた。暫く様子をみたけど、怪しい感じではなかった。

探っているようなのも嫌だったし、それ程離れてる訳でもないので俺は皆が寝ている所に戻った。

「シンちゃんおはよう」みんなはボチボチ起きてきたし、合流組もやってきた。

わいわいとバーベキューの準備をしながら、いろんな話をした。

甲南大学のオネエサン-弟のように可愛がってくれていた-とビールの買出しに車で出掛けた俺はハルホ達のグループの横を通り抜けた。

目線でグループを追っていたのを横目で見たオネエサンは「かわいい子でもいた?」って聞いてきた。

「元気ないなぁ、シンちゃん変だよ」スーパーでビールとおつまみを買いながらオネエサンは怪訝な顔をした。

「そんな事ないですよ。こういうの初めてだから…」

車にビールやおつまみを積込みながら
「飲酒運転大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。夜には抜けるし。それにクラブから直行だからみんなもお酒入ってるよ」

………。

帰り道にオネエサンはいろんな事を話してくれた。

なかでも「シンちゃんの年なら失敗してもいいんだから、何にでもトライしてみたらいいよ」「怒られたら、謝っちゃえばいいんだし…」オネエサンの話を聞きながら、エリカの声が聞きたいと思った。ハルホと次に会った時にどんな顔をすればいいんだろう…とも思った。

車を突堤に停めると僕はビールの袋を抱えて皆の所に戻った。

クーラーボックスにビールを放り込み、釣具屋で買ってきた氷で冷やした。

ラジカセからダンスホールやダブが流れている。

バーベキューはスローなペースで始まった。

遠くに目線を向けるとハルホのグループが見えたが、-気にしないようにしよう-タバコに火をつけた。

「ビールにタバコ、不良少年だよね」

オネエサンが笑いながら声をかけた。

「みんなビーチが似合いそうな服なのに、限りなく海が似合わないですよね」

クラブ系の服が夏の海に似合わない事に皆が爆笑していた。

「おーい、スケーター!ビール」

ビールがなくなったので買出しに行く事になった。近くのコンビニに買いに行くので、ヘロヘロのオネエサンはおいてボードに乗った。

「買い物スケーター!」

後ろから掛け声が聞こえた。

両手にビールの袋を持ち、ボードに乗るとバランスを取るのに苦労した。

暫くして戻ると…何人かは泳ぎに行って、何人かはパラソルの下で寝ていた…。

ビールをクーラーボックスに放り込むと所在がない俺はぼんやりとハルホのグループを眺めていた。

「な〜に?アッチになんかあるの?」

オネエサンがニタニタしながら砂をかけてくる。

「…多分、友達」俺がそう言うと

「じゃ、挨拶に行こうか!ミサネェが保護者として付いて行く!」

俺は慌てて…

「違う、違いますよ。それによく知らないし」俺は大袈裟に反応した事を反省した。

夕方になり、バイトに行く人や須磨の海の家に飲みに行く人、帰って寝る人に分かれる事になった。

俺は帰る事にし、電車で帰るつもりだったが、ミサネェが送ってくれる事になったので酔いが冷めるのを待つ事になった。

片付けをしてビーチの掃除を済ませるとオネエサンはトランクにゴミを放り込んだ。

オネエサンは運転席でボーッとしていたので、ウーロン茶でも買ってこようと、近くの自販機に向かった。ウーロン茶とコーラを買うとオネエサンに差し出した。

「シンちゃんは気が利くね。お礼にチューしよっか?(笑)」
「いいから、早く酔いを冷まして下さい(笑)」

車のドアをパタンと閉じると、ボードに乗りながらブラブラ散歩した。視線を向こうに向けるとハルホと男が物陰の方に歩いていくのが見えた…。自販機の方だった。

気になった俺は気付かれないように…ボードを置いて後をつけた。

曲り角を曲がった所で男がハルホの肩を抱いていた。何か喋っているようだが、波の音で聞こえなかった。そのうち男がハルホを正面に向けるとハルホを抱きしめた…。

ハルホが振り払うかのようにして身体を離すと男はハルホをもう一度抱き寄せキスをした。

!?………。

その時、後ろから気配を感じた。同時に小声で…「チューしてるね」ミサネェだった。

「知ってる子?シンちゃん?」
「…えぇ、まぁ…」
「好きな子だったとか?元カノとか?」
「…一応、付き合ってるんです」

しばしの沈黙。

ミサネェは身振りで車に戻るように促すと先に僕を行かせ…

「コラー!」と叫んだ。

慌ててダッシュする俺とミサネェ。車に戻ると荒い息をしながらミサネェが「今日の所はあの二人は大丈夫!これ以上は何もない!後はシンちゃん次第だ」

車をだすとミサネェはワザと車の窓を全開にし「あー酒臭い!停められたら一発やな。酒臭い少年を乗せて飲酒運転してたら新聞に載るな」笑いながら話かけた。

換気を済ませるとミサネェは「した道で帰るよ」

僕は頷いた。

「長いの?」
「一年ちょいです」
「チューは?」
「一応…」
「好きなの?」
「………」

ミサネェはそれ以上聞いてこなかった。かわりに「芦有に夜景を見に行こう、その前に鈴木商店でアイスモナカを食べよう」僕は黙って頷いた。

モナカを買い、山手を車が上って行く。

「ユネスコ病院に行く?」

廃墟となった病院で有名な心霊スポットだった。

「いきません!」

また会話が始まった。結局俺とハルホの間に身体の関係がある事も聞き出された。

山の上の展望台は真夏なのに震える程に寒く

「シンちゃん、ホットコーヒー」

俺は自販機に走った。戻ってくるとミサネェはボンネットに腰掛け、タバコに火をつけていた。

すっかり日は落ちていたが、まだ早い時間だから周りに車はほとんどなかった。俺もタバコに火をつけた。

そしてエリカの存在を話した…。

「なるほどね。だからシンジは衝撃的な場面を目撃しても大丈夫だったんだ…」
「そんなんじゃないで…す。」
「鮎川とは何もないですし、今後も…」
「どうして決め付けるの?」

………。

「多分、鮎川と僕はねじれの位置みたいなもんです。決して交わらないような…」

ミサネェは「ふぅー」と溜息をつくと僕を見据えた。

そして…

………。

突然のキス。

どれだけの時間が流れたのだろうか?恐らく一瞬の出来事。

唇を離すと…ミサネェは

「何か変わった?地球がひっくり返った?」
「えっ?」
「キスの一つや二つで人生は何も変わらんのだよ、少年!」

そしてミサネェは僕の肩をポンと叩いた。

「そして…」

もう一度ミサネェが顔を近付けてきた…。

今度は僕もミサネェに応えた…。

甘いキスを繰返し、ミサネェの舌は僕の唇の中に優しく侵入してきた。ミサネェは肩に手をまわしてギュッと抱きしめてくれた。

「これが大人のキス…」

そっと身体を離すとミサネェは囁くように呟いた。

僕は深呼吸をした…。

ミサネェは笑顔で「少年、その気持ちをエリカちゃんにブツケロ!で、ダメだったらオネエサンが続きを教えてあげるよ!」

…。プッ。

僕もミサネェもほぼ同時に吹き出した。

ミサネェにもう一度コーヒーを買いに行かされた俺は、何だかミサネェに救われたような気持ちだった。

芦屋駅まで送ってもらった俺はミサネェに礼を言って別れた。

部屋に戻りシャワーを浴びようとTシャツを脱ぐ時…ミサネェのコロンの香りがした。そして、シャツで顔を拭うと口紅が…付いていた。

シャワーを浴びて、階下に降りた俺は残り物の晩ご飯を食べた。

母が「明日は朝からお父さんてお墓参りに行ってきてね」と言い、僕は返事をした。

部屋に戻り洗濯機を回す。

ベッドに横になると…問題は何一つ解決していない事に気付いた。

次の日、起きても何も変わってなかった。

電話がなり母からインターホン越しに呼ばれた。内線を繋いでもらう。DJの竹山さんからだった。

用件は「マヒシャースラマルディニーのオーナーの知り合いの喫茶店でバイトを探してるんだけど。今日から五日間、どう?」

この人は本当の人格者で、礼儀正しい人だった。いつも俺の面倒を見てくれるし、短期のバイトもこうやって紹介してくれていた。

俺はすぐにデニムにボタンダウンのシャツに着替えて、聞いた場所に向かった。

時間は10時から4時か5時まで。短期だから日給で1万円くれる事になった。条件はめちゃくちゃ良かったが、近所への出前が一日に50回はあり、店にいるより外にいる時間の方が長かった。

北野坂を上ったり下ったり、上ったり上ったりの繰返しはキツかったが、モヤモヤを飛ばすには最適だったし、五日間で五万は最高の条件だった。

なんだか悪い気がしたので9時前の仕込みからバイトに行き、店の掃除をした。

三日目のバイトが終わった日にエリカは帰省先から帰ってきて、お土産を届けてくれた。

四日目にはエリカがお母さんと買い物ついでにお茶を飲みに来てくれた。

ハルホから電話はあったがあの日からは都合がつかずに会ってなかった。

バイト最終日にオーナーから給料をもらった。6万円入っていて、オーナーに言うと「店のピンチを救ってくれたし、よく働いてくれたしね」

それからはたまの土、日や平日の夕方にバイトに入れてもらう事になった。

バイトがハネて給料を何に使うか考えながら、とりあえず東急ハンズにウィールを買いに行った。

買い物が済み、ボードを持ってスケーター仲間の溜まり場に行き、時間を潰した。

ミサネェや竹山さんがラブダブというレゲェバーに顔を出すらしいので、礼がいいたかった。

夏休みも残り少なかった。

夜になりラブダブに行くとミサネェ達は盛り上がっていた。僕はカウンターでビールを三本買い、竹山さんとミサネェにお礼を言った。

二人とも上機嫌だった。

ミサネェが竹山さんたちに「シンちゃんは私が育ててるのよ〜」と言い「悪い虫はつかせないからね〜」早くも酔っていた。

暫く飲んだ後ミサネェは何処でピアスを開けたのか聞いてきた。

自分で開けたって答えるとミサネェにも開けて欲しいと言われた。

「夏に開けるなら病院で開けた方がいいですよ」そう答えるとミサネェは分かったのか分かってないのか…フラフラとどこかに行ってしまった。

暫く竹山さん達にくっついて飲んでいたが、そろそろ営業らしいので帰る事にした。

店を出て帰ろうとしてたらミサネェが友達?の女の子達と話していた。僕は手招きされ、紹介された。

「年下の彼。シンちゃん。こう見えても、もう大人の関係で〜す」

とりあえず挨拶をして「う、嘘です。ミサネェは酔ってるだけですから」俺は言い訳をした。

ミサネェはそんな言葉にかまわず「な〜に照れてんのよ!しかもシンちゃん、二股かけてんのよ!アッ!私も入れたら3人だ」

3人かどうかはともかく二股は当たっていた。が、他の二人にはあまりにも突飛な発言に信憑性は感じてないらしく、笑っていた。

「シンちゃん、今からラーメンに行くよ!あんたもおいで!天竺園にゴー」

そう言うとガンダーラを歌い出した。ミサネェの友達は大学の同級生らしかった。

中山手の天竺園の前では人が並んでいた。

ここの焼そばは味は最高だったが、椅子に座っていると猫が膝の上に座ってくるし、大川隆法の本が沢山おいてあり、好きになれなかった。

他の二人が並んでくれてるので、ふらつくミサネェは少し離れた所に座らせた。

「ごめんなぁ、嫌な事があってん」
「本当は酔ってないんよ…」

僕は何も聞けなかったし、横に座って頷くしか出来なかった。

「シンちゃん、キスしようか?」そう言うとミサネェは返事も聞かずに首に手を回してキスしてきた。

ほんの少しの間だったが、唇を重ねた。列に並んでいる二人に目をやったが気付いてはいなかった。

「シンちゃん、汗の匂いがする」
「す、すいません!」
「ううん、いい匂い。シンちゃんといると落着くよ…」

身体を離すとミサネェは背伸びをして、立ち上がった。

「もう大丈夫」

二人してそそくさと列に戻った。ほどなくして順番が回ってきて席についた。

注文を済ませるとミサネェの友達が真顔で「口紅付いてるよ」僕はハッとして唇を拭いた。

二人はエッ!と驚き、一人が僕のシャツの袖を指差した。慌ててシャツを見たら口紅が付いていた。

「あー、さっきもたれかかった時に付いたんだ、シンちゃんごめ〜ん」

ミサネェがわざとらしく言い訳をしたが「シンジ君はなんで唇を押さえたの?」

二人とも………。

口止め料として僕が奢る事になりとり唐を追加注文された。

その後はその話題に触れないままに食事を済ませ、支払いをした。ミサネェが半分出すと言ったが、バイト代が入ったばかりだったので俺が全部出した。

3人は竹山さんのクラブに行くと言うので、僕は別れて帰宅する事にした。

家に着き親と雑談していたら電話が鳴った。エリカからだった。

上に行くから、とエリカに伝えて電話を切ると、そそくさと階段を上った。

「忙しいやっちゃのぅ」

親父の声だった。部屋に入るとクーラーをつけ、受話器をあげた。

「鮎川さんのお宅ですか?夜分にすいません…」そこまで言うか言わないうちにエリカの母親が「エリカ〜シンジ君よ」エリカが走ってくる様子が窺えた…。

「バイトお疲れ様。」

1時間近くバイトでの面白かった話をして、明日は久しぶりに勉強する約束をした。

電話を切り、ベッドに寝転ぶと頭の整理をした。

ミサネェは冗談で俺をからかっているとして、エリカの気持ちはわからなかった。

俺自身もエリカに気持ちが傾いていた。否、好きって気持ちは絶対に否定出来なかった。それでも一歩目を踏出す勇気はなかった。

ハルホはどうだろう?あの日からやけによそよそしいし、もう一週間以上会ってなかった。

会いたい気持ちはあるし、ハルホの気持ちが知りたかった。それは嫉妬かもしれないし、純粋にハルホの事が好きなのかも…「面倒だなぁ〜」そう考えているうちに眠ってしまった。

朝起きたら雨が降っていた。しっかり寝たせいか、頭はスッキリしていた。シャワーを浴びて階下に降りる。朝ご飯を食べ、二度寝をしにベッドへ。

次に起きたらエリカが来ていた。

「おはよう。おねぼうさん。」

朝立ちを自覚していた俺はすぐに起上がれなかった。

「オロナミン。好きだったよね?シンジ君」エリカが差し出してくれた。

「ありがとう。」治まりを確認すると机に向かった。エリカのノートを見る。かなりの進歩が感じられる、一緒に勉強していない間も頑張っていたようだ。

漢字の読み書きはまだ苦手らしいが、以前より読めるみたいで質問の回数は減った。それはそれで喜ばしいのだが、さびしい事でもあった。

エリカを見ると、雨にあたったせいかブルーのシャツはブラのラインがうっすらと透けていたし、胸元が開いていた。

ドキッとしたが、エリカをそんな風に見る自分が嫌だった。エリカはそばにいるし、手を伸ばせばエリカに触れる事も可能だった。それなのに俺はエリカのそばにいたかった。

それは不思議な感覚だった。飢餓感と形容すべき感覚なのだろうか?とにかくエリカを離したくはなかった。

頭の中はエリカでいっぱいだった…。

「学校。」
「学校、始まるね。シンジ君とこいやって勉強出来る回数も残り少ないね」
「始まっても一緒にいれるよ。家だって近いし休みの日だって勉強出来るよ。」
「それに、鮎川と一緒にいたいし…」

慌てていたのか、最後の一言は失敗だった。一気にブルーになりそうだったが

「そうね。私もよ」エリカがポツンと呟いた。

エリカを見上げると真っ赤な顔をしていた。

すぐに何ごともなかったようにノートに向かうエリカ。俺もペンの動きを止める訳にはいかなかった。

今日の分も終わり、エリカと雑談をしていた。彼女の事が知りたい自分がそこにいる—そう気付いた時に、自分の気持ちを伝えたいと思った。しかし、自分には資格がない…

このままじゃエリカもハルホも傷付ける事になる。誰も傷付けたくはなかったし、自分さえ我慢すればよいことだった。

そんな事を考えていると「明日、晴れてたら遊びに行かない?雨だったらお勉強」俺は晴れを願った。

「うん、何しようか?どこに行く?」

エリカを自宅に送りながら二人でデートプランを練った。至福の時間だった。

その夜、ハルホがやってきた。何ひとつ以前と変わらない雰囲気でやってきた。

ハルホを抱いてしまった。

ハルホは何も言わなかったが、まるで浮気を詫びるかのように俺に尽くしてくれた。

僕も何も聞かなかったし—実際は何も聞けなかった—何ごともなかったかのように振舞った。

ただ確実に…二人の心の間に距離があるのを感じたし、音をたてて瓦解する寸前だった。

「もう一回しよ。」ハルホはそう言うと…愛しそうに口に含んだ。

二回目のセックスの最中、ハルホはハルホで何かを確認をしているかのようだった。

好天とあいまって最悪な目覚めだった。自分がわからなくなりそうだった。

何故だか—ミサネェに気持ちをブツけたい—そう思った瞬間、完全に自己嫌悪に陥った。

「最低だ!最低だ!最低だ!」呟きながらシャワーを浴びる。

なんとか気持ちを切替えなきゃ…そう思いながら、着替えて階下に降りた。

憂鬱な気持ちは家を出るまでだった…。駅に向かう足取りは次第に軽くなった。憂鬱な要素がなくなったのではなく、エリカに会える喜びがそうさせたみたいだった。

一人になったら罪悪感までプラスされる…それでもいい、そんな気持ちだった。

約束の10分前についたら、すでにエリカは駅で待っていた。

電車にのり神戸へ…

僕の中にもう一人の僕がいるみたいだった…否、怪物が潜んでいるんだ。そして時々—胸を突破って—飛びだそうとしている。そんな思いもエリカの楽しそうな笑顔がかき消した。

三宮の高架下を散策、ピンクのおっちゃんの店からドラゴンパンを覗く。

「刺身パンどう?食べた事ないけど…鯛の刺身のベーグルサンド、帰国子女向けやん」
「ノーサンクス!シンジ君が食べたら考える」

僕達は話しながら、モトコーへ。割れた電球や片方だけしかない靴、構造が複雑なジャケットなんかを見ながら時間を費やした。

エリカは古着のスカートを買い、スカーフを買うかどうか迷ってたから、僕がプレゼントした。

「喉がかわいたねぇ」

僕達がよく溜まる店のマヒシャースラマルディニーに行く事に。

店内は砂が敷き詰められていて雰囲気はまるでインド。一番奥の席に向かうと…手招きする人がいた。ミサネェだった。

ミサネェはこの前の同級生さんと竹山さんとお茶を飲んでいた。

迂闊だった…ミサネェは時々ここの店員をしていたし、スパイスを買いに山手のインド人の家に行かされた事を思い出した。

ミサネェと竹山さんはニヤニヤしていた。いや、見ていないが絶対にニヤニヤしている筈だった。

この後のデートを引っ掻き回されるのは避けたかった。幸いにもミサネェはアルコールが入ってない。

軽く会釈をして通り過ぎようとしたが、それは許される事ではなかった。

「シンジはここに座って。彼女はミサの横。」人格者の竹山さんが悪魔に見えた瞬間だった。

「注文の前に紹介が始まった。」
「えー、こちらが竹山さんです。DJ兼大学生で僕のクラブでの師匠です」
「こちらが鮎川さん、同級生で刺身パンみたいな女の子です」

竹山さんはペコリと頭を下げ、「シンジはスケボーの師匠です」少し持ち上げてくれた。「次はミサネェです。南女の人です」
「シンジがいつもお世話になってます、シンジの姉です」
「そしてミサネェの同級生のメグさん。雑貨屋さんでバイトしてはります」

冷や冷やしながらも僕とエリカは質問責めにあった。意外にもエリカは楽しそうだった。

よく考えるとエリカには友達がいなかった。クラスでは少し浮いた存在だったし、彼女は僕と同様で1人っ子だった。

アイスチャイとラッシーを竹山さんにご馳走になり、昼御飯に誘われたが辞退した。

ミサネェは僕との事を匂わせる素振りさえ見せなかった。

1時間の尋問を受けた僕とエリカは—あやうく告白させられそうなぐらい—ヘロヘロになった。

「かえって疲れたね…ごめん」
「ううん、楽しかったよ」
「でも鯛パンって紹介はヒドいよ」
「えっ、鯛パンだっけ?刺身パンじゃなかった?」
「…。」

二人で吉兵衛にかつ丼を食べに行く事にする。6席の屋台のかつ丼屋だったが、行列はすさまじいものだった。

「あっちも吉兵衛だよ…すいてるし…」
「あっちは天丼。おっちゃんが怖いからアカン。この前も行ったら—かつ丼が混んでるから来たんやろ—帰れ!って」
「本当?でもサンドバッグがおいてある…よ」

—15分程並んでから先に席につかせる。その間に缶のお茶を買い、エリカに渡す—

エリカのかつ丼が出来ると同時に横が空いたので座る。「毎度!」それだけ言うと大将はだまっててんこにしてくれる。

「男は5分、女の子は7分で食べるのが流儀」
「…熱いし、多いよ」

心配そうに振り向いたエリカに対して僕はニヤついてた。

…ふぅ…。ほぼ同時に食べおえた。

食べ終えて気付いたが、刺身パン→変な店→印度喫茶(輩な人付き)→屋台のかつ丼。実質初めてのデートにしてはパンチが効いていた。

急に不安になるがエリカの表情は満足そうだった。

「おいしかったぁ!でも、もう少しゆっくり食べたかったね。」

困った事にネタ切れだった。竹山さんと行く喫茶店はカレーはうまいが店長がホモの田村正和だし、ミサネェに連れていかれる喫茶店は 紅茶を頼んだらミルクとワッフル、日本茶に和菓子まで付いてくる…商売っ気ゼロの店だった。

16歳の僕にはもう引き出しがなかった。

「居留地の方でもぶらつく?」エリカがナイスアシストをしてくれる。
「鮎川の好きなとこに行こうよ」
「じゃ、案内するね!」そう言うとエリカは僕の手を握った。

エスカレーターを上り、センター街を抜ける。ボビーズやガロに立ち寄りつつ居留地に向かった。

「ポートピアランドって行った事ある?」居留地の服屋をまわっている時に聞いてきた。

「あるよ、イク?」
「ポートライナーに乗った事ないから、乗ってみたくて…」

ここから駅は近かったし夕方の遊園地って…いい雰囲気のような気がする。…今度は僕が手を引いた…。ポートライナーに乗っただけでエリカは喜んでいた。

「ドキドキする、前が全開だよ!」それ程の事はない筈なのに、エリカは嬉しそうだった。

「遊園地、男の子と来るの初めてだもん…」小さな遊園地だったけど僕にもエリカにも…遊園地ってだけでよかった。

乗り物に乗る時以外はずっと手を繋いでいた。本当は楽しい筈なのに…時間が経つのが早いことを嘆いた。

「もっと一緒にいたいよ。」僕は正直な気持ちを吐露した。

「うん。」エリカは握っている手にギュッと力を込めた。

僕はその先の言葉が言い出せなかった…。

—場内アナウンスが花火の始まる事を告げる—

「観覧車から見ない?」エリカの提案に僕は頷いた。ほどよいタイミングで観覧車に乗込んだ。花火が上がり始めている。エリカは僕の横に座り、両手で僕の右手を握りしめた…。

「シンジ君の感触を忘れたくないの…。」

僕はなんて返事をすればいいのか、言葉を探した。

観覧車が頂上に差掛かる…僕にもう少しの勇気があればいいのだが、何も言い出せなかったし、何も出来なかった。

「キレイね…」エリカが身体を花火の方へずらした。

神様が後押ししてくれたのか、僕は思い切ってエリカの両肩を抱き、もたれさせた…。エリカの身体から力が抜けていき、自然な感じに僕にもたれかかる。そこでいっぱい—僕には充分だったし、エリカが緊張しているのもわかった。

そして無情にも観覧車は一周してしまった。観覧車を降りた僕達は何かを取繕うかのように陽気に話した。

帰りの車中も僕達は饒舌に話した。沈黙が怖い訳ではなく、話が途切れるのが怖かった。それでも一瞬の静寂が僕達を包みこんだ…。…切り出せない…エリカが俯きながら

「ずっと仲良しでいたいね…」

僕は頷いた。言葉を探す…わかってる筈の言葉、ベーシックな言葉が出てこない。

僕は絞り出すように「うん…。」それだけ言うとエリカの手を握りしめた。

「…本当?」
「うん。」

限界だった…。本当に好きだってわかったのに、言葉に出来なかった。

電車が駅に着き、僕達は電車を降りた…。駅から彼女の家までの間…何かを言わなきゃならなかった。僕は最後の曲がり角の所で、勇気を振り絞った…。

「言葉って人間だけが自由に使える筈なのに…本当は不便だよ。」声が震えていた。

エリカの肩も震えていた。

「ご、ごめん。何言ってんだろ、俺…本当、伝えなきゃいけないのに…大切な…言葉…男な…のに」

涙が溢れてきて、最後は声にならなかった…

エリカも泣き出していた。そして…

「うん…。大切な言葉…待ってる」エリカの顔もぐしゃぐしゃだった…。

二人とも緊張の糸が切れたのか、堰を切ったように泣き出してしまった。

するとエリカは何も言わずに黙って僕にキスをした。僕は思わずエリカを抱き締めた。ふとエリカの顔を見ると涙が溢れていた。

それから学校が始まり僕とエリカの間には隙間が空いてしまった。お互いがお互いを避け、もう話すことすらなくなった。

そして事件は卒業式のことだった

「絶対に言うから。…大切な言葉。言えるようになるから。それまで待ってて!」

エリカは大きく頷き「私もシンジ君に…大切な言葉を言って貰えるように…頑張る!」そう言ってくれた。

そして最後の曲がり角を曲がって彼女を送り届けた。

彼女が部屋に入るのを見届けると、急に脱力感に襲われた。彼女の家から自分の家までが遠くに感じられた。

家に着き、部屋に戻るとベッドに倒れこんだ…。しばらくするとインターホンが鳴った。ハルホからだった。内線を繋いでもらい、電話に出た。

「今日は無理、疲れてるから会えないよ。」

電話を切った後、ハルホの誘いを初めて断った事に気がついた。

ハルホの気持ちを傷付けるのは辛かったが、今日の僕には彼女を気遣うだけの余裕はなかった…。

昨夜は疲れ切っていたからか完全に熟睡したせいで、6時前に目覚めた。階下に降りる、昨日は晩ご飯を食べていなかったから腹が減っていた。

母親が朝食を用意してくれるから牛乳を買ってきて欲しいと言う。面倒だったが背に腹は代えられない。洗顔を済ませ、コンビニへ。

公園の前を通りかかったらエリカが犬の散歩をしていた。

「おはよう」エリカの顔がまともに見れなかった。

コンビニに牛乳を買いに行く事を言うと散歩がてらに一緒な行く事に。大切にしたいから課題の話や新学期が近くなった事について話した。

コンビニに着き牛乳とファンタ、オロナミンを買い、エリカにファンタを渡す。

「ありがとう。」
「今日は忙しい?良かったら早目においでよ」

普段の待ち合わせ時間の3時まで待てなかったのは、どうやら一緒だった。

「それじゃあとでね」
「うん、待ってるよ」

公園の前で別れると俺は急いで帰った。食卓につき、エリカが早目に来る事を告げる。

「アラ、そうなの?じゃあお昼は3人で出掛けましょう。お母さんがご馳走するわよ」

朝食が済むと部屋の掃除をし、洗濯機を回してシャワーへ。

約束の時間にエリカはやってきた。母親が昼御飯に誘っている。最初は遠慮していたみたいだが、喜んで受けいれたみたいだった。

「CDを持ってきたよ。」エリカはコレクターズのアルバムを持ってきた。BGMに流れるコレクターズの音楽は甘い旋律を奏でていた。

♪ゆうべ見た夢の続きを、硝子の瓶に詰込んで。誰もいない地下室に鍵を掛けてコレクションするよ♪

「本当に出来たらいいのに、ね」
「うん。今を大切にしたいね…」

そして僕はフーが好きになったと彼女に話した。

【さらば青春の光】を借りて一緒にみよう。夏休み最後の日は二人で過ごそう…そう話して課題に戻った。

調子が出てきた頃にインターホンが鳴る。ペンを置き階下へ。

「エリカちゃんは好き嫌いある?お魚は?」

車を運転しながら会話を楽しむ母とエリカ。母は既に「エリカちゃん」と呼んでいるのに僕はまだ「鮎川」だった。

車は夙川から苦楽園へ…樋ノ池近くの鮨屋【大天】へ。

ここのお寿司は本当に旨い。エリカも目を丸くしてパクついている。母は大将に娘が出来て嬉しいなんて話している。

アンタの息子は意気地なしで、まだ「好き」とさえ言えてないんですよ。それなのにアンタはエリカを勝手に娘にしている…。

母は強し。否、無神経なだけだと思った。だけど俺が越せないハードルをいとも簡単に越している…。…なぎ倒しているだけなのかも?そんな事を考えてるうちに食事は終わった。

「私はイカリに行くけど、あんた達はどうする?」ここで放り出されてもかなりの距離があるので、とりあえずイカリスーパーまではお供する事に。

エリカと母は楽しそうに買い物をしている。俺は失礼して車に戻り食後の一服。しばらくして二人は買い物袋を下げて出てきた。

「さて、一緒に戻る?それとも二人でデートしてくる?」

ここまで無神経に接してくれると、かえって清々しくなる。夙川駅で降ろして貰い、水円でお茶を飲む事に。

「気疲れした?」
「ううん、シンジ君のお母さんは素敵な人よ。楽し過ぎる…」

エリカはイングリッシュスコーンを食べながら笑っていた。母のおかげで午前中のぎこちなさがなくなっていた。母に感謝。

お茶を飲みながら、これからどうするかを考える。

「デートを楽しみましょ」…もしかしてエリカは母に毒されてしまったのだろうか?

