裏本にかかわる男たち

おっぱい大好きおじさんさんから投稿頂いた「裏本にかかわる男たち」。

前回、 花嫁の乳 を投稿した者です。

S2年生のとき、同級生のお母さんのおっぱいに魅せられた私。これまでの人生をおっぱいに賭けてきたと言っても過言ではありません。
（笑）

︎専門的な用語が出てきますが全てに注釈は入れていません。

私が出版社に勤務していた頃に知り合った、アズマさんと久しぶりに酒盃を重ねました。

喜寿にならんとするのに、肌の色艶も良く、相変わらずの酒豪っぷりに私は圧倒されました。

およそ出版関係に知らないことはないくらいに長けていた大先輩。
メートルがあがると、業界の裏の話を聞くことが出来ました。

32年前です。

当時のエロ媒体も紙から映像へと移り変わり
『裏ビデオ』が全盛だったと言っても過言ではありません。

しかし

それでも紙の媒体
つまり『裏本』も細々ではありますが
男性の性欲を満たすツールでした。

アズマさんは当時46歳で
脂の乗った出版ブローカーとして
東奔西走されていました。

ある同好会の代表を名乗る人物から
裏本作りの依頼を受けたアズマさんは
制作の段取りに苦労していました。

ビデオが隆盛する以前は
総合印刷会社を抱き込んだ
その筋の人間が幅をきかせていましたが
印刷業界の斜陽とともに
軸足を映像業界へ移していったので
梯子を外された形で
そういった印刷会社は
業界内で淘汰されていったのです。

アズマさんもそのため苦労をしていたのです。

裏本の制作は大まかに
版下作成
製版
印刷
製本
の工程を経ます。

スジ者が制作していた頃は
この工程を一社で完結させたので
効率もよく
違法行為が外部に漏れる心配も少ないのです。

しかし

印刷業界は
各工程が分業化されていて
版下屋
製版屋
印刷屋
製本屋
と職人が個人事業主の現場が多いのです。

裏本のような
曰く付きの仕事は敬遠されますし
一社完結と違い
秘密漏洩の心配が絶えません。

そこで
アズマさんが選んだのは
ムショ帰りの職人たちでした。
刑務所内の職業訓練で
技術を身に付けたのです。
蛇の道は蛇
裏本プロジェクトチームが結成されました。

同好会から写真が入稿されます。
あらかじめ伝えてあった通り
ネガではなくポジで撮影してあります。
紙焼きしてみると
モデルは10人並みの風俗あがりの女性ですが
焦点もあっていて
写りは問題ありません。

当然
性器の修正は不用ですから
プロセス作業は短縮されるはずですが
男性モデルの顔は
消して欲しいとの指示でした。

版下と合わせて製版しますが
4色印刷の為
色校正を出して
本刷りの印刷職人へ渡します。

印刷用の紙は
コート紙かマットコート紙を使います。
アズマさんは
紙卸メーカーの倉庫で
色やけして眠っている紙を
安く買いたたきます。

鼻の効く
その筋の三下が
一枚噛ませろと
ユスリタカリに来ますが
アズマさんは
広域指定の名刺を見せて
軽く追い払います。

印刷は
オフセット単色機です。
4色機を持つ零細印刷所はまずなく
せいぜい2色機ですが
この職人は単色機で挑みます。

カラー印刷は
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
のインクで刷ります。

4色機であれば
一度に4色を刷れますが
単色機の場合は
4回通さなければなりません。

さらに難しいのは
わずかでも見当がズレると
刷り上がりがブレてしまい
使い物になりません。

職人は1色ごとにトンボを見て
きっちり見当をあわせます。
まさに職人技です。

印刷のときにでるヤレ紙も
決して普通に廃棄しません。
無修正の性器がモロに写っていますから
すぐに足がつきます。
アズマさんが全て回収して
焼却します。

製本は
中綴じでの注文でしたが
あまりにも安普請に見えるので
並製本にします。

この工程でもヤレは出ます。
ハギレ屑でも回収していました。
200部を40部ずつ梱包して
アズマさん自ら納品します。

全ての工程は夜間作業で行い
入稿から納品まで10日を費やしました。
各工程での仕上がりごとに
アズマさんが預かり管理しました。

しかし
想定外の事態がありました。

この年
日本各地で偽札が出回りまったのです。
当然警察の目は
印刷関係に向きます。
夜間作業などを
近隣に通報されたら
やぶへびです。

急ぎ急ぎで進行して
納めたところで
大した実入はありません。
ボランティアみたいなものでした。

そこまでして
なぜ裏本を作ったのか訊ねると
アズマさんは

「男のスケベ心に尽きるな」

それだけ言って笑っていました。

長々とお読みいただきありがとうございました。
また投稿させていただきます。