バスに乗り甲山森林公園へ。バス停までの道のりを手を繋いで歩く。まだぎこちなさはあるが、ここちよいぎこちなさだった。

バスに揺られている間、エリカが少しもたれてくる。僕の心拍数がハネ上がる。高校生のデートで森林公園は…それでも二人でいる事が大切だった。

エリカの提案で【津曲】でお菓子をお土産にする事にする。エリカは僕の母へ、僕はエリカの母へ…

甲陽園から電車に乗り、夙川経由で芦屋川へ。芦屋駅に向かい本屋に寄ってから部屋へ戻る。

お土産を受取った母はエリカと話したそうだったが、とりあえずは課題を優先させた。

「日本語って難しいね…」

エリカは英語の課題を仕上げながら話しかけた。

「うん、難しい…そう…思ったよ」
「シンジ君…」
「…なに?」
「…いつかは名前で…呼んでね」

今すぐにでも【エリカ】って呼びたかったし、許されるなら叫びたかった。しかし今の俺には…それは無理な相談だった。

「うん、俺もそうしたい…」

今の僕に言える精一杯の言葉だった。

BOMB THE BASSの SAY A LITTLE PRAYERからJANET KAYのLOVI’N YOUへ。

音楽が僕たちの心を引寄せてくれる、僕の気持ちを代弁してくれる…そんな気がした。

8時前になり僕は自転車でエリカを送っていく。

エリカの母にお土産を、とも思ったが照れ臭いので渡してもらう事にする。

彼女を送り届け、ビデオ屋へ。さらば青春の光がある事を確認し、コンビニへ。オロナミンやお茶を買い、帰宅。

家に戻ると母は電話中だった。会話の内容からエリカのお母さんだとわかった。母の暴走を心配しながら、冷蔵庫へ。

オロナミンを持ち、自分の部屋へ。シャワーを浴びオロナミンを飲んでるとインターホンが鳴った。

今日は親父が遅いし、昼に贅沢したから晩ご飯はエリカをツマミにソーメンだった。

俺は適当に相槌をうちながら…ソーメンをたいらげた。

部屋に上がろうとすると母が「ハルホちゃんはどうするの?」ダイレクトだった。俺はわかってる、そう身振りで合図し部屋へ戻った。

ハルホの事は嫌いではなかった。むしろ彼女は全てを理解してくれている…受入れようとしてくれている事も知っていた。ハルホはハルホで完璧だったし、別れたくはなかった。しかし選択をしなくてはいけなかったし、俺自身…限界だと思った。

受話器を取りミサネェの家の番号を押す。ミサネェの妹さんが電話に出るが、留守との事。電話があった事だけを伝えてもらい、受話器を置いた。

ぼんやりとフリッパーズギターを聴く。GROOVE TUBEが流れている時に電話が鳴った。ミサネェからだった。

「どうした、少年?」ミサネェは明る問い掛けてくれた。しかし話を切り出せない僕がそこにいた。

「シンちゃんらしくないなぁ…迎えに行くからお茶にイコ!」
「遅いし、迷惑だからいいです…それに…」
「それに?何?」

「ミサネェ…すぐチューするでしょ?」ミサネェは笑いながら、迎えに行くから駅にくるよいにと言い電話を切った。

正直、ミサネェにキスされたら…これ以上の混乱は辛かった。

しかし着替えをし、歯を磨いてボードを持ち「ボードしてくる」そう言い残して家を出た。

駅に着き簡単なトリックをしているとミサネェの車がやってきた。ミサネェが車から手招きをし、僕はミサネェの車に乗込んだ。ミサネェは何もいわずに車を走らせ六甲アイランドへ。

遊園地の辺りに車を止めると「散歩しよ」無人の遊園地を歩きながらベンチへ。自販機で買ったジュースを飲みながら…僕が話を切り出すのを待っている。

「こっち座りなよ…」
「座ったらチューするでしょ?」
「…シンちゃん成長したね」

成長ではなく学習だと思った。

話を切り出せないでいるとミサネェは助け船を出してくれた。

「この前のカワイコちゃんが好きなんでしょ?」僕が頷くと…

「だったらシンちゃんが命懸けで彼女を守らなきゃ!」

僕は頷いて、ミサネェの横に座った。

「シンちゃんが何を考えてるのかはわかんないよ、でも私はシンちゃんの味方なんだから」

僕はミサネェの言葉を聞き、自分の闇の部分や汚い部分を話しだした。ミサネェは黙って全てを聞いていた。潮の匂いが鼻を抜ける…。

話を聞き終えるとミサネェはタバコに火をつけた。

「ハルホちゃんへ全てを話すのはいいけど、エリカちゃんには話したらダメ。これは約束。」

「シンちゃんの正義感はただしいけど、それじゃ自己満足になるだけ。本当は二人とも傷付けて欲しくはないけどね」

僕は黙っていた。適当な言葉が見つからなかった…。

「今度ばかりはシンちゃん。自分の気持ちに嘘をつきなさい。自分を騙すのよ」

ミサネェの言いたい事はわかった。ハルホと別れろって事だった。それは僕にもわかっていた。

「ハルホちゃんはあんたにはぬるま湯なんだよね。気持ちいい。でもエリカちゃんは熱いお風呂。最初は熱くても芯まで暖まるよ」

………。僕の目に涙が溜まってきた。

「さて、と。問題は解決!次はお姉さんの性欲を満たしてもらおうかな」言い終わるかどうかのタイミングでミサネェはキスしてきた…。

………。

「ちょっと!ミサネェ!」

ミサネェはニッコリ笑うと

「シンちゃん、エリカちゃんと付き合ってもいいけどシンちゃんとのキスはやめないからね」そう言うとミサネェはもう一度キスを求めた。

かすかにタバコの匂いがする…

………。

ミサネェの甘いキスに虫の声と潮の匂いがミックスされる。

僕はミサネェを抱きしめてしまった…。

僕とミサネェは三十分近くも抱きしめ合い、キスをしていた。

「シンちゃんがしっかりしなきゃ、エリカちゃんからシンジを奪うよ」

…この人はどこまで本気で、どこから僕をからかっているのだろう?僕が混乱するのを楽しんでいるみたいだった…。

帰りの車中…僕は今日、一番醜い自分を晒けだした。そしてミサネェは全てを飲込んでくれた…。そう考えると、自分が情けなくなった。

僕は果たしてエリカちゃんの全てを受入れる事が出来るのだろうか?

…そんな事を考えてると車は家の前に着いた。礼を言い車を降りると運転席の窓が開いた。

「忘れ物…」ミサネェはそう言うと頬を差出した。僕は一瞬、周りを見回して彼女の頬にキスをした。

部屋に戻り、ボードを忘れた事に気付いた。大会まで日にちはなかった…。明後日の大会にはミサネェも来るからそれまで予備のボードで練習しよう…。

次の日は朝からメリケンパークでランプの練習をした。この所は練習不足でオーリーの高さが足りなかった。

夕方にエリカが練習を覗きにきた。明日の大会を見に来てくれるらしい。

練習が終わるとエリカが大会ではスケーターズファッションがしたい、との事なので…二人で揃えに行った。

「Tシャツとスニーカーはあげるよ。ショップやメーカーからの支給品が沢山あるから」

彼女の短パン、靴下とキャップを探しにいく。

明日は会場ではステッカーをボードやシャツに貼って滑る、滑る広告塔になるって話をしていると興味深々に聞いていた。

「1位になってね!」
「無理!アースクゥエークの連中がエントリーしてるし…練習不足だし。ポイント取れたらラッキーだよ。」

一応、エリカにはメーカーやスポンサーとの兼合いもある事を説明をしてバンズやヴィジョンのキャップは諦めてもらった。

その後、彼女に部屋に来てもらい、シャツを選んでもらう。5枚チョイスして、次はスニーカー。競技用はピッチリなので彼女がダブダブで履くにはピッタリだった。

彼女の荷物を紙袋に詰め、自転車で彼女を送り届ける。

家に帰り晩ご飯を食べ、母親に6時に起こして貰うように頼む。

部屋に戻り、荷物を詰める。ミサネェは9時に竹山さん達と来るそうなので、ボードは予備も持って行く事にした。

10時を過ぎた辺りで電話が鳴る。出るとハルホからだった。

とりあえず荷物を隠しシャワーを浴びる。寝る準備を整えていたらハルホがやってきた。

「久しぶり!」ハルホは人懐っこい笑顔で話しかけてくる。

クラブでレギュラーが取れそうだとか、友達の話なんかを話しだした。ハルホの話に相槌をうったりしながら話を切り出すタイミングを探った。

一瞬の沈黙の後、ハルホがキスを求めてきた…

………。

………。

唇を離すとハルホは悲しそうな顔をした。

「シンジ…誰かとキスした?」
「えっ!?なんで?」
「なんか違う。違うよ…」

それは僕も同じだった。ミサネェとのキスは思い出せてもハルホとのキスは思い出せなかった。

ハルホがそういいながら抱き付いてきた。

………。

ぎこちないキス。しかしそれがハルホの言ういつものキスだった。

「良かった。久しぶりだったから緊張したんだね」

それは逆だった。そしてハルホに別れを切り出せないままセックスが始まった。

セックスが始まると…今度は僕が混乱した。

ハルホの反応や仕草が微妙に違う。本当に些細な事だったが、違和感は拭えなかった。その事を告げる勇気はなかったし、それを理由に別れる事はしたくなかった。彼女の中に入ると不確かな疑惑は確信に変わった…。

彼女は僕に抱き付きながらもうっすらと涙を流していた…。別れの予感…僕も感じていたし、ハルホも感じていた筈だった…。

セックスが終わるとハルホはシャワーを浴びに行った。最後まで違和感があった。ほとんど無言のまま、僕はハルホを送って行った。部屋に戻るとハルホの残香があった。

電気を消し、窓を開放する…ハルホの匂いが消えていく。涙が零れる…声はでない。ただ涙だけが零れる。窓を閉じるように心も閉じてしまいたかった…。

消音のままビデオをつける。スケートボードのビデオが流れる。ビデオに集中すれば全てを忘れられる…そう願った。

窓の外は秋の気配を漂わせていて虫の声が寂しさを助長する。

エリカに逢いたかった。エリカの声が聞きたかった…エリカを抱きしめたかった。

窓を閉め、ステレオをつける。フリッパーズギターの甘く切ないメロディーや歌詞が僕を落込ませた。

身体は疲れていたし心も疲れていた。しかし神経だけは過敏になっていた。

気を抜くと僕の気持ちはエリカで支配されてしまう。眠りたかったし、眠りが必要だった。時間の経過とともに神経が麻痺していく。やっと眠れる…そう思ったら朝になっていた。

電車の中で寝よう。気がついたら網干でもいい…そう思いながら用意を始めた。

会場に着く。ランプの設置を手伝い、感触を確かめる。3種目にエントリーしているので、体力を温存させる為、ベンチで寝ることにする。

竹山さん達がやってきて、近くでトリックの練習をしていた

竹山さん達が練習しているのは、なんとなく雰囲気でわかった。

ミサネェがノリノリで寄って来て僕を起こす。

「シンちゃん、みんな興奮してるのにシンちゃんは余裕なんやね。」僕には状況を説明する余裕も体力もなかった。

予選が始まった。僕達予選シード組は午前中は練習かデモだけで本番は午後だった。

予選の終わり頃にスケーターのエリカは恥ずかしそうにやってきた。

ミサネェがさっそくエリカを捕まえてイジっている。僕は竹山さんの予選が終わるのを待っていた。

ミサネェとエリカが弁当を買いに行ってる間、僕は竹山さんに本番で使えそうな簡単なトリックを教えた。

昼御飯を終えても本番まで一時間はあった。スポンサーからステッカーを受け取り、アップを始めた。

予備のボードでエリカとミサネェが練習している。怪我したらマズいと竹山さんがメットやプロテクターを渡していた。

竹山さんも必要だろうと思いつつも、僕もベアリングの調整をしてから、遊びに参加。

大会が始まった。竹山さんは予選通過したのだが、順位が低かったので竹山さんが先だった。先ずは竹山さんの応援から始めた。全ての種目で僕の出番は後ろの方だった。

運よく僕は二つの種目で表彰台に立ち、結果、総合優勝出来た。

優勝候補が次々と大技に失敗しての結果だった。

竹山さんも1種目だけ10位に入った。みんなは僕の優勝に大喜びだったけど、優勝して驚いたのは自分だった。

カップを三個と賞金5万円。ボードやシャツを貰う。スポンサーからも賞金を貰った。

上位が大技に失敗した中、ミスが少なかったのが勝因だった。

副賞のボードは使えないので、エリカにプレゼントしシャツはミサネェや竹山さん、竹山さんの後輩に配った。

僕は賞金で焼肉に行こうと提案し、車で三ノ宮の平和へ。

7人でお腹いっぱい焼肉を食べても賞金はかなり残った。こんな時しか恩返しは出来なかったから、みんなの楽しそうな顔が嬉しかった。

そして予備のボードはしっくりこないし、もう大会にでるつもりもなかったので—ボードもやめるつもりだった—酔った勢いでプロを目指すと宣言したミサネェにプレゼントした。

皆と別れて電車に乗るとさすがに疲れが出た。気がついたらエリカの肩にもたれて寝ていた。

駅についてエリカを送るついでにモスに寄ってジュースを飲んだ。

エリカと話していたら同じクラスの女の子達が入ってきた。エリカと僕を見て女の子達はびっくりしていた。

彼女達は近くのテーブルに座り、こっちに興味深々な様子だった。そのうちに一人が大きな声で

「二人は付き合ってんの?」直球勝負だった。

エリカは顔を赤らめ俯いた。僕は意を決して…

「そうだよ」エリカも小さく頷いた。

本人に告白も済んでいないのに…しかし悲観する間もなく矢継ぎ早に質問責め。

エリカが責められてるのを僕は聞いていた。

その後、新学期からは7人ぐらい抜けそうだと聞き、新学期が始まったらみんなでなんとか説得しようって事になった。

元々エリカには友達がいなかったので、理由はどうであれ女の子達が積極的にエリカに接してくれてるのは嬉しかった。

皆と別れてからの帰り道、エリカは「恥ずかしかったけど嬉しかった。」「ごめん、前後した。必ず…」僕は彼女の手を握り締めた。彼女を送り届けてから…意気地のない自分を呪う。

エリカが望んでいるのはたった一言だった。その一言は僕が最も伝えたい言葉でもあった。そしてその言葉が僕を苦しめていた。

家に帰ると母が浮かれていた。雑誌の取材やプロ契約の話の電話があったらしい。今日大会があった事さえ知らなかったのに。

僕は母に取材も要らないしプロ契約も要らない。もう大会にも出ないと伝えた。

トリックに失敗して悔しがる姿を見て、そこまでの情熱もなかったし、このまま滑るのは自由がなくなる気がした。

母にカップと賞金の残りのお金を渡し「これでみんなでご飯を食べに行かない?」
「この年でシンジに親孝行して貰えるとは思わなかったわ、良かったわね、お父さん」

部屋に戻ると疲れがどっと押し寄せてきた。とりあえずシャワーを浴びる。

髪の毛も乾かさずに裸のままベッドに倒れこむようにして眠ってしまった。

「キャッ」

小さな悲鳴とともに目覚めた。荷物を落としたエリカが驚いた表情で立ちすくんでいた。

—なんで鮎川?…何に驚いてるんだろう?…完全に寝ぼけている僕は夢を見ているんだと思ってた。

「おはよう…」手招きしながら僕はエリカに話しかけた。

エリカは小刻みに首を横に降って「む…無理」小さく答えた。

僕は眠りに落ちそうなのをこらえて身体を起こそうとした—何時だろ、眠いなぁ—

「無理、無理…」エリカはそういうと慌ててドアを閉めた。

俯せの状態から仰向けになった瞬間………僕の置かれている状況がいわゆるピンチって事に気付いた。

最悪な事に何の抵抗もなしに朝立ちしたモノは天井を見上げていた…。

「ぅわっ!」

事態が飲み込めた…昨夜、シャワーを浴びてから服も着ずにそのまま寝たのだった。

「あ、鮎川ごめん!」

慌てて跳び起きた僕はとりあえず短パンとシャツを着た。

「鮎川…もう大丈夫」僕がそういうとドアがそっと開いた。エリカは苦笑いしながらオロナミンやジュースをコンビニの袋に戻した。

「びっくりさせてゴメン」
「シンちゃんのお母さんが起こしてあげて…って」

シンジ君からシンちゃん…エリカは一歩進んでいるのに…僕は「鮎川」で立ち止まったままだった。

「もしかして…裸を見られた?」

エリカは顔を赤らめ…コクッと俯いた。

「でも…お尻だけ…」

仰向けでなかったのは、少し…惜しい気もした…。

それでも空気は和やかだった。窓を開け空気を入れ替える。

インターホンが鳴った。母がエリカも朝食を一緒に食べるか聞いてきた。もちろん食事は済ませてきていた。とりあえず洗顔をして洗濯機を回した。

「一緒に降りる?」エリカにそう聞いたが、下で僕の裸が話題になったら、もう来れなくなるとでも思ったのだろう。

「残ってる宿題をやっておくね」
「シンジ、好きな子に起こして貰えて嬉しかったやろ?」

母が鬼に思えた。しかし実際に起きた話をしたら、エリカに起こして貰えるチャンスは二度となくなる…悔しかったが頷いた。急いで朝食を済ませ、慌てて階段を登る。

「ゴメン、ごめん」そう言って部屋に入った。

僕もテーブルに座るとノートを開いた。

「まだ…ドキドキしてる」エリカがポソっと呟いた。「えっ?」僕は聞き返した…。

エリカは顔を上げずに「…好きな人の………だもの」上手く聞き取れなかったが聞き返せなかった…

聞き返したかった!!

少し重くなる空気—嫌な感じではない—を肌で感じながら課題をこなす。

—ピーッピーッ—洗濯が終わったらしい。

「干してくるよ。」そう言って僕は立上がった。

「私も手伝う」エリカも立上がった。篭に洗濯を終えた衣類やタオルを詰め、ベランダに出た。

空は青く気持ちが良かった。遠くに海が見える…。

エリカはタオルやシャツを干してくるよ。パンツは恥ずかしかったから自分で干した。

「後で海にいこっか?」
「お弁当を作ってきたら良かった…」
「作ってくれてたら落として…ぐちゃぐちゃになってたかもね」

エリカは思い出したのか真っ赤になっていた。

部屋に戻り、僕は30分程で宿題を全部終えた…。後はエリカの漢字や古典を手伝った。1時過ぎにはエリカも終わった。

「終わっちゃったね。」エリカは少し残念そうに言った。簡単に片付けをして、二人して階段を降りた。

母に出かける事を伝えると「近所だけど一緒にお昼を食べに行こうと思ってたのに」それでもすぐに開放してくれた。

自転車に乗り、二号線沿いでラーメンを食べた僕達は

「海に行く前に猿を見に行こう!」

打出駅近くの打出の小槌公園へ…エリカは最初、普通の児童公園に猿がいるなんて信じていなかった。

「えー、本当にいる!?」もちろん檻の中にいるのだが、普通の公園に猿はいた。

確かに不思議な光景だったが、たかが猿。5分もしたら飽きてしまった。

自転車に乗ると43号線を渡り…海へ。シーサイドタウンの景色は未来少年コナンの世界…僕らを別の世界に連れてってくれる。堤防に着くと深呼吸した。エリカも同じように深呼吸。

「漫画持ってきたよ…」エリカは僕に漫画を渡した。そしてエリカは鞄からオリーブを取り出した。

【郵便ポストモダン】
パラパラめくってみたけど…かなりエグイ。しかもエロ…

僕らは背中合わせに堤防に座り…本を読んでいた。

「夏…終わっちゃうね。」エリカは雑誌を閉じると…独り言のように呟いた。

赤トンボが飛んでいるし、波もおだやか。空気も乾いているし…空の青さもどこか寂しさを感じさせた。

「そうだね。夏も終わりだね」
「この夏が一番好き。…シンジ君が…シンジ君と出会えた」
「………」
「このまま…ずっと夏が続けばいいのに…」
「うん。でも、次の夏も一緒だよ…」

そしてその次も…僕は心の中で、そう呟いた。

「ずっと…一緒?」エリカは不安げに聞いてきた。
「うん。上手く言えないけど。鮎川とずっと一緒にいたい。多分、この気持ちは変わらないよ」

背中越しにエリカが泣いているのがわかった…。

今の気持ちを大切にしよう。

この先、どんな困難が待ち受けているのかはわからなかったが、今の気持ちを忘れなければ大丈夫な気がした。

エリカが手を握り締める。エリカも幸せと同時に正体不明の不安を感じたみたいだった…

緩やかに時間は流れ、日が傾き始めると気温が下がってきた。浜辺でウィンドサーフィンをしていた人達も帰り支度を始めていた。

「少し寒いね」
「移動しようか?」僕は背伸びをしてから、ポンっと飛び下りた。

エリカの手を取り、飛び下りるように促す…。勢いがついたのか、その瞬間…エリカは僕の胸に飛込んできた。

「キャッ…」

小さな悲鳴とともにエリカは僕の胸の中へ…ほんの一瞬…時間は止まり、慌ててエリカは身体を放そうとした。思考よりも先に本能が反応した…。

次の瞬間…僕はエリカを抱きしめていた。エリカも身体を僕に預けた。

「鮎川…俺…情けないけど…カッコ悪いけど…あー!オレ何言ってんだよ」

「今は無力です。でも…好きです。鮎川が好きです!これが限界。好きです。全力で好きです!」

それだけ言うと腕に力を込めた。

………。

エリカが僕の背中に手を回して、抱きしめてくれた。顔は僕の胸に埋めている。僕の心臓は飛出しそうだった。エリカの鼓動も早鳴りしている。

—何か言わなきゃ—

沈黙に耐えきれそうになかった。

「あ、ありがとう」くぐもった声で、小さな声で。…でも確実にエリカの言葉は僕の胸に突き刺さった。

「もう少しだけ…このままでいい?」エリカはさっきより小さな声で僕に問い掛けた。お互いがギュッと抱きしめる—このままでいたい—同じ気持ちだった。

「寒くない?」

帰り道、自転車をおしていた。エリカは首を横に振った。時間の経過とともに少しだけ落ち着いていた。

「この夏、やり残した事ある?」木馬館に入り、ココアと紅茶を注文したあと、エリカは唐突に聞いてきた。

「プール。買い物。シャブシャブも食べてないなぁ」

夏休みはあと二日しか残ってなかった。

「明日、プールに行く?」
「プールもいいけど、鮎川は?」
「…水族館、動物園…ボート…」質問の主旨から外れてるような気がしたが、気にならなかった。

明後日は約束通りにビデオを見る事にして、明日は有意義に過ごそうという話になった。結局エリカがお弁当を作ってくれる事になり、僕たちは嵐山に行く事にした。

僕は遠足で行ったり家族で行った事はあったけど、電車で行くのは初めてだった。エリカは記憶が定かじゃないと言う。

木馬館を出ると、お弁当のおかずにとエリカはイトーガーデンでソーセージや肉を買っていた。

その後は本屋に行き京都のガイドブックを探した。ガイドブックはあるにはあったが、内容が大人過ぎて参考にはならなかった。

「迷子になるのは嫌」
「うん。じゃぁ鮎川が決めて」

エリカが選んだのは一番年寄りじみたガイドブックだった。

彼女を送り届けると、久しぶりにエリカのお母さんが出てきた。

「シンジ君、もし良かったら明日の晩ご飯を一緒に食べない?」
「明日、シンジ君と嵐山に行くの」
「でも、夜には帰ってくるでしょ?」

エリカは嬉しそうにお母さんに抗議していた。

結局、7時過ぎには帰ってきてエリカの家族と食事をする事になった。僕はお母さんに挨拶をして、彼女の家を出た。

家に着くと、食事の用意をしている母に明日の夜はエリカの家族と食事に行く事をつげた。

「アラ、良かったじゃない。それじゃお母さんもお父さんと食事に行こうかしら!」

無駄だとは思ったが嵐山のお勧めスポットを母に聞いてみた。

「えらい渋いとこに行くのね。金閣寺か清水さんは?ノー天気なアンタは哲学の道を歩いた方がいいかもね」失敗だった。

食事を終え、ガイドブックをチェックする。明日のデートはタフな予感がした。

ビデオを借りておこう。明後日二人で見る【さらば青春の光】を借りに行くことにする。ボードを持ったところで電話のベルが鳴った。

—ハルホからだった—

今からビデオを借りに行くってハルホに告げる。ハルホは会いたいとの事。30分後にファミレスの前で待ち合わせをした。

ビデオ屋で【さらば青春の光】とミサネェ推薦の【ベティブルー】を借りる。そのまま二号線沿いのロイホへ…

ロイホに着いたら既にハルホは来ていた。店に入り注文をする。

コーヒーとジュースが届くまで、重い空気が流れる。ハルホも俺も口を開かなかった。口を開くと…次に出てくる言葉は、容易に想像出来た。

飲み物が運ばれてきても、ハルホは口を開かなかった。僕は所在なさげにタバコに火をつけた。

「シンちゃん…」
「…?」
「なんか遠いなぁ…なんで?」
「………」
「もう…嫌いになった?」

僕は迷ってた。タバコがジリジリと灰になるのを眺めながら…言葉を探した。

「シンジは他に好きな人がいるんでしょ?あの浴衣の女の子?」
「………」
「シンちゃんはズルいよ。」
「うん…そうかもしんない…」俺は続けた。

「自分でもわかんないけど、ハルホを傷つけたのは本当だと思う…」
「シンジが望むなら、二番でもいいよ」ハルホの口から思いがけない言葉が出てきた。

「他に彼氏いるし!」おそらく林崎海岸で見たあの男だろう…。

僕はハルホの言葉を聞いて…どんな表情をしていたのだろう?

「でもね、絶対に1番になるから!」

僕はどう答えるべきかわからなかった。ジュースに口をつけた。

「意味…わかんねぇよ。ハルホの言ってる言葉の意味がわからないよ」

「簡単よ。絶対に別れないの!私がそう決めたの!」ハルホはそう言うと「ちょっと待ってて!」席を立ったハルホは出口に向かった。

ハルホを追い掛けるべきか…でも、ハルホは待ってるように言ってた。それに僕の頭の中は完全に混乱していた。

混乱した僕の脳みそはミサネェを導き出した…。

—ミサネェの言ってた展開と違う—

ミサネェを恨んだ。

そうこうしている内にハルホは男を連れてきた。

「新しい彼のコウちゃん。大学生。こっちはオトモダチのシンジ君。高校生」
「はじめまして、シンジ君。ハルホちゃんの中学の時からの友達なんだって?」

そう言ってハルホと並んで座った。僕はどう答えたらいいのかわからないので、頭を下げた。

コウちゃんはコーヒーを注文すると僕に話しかけてきた。

「スケーターなんだって?今度教えてよ。」
「大したことないです。」

ハルホが割って入って当り障りのない話をし続ける。余裕で完敗だった。パニクった脳みそで僕は適当に相槌をうち、愛想笑いさえした。

ハルホがトイレに立った時、コウちゃんが話かけてきた。

「ハルホちゃんの彼…だったんだろ?」
「………」過去形なのか現在形なのか…考えたら俯くしかなかった。

「君が彼女の事をどう思うかは自由だ。俺も同様。彼女も同じ。」
「だけど、いいかげんな感情で彼女を惑わすような事だけは勘弁してくれ」

僕は頷いた。

「これは男と男の約束だ。」

ハルホが席に戻り店を出る事にした。自分の分は出すと主張したが、聞入れられず…甘える事にした。

店を出て挨拶すると僕はすぐに自転車にまたがった。ハルホとコウちゃんが車に乗込む姿はみたくなかった。まっすぐ帰る気になれない僕は浜辺に向かった…。

今日エリカと二人で過ごした場所に座る。漆黒の闇に包まれた空は僕の心に恐怖心まで植付けようとしていた。

一日の出来事を反芻する…エリカに告白出来たのは遠い昔の記憶のようだった。テトラポットに横になり、借りてきたビデオの袋を枕にする。タバコに火をつける…

………。

叫びたかった。

ミサネェとの約束を守れなかったな…。—ハルホを傷つけてたんだ—ただハルホとの事を思い出そうとしても、ぼんやりとしか思い出せなかった。

気持ちに整理をつける?無理だ。だったらそれもこれも引きずればいい。そう思う事で少しは救われたような気がした。

何時間経ったのだろう…空が白んできた。寝なきゃ。そう思い、僕は自宅に戻った。

140 :えっちな21禁さん :2006/01/15(日) 11:30:37 ID:ATz2b7I80

865 :シンジ ◆MEx/4CS4Gs :2006/01/14(土) 13:15:36 ID:2UVAYfnVO

インターホンが鳴る。

熟睡したからなのか意外だったが目が覚めるとスッキリしていた。

ステレオをつける。

BEAT DISがカウントを始める。音量を上げシャワーを浴びる。

髪の毛を乾かし部屋に戻り着替える。

フリーペーパーのディクショナリーをパラパラめくる。曲は中川比佐子に変わっていた。

ピアスを外し、階下へ。簡単に朝ご飯を摂っていると

「鮎川さんの所にお邪魔したら礼儀正しく振る舞いなさいよ。ピアスは外して行きなさい」僕は左耳を見せ

「行ってきます」これ以上家にいたら、何を言われるかわからなかった。

帰りの事を考えてボードでエリカの自宅へ向かう。チャイムを鳴らすと彼女の母が出てきた。

「今、着替えてるからちょっと待っててね」そう言うと玄関の方に手招きしてくれた。

「すいません。あの、ボードをどっか隅にでも置いてて貰えますか?」エリカのお母さんはニッコリ微笑むと玄関の中に置いてくれた。

新学期が始まる事などを彼女のお母さんと話しているとエリカが二階からパタパタと降りてきた。

「シンジ君ごめんね。お弁当…時間かかっちゃって…」

彼女のお母さんに挨拶をして僕達は出かけた。駅に向かう間も僕達は手を繋いでいた。

ラッシュアワーを過ぎた電車は比較的すいていた。

「昨日…ドキドキしてなかなか眠れなかった」並んで座りながらエリカは話しかけた。理由は違ったけど…なかなか眠れなかったのは同じだった。

「うん。僕も。少し寝ようか?」電車を乗換え京都まではお互いの頭をくっつけるように眠った。

四条大宮から京福電鉄に乗換える。

「路面電車ってボストンに住んでた時はよく乗ってたけど、こっちの方がいいね」

ボストンの路面電車を知らない僕には想像もつかなかった。

普通じゃ読めない駅名にエリカは憤慨している。僕にも車折は読めなかった。

ほどなくして嵐山に到着。駅員さんに渡月橋のボート乗場を聞く。すぐ近くだとわかり、周辺を散策する。

「河原があるからお弁当はそこで食べましょう」

桂川の河原に座り、ナプキンを開ける。

「お母さんに手伝ってもらったの。私がお母さんのお手伝いをしたみたいなんだけど…」

僕にはエリカがお弁当を作ろうとしてくれただけでも嬉しかった。

「シンジ君の家の卵焼きは醤油派?塩派?それともお砂糖派?」
「えっ?なんで?」

「お母さんが、卵焼きの味によったら振られちゃうかも!って。お弁当を作る時は先に彼に卵焼きの味を聞いておきなさいって言われたから…」

エリカは心配そうに僕の顔を見上げた。僕にとっては重要ではなかった。

「多分、醤油。作った事ないからわかんないけど」

僕は卵焼きに手を伸ばした。どんな味でも旨い顔をしようと決めて、口に放り込む。

「美味しい!本当、美味しいよ」エリカも心配だったみたいだが、僕も心配だった。味はパーフェクトだった。

そしてイビツな形をしたオニギリに手を伸ばした。これは絶対にエリカが握ったオニギリだと思った。

僕はエリカの握ったオニギリを食べた。幸せな気分だった。

「鮎川、めっちゃ旨いよ!」僕が食べてるのを見てエリカも喜んでくれているみたいだった。

「でも、多くない?」
「お母さんが…男の子ならこれ位は食べるって」
「…頑張って食べるよ」

エリカの住んでたチェスナットヒルやハーバードスクェアの話を聞きながら、僕達はゆっくりとお弁当を食べた。

「こんなに幸せでいいのかな?鮎川がお弁当を作ってくれるなんて想像もしてなかったよ」
「本当は…ほとんどお母さんなんだけど」

僕には気持ちだけで充分だった…。

お弁当を食べた後はいよいよボートへ…。

「鮎川はボートに乗った事ある?」
「シンジ君は?」
「おじいさんが昔軍隊で練習したとかで、小さい時によく乗ったよ。」

僕達はボートに乗込んだ。係のオジサンに漕ぎ方を教えてもらう。僕はぎこちなくボートを漕いだ。

「後で横に座って一緒に漕いでもいい?」
「まっすぐ進むようになったらね」

エリカは向かいに座りながら首を曲げ前をみている。僕の目線にはエリカのスカートと白い太股が見える。慌てて目を逸らすが…誘惑には勝てない。

「あっ!あっちにお猿さん!」

エリカの声に僕は正気に戻った。彼女の指差す方には野生の猿が何かを食べていた。そして目線を戻したらエリカの白い下着が見えていた。

………。

エリカに知らせようと声をかけ…、エリカが振り向いた瞬間、近くを遊覧船が通る。波が押寄せ、ボートが揺れた。「キャッ」両手を広げてボートのヘリに掴まるエリカ。上体が上向きスカートが捲り上がった。

ドキッとしたが、気付かない振りをする。—波が収まり—エリカはすぐに自分の姿に気付き、慌ててスカートを直した。

「見た?」
「見てない、見てない」
「嘘、見たでしょ」
「見てない…見えたけど、見てない」

エリカは僕の答えを聞くと吹き出した。

「見たいけど見てないよりマシだから許すよ」

イヤイヤ…見たんですけど。

そのうちボートを漕ぐのにも馴れてエリカも一緒に漕ぐことに…。腕力が違うからか、ボートは旋回を繰返す。

…暫くしてエリカも馴れたらしく、思う方向に漕げるようになった。

「昨日、嬉しかったよ」
「えっ何?」
「シンジ君がギュッとしてくれて…」
「ほんとはキチンと言わないと行けないのに…ごめん」
「嬉しかったよ。シンジ君の暖かさも感じられたし…」

僕の心の中に熱いモノが込上げてくる。歌の歌詞じゃないけど、エリカを…この瞬間を僕だけの物にしたかった。

ボートを降り、河原町へ。老舗?らしきお店でそれぞれお互いの家へお土産を買う。食事の時間に間に合わなそうなので金閣寺も銀閣寺も諦め、タクシーで清水寺へ。子供だけで乗るタクシーは初めてだったけど、観光地だからか親切に応対してくれた。

清水の舞台に立ち遠くを眺める。

「これからも色々な所に行こうな」
「本当?」
「いつかはボストンにも行こう、街を案内してよ」

エリカが僕の手を握りしめた。今の僕たちには手を握りしめるのが唯一の愛情表現だったのかも知れないと思った。

茶店に立寄り少し休憩。お店のおばちゃんに三寧坂、二寧坂の話を聞く。帰り道は坂を下りねねの道から八坂神社を抜けなさいと教えられる。

「ここでコケたら三年は不幸になるらしいね」
「シンジ君の手を握っておくね、不幸になるのも一緒だよ」

こんな幸せでいいのだろうか?僕だけが幸せになっても…少しだけ不安になった。

帰り道、エリカの両親と食事をする事を思いだし…緊張し始めた。…エリカのお父さんは商社マンだったけど、想像と違いお喋りで優しい人だった。

晩ご飯はシャブシャブで—エリカの提案だと思う—美味しかったと思うが緊張してあまり記憶がない…。とりあえず歓迎された事にホッとした…。緊張と弛緩。エリカの家からの帰り道ははてしなく長かった。

次の日、午前中は学校の準備に時間を費やす。昼過ぎにエリカはやってきた。【さらば青春の光】を観る。

【TheWho】の音とベスパ…細身のスーツにモッズコート。最初はスタイルに惹かれたが…主人公の不器用さ、無力さに…魅入ってしまう。

映画が終わり…エリカが口を開く。

「もしも私たちがあの世界に生きていたら、どうなってたのだろう?」

僕は答えの代わりに後ろからエリカを抱きしめた。…10分20分と時間が過ぎ、エリカが身体をずらせた。

僕の首に手を回し…目を閉じて顔を近付けてきた。僕もエリカを抱き寄せ、エリカの頬と僕の頬を寄せた。

エリカの首筋に唇を押し当てる。瞬間、エリカの首筋に電気が走ったみたいな反応があった。

「ゴメン…」エリカの反応に僕は唇を離した。エリカは横に首を振り少しキツく…僕を抱きしめた。エリカの心音が聞こえるような気がする。吐息が首筋にあたる。

僕はもう一度…エリカの首筋にキスをした。…今度はエリカの身体から力が抜けていく。自然にエリカの首筋から唇が離れた…。

僕は思い切って…エリカの頬にキスをした。エリカの身体は一気に緊張した…。

暫くしてエリカは…顔を動かし、自分から僕の頬にキス…。一瞬だったけど、エリカの唇は暖かく…柔らかだった。

僕とエリカは何度もお互いの頬にキスを繰返した。緊張して…目を開けられなかった。「Fainally…」エリカが小さく呟いた…。

エリカの言葉に呪縛が解けたようだった…。少し身体を離して、次の言葉を探った。

「ベティブルー…観る?」
「どんな映画?」ミサネェは絶賛し、竹山さんは「キチガイ女とアホ男の話」って言ってた事を正直に話した。

ビデオをセットし、ベッドに座っているエリカの背後から抱きしめるように座る。

再生ボタンを押したとき…

「シンジ君…ミサさんの事、好き?」唐突に聞いてきた。

「エッ?なんで?」
「お弁当を買いに行った時にミサさんが…そのうちシンジ君を狙うかも…って」

ミサネェが冗談好きな事、年が離れてる事、僕を弟のように心配してくれているだけ…そんな風に言い訳をした。

「そう。…そうよね」エリカは安心したのか身体をあづけてきた。

僕はエリカと二人、ブランケットにくるまった。

映画が進むにつれ、時折エリカは頬にキスを求めてくる。まるでミサネェに嫉妬しているかのように…僕の頭の中は心とは裏腹に冷静だった…。

エリカがキスを求める度にミサネェが脳裏をかすめたからだった…。

濃厚なラブシーンになるとエリカは僕の目を塞ぐ。

映画が終わった後…。

僕はエリカを抱きしめ…キスをした…。

初めて唇を重ね合わせる。頬へのキスと違い…真っ白になるようだった。身体が震えた。

エンドロールが流れている間、お互いがお互いを確かめるようにキスを繰返した…。顎の辺りが冷たく感じる。唇を離しそっと目を開けると、それはエリカの涙だった。

エリカは目を開けると恥ずかしそうに「ごめんね。嬉しいのに…涙が出ちゃう。…なんでだろう…。シンジ君の前だと泣き虫になっちゃうよ」…感極まったのかそのままエリカは泣きじゃくった。

僕には抱きしめる事しか出来なかった。

ひとしきり涙を流して落着いたあとに、エリカは「もう一度…キスしてもいい?」それはそれは甘いキスで…蜜の味だった。

そっと身体を離し…カーテンをあける。 夕方になりつつあった…。このまま映画の余韻に浸りたい気持ちもあったが…散歩に出掛けようと提案する。夕暮れを手を繋ぎ瀟洒な町並みを抜ける。

「おなか空いたね…」 ラーメンを食べようとなり、ラポルテへ…。食事が終わり芦屋川沿いを散歩する。

「シンジ君に手紙を書いてもいい?」
「いいけど、なんで?」
「シンジ君に伝えたい事あるの。気持ちを口で伝えたくても…30%も伝えられないかも」
「だから、手紙に書いてみようって…」
「うん、嬉しいよ」心の中で僕は「エリカの思う程に純粋じゃないし汚れている。エリカに嘘もついている」そう叫んだ。

現実には…何一つ言えなかった。

100回目のキスをしてから彼女を送り届けた後。部屋に戻りたくはなかった。部屋に戻れば…きっと落込む。

ミサネェの声を聞きたかったし…ハルホに謝りたかった。そしてエリカの唇も欲しかった。僕には何も出来なかった…全てを失うのが怖かった。

—三宮に行けばミサネェに会える。電話をかけたらハルホはきてくれる—

………。

—ミサネェに会ってどうする?本当にハルホが来てくれるのか?もしも来たとして…ハルホとどうしたいんだ?—

僕は自問した。

そして自分の唇に触れてみる。唇は乾いていてエリカの唇を思い出せなかった。

諦めて家に帰ろう…。

明日は新学期だった。

さすがに初日から一緒に登校するのには抵抗があったらしくエリカは先に学校へ行った。僕が教室に入った時にはエリカは他の女の子達から囲まれて質問責めにあっていた。何人かの女の子が僕を見つけ手招きをするが、僕は笑って応じなかった。

他の二人の男子生徒が声をかけてきた。

「やっぱ辞めるみたいだぜ」
「もう退学届を出したらしい。一応学年末まで保留って事らしいけど」

始業のベルが鳴って席につく。空席は6個。担任教師はそれには触れず、体育館へ誘導する。エリカは普段は一人で移動していたが、今は何人かがそばにいる。楽しそうだった。

「男3人で残り二年半はキツいな」移動中に声をかけられた僕は「マジでキツいかもな…」そう答えた。

始業式は午前中に終わったが結局エリカとは話す機会のないままに別々に帰宅する事になった。

帰り道、家の近くの公園のところでエリカは待っていた。

「大変だった?」僕はエリカに尋ねた。

「うん…。恥ずかしかったよ。色々聞かれたよ」どっちが告白したのか?キスはしたのか?…それ以上のキワドイ質問もあったらしい。

「恥ずかしかったから答えなかった」

エリカはそう言うと俯いた。色白だから顔が赤くなるとすぐにわかった。

「…それに話したら…シンジ君に嫌われそうだし」僕はそんなんじゃ嫌わないと笑って…自販機でオロナミンを2本買った。

「みんな、シンジ君はエッチだって…言ってたよ」
「えっ!?何で?」

「理由はないけど…変に大人っぽいし多分エッチだって」「年上の女の子と付き合ってたんじゃないかって」

そんな筈ないやん!と否定したが。

「ミサさん…凄い美人だから心配。」

僕が否定しようとしたら…

「シンジ君の事、心配してないよ。」そして…

「もうちょっと待ってね」
「………?何を」

「もうちょっと時間がかかるよ。ごめんね」エリカが何を言ってるのかわかった。

「エッチな話を聞き過ぎたんちゃう?俺は鮎川のそばにいれるだけで幸せやねん」

「あっ!でも…準備出来たら教えてな…でも鮎川がそんなエッチな女の子とは思わなかったよ」おどけて話すとエリカは顔を真っ赤にしていた。

「まだ名前で呼べないのに。鮎川の事が好きって…やっと言えたのに。俺は鮎川を大切にしたいから…」

「うん…ありがとう。私もシンジ君が好きです」

暫くは平穏な学生生活が続いた。

新学期が始まり、土曜日は午後からバイト、夜は竹山さんの弟子として11時まではクラブで手伝いやDJの勉強をさせてもらう。

竹山さんとの約束で、イベントの時以外は必ず11時になったら帰る事になっていた。

7時でバイト上がりの時が一番楽しかった。オープン前のクラブで機材の掃除や時間があればスクラッチを教えて貰える。

8時のオープンから10時頃まではお客さんが殆どいないので竹山さん達と馬鹿話をしたり、食事に連れてって貰ったりした。

平日は半分くらいはエリカと勉強したり、遊んでいた。もちろん日曜日や祝日はエリカと過ごしていた。

秋も深くなり始め、文化祭の準備をしていた頃…中学時代のクラスメートの女の子から電話があった。

「ハルホの事なんだけど…最近あまり学校にも行ってないみたい。何か知ってる?」

彼女は僕がハルホと別れた事を知らないようだった。彼女にその事を知らせるべきかどうかはわからなかった。

彼女とハルホは親友だったから、別れた事を知ってて当然だった。それを知らないのには理由があるはずだった。

「最近…忙しくてあまり会ってないよ」

「そう…。それじゃぁハルホに学校に行くように言っといてよ。後、私に電話するようにって」彼女は自分が避けられる理由が思いあたらないし、ハルホが気になる…そう言って電話を切った。

僕自身ハルホのことが気にならない訳じゃなかった。ただ何処かにしまい込んでいた記憶を…もう一度引っ張りだすのは大きな苦痛が伴なった。

—記憶を辿るだけでも苦しいのに—

僕はどうしても受話器を取れなかった。

その夜、ベッドの中でハルホのことを思いだす…しかし記憶の中のハルホは顔も声も歪んでいた。

昨夜は…色のない夢を見た気がした。歪んでいたのは僕の涙のせいだったのかも…。

シャワーを浴びる。朝ご飯は摂らないで家を出た。エリカの家に向かう間に気分は入れ替わっていた。

「おはよう、寒いね」
「そう?まだまだ暖かいよ」

長い間ボストンで生活していたエリカとは寒さに関してだけは意見が合わなかった。

「シンジ君の手…冷たいね」
「そう?」
「暖めてあげるね」エリカは僕の掌を包んでくれた。

エリカがお母さんからジャンコクトー展のチケットを貰ったから、一緒に行こうと誘う。前にもエッシャーの騙し絵を観に行っていた。

土曜日の夜

バイトを6時に上がった僕は高架下をブラついていた。ミサネェの友達のバイト先を覗いたら、ミサネェが店のカウンターに座っていた。

毎週のようにミサネェとは顔を合わせていたし…たまに二人っきりになるとキスもしていた。ただし大人のキスではなく、ミサネェの言う挨拶替わりのキスだった。

いつもエリカに悪いと思うのだが、「たまにシンちゃんで性欲を満たしておかないとねぇ」冗談とはいえ、そこまで言えるのは男前だと思う。

それにエリカの事を聞かれながらするキスは…少し興奮—スゴクスキだった—した。

「シンちゃん、赤萬イコ!」僕はミサネェと餃子の赤萬に行った。本当は赤ちゃんの洋食かファミリーで蕎麦定食が食べたかったが拒否権は持合わせてなかった。

「10人前とビール」

ビールを飲みながら、ミサネェの知合いのショップ店員が何故かオッパイ占いやオカリナ占い。はたまた靴下占い…占い師に転向しているって聞いて大笑いした。

僕もバイト先の角を曲がったとこにある印度料理のパキスタン人店員が、店の前でビラを配るので間違ってウチに入った客がカレーばかり注文する話をした。

餃子を食べてから二人で竹山さんのとこのハコに向かう。

ミサネェと坂道を上りながら歩いていると高校の同級生と偶然道路越しにすれ違った。向こうはミサネェと歩いている僕を見て怪訝な表情をしていた。僕は気付かない振りをした。彼女達は少し後をつけて…クラブに入るのを見届けたようだった。

エリカに直接話してくれたら問題ないけど、変に噂になったらマズいなぁ…そう思いながら店の準備をした。

開店準備が終わる頃に竹山さんがやってきてミサネェと馬鹿話をしていた。週明けの事を考えたら憂鬱だったからエリカには明日話そうと決めた。

今日は別のクラブでイベントがあり、東京からもDJが来てるので、竹山さんは9時から店を抜けて遊びに行くとの事だった。

僕は9時で上がる事にした。10時までに帰ったらエリカと電話が出来るなぁって思った。

イベントのせいもあり9時前までお客さんが殆ど来なかったので、みんなで隅のテーブルでトランプをして過ごした。

時間がきて僕は帰る事にした。ミサネェも明日が早いからと途中まで一緒に帰る事に…。

「寒い!」クラブを出るとミサネェが腕を組んできた。誰かに見られないか心配だった。

駅迄の帰り道、路地を通る度にミサネェにキスをされた。僕は誰かにみられないかが気になったので…ミサネェにそれを伝えた。

「シンちゃん、キスするの辛くなった?」
「エリカちゃんに悪いから?嫌になっちゃった?」

僕が答えを探していると「シンちゃんが嫌ならもうキスしないよ」

………。

「嫌じゃ…ないよ。」
「嫌じゃないけど、好きじゃないって事?」

僕に逃げ道はなかった…。

「…ミサネェのキスは好きだよ。でも恥ずかしいよ」

結局僕は自分からミサネェを抱きしめてしまった。

初めて自分から…ミサネェにキスをしてしまった。

しかし僕はかろうじて踏みとどまった。もちろん、ミサネェにもそこまで踏込むつもりはなかったんだと思った。

竹山さんがミサネェに好意を抱いているのは知っていたし、ミサネェも知ってた。

ミサネェは以前、僕に「身内でグダグダになるのは嫌だからねぇ」言ってた。だから僕をからかって楽しんでるだけだと、自分に言い聞かせた。

気を取り直しての帰り道「やっぱ近親相姦はマズいよねぇ」と言って僕を笑かせていた。

僕もホッとした。

ミサネェと別れて芦屋駅に着いたのは10時前だった。家に帰ってからじゃ間に合わないので、公衆電話からエリカの家に電話した。エリカは予想外の電話に素直に喜んでくれた。

「少しだけ…シンジ君に逢いたいな」

僕は急いでエリカの家に向かった。

ガムを噛みながら唇を拭う…

エリカの家に着くとマグカップに紅茶を淹れて玄関のところで待っててくれていた。自転車を止めてマグカップを受けとり…二人で公園へ。

お母さんにシンジ君と逢うって言ったら「毎日一緒に飽きないの?そのうちシンジ君に飽きられて捨てられちゃうかもよ」って…エリカは少し心配そうに僕を見上げた。

「そんな事ない。今夜だって俺から電話したんだし」僕は今すぐにでもエリカを抱きしめたかった。

公園に着いた頃には紅茶は冷めかけていた。ベンチに座りミサネェの友達がどんどん占い師になっていく話をした。

エリカは靴下占いだけは嫌って言ったので、「僕が占うから靴下脱いで」って言うと本気で嫌がった。

そして餃子を食べた話や竹山さんの話のついでにクラスの女の子を見掛けたって事も話した。ミサネェとのキスの話はしなかった。

「今度、赤萬に行きたい。連れてってくれる?」

僕はいつでもいいよと答えた。

暫く話をしたらエリカがもたれてきた。

「ギュッとして…」
「餃子を食べたよ…」

エリカは気にしない…そんな表情で抱きついてきた。—優しいキス—僕はエリカを強く抱きしめ…エリカを見つめた。エリカは顔を僕の胸に埋め…

「餃子味のキスだね。」
「でもシンジ君、ミサさんの香水の香りがするよ」

エリカは不安げに呟いた。

「あー。赤萬を出た後、プシューってしてたよ」

エリカはそれを聞くと「シンジ君ごめんね。シンジ君の事が好きすぎて…不安になっちゃう」

僕はこれからはミサネェと二人になるのは避けようと思った。エリカに嘘をつくのは嫌だったし…辛かった。

エリカを送り届けた時、ちょうどエリカのお父さんが出張から帰ってきた。挨拶をして帰ろうとすると、

「ちょっと待ってなさい。北海道のお土産があるんだよ」そう言うと小走りに家の中に入って行った。

ほんのちょっとのオーバータイム。キスも抱きしめる事も出来ないが、エリカは幸せそうに僕の手を握っていた。

「はい、これ。ご両親によろしく。エリカ、シンジ君をそこまで送って行きなさい」

僕はお礼を言い、それからエリカを制した。

少し前に—そこまで送るね—を繰返し、1時間くらい行ったり来たりを繰返したので見送りはなしと決めていた。

家に帰り、母にお土産を渡した。生チョコと柳葉魚だった。母は喜びさっそく父の酒のあてに柳葉魚を炙っていた。

部屋に戻り、ベッドに横になる。エリカの顔とミサネェの顔が交互に浮かび上がる…確かにミサネェの香水の香りがした。

—ミサネェの匂い—ミサネェとのキスを思い出すと激しく勃起した。

目を閉じてミサネェの唇の感触、抱きしめた時の胸の感触…僕はミサネェの—キスしている時の—かすかな喘ぎ声や漏れた吐息…唾液の匂いを思い出した。

………。

終わったあと…後悔した。

学期末の試験が終わった。

エリカとかなり勉強したせいか、成績は上がっていた。エリカも苦手な古典や日本史を克服し、日本史は僕よりも点が高かったぐらいだ。

クラスもこれ以上の脱落者を出したくないという作用が働いたようで、文化祭以降は雰囲気が良かった。

下校時、エリカと夕方に待ち合わせの約束をし三宮へ…。

親の許しが出たので、クラスの友達と僕がお世話になっているクラブに一緒に行く事になっていた。6時にバイトが終わり店を出たら、エリカ達が迎えに来ていた。

「今日はスケーターズナイトだから危ないかも」少し離れて見てないとダイブする連中に蹴られたり揉みくちゃにされると忠告した。

その後はとりあえずオープン前のクラブに行き、リハというかランプの角度と天井の高さをチェックした。

竹山さんの弟子のモーリーさんがシンジの曲はビースティーな。出番は最後だから10時過ぎな。

…ビースティーボーイズの曲はいつも一番の盛上がりを見せるから正直怖かった。

モーリーさんとトリックの打ち合わせをしていたら竹山さんが入ってきた。僕達は慌てて挨拶に向かった。

「オッ!エリカちゃん久しぶり!」竹山さんはそう言うとクラブのスタッフに向かい大声で

「シンジの彼女が来てるぞ〜。今夜のトリはエリカちゃん!」エリカは驚いて友達の影に隠れた。

竹山さんの計らいでクラブのスタッフがゲスト用のステッカーを3枚くれた。

これで入場料も飲食もタダになる。エリカも友達も喜んでいた。スタッフミーティングが始まるので、彼女達は8時半には戻ると一端外へ遊びに行った。エリカ達がクラブに戻ってきた頃にはハコはかなり盛上がっていた。

エリカが僕を見つけると、友達から離れて僕のところに来た。

「頑張ってね。みんなシンジ君が練習しているのを見てカッコイイって言ってたよ。」
「恥ずかしいよ。本当はスケーターズナイトって苦手なんだ。」

ケージの中で滑るのは檻の中のリスみたいで嫌だった。

「そうそうチアキは竹山さんがタイプなんだって!」
「竹山さんとチアキじゃ年の差があり過ぎだよ(笑)」
…竹山さんとミサネェは同じ年だった。

「とりあえずみんなで竹山さんにお礼のプレゼントを買ったの。」

竹山さんはまだ外出してるから帰ってきたらブースに入る前に渡すようにと言った。竹山さんはプレー中は神経質になるから、あまり近寄りたくはなかった。

「シンジ君にも…プレゼント。これは私からだよ。」エリカは僕に革のリストバンドをプレゼントしてくれた。

「ありがとう!つけていい?」包みを開けた僕はリストバンドを付けてみせた。

僕が有頂天になって喜んでいると竹山さんとミサネェ達がやってきた。僕がエリカに合図するとエリカはチアキ達を呼びに言った。程なくして3人が帰ってきた。

僕が口火をきり、竹山さんにお礼を述べた。チアキが竹山さんにお礼を言いながら、プレゼントを渡した。竹山さんもメチャクチャ喜んでくれたみたいだったが「必ず11時には帰るように!と釘を刺す事は忘れなかった」

僕も上がっていいと言われたが、モーリーさんが2部が終わるのは1時を過ぎるって竹山さんに囁いた。

結局エリカ達は11時に帰り—チアキの家にお泊り—僕はミサネェの友達と一緒にミサネェぬ送って貰う事になった。

エリカ達は一端はチアキの家に行くが、夜中にこっそり家を抜け出してロイホに行くらしい。僕も合流する事になった。

「2時過ぎから3時迄にはシンちゃんを届けるからね」ミサネェはエリカに囁いていた。

その後は僕は準備に入り、エリカ達はフードを注文しに行った。

ミサネェの友達がやってきて「シンジ君はプレーボーイやね。ミサと彼女じゃタイプが違うから…」冗談にしてはタチが悪かった。僕は慌てて否定して、「気合い入れてきやす」と逃げた。

9時半を回り会場のテンションは急に上がり始めた。エリカ達は初めてのクラブだったので、絡まれないように竹山さんやミサネェ達がそばに付いてくれていた。僕はブースからそれを見ていた。

いよいよMCが入りイベントはスタートした。RUN D.M.C.のウォーク ジス ウェイがオープニングだった。イキナリ会場はパニックになる。人の波が押し寄せる。あまりのテンションの高さにエリカは後ろの方で驚いていた。

竹山さんはビールを飲みながらチアキと話していた。すぐにエリカに声をかけてきた男がいたが、ミサネェの友達が払いのけてた。

会場内のテンションが一気にヒートアップする。大きなトリックを次々に繰り出されていた。ダイブが始まる—まるでパンクのライブ—

そろそろ僕の番だった。緊張した。竹山さん達やミサネェ達がモーリーさんの合図で前に移動してくるのが見えた。

「トリはスケーターズキングのシンジ!」

あまりに恥ずかしいMCと暴動のような盛上がり—シンジコール—が僕をドン引きにさせる。ギターのリフが流れる。覚悟を決めて、次のイェーイの声で、僕は飛出した。

「ユーガッタ ファイト、ソー U ライト…トゥ パーティー!」

みながレコードに合わせて叫んでいるのが目に入った。僕はカットバックやグラブ、180と持ってる派手なトリックを全て出した。

異様な盛上がりの中。ランプを降りたら、みなに抱えあげられて流されていった。

一回目のステージが終わりエリカを捜したが、いろんな人がハイタッチを求めたりするのでなかなかエリカの所には辿りつけなかった。やっとの思いでエリカの所に着いたらシャツはノビノビになっていた。

エリカに話しかけようとするが、知らない人が僕に話し掛けてくるのでなかなか話せなかった。

エリカ達が帰る時間がせまっていたので、5分だけちょうだいといいエリカをクラブから連れだした。Tシャツに短パンで表に出たら身体中から湯気が立ち上ぼった。

「今日のシンジ君すごかった!私もシンジコールしたよ!」
「ありがとう!でもメチャクチャ緊張したよ!」

そう言って僕はエリカを抱きしめた。

「汗くさくない?」エリカは首を横に振り「今日のシンジ君はヒーローだったよ」と呟いた。

このままずっと抱きしめていたかったが…12月の神戸はヨレヨレの半袖に短パン姿の少年には優しくなかった。

「終わったらロイホに行くね」
「うん。初めての夜遊びだからチアキ達といっぱい話してシンジ君を待ってるね」

僕とエリカは手を繋いだままクラブに戻った。チアキやモーリーさんに冷やかされるが、気にしなかった。

時間が来てエリカ達は帰り、僕はミサネェ達と正屋に蕎麦を食べに行った。蕎麦を食べても次の出番まで時間がかなりあったのでみんなで飲みに行った。

二回目のステージは—さっき以上の客が集まっていたし、みな酔っていた—先程とは比べものにならないぐらいに盛上がりっていた。

僕はランプに立つ前に、既に上半身裸で気合いを入れていた。興奮した僕はランプに上り持ってたシャツを投げ入れた。—終わってから僕は後悔した。予備のシャツを持ってきてなかったのだ。

「裸にダウンで帰ればええやん、セクシーやで」ミサネェは僕が慌てているのを見て、笑いながら僕を突放した。

困っている僕を見てモーリーさんがシャツをクラブのスタッフ用のシャツを借りてきてくれた。

適当に挨拶したりして帰る事に…。ミサネェは車を回してくる、と言い残し先にクラブを出た。帰る時に竹山さんがギャラをくれた。

「店からボーナス込みで出たって」そう行って渡してくれた。

クラブの出口でミサネェの友達と待ってたら、すぐにミサネェの車がきた。僕らが車に乗り込むと車は岡本のマンションに向かった。岡本まではすぐだった。

「ありがとう、ミサ。それじゃシンジ君おやすみ」
「おやすみなさい」

ミサネェは車を出した。

「シンちゃん、カッコ良かったよ。」
「あ、ありがとう」
「で、シンちゃんが裸で滑ったのは何?あたしに何かアピールしてたのかな?」

信号で車を停める。車が止まる度にミサネェは頬を指差しキスを要求する。その度に僕はそっとキスをした。カーCDはマービンゲイを流していた。程なくして車はロイホの近くまできた…

「さて、着いた。約束の時間までまだまだ時間あるよ。シンちゃんどうする?」
「一人で待つ?それともお姉さんと車をどっかに停めてイチャイチャする?」

………。

僕はどう答えたらいいのか迷った。ミサネェと過ごす時間は—振り回されるのを含めて—嫌いではなかったから。

「何マジになってんの。…いいわ、お話しましょ。」ミサネェは車を移動させ、誰も通らないような所で停めた。

「………。」

沈黙が続く。ハンドルに頭をつけ、おもむろにミサネェが口を開いた。

「ごめんねシンちゃん…」
「お姉さん、わがままばっかりでシンちゃんを困らせてるね。」
「そんなんじゃないです…。」

ミサネェの事は好きだったし、出来ればずっと一緒にいたかった。ただ…それが恋愛感情かどうかわからなかった。

「ミサネェは大切な人だから。だから関係を大切にしたいんです」

ミサネェはそこまで聞くと…

「もしかしてフラれちゃった?」明るい声で聞く。

「違う、そういうのと違います」

ミサネェは僕に抱きついてきた。

「シンちゃんごめんね」

僕もミサネェを抱きしめ…た。

そのまま僕はミサネェにキスをした、して…しまった。

僕からミサネェに初めての大人のキス。ミサネェから甘い吐息が漏れる。

「シンちゃん…ズルイよ…」そこまでミサネェが言うか言わないかのうちに僕はもう一度、大人のキスをした。

僕も限界だった…。ミサネェの身体、胸の膨らみを身体で感じていた…。もう少しで…。

「シンちゃん。キスが上手になったね。」ミサネェは…多分泣いていた。

「これからもキスしてくれる?」
「…うん。」

ミサネェは僕の着ていたシャツをまくりあげ、胸にキスマークをつけた。

「よし!マーキングしてやった。今日はシンちゃんのセミヌードみてハァハァしちゃった」
「オッサンみたいな事…言わないでくださいよ」

ミサネェは重い雰囲気を払拭してくれた。ギリギリの所で気を使ってくれていたんだとは…まだ気付かなかった。

その後はロイホの前に移動してエリカ達の到着を待ちながら、ミサネェの友達のオッパイ占いや靴下占いの話をした。どうやら靴下占いは廃業したらしかった。

「今日はシンちゃんのオッパイ占いしちゃった!」
「ズルですよ、アレは反則!」
「じゃ少年、私のオッパイを今から占うか?」
う…占いたかった。

「今度、占いさせてあげるよ。ただしオッパイだけ」
「恥ずかしいからいいですよ、それにオッパイ占いはそんなんじゃないでしょ!」

ハザードランプの点滅に気付いてエリカ達が交差点の向こうから手を振っていた。それを見たミサネェは「少年、おやすみなさいのチューは?」「出来るはずないでしょ!」最後は笑いにしてくれた。

「早く降りなさい。女は敏感なんだから!」僕がミサネェに一緒にロイホに行かないかと誘ったら、そう答えた。僕は礼を言って車を降りた。

車を降りた瞬間…外気に触れたせいかトランクスが濡れているのを感じた…。

僕がドアを閉じるとそのままミサネェは車を走らせ、一端エリカ達の前で止まって…何か言葉を交わしてから帰っていった。四人でロイホに入る。おなかが少し減ってたのでそれぞれ夜食を注文した。

隣りに座ったエリカはチアキ達にわからないように…テーブルの下でそっと手を握ってくれた。

本当はエリカを連れて帰りたかったが、そんな事が出来るほど大胆ではなかった僕は朝方までダラダラと女の子達の話に付き合った。

店を出ての別れ際

「エリカを泣かせたらダメだよ。エリカは心の底からシンジ君の事が好きなんだから」
「そんなの当たり前。おやすみ」

帰宅して…着替えもせずにベッドに倒れこんだ。

次の日

エリカは昼寝しているところにやってきた。部屋に入って、ベッドで寝ている僕のそばにそっと座り…本を読んでいた。らしい。

僕はエリカの寝息で目が覚めた…。そっと起きて、毛布でエリカをくるんだ。シャワーを浴びる為に下着や着替えを持ち、階下へ。

風呂に入っている間に母にお握りを作ってもらう。風呂から上がるとお握りと卵焼きが出来上がっていた。

「シンジ。お母さんはお父さんとイケアに行くけど、あなた達もくる?」

僕は首を横に振り

「アソコはなんにもないからいいよ。膝も脛も痛いし…」

お握りとお茶を持って部屋に戻るとエリカはまだ眠っていた。セーターをクローゼットから取りだそうとしたら、エリカが目を覚ました。

「ごめんなさい、シンジ君を見てたら寝ちゃってた。」
「母さんにお握りを作ってもらったから一緒に食べよ」

僕はセーターを取りだすのをやめてエリカと一緒に毛布に包まれた。

昨日は興奮していたから気付かなかったが、アチコチぶつけていたみたいだった。内出血してたり、擦り傷があった。

お握りを食べながら昨日の話をした。

「チアキがまた行きたいって。ケイちゃんは怖かったって」
「アレからどうしたの?」
「チアキの部屋で朝までおしゃべりしたよ。シンジ君の話もしちゃった」
「それでチアキ達に怒られちゃった…よ」
「えっ!なんて?」
「………。」
「どこまで…進んだのか…聞かれて…」

エリカはそこまで言うとお握りを食べ始めた。

よほど恥ずかしかったらしく、思い出して顔を赤らめている。

「キスした事あるって…言ったら…それだけ?って」
「シンジ君がかわいそう…って」僕はエリカの事が好きだし、怒こった事もないよ…そう答えた。

「それに…ミサさんにシンジ君をとられるよって」僕はそれもない。全然ないって答えた。

「心配ないよ」そう言いながら、僕はエリカを抱きよせた。

エリカを抱えるようにしてベッドに寝かせた。

「心配しないで…今日はゴロゴロしようよ」

僕はエリカにキスをした。

「ドキドキする。もう…何回もキスしてるのに。いつもドキドキするよ」

僕はエリカを抱きしめた…。そしてエリカの胸に顔を埋めた。エリカは一瞬とまどったみたいだったが、僕を抱きしめた。

「エリカの…暖かいよ。それに柔らかい…」エリカの心拍数が急に上がったのがわかった。

「シンジ君。…怖い…けど…うれしい」

「シンジ君…シンジ」

エリカの体温が伝わる…甘い吐息が漏れる。

「……エリカ。俺…ずっとエリカの事が好きだった。これからもずっとこうしていたいよ」

エリカの頬を涙が伝う。僕はエリカをさらに強く抱きしめ…キスをした。

—等身大のキス—

「エリカ…。このまま時間が止まって欲しいね」エリカは目に涙を浮かべながら…何度も頷く。

「ずっと大切にしてね…シンジ君…ずっと一緒にいてね」

僕は心の中で自分を呪った。優柔不断な自分を呪った…。果たして僕はエリカに相応しいのだろうか?今はダメでも…相応しい男になれるのだろうか?僕は…エリカを守り続ける事が出来るのだろうか…

エリカはいつも僕を真直ぐに見つめる…。一点の曇りもない、力強く優しい目で僕を見つめる。僕がエリカに何かを話しかけようとした時、エリカはそっと…僕の手を握った。

僕はエリカに何を言おうとしたのだろう?ハルホとの事?それともミサネェとの事?思い出せなかった。

エリカは僕の手をそっと自分の左胸にあてた。

「ドキドキしてる…」

僕は…少しだけ、ほんの少しだけ…エリカの胸を触った。

「エッチな事はまだダメ…」エリカは顔を真っ赤にしながら懇願した。僕はエリカにキスをしながら…右手にすかだけ力を込めた…。

エリカの表情が変わる、かすかだけど眉間に皺がよる。僕はエリカの首筋に唇を押し当て…エリカの胸にあててる手に力をいれた。

「ダメ、ダメだよぉ。変になっちゃう…」エリカは首を横にイヤイヤをする。エリカの左手は僕の右腕を握る。僕は少し身体を起こしエリカの首の後ろから左肩を抱くように左手を回した。

エリカの息が少し粗くなり、呼吸も乱れている。

「シンジ君。怖いよ…変になっちゃうよ…嫌われちゃうよ…」うわ言のように繰返すエリカ。僕はエリカが愛しくてたまらなかった。

奮ぶりが収まり…エリカの呼吸が落着き始めた頃。僕のトランクスの中はグッショリしていた…。射精してしまっていたのかはわからないが…射精したと言っても間違いじゃないゃうな気がした。

エリカの呼吸が落着くのを待ち…僕はエリカにキスをした。

「シンジ君のエッチ…」エリカは首にキスされたあたりから…気が遠くなったと言って怒っていた。

僕は悪戯っぽく「エリカはエッチな顔して気持ちいいって言ってたよ」

顔を真っ赤にして抗議するエリカ。

「もう…触らせてあげない!」
「えー、本当にダメなの?」
「嘘だよ。でも恥ずかしいからたまにだよ…」そう言ってエリカは僕にキスをしてきた。

クリスマスの前の週
エリカはお母さんと作ったというクリスマスリースを届けてくれた。

「クリスマスはどこに行く?お母さんがシンジ君を招待したら?…って」僕はエリカに合わせてあげたかった。

「二人の初めてのクリスマスだね。シンジ君とずっとクリスマスを迎えたい」

—ラジオからワムのラストクリスマスが流れる—

クリスマスイブは二人でデートしよう。少し寒いけど、海でプレゼント交換をしよう。夜は12時少し前に…待ち合わせして…少しだけギュッてしたい…。僕は全てを叶えるつもりだった。

クリスマスイブ前夜

僕は夕方にエリカへのプレゼントを買いにミナミに行き、夜は竹山さん達のクリスマスイベントに少しだけ顔を出した。

11時前に帰宅すると…待ってたかのように電話のベルが鳴った。ハルホからだった。

「シン…ちゃん。シンちゃん痛いよ…心が痛い…よ。」ハルホは受話器越しに泣いていた。僕がどうしたのか聞いてもハルホは泣きじゃくっていた。

「…どこにいる?」
「近く。」

僕はとりあえずハルホを迎えに行った。

ハルホは公園のベンチに震えながら腰かけていた。(エリカと僕の家の間にある公園ではなく、駅近くの公園)

「久しぶり。どうしたの?」
「シンちゃん…」僕は羽織っていたダッフルコートをハルホの肩にかけた。

「ちょっと待ってて」
僕は自販機に走りはちみつレモンのホットを2本買い、ハルホに渡した。

「ありがとう。」
「去年の今頃はよくこの公園に来たね。」
「…うん」

ハルホはホットレモンに口をつけた。

「どこで間違ったんだろう?」

………。

「わかんないよ、どこなの?私は何を間違ったんだろうね」

僕はハルホにかける言葉を捜した。冷たい風が僕を貫いていく。

「何がなんだかわかんないよ。こうやってシンジと会えたのに…シンジが遠いよ」

僕は途方に暮れた…その場を逃げ出したかった。

「こんな事して、呼出したりしたら嫌われるだけなのに!」

「…こんな事で嫌いにならないよ」やっと出てきた言葉…でも本当は「嫌いになれない」だった。

「私はシンジの事を忘れたことないよ」
「お願い。シンジのそばにいたいの!」

………。

僕はハルホの気持ちに応える事は出来なかった。そして…それだけは伝えなきゃ、そう思った。

「ハルホ…」久しぶりに口にした名前…だった。

「ハルホ。ゆっくり聞いて欲しい。僕はハルホの気持ちに応えられない。だけど僕はハルホの友達だよ」

ハルホの嗚咽が聞こえる。暫くして…ハルホが笑顔で顔をあげた。

「初めてかも。シンちゃんの言葉。大切にするね」ハルホはそういうと抱きついてきた。

…僕はハルホに、今まで優しい言葉も大切な言葉も伝えてなかったのかも知れなかった。「ごめん、ハルホ…ごめんな」

本当に辛いのはハルホだった。

「少しだけ…私にも少しだけ優しくして、ね」僕はハルホを抱きしめる事だけはできなかった。

ハルホの落着きを待って、ハルホの学校の事、クラブの事なんかの話を聞いた。時間は12時を少しだけ回り、イブになった。

「少しだけだけど。ほんの少しだけどシンジと…クリスマスが過ごせたね。ありがとう」

別れ際、ハルホはそういうと僕の頬に軽くキスをした。僕もハルホと友達として…付き合えるならうれしかった。

クリスマスイブ

僕はエリカにハルホの事を話す事にした。それでエリカに嫌われても…エリカを裏切り続ける方が僕には辛かった。

エリカと出会った当時、ハルホとは付き合ってた事。エリカに惹かれ始めたのは入学してすぐだった事。夏には別れた事。そして昨夜、昨夜で全てが終わった事。僕は全てを話した…。

真剣な表情で聞いていたエリカは、僕の話が終わると…

「シンジ君が悩んでいたのは…なんとなく分かってたよ」

「でも、シンジ君がこうして話してくれてうれしい。」エリカはそう言うと、自分の掌で僕の掌を優しく包んでくれた。

僕はエリカをそっと抱きしめた。

「シンジ君…本当に私でいいの?」

「エリカでなきゃダメなんだ…僕のエリカでいて欲しい」僕はエリカをギュッと抱きしめた。エリカもそれに呼応した。

僕とエリカのクリスマスイブは始まったばかりだった。
神戸の街に繰り出そう。

異人館のあたりは恋人達でいっぱいだった。僕たちは手を繋ぎ…心も繋がっていた。

「シンジ君が本当の事を話してくれてうれしかったよ。」

異人館倶楽部のカフェでお茶を飲みながら、クリスマスケーキを食べた。南京街の洋食屋キッチン8に行くにはまだ早かった。

エリカの幸せは…僕の幸せ。そんな気がした。人目もはばからずにキスをしたかった。

「シンジ君。本当は私にも秘密があるの…」僕はドキッとした。

「今年の始めに帰国した時に…シンジ君を見掛けたの」初めて聞いた話だった。

「その時は高校に行ったら話できるかなって思ったの…」
「入学式の後…同じ学校で同じクラスなんて信じられなかった!」
「入学式の日にはシンジ君の事が好きだった…」
「シンジ君と本屋さんであった時…好きって言いたかったぐらい」

僕と入学してから話をするまで3ヶ月もかかった…だから話かけられた時は涙が出そうだった…僕は彼女の言葉を聞いて…神様って本当にいるのかも知れないと思った。

そしてハルホの事もミサネェの事も大切だったが…僕が本当に大切なのはエリカだった。ずっと前から知っていたのに…そんな当たり前の事を見過ごしていた自分を恥じた。

「僕は…エリカの事を大切にしたい」
「うん…大切にして。大切にして下さい」

キッチン8で僕は和風ハンバーグ、エリカはビフカツ定食を注文した。

おじいさんが丁寧に作ってくれる。おばあさんが「かわいらしいカップルだね」と僕たちを祝福してくれた。

外に出ると…あまりにも寒過ぎたので芦屋浜は断念してメリケンパークに行く事にした。

「ビッグアップルのクリスマス。ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの前でシンジ君と待ち合わせたいな」その時…僕は意味がわからなかったけど、絶対に叶えると心に誓った。

恋人達がメリケンパークにはたくさんいた。僕たちは公園の隅のベンチに座った。

プレゼントの交換をする。僕はエリカにヴィヴィアンの地球儀の形のネックレスを、エリカは僕にロークのローファーをプレゼントしてくれた。

僕はエリカの首に手をまわしネックレスをつけてあげた。その間エリカは瞳を閉じていた。

エリカが僕にプレゼントしてくれたロークは【さらば青春の光】に触発されてロークのサイドゴアを買った時に試着をしたのを知ってたらしく…サイズはぴったりだった。

僕はエリカにダッフルの左右のポケット…どっちかを選んで中身をとりだすように言った。

エリカは少し悩んで、右のポケットを選択した。右のポケットには赤を基調としたスクールマフラーが入っていた。僕は左のポケットから青を基調としたスクールマフラーをとりだした。

エリカの首にスクールマフラーを巻き付ける。エリカも僕の首にマフラーを巻き付けてくれた。

「シンジ君…シンジ君…ごめんね、幸せ過ぎて涙が出ちゃう…よ」

波止場に停泊中の船から汽笛の音が聞こえる…。

僕はエリカに「エリカの事が好き。今なら100万回だって言える。あの時は勇気がなくて言えなかったけど」

「今はまだまだ子供だけど。いつかはエリカに相応しい男になるから。努力するから…」
「私もシンジ君の事が好きです。言葉じゃ表現出来ないくらいに好きです」

僕はエリカに約束をした。

「いつか世界中の【好き】って言葉を集めて…それでも足りないかも知れないけど。僕はもう一度エリカに告白するよ」

「雪…見たいね」エリカは泣いていた。
「シンジ君の優しさが一番のプレゼントだよ」

11:50に迎えに行く。そう約束をして僕達は家路についた。

11:50 僕はエリカの家の玄関の前に立っていた。

チャイムを鳴らす。

エリカがお母さんと出てくる。

「シンジ君寒いのにごめんね。どうせエリカのワガママでしょ?」
「いえ。僕の方こそ、こんな時間に訪ねてすみません。すぐに帰ってきます。」

エリカのお母さんはカイロを持たせてくれた。

僕とエリカは歩きながら空を見上げた。

「雪、降らないね」
「グリーンクリスマスも…素敵だよ」

僕はエリカの手を握った。

11:59
丘にある見晴らしのいい公園についた僕はエリカを抱きしめた。

「世界中の幸せをエリカに…」
「シンジ君…シンジ君とずっと一緒にいれますように」

………。

日付がかわった。遠くで花火が上がった。

「メリークリスマス…シンジ」
「メリークリスマス、エリカ」
「そして世界中の人にメリークリスマス!」エリカは僕を抱きしめてくれた。

………。この瞬間を大切にしよう。

僕は空を見上げた。

クリスマス
昼過ぎになるとエリカが僕を迎えにやってきた。

僕はUKリーバイスのホワイトデニムにアーガイルのセーター。グローバーオールのダッフルコートを着て靴はエリカのプレゼントしてくれたロークを履いた。

エリカは白いタートルネックにギンガムチェックのスカート、僕のプレゼントしたヴィヴィアンのネックレスをしていた。

上着はお母さんからクリスマスプレゼントにもらったマーガレットハウエルのモスグリーンのコートを着ている。

チアキの家でクリスマスパーティーをする。エリカと僕はケーキ担当。

クリスマスケーキを買い、チアキの家へ向かう。

女の子5人の中に男一人。学校生活でもザラなシチュエーションだから気にはならなくなっていた。

本当はエリカ一人で参加する予定だったが、皆が僕を連れてくるようにリクエストしたらしい。僕は給仕役に徹した。

…クリスマスなのにかなり際どい会話の連続、エリカは顔を赤らめて俯いている。

最後にプレゼント交換をしたのだが、僕に回ってきたのは女の子用の勝負下着でエリカはコンドームだった。

チアキがエリカに「後で交換したらダメだよ!」そして僕を見て「その下着をエリカにはかせて襲わないように!シンジ君に言われたら、エリカは何でもしちゃうからね」

一人1000円程度で心暖まるプレゼントってのが条件だったのに、他の二人のも似たり寄ったりだった。

まともなプレゼントをしたのは僕とエリカだけだった。わざわざソニプラまで行って選んだ意味がなかった。

夕方になりパーティーはお開きにして、みんなで片付けをした。

エリカの家に向かう途中、恥ずかしそうに「シンジ君…アレ、持っててね。」

「えー!アレはエリカへのプレゼントなんだから持っておきなよ」
「もし、お母さんに見つかったら…シンジ君と付き合えなくなるよ」エリカの顔が真っ赤だった。

「俺は今度あのパンツを履いてエリカに見てもらうつもりだったのに」
エリカがギュッと腕を掴んだ。

「シンジ君…ごめんね、怖がり…で」エリカが言ってる意味がわかった。
「シンジ君が好きだよ」

約束の時間まで…間があったので僕の部屋で時間を潰す事になった。

部屋に上がると僕はエアコンのスイッチを入れ、飲み物をとりに階下に降りて行った。部屋に戻るとエリカは僕のステレオの裏を覗いていた。ゴムを隠すつもりだったらしい。

「な〜にしてるの?」エリカはゴムの箱を持ったまま真っ赤な顔をしていた。

「そこには俺がパンツを隠すんだから。イザって時に履くんだよ」僕がふざけているのに、エリカは慌てているみたいだった。

「ごめんね、でも恥ずかしいよ…」コンドームの箱を持っているエリカがかわいくて僕はエリカを抱きしめた。

僕はエリカをベッドに寝かせ、僕もエリカの横に寝転んだ。エリカが僕の胸に顔をおしつける。

「アレ、隠しておくから心配しないでいいよ。でも、減ってたらごめんね」最後は悪戯っぽく言った。

「ダメだよ…他の人とエッチな事しちゃダメだよ」

「わかってるよ、エッチな事はエリカにしかしないよ」僕は冗談で言ってるのにエリカは今にも泣き出しそうだった。

「エリカ…」

僕はエリカの顔をあげ、おでこにキスをした。エリカが少しだけ唇を突出す。僕はそれに応えないで頬や鼻にキスを繰返した。

エリカがキスを求めてくる。僕はエリカの胸をそっと触りながらキスをした。僕はエリカが首筋にキスされるのに弱い事を知っていた。キスをしながら時々首筋にもキス。吐息が喘ぎ声に変わり始めた。

「…ウン…ア…ッ」

僕は首筋に舌を這わせた。

「!?アッ…アッ…」エリカの反応はハネ上がった。

「感じる?」僕はエリカの耳元でそっと囁いた。

「エリカはエッチな顔…してるよ。気持ちいいの?」エリカはコクッと頷いたが、すぐに僕にキスを求めてきた。

僕は服の上からエリカの胸を触っていたけど…それだけでは我慢出来なくなっていた。

僕はエリカの着ているセーターの中に手を入れた。初めてエリカの身体にダイレクトに触れた。エリカが抱きついてくる。

僕はエリカの身体浮かせてキスをした。夢中でキスを貪るエリカの背中に手を回し…ブラのホックを外した。ブラが外され驚いたエリカはキスをしながらもイヤイヤをする。

僕はエリカのお願いを聞入れずに、代わりに首筋に舌を這わせた。そして掌でエリカの胸をそっと包んだ。

…!?

エリカの身体は電流が走ったかのようにビクッとなる。僕はエリカの舌を吸上げながら、少しだけ胸にあててる手を動かした。

「アッアッ…ン …ァアン…」エリカは快楽の海に浸っている。僕はエリカの感じている姿に幸せを感じている。

エリカのセーターを少し捲りあげ、僕は身体をずらせた。お腹のあたりに舌を這わせる。エリカの軽い悲鳴が聞こえる。脇腹を舐め、背中をなまめかしく触わる。

「ヤ…恥ずかしい。…アン…もう、許して…」

僕はエリカの願いは聞入れず、両手をベッドに押さえつけた。そして僕は脇腹から…もっと敏感な所へ舌を移動させた。おでこでセーターをずらせて、歯でブラの端を噛み…上に寄せた。

………。

エリカの白い裸体はほんのりとピンク色に染まっている。目線を少しだけあげるとエリカの乳房が目に入る…。

エリカは今にも泣きそうだったが、僕も感動していた。

小振りだけど上を向いている乳房、桜色で小さめの入輪…そして同色ね小さな乳首。全てが完璧だった。

「エリカ…きれいだよ」僕は腕の戒めを解き、エリカを抱きしめた。

エリカも僕にしがみついた。

「恥ずかしいよ…もう…お嫁に行けなくなっちゃうよ」エリカは泣き声で話した。

「エリカは僕のとこに来てくれないの?」
「行っても…いいの?」僕は他の男のとこに行っちゃダメだよと言い、エリカにキスをした。

「僕も脱いでいい?」エリカが頷いたので、上だけ脱いで…エリカのセーターもそっと脱がせた。

僕はエリカを抱きしめた。エリカの身体は発熱していて熱く感じた。布団にくるまり、僕とエリカは抱き合った。

「ずっとこうしていたい。さっきまで…怖かったのに…」
「うん…大好きだよ…エリカ」
「恥ずかしいのに…気持ちよかったよ。時々…気が遠くなっちゃった」

エリカがキスを求めてくる。僕はそれに応えると同時にエリカの乳首のあたりをそっと触った。今度は抵抗しなかった…僕は首筋から肩、そして胸へとキスの雨を降らせた。

エリカの身体はピクンピクンと跳ね、喘ぎが一段と増す…。僕の唇がエリカの胸に到達した時、エリカの身体は一気に汗ばんだ。

僕はそっとエリカの大切なところを口に含んだ…。

僕はそっと唇を開き…エリカの乳首や乳輪の感触を楽しんだ。

「ハ…恥ずかしいよ…」

僕は両方の胸の感触を確かめ…それからはゆっくりクールダウンに入った。

暫く抱き合った後…エリカは「…シンジ君はいいの?」と聞いてきた。男の子は我慢出来なくなったら辛いって聞かされてたらしい。

「ケイ(今日のパーティーのメンバー)は出来ない時とかはかわいそうだから彼氏だけ気持ちよくさせてあげてる…って。」

「ナ!何を言い出すん!エリカがそばにいてくれたら、僕はそれでいいの」僕はエリカに、友達は選ぶように!って注意したかった。

それから暫く抱き合い…夕食の時間が迫ってきたので服を整えた。服を整えた後、僕とエリカはエリカの家に向かった。

「シンジ君…ずっとエリカを大切にしてね」僕の手を握りしめながら僕に言った。

「今は不安になったり心配になるかも知れないけど、5年後も一緒にいたら不安はなくなるよ。10年後も一緒にいれたら心配もなくなるよ。」

「僕はそうなれるように、エリカに相応しい男になれるように頑張るからね」

ところでアレはおいてきてないよね?僕は悪戯っぽく聞いた。

エリカは不自然に首を横に振るので…「もしも家にあったら、使っちゃうよ」僕は本当に意地悪だった。

「ごめんね、枕の下に隠しちゃった」
「なんか意味深だな」エリカは顔を真っ赤にして、深い意味はないと繰返した。

「暫く出来なくなるから…キスしてもいい?」エリカはコクッと頷いた。

僕はまわりに人がいないのを確認して、そっとキスをした。

エリカの家に着き、エリカの両親に挨拶を済ませた僕はリビングに通された。

エリカは2階にコートを脱ぎに行き、料理の手伝いをする為だろう、セーターを着替えて降りてきた。ネックレスはつけたままだった。

僕はエリカのお父さんに話しかけられた。野球はどこのチームが好きなのか?とか…

不思議とエリカのお父さんの方が自分の父親より接しやすい気がした。

エリカとお母さんがお茶を淹れて持ってきてくれる。お母さんは「食事の準備が済むまでエリカの部屋にでも行ったら」

僕はエリカの部屋を見てみたかったが、「ご飯が済んだらね、恥ずかしいからちょっとだけだよ」エリカはお母さんのお手伝いをしに台所に向かった。

エリカには言わないで欲しいんだけどね、との前置きの後

「エリカは一月に帰国してからずっとシンジ君が一人でスケートの練習をしてるのを見ていたんだよ」

「僕もバッタ君ってニックネームで君の事を聞いていたよ。」

その頃…緑色のパーカーをよく着ていたから…バッタ君。僕は笑いをこらえた。

「入試が終わっても四月までは友達もいなかったから、よくバッタ君を見に行ってたようだ」

「学校が始まってもバッタ君の話題は出るんだけど、ウチのも心配してたよ。エリカがバッタ君とまだ話してないって聞いてね」

おそらく…今でも鮎川家では僕はバッタ君と呼ばれているんだろう。帰国子女なんだからせめてグラスホッパーって呼んでほしかった。

「だからエリカにボーイフレンドが出来て、それがシンジ君だとわかった時は僕もウチのも嬉しかったよ」

僕は家に帰ったら緑のパーカーを押し入れから探し出して、エリカにプレゼントしようと決めた。

「男同士の話だよ。男は年が離れてても通じるもんさ」エリカのお父さんは僕にビールを注いでくれた。

「イケる口なんだろ?」エリカのお母さんは制止しようとしたが、クリスマスだし一杯だけ、とお父さんが押し切った。

晩ご飯のメインは鉄板焼きだった。エリカが取り分けてくれる。

和やかに食事は進んだ。エリカが時折優しいまなざしで僕を見つめてくれる。

食事が終わり、僕にも片付けをさせて欲しいと頼む。

「家では掃除も洗濯もしていますし、食事の後片付けも朝以外はしてるんです。何かお手伝いさせて下さい」

「それじゃ、エリカと二人でお願いね。お母さんはコーヒーの用意をしますから」

僕はとりあえず纏めた皿類を台所に運び、エリカが皿を洗った。途中で交替。僕はバイトで皿洗いをしているから…僕の方が手際がよかった。

リビングに戻るとエリカのお母さんが「今時の男の子にしたら珍しいわね?」と労いながら言うので「いえ、義務と権利なんです」「僕が自分の事を自分でする代わりに何でも自由なんです。」

門限もないし、夜中までクラブに行ったとしても許される。その代わりに成績が下がったり、家の手伝いをしなければ僕の自由が奪われる。もちろん、他人に迷惑をかけるような事も許されなかった。

「シンジ君の御両親は凄いのね、素晴らしいわ」
「僕がうまく利用されてるだけです」

そう言って僕はお茶を飲んだ。談笑が続き、時計は10時前に差掛っていた。

「そろそろ失礼します」僕が席を立とうとすると「エリカの部屋を見ていきなさい。何もなくて、男の子の部屋みたいだけど」僕は少しだけエリカの部屋にお邪魔した。

確かにシンプルというより殺風景な部屋だった。エリカから聞いて想像していたが、あまり生活感のない部屋だった。

「シンジ君がウチの子になったらいいのに…な」
「そしたら兄弟になるから、キスも出来ないよ。」

エリカにそっとキスをした。僕はコートのポケットからパーティーで貰ったパンツをそっと取りだしてエリカのベッドの枕の下に隠した。

「そろそろ帰るよ」僕はもう一度キスをして、部屋を出た。

「今日はご馳走さまでした」僕は玄関でエリカの両親に挨拶をした。

「明日からまた勉強をよろしくお願いね」エリカの母がそう言うとエリカにそこまで送るように言った。

エリカはコートを羽織っていなかったので、僕は辞退した。

自宅に帰り食事をご馳走になった話を母にした後、僕は部屋に戻った。

風呂に入りベッドに潜り込むと…エリカの匂いが残っていた。甘いコロンの匂い…。僕は深呼吸した。

次の日、昼過ぎに課題を持ってエリカはやってきた。僕が下に降りて行くとエリカは母とお茶を飲みながら談笑していた。

暫くして勉強する事に。

「エリカちゃん、明日は早めにおいで。一緒にお昼しましょう」母は勝手に約束している。

28日29日30日は朝からバイトなので今日と明日しか課題をこなす時間はなかった。

課題を一緒にしていると、突然思い出したのか「シンジ君!…パンツをおいていったでしょ!」エリカは顔を赤らめた。

「履いてきてくれたの?」
「履くわけないよ!エッチ」

その後洗濯機のブザーが鳴り、一時中断。エリカに手伝ってもらい洗濯物を干しに行った。

勉強に戻る前に…僕は押入れから緑色のパーカーを取出し、エリカにプレゼントした。

「結構着てるから…寝間着にでも」

エリカはずっと僕を見ていた頃の事を思い出したのか…パーカーを抱きしめていた。

「…シンジ君。ありがとう」

なんとか今日中に課題の殆どを片付けて…明日はビデオを見ようという事になった。

28日29日30日は漢字の勉強や家の手伝い、僕の部屋の大掃除も手伝ってくれるとの事だった。

その日は夜までかかったが、課題は全て終わった。

課題が終わり、進路について話した。

エリカも少し考えていたらしく、関西の大学で英語一本のところは少ないし、魅力がないから…推薦か東京の大学を考えているとの事だった。

僕もエリカと勉強したせいで成績はいい方だったし、親元を離れることは問題なかった。とりあえず学部は違っても大学は同じとこに行こうと話した。

昨夜は遅くまでお世話になったので、今日は早めにエリカを送る事にする。

公園にも寄らず、母が持たせたアンリの焼菓子を持ってまっすぐエリカの家に向かった。帰り道、僕は自分の将来について考えた。

その夜、ケルアックの【路上】を読んでいたら電話が鳴った。エリカからかな?そう思い、電話に出ると…ミサネェからだった。

「シンちゃ〜ん。竹山とかと飲んでるんだけどおいでよ。忘年会してるよ」

親が出たら…そんなテンションだった。

本も退屈…竹山さんに進められたがビートがどうこうの話は16歳の僕にはわからなかった。特にバロウズが妻をウイリアムテルの真似ごとで殺した話なんか理解出来ない。ギンズバーグもわかんなかった。かろうじてケルアックの路上を読んではみているが…。

「わっかりました。赤ふの近くですね」
「おねえさんが迎えにいこうか?」キスされるのは嫌だったので、丁寧に断った。

僕は着替えてM51とベスパの鍵を持った。久しぶりにキックするがなかなかエンジンがかからない。

黒煙があがりエンジンがかかる。—クラッチワイヤーがまた伸びたのかな—

僕はトロトロと走りだした。トンネルを抜け北夙川へ…夙川のジゴレットから裏道を抜けたら忘年会をしている居酒屋があった。

ベスパを止め、僕は店に入った。店は貸切りで、まるで野戦病院の様相を呈していた。とりあえず挨拶を済ませた僕は竹山さんの「何でシンジがいるん?」の言葉に傷ついた。

酔っ払いの相手は嫌なので皿洗いの手伝いや後片付けをする。片付けが終わる頃にミサネェが帰ってきた。アシがない人を送ってきたらしい。

「よっ!シンちゃん、早かったね」

片付けを手伝わせるつもりだったのに、僕が勝手に早く着いたと聞いて僕は憤慨した。

「ありえん!」

店の親父さんが僕にタラコ茶漬けを用意してくれるので、ミサネェの悪行には目をつぶる事にする。丼に用意されたお茶漬けはかなりの量だった。

「シンちゃんごめんね」
「今、食事中ですから!」
「シンちゃん、怒んないでよ」
「今、食事に集中してますから!」
「わかった、シンちゃんが食べ終わったら、お姉さんがシンちゃんを食べちゃうから」
「食べたら帰ります!」
「食べたらベルサイユに行こう!」

僕もミサネェも噴き出してしまった。

「もう怒ってませんよ、それにミサネェ一人だったらかわいそうだったし」

ミサネェはニコニコしていた。

「食欲の次は性欲を満たさないと。エリカちゃんとシンちゃんはまだなんでしょ?」たまにミサネェはオッサンのような事を言う。

「まだです!プラトニックなんです!」

「この前の事、まだ怒ってるの?」ミサネェは先週クラブで竹山さんやモーリーさんが見ている前で僕を追い掛け回したのだった。

酔っ払いの絡み酒って事になったが、誤解—言い切れないけど—されてないとも限らなかった。

「怒ってないですよ。それより就活はどうするんですか?」
「エアラインかな。エントリーの準備は済ませたよ。シンちゃん、私が受かったら二股の恋人がスッチーって自慢出来るわよ」

…絶対に受かるのは無理だと思った。

「それよりシンちゃん、ベスパに乗せて」
「二人乗りですか?原チャですよ」あまりにも駄々をこねるの「絶対にメットは被って下さいよ。」僕はミサネェを乗せて銀水橋まで上がった。

「寒いねぇ、少年。コーヒー!」僕はコーヒーを買いに行かされた。

夜景を見ながらミサネェは「シンちゃんと二人っきりで会うのは夜ばっかだね」

………。

「キスはなしですよ」

「わかったわよシンちゃん」ミサネェはそういいながら欄干にもたれかかった。

「寒いから…後ろからギュッとして!」多少の抵抗はあったが、僕はミサネェを抱きした。

「……の事、本気かもよ…」夜景を見ながらミサネェは呟いた。僕には聞取れなかったが…聞き返さなかった。

「寒いね。寒いからシンちゃんキスして」僕は譲歩してミサネェの頬にキスした。

「ケチ臭いなぁ、今からエリカちゃんの尻に敷かれてどうするよ?」

………。

「あっ!雪ですよ」
「ほんとだぁ、今年最初の雪だよ」

今年最初の雪…エリカにも見せてあげたかった。

「ミサネェ、そろそろ戻りましょうよ」僕がミサネェに声をかけると…ミサネェは泣いていた…顔は見えなかったが…雰囲気でそれとなくわかった。

少しだけ…ほんの少しだけ、ミサネェが復活するまで。僕はミサネェを強く抱きしめた。

「ナニこのポンコツ!なんで動かないの!?」

ベスパのエンジンがかからない。エンジンが冷えすぎたみたいだった。

「坂道は大丈夫、下に降りたら押しますよ」

ミサネェはご機嫌ナナメのベスパに文句タラタラだったが、気が紛れたみたいで…シチュエーションを楽しんでいるみたいだった。

僕はハンドルを握りながら…ミサネェがいつものミサネェに戻って欲しいと思った。小雪がチラつく中…ポンコツのベスパを押しながら僕は思い切って聞いてみた。

「もしも僕がミサネェの冗談を本気にしたら…どうするつもりだったんですか?」
「そもそも前提条件が間違ってるよ、少年。冗談でキス出来る程、私は軽い女じゃない」
「それに仮定の話に付き合うのは馬鹿らしいけど、…シンジが本気だったら……やっぱヤメヤメ!」

ほんとは続きを聞きたかったが…本当の事を知ると辛い結末を迎えそうだった。

僕はミサネェの事は好きだったけど、どうする事も出来なかった。ミサネェだって同じなのかな?好きでもどうしようもない事ってあるんだと思う事にした。

エリカに対する【好き】とミサネェに対する【好き】は全く違っていた。

「シンちゃん、難しい顔してるけど…どうしたん?」
「じゃぁ、シンジに質問。シンジが私に本気になったらどうする?」
「……。」沈黙が流れた。答えを探すが見つからない。…答えは知ってるような気がした。

「多分、ミサネェに告白しますよ」
「ううん、シンジは言わないよ。絶対に言えないよ」

「シンジの変な優しさが、女を傷つけるんだよ。シンちゃんがもう少し大人になったらわかるよ」
「そうかも知れない。そうかも知れないです」

僕は自分がダメな人間だって思った。もしかしたらミサネェの事を抱きたい自分がいるのかも知れない。

…やっとの思いで店に戻ったら忘年会はお開きで店は閉店作業していた。店の親父さんにお茶漬けのお礼を言い、ミサネェは状況を聞いていた。

店を出てミサネェがどうするか…聞いてきたが。僕はバイクを押しながら帰るって答えた。

バイクを置いて帰るのも選択だったが…このままミサネェといたら、今夜だけは…僕が変になりそうだった。

ミサネェが「キスしないと帰らせないから」と言うので…僕はキスをした。

「おやすみなさい」

バイクを押しながらミサネェの車を見送る。来た道を戻りながら…ミサネェに悪い事をした…と思った。

…1時間かけて…やっとの思いで自宅に辿りついた時…僕は自分の目を…疑った。

ありえない光景だった…ミサネェの車が止まっている。

—なんで?どういう事?—僕はベスパを押しながらミサネェの車の横を通り過ぎた。

チラっと窓を覗く、ミサネェはハンドルに突っ伏している。—このまま通り過ぎよう—僕はそっと通り過ぎ、ガレージの玄関を開けベスパをしまった。

—このまま家の中に入ればいい—そうすれば明日からも平穏に過ごせる。ミサネェには気付かなかったって…それは無理だった。

エンジンが掛かる音がする。それでいい…それがいい……

僕が玄関を飛び出したら、車が動き出す瞬間だった。

慌ててブレーキを踏むミサネェ…。

目が合う。ミサネェが黙って助手席のドアを開けた。

僕は黙って…車に乗り込んだ。

車はゆっくり走り出した。車内の温度は低かった。

…沈黙が続く。どちらも躊躇しているようだった。

車は偶然にも…エリカの家の前を通り過ぎる。部屋の明かりがついている。僕は悟られないように目で追った。

「どうして…出てきたの?」
「ほっとけないですよ…」

「じゃぁ…どうして車に乗ったの?」
「ミサネェがドアを開けたし…普通は乗るでしょ?」

ミサネェはそれっきり黙りこんだ。そしてミサネェは暫く車を走らせてラブホテルの駐車場に入れた。

「シンちゃんはいつも言い訳ばっかり。優等生発言ばっかりだよ」

「私はシンジとバイバイした後、やっぱりもう少しだけ一緒にいたかったから!だからシンちゃんを探したよ」

そういうとミサネェは車を降りた。僕も続いて車を降りた…頭の中がパニックだった。

部屋に入ったミサネェは大きく背伸びをするとベッドにダイブした。ミサネェが手招きする。しかし僕は動けなかった。

「何もしないよシンちゃん。ただシンちゃんとゆっくりしたいだけだよ」僕はソファに座った。

「やっぱ女の私がこれ以上したら、私がかわいそうやん。」

「嘘はなしですよ」僕はミサネェの横に座った。…確かに…僕は自分の行動に理由を付けてばかりだった。

少しの時間が経つ…ミサネェがワザと鼾をかく。寝たふりをして…僕に襲わせるつもりなのか?

僕は同じ姿勢がキツくなってきたので…少しだけ身体をずらせてベッドから降りた。

コーヒーか紅茶を淹れよう。ポットにミネラルを入れ、湯を沸かす。

「紅茶かコーヒー、どっちがいいですか?」
「紅茶」
「シンちゃんは優しいね…」

優しいんじゃない、僕はそう思った。

「だって、変に緊張しますよ…こんなとこ。」ポットのお湯が沸いたので紅茶を淹れる。

「暖かい、生き返ったよ」僕はミサネェが次にどんな難題を押しつけてくるのか、不安になった。

「シンちゃんはいつも受身だよね?私がエッチを迫ったら…しちゃうでしょ?」
「しませんよ、恥ずかしい事を平気な顔で言わないで下さい」

「案外、エリカちゃんにスケベな事させて苛めたりしてるんでしょ…シンジはムッツリさんだからね」

…それは、少しだけ当たっていた。

ミサネェが手招きをする。僕はミサネェの横に座った。

「シンちゃんとエッチしたら、なんか変わるかな?」
「変わります。絶対に変わりますよ…鮎川にも竹山さんにも悪いし…」
「そうかな?シンちゃんと一杯キスしてきたけど…何か変わった?」

……。

本心ではミサネェとエッチがしたかった。でも、ミサネェとの関係が変わる気がしたし…何よりもミサネェの気持ちに応える事が出来ない自分が嫌だった。

「僕はミサネェを尊敬してるしミサネェが好き…だと思います。でも、ミサネェの気持ちもわかった気がします。」

「だから…このまま仲良くして…」そこまで言うとミサネェは僕の口を塞いだ…。
「やっぱダメ!ミサネェ!やめようよ」

僕がミサネェに溺れたら…その事が怖かった。ミサネェに気持ちを話す。

「溺れて欲しいな。お姉さんはシンジに追い掛け回されたい。それが本当ならうれしいわ」

自分は狡い…卑怯な奴なんだと思った。ハルホもミサネェも追い掛けてくれる。疎ましい気持ちもあるけど、自分から…自分からそうさせてるような気がした。優柔不断。いや、そんなんじゃない。もっと酷いんだと思った。

僕はいつも保険をかけていた。逃げ道を作っていたんだ…

僕はミサネェに抱きついた…。いつもよりミサネェの匂いを感じた。

「私がシンジをコントロールするんじゃないのよ。シンジが自分でコントロールしなきゃね…」

恥ずかしくなり…僕はミサネェの胸に顔を埋めた。

「……シンちゃん。もしかしてオッキクなってる?」

僕は慌ててミサネェから離れた…。

「人がいい気分になってる時におチンチンを大きくして…」

「イヤ、違うんです。違います!」何も違わなかった…。

僕はミサネェに変なお説教された。それが理不尽なものってのにはミサネェも気付いている…そう思った。

「お風呂に入ろう。お姉さんはシンちゃんとお風呂に入る。今日はそこまで!」

そう言うとミサネェは風呂を入れにいった。

僕が何かを言い出そうとしても…聞く耳を持たない、そんなオーラが出ていた。

ミサネェがベッドに戻り有線をつける。明かりを暗く落とし…

「シンちゃん、お風呂が入るまでラブラブしよう」そう言うとミサネェは僕を抱き寄せた。

「どうせお風呂に入るんだから…」ミサネェは僕のシャツのボタンをはだけた。

ミサネェは器用に僕のシャツを脱がせると…僕に俯せになるようにと言う…。

従う…僕。

ミサネェは僕の肩甲骨のあたりに舌を這わせる。!?これは反則!そう思ったが…ミサネェは僕の首筋から背中にかけて執拗に舐め回してきた。

「お尻を突出してごらん…」僕はミサネェに従うしかなかった。

ミサネェの両手が僕の身体のアチコチを撫でる。

「恥ずかしいです」
「エリカちゃんにもこんな事してるんでしょ?」

僕は首を横に振った…。

「エリカちゃんは帰国子女だから、向こうではハジケてたかもね」

エリカの事を言われると…僕は興奮した。

「シンちゃんはかわいいね。エリカちゃんの事が本当に好きなんだね…」そう言いながらもミサネェは手を緩めなかった。

ミサネェは四つん這いになってる僕の気持ちいいトコ…気持ちよくなりたいトコをそっと掴んだ。

「ここが一番気持ちよくなりたいんでしょ?」

僕は荒い息をしながら…首を横に振った。

お湯が止まった…。

「今日はここまで…」

ミサネェの言葉が合図となり、僕の身体から力が抜けた…。

ミサネェは脱力して…俯せに寝ている僕の背中をポンッと叩いた。

…僕は振り向き…思い切ってミサネェを抱き寄せた。

「シンちゃん、もう終わりだよ」

僕は無言でミサネェにキスをした。

—激しいキス—

僕はキスをしながら激しくミサネェの乳房を揉みしだいた。

ミサネェの着ているシャツを捲り、ブラの横から手を入れる。ホックが外れる。

「シン…シンジ。」

僕は抵抗しようとするミサネェの手を押さえ、乳房にむしゃぶりついた。

ミサネェの荒い息が響く…

「ア…アン……ン…」僕はミサネェの脇を舐め上げ、それからミサネェを見つめた…。

ミサネェが顔を背ける。僕はミサネェの首筋に舌を這わせ…それから乳首を責めた。

パンツのジップを降ろし、少しずつパンツを脱がす。お尻が引掛かり…上手く脱がせられない。パンティの上から微妙な所を刺激する…。

「アッ…アン…アッ…ヒッ…」

首を激しく振りながら喘ぎを漏らす…。パンティの際から指を這わす。陰毛の感触を感じる…。僕の脳ミソは爆発した…。触手と化した僕の指はミサネェの一番敏感な所を目指した。

「ウン…アッ…シン…やっぱ…ダメ」

ミサネェはそう言いながらも少しだけ腰を浮かせた。

ミサネェが腰を浮かせると同時に、僕はパンツを一気に脱がせた。続いてストッキングも脱がせた。

僕は身体を入替えミサネェの足の間に身体を入れる。ミサネェがイヤイヤをする。パンティを見ると…大事なトコがわかるくらいに濡れていた。

僕は指でミサネェのキモチイイトコをなぞった。

「ミサネェのエッチな匂いがする」僕はそう言いながら顔を近付けた。

「ダメ…シン…お風呂…」

抵抗するミサネェを僕は無視して…ミサネェのパンティをずらして…口を近付けた。

舌先でクリトリスを探す……。

……!。

ミサネェの身体が跳ねた。

僕は嫌がるミサネェを無視してミサネェの大事なトコをゆっくり舐め始めた。

「…シン…反則だよ…もう…ダメ」

ミサネェは身体をバタつかせて抵抗する。僕は少しだけピッチを早めた。

「アッ…ダメ…ダ…」

ダメと言われても止める事はなかった。僕は本能に身を任せた。

ミサネェのアソコを舐めながら…僕はズボンとトランクスを脱いだ。靴下も脱ぐ。ミサネェは目をつぶったまま…声を殺そうと必死になっている。

ミサネェのパンティに手をかけた僕は…それも一気に脱がせた。僕は身体を少しずらせる。ミサネェを抱えてキスをする…。お互いが求めあってたキスだった。

ミサネェが僕の首に手を回して…キスを貪る。

僕の右手はミサネェのクリトリスを触っていた…。

「シンちゃん。こんなのはダメ。お風呂が先…ね」

………。

僕は手を緩め…ミサネェを抱きしめた。

ミサネェと僕は電気を消して湯船に向かい合う感じで浸かっていた…。

「はーっ。おっきなお風呂は気持ちいいね。」
「僕は恥ずかしいですよ」
「私にあんな事しておいて?」
「ご…ごめんなさい」
「傷つけたのは私の方ね…ごめんなさい」
「お風呂…上がろうか…」
「…はい」

僕は先にあがり、ミサネェの服とかを簡単に纏めた…。

「シンちゃん…まだでしょ?」

風呂から上がってきたミサネェは…そういうと僕の前に膝間ずいた。

ミサネェは僕の腰に巻かれたバスタオルを落とした。予想外だった…

「私はさっきイッちゃったから…」そう言うとミサネェは僕の…を口に含んだ…。

………。
………。

「……ウッ…」

帰り道…ミサネェは

「何か変わった?」
「不思議ですね…何も変わらないです」

ミサネェが最大限の気遣いをしてくれているのはわかった。

「とにかく一線は越えなかったし、このままでいいやんね?」

僕にはどこが一線なのか…既に越えてるような気がしていた。

明日が急に憂鬱になった…。エリカの顔を見るのが辛かった。本当は今すぐにでも顔を見たかったのに…。

何かに流されていく自分がわかった…。

部屋に戻ると急に不安になった。何だか後戻り出来ないような気がした。

—僕はミサネェもエリカも傷つけてしまった—

寒気がした。

次の日

目は覚めたが、完全に風邪を引いている事がわかった。階下に降り、体温計を出してもらう。

38.5℃

母に熱い風呂に入り身体を暖めなさいと言われる。

風呂にお湯が入るまで、食欲はないので熱冷ましと熱いお茶を飲む。

風呂に入り、湯冷めするのが嫌なので部屋に戻り布団に入った。布団に入ったら寒気に襲われたけど、そのまま眠った。

目が覚めたら横にエリカがいた。エリカは炬燵に入りながら本を読んでいた。エリカの横顔を見ていたら涙が出てきた。エリカが気配に気付いて僕の方に振り向いたが…

僕は寝返りをうち顔を背けた。そうするしかなかった。

エリカがそっと近付き…毛布をかけ直してくれる。そして僕の額に手をあて、体温を比べている。エリカはシーツの裾を直し、また本を読みだした。

暫くエリカの横顔を見ていた僕は…また眠りに落ちた。

僕がもう一度目を覚ました時、エリカは同じように本を読んでいた。「おはよう」僕が声をかけたら、心配そうにエリカが振り向いた。

僕が起きようとするとエリカは僕を制止して、こっちにきた。

「大丈夫?お母さんも心配してたよ」
「ゆっくり寝たから大丈夫。もう熱も冷めたし…」

エリカは自分の額と僕の額を合わせて熱が下がっているかを確かめた。

「熱…ないね」

本当に下がっていたみたいだった。

「お母さんが、シンジ君が起きたら教えてって」そういうとエリカは下に降りて言った。

暫くしてエリカは上がってきた。

「今、お母さんがおじやを作ってくれるって」
「食べたくないなぁ」
「じゃぁ、私が食べさせてあげるから食べよ」

インターホンが鳴るまでエリカは僕の手を握っていた。僕はエリカの手を強く握り返した。

エリカが土鍋を運んできてくれた。作ってもいないのにエプロンまでしている。

「まずはお茶を飲んで。」

エリカが僕にお茶を飲ませようとする。あまりにも急角度で飲ませるから…溢れてしまい、パジャマがビショビショになってしまった。

「ご!ごめんなさい。むせる僕にエリカは慌てた」
「大丈夫。鼻に入っただけ。それに汗かいたからパジャマもシャツも着替えるよ」

エリカはとりあえず僕の身体を拭いてくれ、それから土鍋の蓋を取った。湯気が上がってた…。

…僕は悪い予感がした。昔見たドリフとかのコントと同じ展開だった。もうもうと湯気が立つ土鍋からおじやを小皿に移す。

「大丈夫。自分で食べるから」
「ううん。食べさせてあげたいの、シンジ君は寝てて」

エリカはアメリカでドリフのコントを見ていたのだろうか?完全にお約束のペースだった。

エリカはフーフーっておじやを冷ましスプーンで一口すくうと僕の口元に運んだ。フーフーしてくれたのも、少量をそっと運んでくれたのもよかった。

ただ…小皿をフーフーしても意味がなかったし、熱伝導のいいスプーンを選択したのは間違いだった。それに気付くまで一秒もかからなかった。

エリカはそっと唇の上にスプーンをおいた。瞬間…僕は悲鳴を上げ、エリカはスプーンを僕の胸の上に落とした。

かろうじて皿のおじやをかけられなかったのは不幸中の幸いだった。エリカは慌てて皿をおき、タオルで僕の顔と胸を拭いてくれた。

「ごめんね。シンジ君ごめんね」
「いや、大丈夫。もう大丈夫だよ」エリカはエプロン姿でオロオロしている。

それから僕はスプーンに取ったおじやをフーフーして欲しいとリクエストした。

集中しているのか、眉間に皺を寄せて…小刻みに震える手でおじやを運んでくれるエリカ。

僕も怖かったが、さっきから時間が経っていたので熱くはなかった。僕は唇がヒリヒリしてたが、エリカには言わなかった。

途中から一緒に食べようと提案し、僕は身体をおこした。

食べおわり、お風呂に入るからと着替えを持ちエリカと下に降りた。

僕が風呂から上がると母が寄ってきて「エリカちゃんを責めたらアカンよ。健気にアンタみたいなんに尽くしてくれてるんやから」と言った。

僕が風呂に入ってる間にエリカは母に謝ってたらしい…そんな必要ないのに。

「鮎川は?」
「お洗濯中…アンタのパジャマを持って上に上がったよ、青春だね」

そして金盥が落ちてきますた。

母も…少し行き過ぎかな?って思ったみたいだったが、僕の腫れた唇を見て納得したらしい。

「一途なんやなぁ」
「そうそう、病院に行きなさいよ。後で熱がぶり返しても病院がお休みになったら大変なんだから」

僕は家でエリカとゴロゴロしたかったが、明日からバイトもあるしエリカと病院に行く事にした。

僕が髪を乾かしているとエリカが降りてきた。母が労うと「シンジ君の看病するつもりが返って迷惑かけちゃって。ごめんなさい」

「コレはもう大丈夫。殺しても死なないわよ。それよりエリカちゃんにお願いがあるんだけど。病院に一緒に行ってあげてくれる?」

僕の中でわだかまりは消えていた。ミサネェとの事は…卑怯かも知れなかったが、考えない事にした。

着替えてから下に降りるとエリカもコートを羽織っていた。

「エリカちゃん。今夜はウチで食べて帰りなさい。私が送っていくから」

エリカは素直に喜んでいた。

病院までの間、エリカは僕の腕に手を回していた。…僕がふらついても大丈夫なようにだそうだ。病院について診察券を出し、コートを脱ぐ。エリカもコートを脱いだ。

「………。」エリカはエプロンを着けたままだった。

回りの人の視線がエリカに注がれるが、本人は気付いてないようだった。

名前を呼ばれ診察室に入ろうとするとエリカも一緒にくる。恥ずかしいからいいと言うと

「診察を受ける時は一人で病院に行ったら治療は受けられないのよ」

インフォームドコンセントと言いアメリカでは一般的らしい。ここは日本だから…そう説明するのも面倒だったので、一緒に診察室に入った。

先生も看護婦さんも怪訝な顔をしていた。同じ年のエプロン姿の保護者が来てるんだから違和感があるのも当然だった。

エリカは手帳を取りだしメモを始めた。

ただの風邪なのに…とりあえず上半身裸で診察台に乗せられて血圧や脈を測られる。エリカは先生に質問をしている。先生も笑いをこらえながらエリカの質問に答えていた。

最後に先生が法律が違うし国民性も違うけど、医療ミスをなくすにはその方がいいかも知れないね、そうエリカに答えていた。

診察室を出てから薬が出来るまでアメリカの病院の話を聞いた。結構違うって事に僕は驚いた。

寒いからココアを飲んで帰ろうって提案をし喫茶店へ。エリカは当然のようにエプロン姿になる。

僕は我慢出来なくなり

「エプロン着けたまま喫茶店に入るのは…平気?」
「アッ!」

顔を真っ赤にして慌てて脱ごうとしてる所にココアが運ばれてきた。エリカはそっとエプロンを脱ぐとたたんで鞄にしまった。

「恥ずかしいよぉ」

ココアを飲みながら、僕はエリカが看病してくれてうれしいってお礼を言った。

「本当はシンジ君の寝顔を見てたんだよ。何度もチュッてしちゃったもん」

今度は僕の顔が赤くなった。

家に帰ると車がなかった。たぶん母が買い物に行ったんだろう。

僕たちは上に上がった。

一応僕はパジャマに着替えて布団に入る。エリカは炬燵に入っていた。

「こっちおいでよ」

エリカはコクンと頷くとベッドに腰かけた。

「シンジ君」

エリカはちょっとだけって…毛布の中に入ってきた。

エリカが僕の少し腫れた唇に指をあてる。

そしてキスをした。

—ココア味のキス—

甘いキスだった。

ガレージの開く音がする。

「お母さんが帰ってきたよ。お手伝いしてくるね。」
「用意が出来たら呼びにくるね」

エリカはそういうともう一度僕にキスをして、エプロンと薬を持って降りていった。

僕は疲れたのか…そのまま眠ってしまった。

エリカのキスで目覚めた。もう一度キスをするエリカ。

「ごはんよ。お父さんも帰ってこられてるよ」

伸びをして…身体を起こした。

「シンジ君がまた夢を叶えてくれた…ね」好きな人をキスで起こすのが夢だったらしい。さっきはミスったと後悔していたそう。

「先に降りるね。お手伝いが残ってるし」エリカは先に降りて行った。僕はパジャマの上からパーカーを羽織って下に降りた。

夕飯はうどんすきだった。薬味をとりわける。ぶっとい葱がエリカの仕事だとわかる。父は何も言わなかったし、僕も言わなかった。

エリカはうどんや具をとりわけてくれる。僕は別の意味で緊張した。これから先、エリカとは熱々のおでんは食べないと固く心に誓った。

エリカのアメリカでの生活を聞く。炬燵は日本から送ったとか、意外に日本の食材は手に入り易かったとか面白い話だった。

「エリカちゃんのお父さんはもう向こうに転勤はしないの?」

僕の不安要素だった。

「卒業までは大丈夫だと思います。もしも転勤になったら父の単身赴任か私だけ残るつもりです」

「もしもエリカちゃんのお父さんが転勤になったらウチに下宿なさい」

エリカは嬉しそうに返事していた。

食事を終えてエリカが片付けを手伝っている時、父が話かけてきた。

「いい娘さんじゃないか。礼儀ただしいし…」
「…うん」
「まだまだ先は長いが、とりあえず頑張ってみろ。それはそれで幸せなはずだ」

なんとなくわかったような気がした。

片付けが終わったあと、みんなでお茶を飲んだ。母が20分くらいしたら送って行くから上にいなさい。と、アシストしてくれた。エリカと上にあがる。

「今日はごめんね。シンジ君の看病をするつもりが…火傷させちゃったり、晩ご飯までご馳走になったり…」
「明日…心配だからお迎えに行くね」
「無理はしなくてもいいからね」僕はエリカをギュッと抱きしめた。

インターホンが鳴るまで…僕はエリカを抱きしめた。

次の日

朝早く目覚める。熱も下がりバイトの準備を始めた。8時に家を出て、店の開店準備を始める。10時の開店に合わせて出前の注文が次々に入る。

慌ただしく一日が過ぎた。夕方にエリカが迎えにきてくれた。

「お疲れ様!まだ風邪が治ってないから心配だったよ」

「大丈夫!出前先で菌を撒き散らしてきたし」

そんな話をしながら坂を下って行った。

「今日ね、シュビドゥビで雑貨を見てたらミサさんに偶然あったよ」

僕はドキッとしたけど、表情には出さないようにした。

「ミサさんにシンジ君が風邪引いたって言ったら、スゴク心配してたよ」

別の意味で…僕も緊張した。

ミサネェが遊びにおいでって誘ってくれたらしいが、先に何か食べようって事になった。南京街の【ぎょうざ苑】へ。

エリカはジャンジャン菜、僕はジャンジャン麺。それに餃子を2人前頼んだ。

「美味しい!こんなの初めて!シンジ君の麺もちょっとちょうだい」

食事が終わった後…少しだけ高架下を物色してからミサネェのバイト先へ。

ミサネェは退屈そうに店番をしていた。店に入るとエリカは楽しそうにミサネェと話している。

「シンちゃん!シンちゃん風邪大丈夫?」
「アッ…はい。大丈夫です」

ミサネェは心配そうに僕を見つめた、その瞳は…悲しそうでもあった。

「本当は遊びたいけど明日もバイトなんで、今日は早めに帰ります」

ミサネェの為にもエリカの為にも、もちろん僕の為にも…帰った方が良かった。

帰り道…エリカは僕の家に寄った。昨日の礼を母に言い、明日の買い出しに付き合う約束をしていた。

その後…エリカは僕の部屋に寄った。

エアコンのスイッチをつける。部屋が暖まるまでと…エリカは僕に甘えてくる。

「初詣はどうする?一緒に行ける?」僕はエリカに聞いた。

エリカは小さい時に初詣には行った事あるけど、あまり記憶がないから楽しみだと言ってた。

「シンジ君とならどこでもいいよ」

僕達は大晦日はデートする約束をした。

次の日

バイトを終え、僕はミサネェが店番している店に寄った。寄る必要はなかったが、昨日のミサネェの心配そうな表情が気になった。

差入れに【エストロイヤル】のシュークリームを買う。

「シンちゃん、サンキューね。お姉さん達は甘い物が欲しかったのよ。ついでにコーヒーもお願い。」

ミサネェの友達も来ていたので、その分も買いに行く。今日も話をする機会はなさそうで、残念だけど少しホッとした。

ミサネェは明るかった。僕はカウンターの端で会話に紛れていた。

「そろそろ帰ります。明日もバイトあるし…」

そう言って僕は店を出た。

高架下の外をプラプラ歩きながら駅に向かっていると僕の名前を呼びながらミサネェが追いかけて来た。

「シンちゃん、オミヤありがとう。全然話が出来なくてごめんね。あの子達…変に私達の事を誤解してるから…」

「シンちゃんに迷惑かけたくなかったの」
「そんなんじゃないです。昨日…少し気になったから…」

「トイレって言って出て来たから、もう戻らなきゃ。明日もバイト?」

明日もバイトだと答えるとミサネェは覗きに行くから…そう言って戻って行った。

僕は家に電話をし、—エリカがまだ家にいる事を確認してから—帰宅を急いだ。

家に着くとエリカは違う柄のエプロンを着ていた。

「シンジ君のお母さんに買って貰ったの!」

僕はエプロン一つで喜んでいるエリカを見て「シュークリーム買ってきたからみんなで食べよう」と言い、母に渡した。

お茶を飲みながら話を聞くと母がアクタスやアチコチの店にエリカを連れ回したらしかった。

明日は午前中にエリカの家の買い物に親同士で行くらしい。エリカも同行するらしかった。

お茶が済んでエリカは僕の部屋の大掃除をしようと提案してきた。母もそうしてもらえと言うが、男には男の秘密があった。

僕は明日にでもお願い!って頼み今夜中にエロ本やビデオを処分する事にした。

母がエリカを送るのに少しだけ時間があったので、二人で上に上がった。

「シンジ君ごめんね。シンジ君のお母さん…迷惑じゃないかな?」

「かなり機嫌がいいやん。この前もエリカの事をウチの娘にして、俺をエリカんちの養子にするとか言ってたし」

「それより…そうそう、なんで大掃除したらダメなの?」
「……。」

「シンジ君…何か隠してない?」
「な…ないよ」

エリカは勝ち誇った顔をした…。

「本当は…エッチな本とか隠してるんでしょ?」
「チアキが男の子は絶対に持ってるって言ってたもん」

僕はエリカに友達は選ぶようにと言いたかった。

「ホレ、ホレ出してごらん」エリカはイヤラシイ表情で言う。
「持ってないし、見たいなら…エリカのオッパイを見るから」逆襲した。

エリカは顔を真っ赤にして俯いた。

僕はエリカを苛めたかったが、エプロン姿のエリカは可愛らしくて…抱きしめた。

「…本当は持ってるでしょ?」エリカはニヤリと笑った。

「持ってないよ、マジで」

……。

「ごめん…持ってる」

エリカは執拗に見せろと言うが、それだけは許してくれと言った。

「男の子だもんね。エッチな本くらい持ってても…仕方ないよね」
「今夜中に処分するよ…ホントにごめんね」
「…一緒に見たいな。見た事ないもん」
「いや…軽蔑されそうだし、そういうのは一人で見るもんだし…」

僕が困った顔をしているとエリカは「シンジ君の困った顔…好き。ううん…全部好き」そう言って捜索は中止になった。僕はホッとした。

エリカが帰った後、僕はエロ本をゴミ袋に詰め…公園のゴミ箱に捨てに行った。

バイト最終日。いつもより早くでる。今日は近くの会社も事務所も休みだから出前はほとんどなかった。

夕方前になりミサネェが店にやってきた。

コーヒーを飲みながら僕の上がりを待っていた。給料を貰いミサネェの代金をチェックしようとしたら、オーナーがご馳走してくれた。

「シンちゃんお疲れ様」
「お疲れ様です。」
「今日は下はお互いの友達で一杯だから上でゆっくりしよう」

ミサネェの提案に賛成だった。高架下や元町で知合いに合わないで歩く事など無理な話だった。

中山手のカトリック教会の辺り、ベルゲンの前を通りハンター坂を上り、ビルの3階にあるカフェに入った。

「でも暗くなって坂を下ったら、ホテル帰りと間違えられますよ」
「シンちゃんとなら誤解されてもいいよ。誤解かどうかは微妙だし…」

僕は恥ずかしくて下を向いてしまった。

—ダンスホールやダブが抑えた音量で流れている—

「シンちゃんて意外に純情だね、ベッドじゃ激しいのに…」
「あ…あの時は…どうかしてました」

言い訳するのはミサネェに失礼な気がした。

「あの時…したかった?」
「いえ…しなくて良かった…と思います」

こんな話をしにきたんじゃなかった…普通に世間話とかがしたかった。

「私も…。多分してたら…私、本気になってたと思う。」

ミサネェはミサネェで悩んでたんだ。ミサネェの表情がそう感じさせた。

「いっぱいいっぱい。シンちゃんでいっぱいだったよ…」
「僕なんて…まだ子供だし、釣り合いがとれませんよ」

「あら…アソコは立派な大人だったし、私にイヤラシイこといっぱいシタでしょ?」
「ご、ごめんなさい!」

ミサネェはイヤラシイ事をサラッと言う名人だった。しかし僕はパニック寸前だった。

「心配ないよ。私が本気になってもエリカちゃんには敵わないもん。だから私は恋愛戦線から撤退するけど」

「エリカちゃんと別れたら…私を候補に入れてよ!」

ミサネェは僕が言いたい事をわかっていた。わかっていたから…フザケながらも僕をカバーしてくれている。

「ミサネェの事を嫌いになれる筈ないし、誰かと比べる事もしません」

それが僕の精一杯のエクスキューズだった。

「シンちゃんは優しいなぁ…ありがとうね」

ミサネェの目に涙が溜まっていた。ミサネェを見ていたら僕まで…。

「シンちゃんの優しさに一つ甘えてもいい?」
「いいですよ」
「前みたいにキスだけはしたいな。それとたまにはエッチも…」
「な、何言ってるんですか!それにお願いが二つじゃないですか!」
「じゃぁたまのエッチで我慢するよ!」

僕もミサネェも笑い出した…。二人とも楽しそうに笑っているのに何故だか僕は胸が痛かった…。

「悔しいなぁ…あの時しとけば良かったかな」
「まだ言ってるんですか?オッケーそれじゃホテルに行きましょう。この辺はホテルだらけですよ」

…そんな軽口を叩ける程僕は大人じゃなかった。

店を出てミサネェは僕の腕に自分の腕を絡めてきた。そして人気のないとこで…キスを求められた。

—別れのキス—

それは初めて味わう、辛い味のような気がした。確かに僕にはそう思えた…。

三宮駅に向かい、下りていく間もミサネェは腕を絡めたままだったし…時折キスを求めてきた。僕もだんだん辛くなった。

駅でミサネェとは別れた。電車の中僕は下を向かなかった。下を向けば涙が出そうな気がした。

僕はどうやら失恋したみたいだった。ほんとは幸せな筈なのに…何かが壊れたみたいだった。

誰かが言ってた「破壊と創造」って言葉が僕を支配した…

ミサネェとはこれまで通り、たまには顔を合わせるだろうし…だけど…暗い夜道を一人で歩くような…そんな気分だった。

自宅に戻り二階に上がる。顔を洗い、荷物を置き、下に下りた。

母からエリカとエリカのお母さんと買い物に行った話を聞く。聞いているうちに心が切り替わる…。

「エリカちゃんに電話してあげなさいよ」

僕はエリカに電話をした。ご飯を食べたら遊びに来たいというので、小声でエロ本は捨てたよって言った。

電話を切り、食卓につく。食事は既に用意されていた。さっと食事を終え、僕は二階に上がった。

エリカが来るまでダラダラしていよう…そう思う間もなく、僕は眠りに落ちた。

夢の中…僕は激しく責められている…多分、そんな夢を見ていたんだと思う。

エリカが心配そうに僕を起こしてくれた。

僕は苦しそうな顔をしていたらしい、何があったのか心配だとエリカば僕に言った。

「多分、風邪がまだ治ってないからだよ」

エリカは少し安心した表情で僕を見つめ、そして額を合わせて僕の熱を計った。

「良かった。熱がなくて…。そうそうシンジ君。お母さんが明日の夜はシンジ君と過ごしてもいいって!」

エリカは嬉しそうに僕に報告した。大晦日のカウントダウンは二人で過ごせるし、そのまま電車で初詣に行ける事になった。

エリカが甘えてくる。僕はエリカを抱きしめた。強く強く抱きしめた。

「シンジ君…ずっと一緒にいてね。嫌いにならないでね」

エリカの事を嫌いになれる訳がなかった。心配させたり不安にさせてるのは僕だった。

「お掃除…しよっか。」

僕は掃除機と窓拭き、床拭きを担当。エリカは僕の机や本棚の整理を担当した。

「アッチの部屋は終わったよ…!?」僕は先に二階の残りの部屋の掃除機をかけた。

エリカはイヤラシイ顔をして、僕の方を振向いた。

「シンジ君のエッチ!」引出しの中のエロ本が残っていた…。それをエリカは見つけてしまった。

僕の顔は真っ赤になった。

「ふ〜ん。シンジ君もエッチな男の子なんだ」

得意げに僕を見る。言い訳の言葉なんてなかった。

「…ごめん。捨て忘れた…みたい」

エリカは僕を手招きした。僕が近付くとギュッと僕に抱きついた。

「シンジ君…ごめんね。男の子だもんね…いっつも怖がってるから…」
「いや…それは。エリカと付き合う前に…買っ…」

「シンジ君に……」エリカは僕の言葉を遮り…何かを伝えようとしたが、エリカも最後まで続かなかった。

僕もエリカを抱きしめた。

「早く掃除をしなきゃ」僕はエリカを急かした。終わったら一緒に読む事を約束させられ…掃除を再開した。

残りの部屋のレースを外し、洗濯機に放り込みスイッチを押した。部屋を覗くとエリカは手際よく本棚の整理をしていた。

エリカと二人で床拭きをする。窓拭きが終わったと同時に洗濯機のブザーがなった。エリカがレースにフックを付け、僕が吊した。

「明日はシンジ君のベッドのシーツを交換してレースのお洗濯ね」

一段落ついたので、僕は紅茶を淹れに下りた。お茶の用意をしてくれていた。驚いたことにエリカ用のカップがあった。

「エリカちゃんと選んだのよ、それ。」

後一時間以内で掃除は終わると嘘をつき、僕はトレーを持って二階に上がった。

僕が二階に戻ったらエリカは風呂掃除をしていた。

「おトイレも済んだよ。シンジ君は普段からお掃除してるからお部屋掃除は楽だね」

何げなしにエリカが紅茶の入ったカップを持つ手をみたら、手が荒れているのに気付いた。

「ごめん…もしかしたら掃除で?」
「気にしないで。大丈夫、ここの所洗剤を使い過ぎただけだから。すぐに治るよ」

僕はエリカの両手をそっと包みこんだ。

「お掃除も終わったし…お茶も飲んだし。約束通りにシンジ君の大切なエッチな本を見ようね」

大切な、…それは余計だと思った。しかしエリカはページを開き始めた。

すぐにエリカの顔が赤くなる…恥ずかしいなら止めたらいいのに。…僕も恥ずかしかった。一人でしているのをエリカに見つかったような気分だった。

「恥ずかしいよ…シンジ君、エッチ」

エリカの息は少しだけ荒くなっていた。小さな手でページをめくる。

「シンジ君、シンジ君も…こんな事するの?」

僕はどう答えていいかわからなかった。僕は少し強引に本を閉じ、エリカを抱きよせた。エリカは僕の腕の中で荒い息をしている…

「他の女の人…見ちゃ…イヤ」エリカは小声で呟いた。

—TheWhoのI can’t explainが流れている—

僕はエリカの顔を起こし…そっとキスをした。

エリカの顔を見ていると幸せな気持ちになれる…。

エリカが僕の手を掴んで、自分の胸に押当てた…。

「恥ずかしいから動かさないで…中にも…手を入れないでね。」

僕は少しだけ身体をずらし…エリカを全身で包み込むように抱きしめた。

「もっと…シンジ君といたいよ…シンジ君の事ばっかり考えてしまう」

僕は黙って頷き…時間が許す限り、エリカを抱きしめた。

「お邪魔しました。」
「アラ、もうこんな時間!明日も会うんだから泊って行けばいいのに」

母は冗談で言ってるのに、エリカは顔をうっすら赤らめた。

外に出ると粉雪が舞っていた。

「雪だね。シンジ君と初めて見る雪」
「うん。」
「シンジ君…ずっと一緒に居てね」

エリカの手は暖かかった…。

僕はエリカを送り届け、…少し遠回りして帰った。

大晦日
エリカは朝早くに訪ねてきた。

「朝よ—!」どうやら母と買出しの約束をしていたらしい。僕は聞いてなかった。僕は無理やりに起こされ、シーツを剥がされた。

「今からお母さんと買出しに行くから、シーツは干しておいてね。その後はレースもね」

そう言いながら僕にキスをして、シーツを洗濯機に放り込み、パタパタと階段を下りて行った。

僕がノロノロと階段を下りたらお握りとメモがおいてあった。

父は既に起きていて新聞を読んでいた。メモにはエリカ達が帰ってくる迄のノルマが書込まれていた。

「シンジ、玄関の掃除をするから着替えてこい」

父は自分の車を洗車したかったみたいだったが、僕は後回しにしなきゃ怒られるよ、と忠告した。どうせ母の車も洗車させられるんだし…一緒に洗おうと言うと父は少し嬉しそうだった。

「お前は意外と尻に敷かれるタイプなんだな」

玄関の掃除をしながら父は話かけてきた。僕はエリカと母じゃあまりにも違い過ぎると思った。

一旦シーツを干しに二階に上がる。レースを洗濯機に放り込み、一服してからすぐに下に下りた。

父は網戸を外して窓を洗い始めていた。僕は網戸を洗い流した。

「鮎川さんとこの掃除も手伝いに行けよ。」僕もそのつもりだった。

ノルマのほとんどが済んだ頃、エリカ達は帰ってきた。母はかなり進んでいたので、喜んでいた。

「エリカのトコの大掃除も行くよ。今からなら早く終わるし」

エリカにそう言うとエリカは聞いてみるといい、電話をかけていた。その間に僕は母の車から荷物を下ろし、洗車しやすいように車を家の前に移動して貰った。

「後で箪笥を動かすのをお願い出来る?」僕はもちろん!そう言った。

父は休憩したがっていたが、車の洗車を始めた。エリカも僕のベスパを磨いてくれていた。ワックスを塗り終わったらちょうどお昼だった。母が時間がないし、暖まるからと釜あげウドンを用意してくれていた。

四人で食卓についた。母はエリカ専用の茶碗や箸も買ったと笑いながら見せた。

「エリカちゃんがいつまでもウチの子でいてくれたらねぇ」

四人でウドンをすする。生姜がたっぷりで身体が暖まった。

食事が終わり、箪笥を動かすなら父さんも行こう、と言いコートを羽織った。

エリカがウチの後片付けをしてくれている間に僕と父はワックスで鱗模様のままの母の車でエリカの家に向かった。

エリカが電話をしたのだろう、僕と父が着いた時にはエリカの両親が出迎えてくれた。

簡単に挨拶を済ませ、箪笥を移動させる事になった。箪笥を見て…父が来てくれた事に感謝した。

到底僕とエリカのお父さんだけでは無理な作業だった。一時間以上かかり全ての作業を終了した。

エリカの母にお茶を出していただき、四人で飲んでいるとエリカが帰ってきた。

正月に両家で鍋でも、となり三日の夜にウチで鍋をする事になった。

エリカとは晩ご飯の後に待ち合わせをして、僕と父は家に帰った。

家に帰り車のワックスを拭き取っていたら、父が腰が痛いと逃げた。結局僕が一人でワックスを拭いた。ワックスを拭いた後はする事がなかったので、ベスパのガスを入れに行く事にした。僕はメットをミラーに引掛け、スタンドまで押して行った。

いつものスタンドで給油する。混合なので調整してもらう。精算を済ませ、キックする。今日は一発で掛かった。まだ黒煙が出るので、少し走る事にした。

芦屋駅のロータリーにベスパを停め、タバコを買う。本屋に寄ろうか迷ってたら…ハルホと偶然会った。

ハルホは友達といた。ロータリーの所で僕がタバコを吸っているのに気付いたハルホは友達に何か言い、僕のとこにきた。

「シンジ、スクーター買ったんだ?」
「うん、ちょっと前…中古だよ…ハルホは待ち合わせ?」

僕もハルホも…お互いの距離感が掴めなかった。

「うん…カウントダウン。みんなで行くの…シンジは?」
「お、俺は…ガスを入れに来ただけ。すぐに帰るよ」
「そっか。じゃ、友達が待ってるから…今度、電話してもいい?」

僕は頷き…ハルホは友達のとこに戻って行った。例の大学生かな?少し気にはなったが…嫉妬とかではなかった。気分もブルーにならなかったし、これが風化するってことなのかも…と思った。

僕はベスパにキックを入れた—

帰宅すると父は母の車をガレージに入れようとしていた。僕は道をあけ入庫するのを待っていた。車を降りると父は僕を呼び止めた。財布から僕に小遣いをくれる。

「今日のお駄賃だ。それで彼女と何か食べたらいい」

僕は有難く受取った。家に入ると晩ご飯の用意が出来ていた。

食事を済ませ風呂に入る。部屋に戻る。シーツは交換されていて、レースも元のように吊されていた。

半裸のままベッドに寝転ぶ…そのままウトウトしてしまった。

エリカが迎えにきたのはすぐの事だった。

「もう…シンジ君、風邪引くよ!」エリカに揺り起こされた。

僕はエリカを抱き寄せた。

「キスしたい…」僕はエリカにキスした…そしてそのままエリカをベッドに引込んだ。
「そろそろ行かないと…ンジ君…」

僕は激しいキスをした。うたた寝の間にどんな夢を見たのだろう。エリカを抱きしめ、激しく勃起している事を自覚した。

エリカもそれに気付いた…らしく
「シンジ君…恥ずかしい…よ」
エリカの声に僕は我に返った。

「ごめん。着替えなきゃね」
「違うの…一緒に…変な…気持ちになりそう…なの」

「昨日…エッチな本を見たからかな?シンジ君…エッチ…夢を…」
僕はエリカを強く抱きしめた。

「もう…怖くないよ…シンジ君だったら…」
エリカは少し震えていた。それは僕にも伝わった。

エリカがキスを求めてくる。僕はそれに応え…キスをした。

用意をして…カウントダウンに行く事に…竹山さんやモーリーさん、ミサネェ達が待っている。二人…手を繋いで駅に向かった。

エリカはロングブーツにタータンチェックの膝丈スカート、黒いセーター、ヴィヴィアンのネックレス。コートはオリーブ色のハゥエルのコート。

僕はボタンダウンのシャツに紺の三釦の細身のスーツ、ポールウェラーを意識してモッズコートを羽織った。靴はローク。

二人で揃いのスクールマフラーをしていた。

竹山さん達との待ち合わせ場所に向かう。少し遅れて着いたらモーリーさんだけが到着していた。

「シンジはもうすぐ七五三か?」そう言いながら僕の髪を大人っぽく直してくれる。

そこへミサネェが友達を連れて到着した。

「この子が噂のエリカちゃんね。エリカちゃんは比佐子さんみたいね」口々に褒める…エリカは顔を赤らめていた。

「エリカちゃんはオリーブから抜けてきたって感じ、シンジ君はスタカンというより…七五三ね」ミサネェはそういうと僕の髪を直した。

モーリーさんがミサネェに抗議するが「シンちゃんは私が育ててるの!それより竹山は?」「竹山さんは少し遅れて来るらしいですよ」モーリーさんが答えた。

僕は輪から外れてタバコを吸いに行った。

タバコを吸いにきたのは、エリカにタバコを吸ってる姿を見せるのは好きじゃなかったし、それにミサネェと顔を合わせるのは少し辛かった。…本音は後者だった。一応の結末は迎えた筈だったけど…まだ割切れない僕がそこにいた。

エリカが輪を抜けて僕のそばに来るのが見える。僕はタバコを消し、ミントを口に入れた。

「どうしたの?」
「シンジ君が淋しそうだったから…」
「そんな事ないよ。ちょっと疲れただけ…エリカは?」
「ちょっと眠いかな…でもみんなと迎える新年が楽しみだから大丈夫」

竹山さんの姿が見えたので、僕とエリカは輪に戻った…。ミサネェの事は意識しないようにした。

竹山さんが遅れて来たのはラッキーだった。ミサネェは竹山さんにブーブー文句を言ってるし、その間に僕はうまく馴染めそうだった。

竹山さんに連れられ、メリケンパークに向かう。僕たち全員がフィッシュダンスホールでのイベントにタダで入れた。

竹山さんの顔で入れたのにミサネェはまだブーブー言ってた。…もしかしたらミサネェも竹山さんに救われた…そんな気がした。

ホール内はグランドビートが響き渡っていた。僕はカウンターでハイネケンを頼み、エリカはミサネェに聞いたと言うカシスオレンジを頼んだ。

みんなで乾杯をし、その後はバラバラになった。モーリーさんや竹山さんは同業のDJと挨拶をし、ミサネェ達は奥で友達と話していた。

僕はエリカのホール内の探検に付き合った。DJが替わりHip Hopが流れだす。会場内はかなり盛上がってきた。

「息苦しいね…外の空気を吸いに行く?」

僕はエリカを外に誘った。外は寒かったけど、エリカは楽しそうだった。少し歩き…ベンチへ。僕はエリカの肩を抱くようにして座った。

「エリカにとって今年はどんな年だった?」
「最初は…不安だったかな。シンジ君を見掛けて…少し安心したよ。でも声も掛けられなくて…。」
「今は幸せだよ。夏休みからずっと幸せ。昨日よりも…今日の方が幸せだよ」

エリカの表情はとても柔らかかった…僕には勿体ないほどに純粋だと思った。

「シンジ君は?」
「…エリカと出逢えて幸せだよ。好きって言えなかった時は辛かったけど…エリカが勇気をくれたんだと思う」
「シンジ君と本屋さんで出会えなかったら…ずっと一人ぼっちだったのかな」

エリカは僕の手を強く握りしめた。

「それはないよ。あの時は神様が偶然を授けてくれたけど、あの偶然がなくても僕はいずれ必然に変えてたよ」
「もしも私が遠くに行ったら?」
「捜しに行くよ。たかが50億人だろ?世界中を捜してでもエリカを見つけだすよ」

「…遠くに行きたい?」
「絶対にヤダ!シンジ君にくっついてるもん」

エリカは真剣なまなざしで僕を見つめる。エリカの表情には一点の曇りもなかった。

「僕にとってエリカは究極の理想なんだよ。エリカがそばにいてくれたら僕はスーパーマンにだってなれるよ」

確かにエリカは僕を変えてくれている。僕に…勇気を与えてくれていた。

「正直に言うとね。今でもドキドキするよ…シンジ君のキス。もう何回もキスしてるのにね…気を失いそうになる時あるもの」

—粉雪が舞っている—

「来年も良い年にしたいね」
「来年も再来年もその次も…ずっと大切にするよ」

時計を見たらそろそろ時間だった、カウントダウンが始まる。僕たちはホールに向かった。

ホールの中は異常な盛上がり方をしていた。アルコールとタバコと笑い声と怒声が音と溶けあっている。

僕はエリカに離れないように言った。スクリーンに10分前の表示が出る。そこに竹山さんが通りかかる。

「捜したぞ。みんな上に行ってるからシンジ達も上においで」

屋上に上がると3分前の合図があった。

「なんか緊張するね、もうドキドキしてきたよ」

僕は目線でミサネェを追ったが見あたらなかった…。

1分前の合図があった頃ミサネェが上がってきた。どうやらトイレのついでに僕達を捜してくれていたらしい。

いよいよカウントダウンが始まった…みんなが一斉にポートタワーの方を見る。

10.9.…僕はエリカにキスをした5.4.3.2.1…一瞬の間があり、花火が上がった。

A HAPPY NEW YEAR!

みんなが騒いでいる

「シンジ君と2年越しのキスしちゃったね」

僕は喧騒の中、エリカの手を握りしめた。

後でわかったが竹山さんはトイレの中で新年を迎えたらしい。

ホールに戻るとみんなで乾杯をする。ミサネェとも勿論乾杯した。

エリカがトイレに行ってる間に、そろそろエリカを送り届けるから、生田神社にお参りして帰ると告げた。酔ってて誰も聞いてなかった。

ミサネェのそばに行き、同じ事を告げた。ミサネェはわかったと合図して、

「シンちゃん、今年もよろしくね。…いっぱいキスしようね」そう言うとミサネェは頬に軽くキスをした。

エリカが戻ってきたので僕達は抜けだした。どっかでキリをつけないと際限なく朝まで乾杯が続く。

「そういや、お駄賃を貰ってきたんだ。二人分(笑)だから何か食べよう!」

「屋台がいいわ。もう何年も行った事ないもん」お参りを済ませた後…境内の屋台でお腹を膨らませた。

エリカはチンチン焼きとリンゴ飴がいたく気に入ったらしい。

「もう、帰ろうか…部屋においでよ」
「うん…シンジ君と一緒に過ごせるね」

僕とエリカは終夜運行の電車に乗った…

芦屋駅につく。時間は2時を少しばかり過ぎていた。元旦だからかまばらながらに人影が見える。僕とエリカはしっかりと手を繋いでいた。コンビニに寄り飲み物やお菓子を買う。そのまま坂をのぼり自宅に向かった。

部屋に入りエアコンと炬燵のスイッチを押す。

「寒いね」

二人ともコートを脱ぎ、ハンガーに掛け…慌てて炬燵に入る。

「少し落ち着いたね。この前のビデオ、観る?」

僕は【小さな恋のメロディ】をデッキにセットした。エリカは僕のそばに座り直した。ライトを消し、ブランケットをかけた。

映画が始まる。主人公の二人に自分達を投影していくエリカ。もちろん僕も映画の中に入っていった。エンドロールが流れはじめ、エリカは目に涙を浮かべながら僕の手を強く握ってきた。僕もエリカの手を握り返した。

「もしも私達の事を誰かに咎められたら…どうする?」
「トロッコは…エリカをベスパに乗っけて…二人で逃避行の旅に出るよ」
「本当?シンジ君となら、何処にでもついていくよ」

求め合うように…自然と抱きしめ合った。

「眠くない?もう一本あるよ。」
「眠くないよ。でもシンジ君とこうしてギュッとしていたいな。今はスゴく幸せな気分だから」

映画をBGMとして使う。【ある愛の詩】をセットした。ベッドに移動して僕はエリカを抱きしめた。「キスしてもいい?」エリカはそっと頷いた。

優しいキスから激しいキスへ

「エリカの全てがみたい」

エリカがそっと頷き、僕のシャツのボタンを外した。

僕はエリカのセーターをそっと脱がせた。セーターの下のロンTも脱がせる。暗がりのなか、エリカの表情を伺う。目を閉じているのがかろうじてわかる。エリカの吐息を飲み込むように…そっとキスをする。

スカートに手をかけ、ホックを外す。腰に手を入れて…巻きスカートを抜きさる。僕はシャツを脱ぎ捨てた。エリカを抱きしめ、キスをする。ゆっくりとブラのホックを外し、肩ヒモをずらす。

ゆっくり、ゆっくりと首筋にキス。エリカの吐息が荒くなる。

「シンジ君、恥ずかしい…よ」エリカは呟いた。

ブラを外し、エリカの髪を撫であげる。エリカがギュッと抱きついてくる。僕はエリカの胸の膨らみをダイレクトに自分の胸に感じた。

「好きだよ、エリカ」

僕はエリカの縛めを解くとエリカの肩にキスをした。

………。

乳房に手をあてる…エリカの身体がピクッと跳ねる。

僕はエリカの胸にキスをした。エリカの身体が強張る。

「シンジ君…ンジ君、ずっと好きで…いて…ね」

少しずつアイブが激しくなる…エリカの荒い吐息が喘ぎに変わる。

手を太ももに回す。僕の手がイヤラシク撫でまわす。脹脛から膝の裏へ…

「ア…ンン…ウ…おかしく…なるよ」

狂って欲しい、ボクに狂って欲しい…僕はそう思った。

エリカの最も敏感なトコに触れる。

エリカの声が、喘ぎが一瞬…静まって、身体に力が入る。

パンティ越しにエリカの最も敏感なトコに指を這わせた。

エリカの全身から力が抜けてイク…。指先に湿り気を感じる。僕自身が狂いそうだった。

少しずつ、大胆に触る。僕の口はエリカの敏感な部分を含んでいる。

エリカの手が僕の背中をまさぐる、まるで何かを探しているかのように…

パンティの際に手をかける。骨盤の辺りからそっと脱がし始める。熱気を感じた。

靴下と一緒に全てを脱がす、エリカの生まれたままの姿に僕は感動した。

エリカは両手で顔を覆い隠している。僕はエリカの臍の辺りに口をつけた…。

「シンジ君狡いよ。エリカだけ裸だよ」

ベルトを外し、パンツとトランクス、靴下も脱いだ。

「僕も脱いだよ」

エリカの両手をそっと外した僕はエリカを抱きしめた。

エリカの身体が熱い。

「このまま抱きしめていてもいい?」
「うん、シンジ君…嫌いにならないで」

僕がエリカを嫌いになる筈なかった。否、嫌いになれる筈がない。

「エリカを感じるよ」
「シンジ君を感じる」

僕はエリカの太ももをそっと開き、手をしのばせた。

「恥ずかしい!」

エリカの最も敏感なトコは…濡れていた。ボクのも…濡れていた。

ユビをそっと動かす。エリカが感じているのがわかる。エリカのジュース…。

「…シンジ君、何…か…変。ア、熱い…よ」

ボクのユビがエリカの敏感な突起に辿り着く。エリカの喘ぎ声が小さな悲鳴に変わる。ボクのユビが執拗に突起を触る。エリカの喘ぎに曇りを感じる、顔を見上げるとエリカは泣いていた。

「怖いの?嫌な事をしちゃった?」僕は複雑な表情をしていたと…思う。
「少し…だけ…」
「ここまでにしようか?」僕は手を止めて、エリカの肩を抱いた。
「ううん。大丈夫、気持ちいいよ」
「違う、僕はエリカに好きって言えるけど、僕はまだ愛しているって言えてない。」
「気持ちは当然愛しているよ。でも、本当に…本当に心の底からエリカに愛してるって言いたいんだ」

エリカは泣きだした。声をだして泣き出して、僕に抱きついた。

「シンジ君のこと、愛してるよ。」
「エリカを愛しているし、好きだし。一緒にいたい。ホントはエリカとエッチしたい」

「でも、エリカに愛される自信がないんだ」

エリカは僕を見つめ、身体を起こして正座した。

「シンジ君のこと、ずっと好きだし。お嫁さんになりたいよ」

僕はエリカの真っ直ぐな視線に恋をした。

「エリカを愛している。それが自然に言えるようになるまで…」その後の言葉が続かなかった。

心の中では何度も【愛してる】って叫んでいた。

エリカが身体を寄せてくる。僕のはまだ不自然に勃ったままだった。

「男の子の…初めて見ちゃった」僕はエリカを寝かせキスを繰り返した。

今度はエリカも少し積極的にキスを貪った。

「もう少し…エリカのことを見ていたい」恥ずかしがるエリカの動きを制止してボクはアイブを再開した。

エリカも今度は安心したのか、身体が素直に反応する。

ボクはエリカの乳首を優しく噛んだ。身体が反応する。緊張と弛緩の繰り返し。

僕の…がエリカの太ももにあたる。

「シン…ジ君のが…あたって…いるよ」僕はエリカの手を握り、そっと僕のを触らせた。

エリカの手が優しく僕のを包み込む。僕はアイブを激しくした。

そっとエリカの足を割り、身体をすべりこませる。一気にエリカの最も敏感な部分に口づけをする。

「キャッ」小さな悲鳴とともに足を閉じようとする。ボクはそれを許さなかった。

大きく息を吸い込む。エリカの匂いを全身で感じたかった。

ボクの舌がエリカのキモチイイ場所を探る……。感じているのがわかった。サラサラのジュースが溢れてくる。

「オイシイヨ…エリカのジュース」ボクはワザと音を立てる。エリカの身体から力が抜ける。

「シンジ君。恥ずかしい…のに気持ち…いいよ」何度もそう訴えるエリカ。

「もっと気持ちよくなって、エリカの感じている顔が見たいよ」
「もしかして…エリカはエッチな…女の子かな?」

僕は一旦手を止め、エリカにキスをした。エリカがそっと腕を僕の背中にまわしてくる。

映画の中の音楽が雰囲気を作った。エリカは少し落ち着いてから…僕のを包み込むように優しく握ってくる。

「嫌じゃない?」
「どうして?シンジ君のだもん。でも、どうしたらシンジ君が喜んでくれるかわからない」

エリカの表情から恥ずかしさが読み取れた。そして…少しだけ動かしてくれた。

「気持ちいいよ、エリカ。エリカの顔を見ているだけで幸せだよ」

「シンジ君も濡れてるね。」エリカは恥ずかしそうに言う。僕はエリカを抱きしめた。

「シンジ君、好き、大好きよ」

エリカはそう言うとおもむろに身体を起こし、寝ている僕に背を向ける形になった。

「食べてもいい?」エリカはそう言うとボクのに顔を近づけた。エリカの吐息があたる。

痛い程に膨張したそれを優しく握るエリカ。少しばかり躊躇を見せた後……。

ボクのにキスをした。全身が痺れるような感覚が僕を襲う。

エリカは何度もボクの敏感な部分にキスを繰り返す。

「シンジ君の味がするよ」僕の心拍数は異常に跳ね上がっている。苦しささえ覚える。

そのままエリカはボクのをゆっくりと口に含んだ。エリカの唇の感触が伝わる。僕の全ての神経がそこに集中している。狂いそうになる。エリカの口の中で舌先が動く度に…イキそうになる。エリカの声にならない声が漏れる、僕はもう限界に近かった。

僕は身体をずらそうとするが、動けなかった。身体が麻痺しているかのようだった。エリカの尻のあたりを

撫でまわす。エリカの敏感な部分の感触を確かめるのが精一杯だった。

爆発した。

そう表現するのが最もふさわしい気がする。僕の身体は硬直し、何度もドクドクと脈打った。

同時にエリカの驚きの声がする。……エリカはそのまま僕のを飲み込んだ。

……僕の身体はダラシナク弛緩していた。

エリカはそっと口を離して……僕のそばに寝た。僕もエリカも荒い息をしている。

「ありがとう、でも…ごめんね」やっとの事で言葉がでた。

「ううん。嬉しいの。意味わかんないけど、嬉しい」エリカは抱きついてきた。

僕はしばらくの間、エリカを抱き…浅い眠りに落ちた。

ふと目を覚ますとエリカは僕の身体に毛布をかけていてくれているのに気づいた。

僕の胸の中で小さくなって眠っている。僕は気づかれないようにそっとキスをした。

時計を見ると6時前だった。

エリカの身体を撫でている間に僕はまた欲情した。

そっと愛撫を始める。エリカの乳房を揉みしだき、乳輪に舌を這わせたトコでエリカが目を覚ました。

「シンジ君、もう朝だよ…恥ずかしいよ」

僕は構わずにエリカの乳首を舌で転がした。

「ア…アン…スゴ…ンン」エリカは激しく感じ始めていた。

僕は躊躇することなく、エリカの最も敏感な部分に口を這わせた。エリカの手がシーツを握りしめる。

僕は舌先をエリカの中に押し込んだ。唇で襞を分けるようにして、舌先を侵入させる。

エリカのシーツを握る手に力が入る。ジュースは溢れ出てくるのに、エリカのソコは固く閉じている。

敏感な突起に舌を這わせ、ボクのユビが侵入を試みる。

「イタッ、痛いよ」エリカの反応に合わせ、ユビの力を抜く。エリカの身体が硬直する。

僕はそれを執拗にくりかえした。

「シンジ君、狡いよ…エリカだけ恥ずかしい…よ」エリカが僕の背中を軽く叩く。

「シンジ君も気持ちよくなって」そう言うと僕を寝かせる。

エリカは今度は躊躇いもなく僕のを口に含んだ。僕はエリカの腰に手を回し軽く持ち上げ、

シックスナインの体勢に持ち込んだ。エリカの口からボクのがこぼれる。

「ダメ、シンジ君!恥ずかしいよ」ボクはエリカの尻の双丘を開き、音を立ててむしゃぶりついた。エリカの背中が弓なりに反る。軽い悲鳴とともに喘ぎ声が聞こえる。

「ボクのも、お願い」ボクがしゃぶりながらそう言うとエリカはボクのを口に含んだ。

舌をリズミカルに動かす。ユビも使う。執拗に最も敏感な突起を舐めていると、エリカの身体が震えだした。

エリカはボクのを掴むのが精一杯で口に含むことも忘れていた。

一瞬、背中が大きく反り返り…エリカの身体がボクの上でバウンドした。

エリカの身体から力が抜けていくのがわかった。

エリカの身体をすこしずらしてボクの腕の中に収める。エリカは荒い息をしたまま、目を閉じている。

時計に目をやると七時をまわっていた。ゆっくりと眠らせてあげたかったが、時間がなかった。

エリカにそっとキスをして、カーテンを少しあけた。普段は雪のように白いエリカの身体はサクラ色に染まっていた。

気持ちが落ち着いていく。僕はエリカの息が落ち着くのを待って話しかけた。

「今すぐでなくてもいい。エリカが欲しいよ。エリカの全てが欲しい。ずっと一緒に居て欲しい」
「うん。シンジ君がいい。ずっとシンジ君のそばにいたいよ。」

少しの間抱き合ってから、ノロノロと着替えをした。

「シンジ君、みちゃダメ!恥ずかしいでしょ!」僕が着替えを見ようとすると…すぐに気づき、怒る

用意が終わりエリカを送り届ける事にする。しっかりと手をつなぎ、ゆっくりと歩く。

「シンジ君の裸…見ちゃった」エリカは恥ずかしそうに呟いた。

「僕だってエリカの裸をイッパイ見たよ」明るい声で言う。

エリカは顔を真っ赤にして僕の背中を叩いた。

エリカを自宅に送り届ける。玄関先でネックレスを忘れた事に気づくが、僕が大切に預かっておくからと取りに戻ろうとするエリカを家の中に押し込んだ。

帰りにローソンに寄り、オロナミンを買う。僕はオロナミンを飲みながら幸せに浸った。

主玄関から入る。母は起きてきていた。今。帰ったの?って言葉に

「さっき、エリカが少し寄って行ったよ。中途半端な時間だったし」僕は返事をして一旦上に上がった。

顔を洗うが風呂に入るのは止めた。もう少しだけエリカの匂いに包まれていたかった。

昼頃にインターホンで起こされる。ノロノロと下におりる。一応は元旦を祝う事に。

お屠蘇嫌いの父に合わせて冷酒で乾杯をする。おせちを少しつまみ僕はお年玉をもらった。昨日も小遣いを貰った

から辞退の姿勢を見せたが、それはあくまでポーズだった。

母は相変わらず元気だった。「今日はエリカちゃんは来ないの?」

「多分、寝てるんじゃない?朝まで踊ったり、お参りしてたし」

お雑煮を食べながら答えた。父はぼんやりとテレビを見ている。僕も釣られてテレビを見た。昼食を終え、部屋に上がる。睡魔が襲ってきた。夕方になり、エリカに起こされる。部屋は既にエリカが片付けてくれていた。

「さっき電話でご挨拶したら、シンジ君が寝てるから起こしにおいでって…」

このまま晩まで寝続けたら、僕が夜中に目が冴えて暇だろうって母が言ってたらしい。

「シンジ君のお父さんとお母さんは初詣に出かけたわよ。」そう言ってエリカはベッドの横に座った。

ほんの数時間しか離れていないのに、エリカはキレイになっていた。そんな気がした。

僕は正直にそう告げた。エリカは「馬鹿」って小さく呟くと、嬉しそうな顔を見せた。

「こっちにおいで」そう言うと僕はエリカを抱き寄せた。

「不思議。シンジ君にギュッてされると安心する」エリカは幸せそうに呟く。

僕はずっとエリカを抱きしめていたい、そう思った。

「少し散歩しよう」僕とエリカはコートを羽織り表に出た。玄関を出た所で両親が帰ってきた。

「財布を二人とも忘れたのよ。それより西宮戎に行くけど、一緒に来る?」エリカは僕の顔を見て、「行った事ないから嬉しいです」母は僕に玄関に財布があるから取って来てといい、僕は急いで取りに戻った。

道は空いていた。すぐに西宮戎の近くまで来る。路駐出来る所を探し、車を止めた。

「ここは商売の神様だから十日戎が賑わうのよ」母がエリカに戎さんの説明をする。

迷子になったら赤門を待ち合わせ場所にすると決め、境内へ。出店も出ていて賑わっている。お参りをすませ、茶店で甘酒を飲む事に。エリカは初めて甘酒を飲んだ。

「暖かくて、甘くて美味しいです」その後、麩を買い…池の鯉にあげたりした。

父がせっかく西宮に来たんだからパチンコをしようと提案するが、母が即却下した。

「あんた達どうする?何処も行くとこないでしょ?このまま帰って一緒にご飯食べる?」母が聞くが、エリカは親戚が訪ねてきているし…正月なのでと遠慮した。車でエリカを自宅まで送って行き、三日に遊びに行く約束をして別れた。

エリカは二日は親戚参り(久しぶりの正月)をして、一年分の収入を稼ぐと張り切っていた。僕はそのまま両親と帰宅した。

二日は一日中のんびりと過ごす。ハルホから電話があったが、普通に正月の挨拶って感じだった。

冬休みの間に暇があれば電話して欲しいと言われ、うやむやに返事をした。

エリカからおやすみの電話があり、ハルホから電話があった事を話すか、一瞬迷ったが変に心配させるのも嫌だったので黙っていた。

三日

昼過ぎにエリカが訪ねてきた。エリカの顔を見るだけで、たった一日逢えないだけでも寂しがってる自分に気付いた。

「晩ご飯は鮎川さんの所と一緒なんだから、早く帰っておいでよ」そう言われながら僕はエリカと出掛けた。

「神戸はまだ店もあいてないから梅田かアメ村にしよう」僕は提案した。

エリカと電車に乗り梅田へ。

僕は反対したのだが、エリカは福袋を買うと主張する。エストやロフトを見て回るが、エリカも僕もそれ程欲しい物はなかった。

四ツ橋線に乗りアメ村へ…アメ村には御堂筋線よりも四ツ橋線。

アメ村は賑わっていた。ロボットで服を物色し、デプトへ…。ビームスからカンテでお茶をする。ハニーチャパティとマサラチャイがエリカの定番で、僕はラッシーを飲む。

「後でバルをチェックしたいな」時間はタップリとあったので、古着屋さんなんかをまわる。

空振りになるのも嫌なので、二人で揃いのバングルをビームスで購入した。そろそろ帰ろうとなり、梅田から家に電話する。

「白菜と鳥のミンチ、軟骨もあれば買ってきて」なければすぐに電話くれとの事。
「多分、今夜はチャンコかうどんすきだね」
「シンジ君のお母さんのつくねはふっくらしてて美味しいから大好き」

エリカと二人でデパ地下へ。目当ての食材を買った後、家に電話をしてからエリカの最大の目的である福袋売り場へ。

ヒロミチの福袋をゲットしたエリカはニンマリしていた。帰りの車中でエリカが要らないのは僕にくれると言うので「多分、福袋ごと僕にくれる事になるよ」

……。

エリカが食材の入った袋を持つ僕を見て「シンジ君と未来もこうして食材を抱えて…一緒にいたいな」と呟いた。

電車が芦屋駅について僕達がラポルテ沿いに歩いていると、ハルホとスレ違った。正確にはスレ違ったらしかった。

エリカの家にエリカを送り届ける。そのまま7時に約束すると、僕は帰宅した。母に食材を渡し僕は二階へ。すると少ししてからエリカが食材を持って手伝いにやってきた。

7時過ぎにエリカの両親がやってきて挨拶を済ませると食事が始まった。鍋が煮えるまでの間、エリカのお母さんが用意したオードブルをつつく。緊張していたのは僕とエリカだけだった。もちろん、親同士も緊張していたのだろうが…

僕やエリカには表情を読取るだけの余裕はなかった。食事が終わり、エリカ達が帰ったのは10時を過ぎた頃だった。

片付けの手伝いを済ませ、部屋に上がったのは11時過ぎだった。僕は上で風呂に入る事にした。

四日、五日はエリカが家族と里帰りする事になってたので、次に逢えるのは六日だった。四日は僕の方も祖父に会いに行く事になっていた。

五日

少し退屈していた僕は三宮に出た。

竹山さんらが集まっているJavaに顔を出す。正月らしく、スローなモダンジャズがかかっていた。

「明けましておめでとうございます」
「おう、今年も宜しく!」

そのまま僕も混ぜてもらい、ダラダラと過ごす。僕は適当に相槌を打った。アレンジャーがどうこうなんて話はサッパリだった。皆はハックルベリーやホンキートンクに行くと言うので、僕は高架下をブラつく事に。

「ミサが棚卸ししてるから覗いて来いよ」別れ際に竹山さんに声を掛けられる。

あまり気乗りしなかったが、とりあえず挨拶に向かった。店に着くとミサネェは明日からのセールの準備をしていた。

「ちょうど良かった、コーヒーお願い。」挨拶より先にコーヒーを買いに行かされる。……。良かった。いつものミサネェと僕の関係だ。そう思いながら、僕は全部で4本のコーヒーを買う。店に戻り、ミサネェと同僚の人に差入れをする。

新年の挨拶を済ませるとミサネェの同僚の一人が靴下占いの人だと紹介される。

「シンちゃん、靴下脱いでごらん」僕は固く断った。

そして、靴下占いが失敗した原因が分かったような気がした。

コーヒーを飲みながら靴下占いの人に僕を【年下の彼】と紹介したのにはビックリしたが、もう一人のミサネェの同僚がやんわり否定してくれた。

「でもシンちゃんはオイしそうでしょう?」
「そりゃぁ可愛らしいけど、彼女いるもんね?」

僕はどう答えていいのかわからず、俯いてしまった。

ミサネェはそっと耳元で「美味しいもんね」と囁く。

僕は耳まで赤くなった。

「アンタ、シンジ君に何言ったの!」その言葉に僕は救われた。

靴下占いの人はニコニコしていた。

その後、僕は力仕事を少し手伝った。

店の棚卸しが終わるまで付き合ったら……僕にはまだ振り切れる自信がなかったので、早々に帰る事にした。

…これでいいんだ、少しずつ、少しずつ…そう思いながら帰宅した。

部屋に入り、ぼーっとしているとエリカから電話があった。竹山さんやミサネェと会った事を話す。明日はデートしよう、そう約束して電話を切った。

晩ご飯を食べ、部屋で音楽を聞いているとインターホンが鳴った。電話に出ると…ハルホからだった。

「ちょっとシンジの声が聞きたかったの」

……。僕は答えを探した。

「本当はこんな電話をしたら…シンジに嫌われるよね?」
「電話ぐらいで嫌いにならないよ。それにハルホを嫌いになった訳じゃないし…」

本当は【別れた理由が】を挿入すべきだったのに…僕には出来なかった。

「シンジは優しいね。でも…シンジの優しさが私を傷つけてるんだよ」

ハルホの声は少し…ほんの少しだけ涙声だった。

「私…どうしたんだろ…こんなの嫌われるだけだよ」

僕にはハルホの気持ちがわかった。…本当は何もわかってないのに…わかったような気がしていた。

「好き…って…痛いんだよ。心がとっても痛いんだよ、シンちゃん知ってた?」

僕は本当は…知ってたような気がした…。だけど、何も言えなかった。

「ちょっと前まではラブラブだったのに…いつの間にか一人ぼっちなんだよ」
「うん、俺が悪いをだよな…ハルホには…」
「その先は言わない約束…だよね?」

ハルホは僕の言葉を飲込んだ。

「どんどん嫌な女の子になっちゃうよ…」
「それはないよ」

僕は辛くて…電話を切りたかった…。

「もう…可能性ないのかな?あの子には…勝てないのかな?」

……。

「ゴメン…今の俺にはそれしか言えないよ」僕には…それが精一杯の言葉だった。

電話を切った後…僕は風呂に入った。湯船に使って…全てを洗い流したかった。

それが出来ないのはわかってたし…そうしたくもなかった。いまだに心のどこかにハルホは存在していた。

風呂を上がり、寝る準備をしていると…インターホンが鳴った。内線とは違う…。

おそらくハルホだろうと思ってドアを開ける。

そこに立ってたのはやはりハルホだった。

「ごめん、きちゃった…」

僕はハルホを部屋に入れた。

「今、風呂上がりだから…すぐに着替えるから」

着替えたらハルホを送っていくつもりだった。

「部屋…変わってないね」ハルホは部屋を見回す。

「すぐに帰るよ。これ以上嫌な女の子になりたくないし…声をきいたら顔が見たくなっただけだもん」

僕とハルホの間に微妙な空気が流れる…。

炬燵に入りホッとしたのかハルホの表情が崩れる。

いつものように…僕はハルホの向かい側に座った。

ハルホが寝転がる…

「いつもの天井じゃないみたい。こんなんだったかな?」

……。

「やっぱ帰るね…シンジのもう一人の彼女に悪いし」ハルホはワザと悪戯っぽく笑う。
「送っていくよ」
「いい!」僕がコートを羽織ろうとすると、ハルホは走って階段を降りた。

玄関を出て…少しした所で僕はハルホに追い付いた。

彼女を振り向かせると…ハルホの目には大粒の涙が溢れていた。

「だって!寝転んだ時に彼女の顔が浮かんだんだもん!」

僕はハルホを抱き締めた…。ハルホにかける言葉もなかったし…そう…してしまっていた。

ハルホを抱いた時…違和感に似た…何かが違ったような気がした。

「シンジ…ごめんね…ごめんね」

本当に謝らなきゃならないのは…僕だった。

「帰ろう…」

僕は身体をそっと離すとハルホの手を引いた…。早く送り届けなければ…僕が壊れる…そんな気がした。

「あの子といる時のシンジ…幸せそうに見えた」

ハルホを送り届けた僕は…真直ぐに帰った。ハルホを苦しめているのは僕だった。そして…僕も苦しんでいた。ハルホを犠牲にして…僕の幸せは成立しているような気がした。

あの時のミサネェの言葉を思い出すが、もう…ミサネェに頼る事は出来ないと思った。

僕はハルホに別れを告げなければならなかった。ハルホの為にも、そうしなければならない…。部屋に戻っても僕は落ち着かなかった。何故かハルホの残香がある気がする。

布団に入ると…エリカの顔が見たい、強く思った。

二月第一週

ミサネェは後期試験と就活で忙しいらしく、会う機会もなかった。ハルホからはあの日以来連絡もなかった。

変わった事といえばエリカが髪を切った事と普通科の生徒に告白された事ぐらいだった。

そんな時、中学の時の同級生からハルホが盲腸で入院したと連絡が入った。

「三日前に入院したらしいよ。昨日手術したって。シンジ君も良かったらお見舞いに行ってあげてよ」

その日、僕はバスに揺られて芦屋市民病院へ向かった。病室をノックし、部屋に入る。ハルホは漫画を読んでいた。

「大丈夫?」「お見舞いに来てくれたんだ。…まぁシンジに連絡してって私から頼んだんだけどね」

「元気そうでよかった。何を持ってきたらいいか分かんなかったから…とりあえず」花を渡した。

「ありがとう!でも、花瓶ないから…どうしよう?」花はとりあえずお母さんが来たら考えるって事になった。

すぐに看護婦さんが入ってきて傷の消毒を始めた。その間は僕は病室の外で待っていた。

看護婦さんと入れ違いで病室に入る。ハルホに病状を聞くが、本当に大した事はなさそうだった。

「明日からは大部屋に移るし、ホント大丈夫。」

運動出来ないのと退屈なのが問題だけど、それ以外は問題ないとの事だった。面会時間が終わりになる頃、ハルホの父親がハルホの様子を見に来た。僕はハルホの父親に挨拶をして、病室を出た。

バスの時間を見たら…かなりの時間があったので、僕はタバコを吸いながら歩いて山を降りた…。—このまま友達の関係になれたらいいのに—

次の日

晩ご飯の後にエリカが勉強しに来るので、それまでに約束していた漫画をハルホに届けに行く事にする。

ベスパにキックを入れ、僕は市民病院へ向かった。

受付でハルホの新しい病室を聞き、部屋に向かう。部屋を訪ねるとハルホのお母さんが彼女の世話をしていた。

挨拶をすると、昨日の花の礼を言われ「ハルホ、お母さんご飯の仕度に戻るから…後でお父さんと来るね」

少し気を使ってくれたみたいだった。鞄から頼まれていた漫画と林檎ジュースを取りだしハルホに渡す。

「ありがとう。でも、もうすぐ退院だけどね」

会話の糸口がみつからない…僕も…多分、ハルホも同じだった。

「傷口見る?」ハルホが明るく話しかける。
「いや…それはいいよ」
「シンジの知らない私になっちゃったね」傷口を指しているのか…僕達の距離を言ってるのか、わからなかった。

ふっとした間があり、ハルホが布団の中からそっと手を出し…僕の手を握った。

「こっち来て」ハルホが小声で呼ぶ。僕がハルホの顔に耳を近付けると…そっと頬に唇が触れた。

「何もお返し出来ないから…」そう言うとハルホは僕に笑顔を見せた。

—その時は僕も…上手に笑えてたのだろうか—

ハルホの学校での話やクラブで大会メンバーになれそうだとかの話を聞く。

暫く話しをしていたら、ハルホの彼氏が見舞いにやってきた。

「盲腸だって?大丈夫か?」彼氏は僕を横目で牽制しながらハルホに聞いていた。

「それじゃ、失礼します。早くよくなって下さい」僕は彼氏に頭を下げ部屋をでた。

部屋を出る時に「なんでアイツが…」…続きは聞こえなかった。

僕がエレベーターホールでコートを着ながらエレベーターを待っていたらハルホの彼氏が追いかけてきた。

「どういう事なんだ?」

僕には彼氏の質問の意図がわからなかった。

「アイツはお前とは会わないって言っていたんだ。どういう事なんだ?」

…意味がわかった。

「彼女の同級生からたまたま電話があったんですよ。手術をしたって。それで見舞いに来ただけです。」

僕はそう答えながら—五日も知らなかったっておかしくないか?— …そう思った。

「そういう事なら仕方ないな。ハルホが言ってたのと同じだし」威厳を保とうとして、続けて

「アイツも迷惑そうだったし、すぐに退院だろうから…もう来なくていいよ」

「もう退院みたいだし、来る必要もないでしょ?」僕はカチンときていた。

「それに…」言いかけて、僕は続きを抑えた。

話は途中だったが、無視して僕はエレベーターに乗った。

ベスパにキックを入れる、なかなかエンジンが掛からなかった。必死にキックを入れている内に…不思議な事にハルホの事も、彼氏の事も忘れていた。

部屋に戻り、顔を洗い食卓へ。食事を済ませた頃に電話が鳴った。エリカからだった。

暫くしてエリカがやってきた。僕はハルホの入院の事を話すべきか迷ったが、言えなかった。本当は話すつもりだったが、エリカの幸せそうな表情を見ていると…僕には言えなかった。

二月第二週

ハルホから電話があり、退院したとの事だった。ハルホは彼氏の非礼を気にしていたが、僕は気にならないし心配いらない…と答えた。

—なんとなく、このまま薄れていくのだろう—…電話を切った後で僕はそう思った。

次の日、エリカと三宮へ買い物に出かける。

「シンジ君、寒いね。」エリカはそう言うと僕の手をキュっと握った。

「手袋があるから有効利用しよう!」僕はそういうとエリカの右手に手袋をつけた。僕は左手に手袋をつける。

「あったか〜い。シンジ君。これはナイスだよ」

僕はエリカの左手を握ると自分のダッフルコートのポケットにつっこんだ。

「これで完璧」

【one way】で文房具やポストカードを物色する。僕はセルロイドのペンケース。エリカはバーバラクルーガーの有名なイラストのトートバッグを買った。

その後は【スリーゲル】でアンティークの雑貨を見る。

「喉が乾いたね、ココアが飲みたいよ」僕はエリカに提案し、【JAVA】に入った。

「後で【ウェストエンド】もみたいね」その店は高いけど、カッコよかった。

「そうそう、シンジ君。バレンタインはチョコの他に何がいい?」エリカはメモを取る仕草をする。

「エリカと一緒にいられたらそれでいいよ」別に特別な事を言ったつもりはなかったが、エリカが顔を真っ赤にする。

「もしかしてエッチな事を想像した?」僕は小声でイタズラっぽく、エリカに聞いた。

「チアキがね…変な事を言うから…」エリカが手を振って釈明する。

「チアキがなんて?」僕はエリカを追詰める事にした。

「シンジ君が絶対に求めてくる…って。だから逆に…頭にリボンを乗せてシンジ君に…迫れっ…て」

僕は一瞬想像して吹き出してしまった。

「最近、チアキがエッチな話ばかりするから困るよ」僕は全然困らなかった。

【JAVA】の小さな椅子とテーブルはエッチな会話を小声でするには最適だった。

「じゃ、それをリクエストしようかな」僕はイヤラシイ顔をしていた。

「エッ…」エリカは悩んでいる。

「ウソ、嘘。僕はエッチなエリカよりもエッチな事をされてるエリカが好きかも」追い打ちをかけた。

「○△×▲☆…」エリカは簡単に壊れた。

自分で苛めているのに困った顔をするエリカを見て愛おしくなる。僕は変態だと思った。

「ごめんね。ホントはエリカの困った顔を見るのが好きなんだ」

「シンジ君、趣味悪いよ。それに変態」エリカは怒った素振りを少しみせたが、ホッとした様子だった。

その後、チアキとエリカのワイ談の内容を聞き出す。…そこには、ちょっと興奮してしまう僕がいた。

おわり

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コメント

  1. 匿名 より:

    もっと続きが読みたいです。
    物凄く甘酸っぱい感情が読んでてサイコーです!

  2. 匿名 より:

    長いわりにちょ―――つまらん。

  3. 黒猫(一応甲陽園住み) より:

    続きあるよ                                面白いけど完結してない                            3 11の前位に更新無くなったからシンジ亡くなったのかも           シンジみてたら続き書いてくれ

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