エッチ体験談が10000話を突破しました。

笑う目〈1.基準となる情報を提示する説明的な物語〉

ko-さんから投稿頂いた「笑う目〈1.基準となる情報を提示する説明的な物語〉」。

「笑う目」

10代ももうすぐ終わる頃、僕はネットカフェでバイトを始めた。
そこは年中無休24時間営業の普通のネットカフェで、今にして思えば色々とブラックだったが、当時大学にも入らずフラフラしていた僕は、食う金・住む金を稼ぐため気にせずにひたすら働いていた。

遅番で深夜帯だったが、時給も高くて楽だったし……。
ただ、昼間のバイトメンバーよりもチャラついた奴らが多かった。それも男ばかりである。

そんなチャラついた奴らにとって本部社員という存在は上司というよりも敵であり、日頃の不正が見つからないよう、いつもアレコレ画策していた。見張り役とかね。
そしてそんな本部社員の中でも特に厳しいとされるOさんという人がいるらしかった。
昼間の社員である。会ったことはない。
正直本部社員ともなると半分ヤ○ザみたいな人が多く……もちろんそれは雰囲気だけのことだが、実際に空手の達人やらもいて怖い人たちばかりだった。
その中でも特に厳しい人なんて、僕は絶対に関わりたくなく、頼むから遅番担当にはならないでくれ! といつも神に拝みながら働いていた。
先輩曰く、他の社員はなんだかんだで慈悲の心があるが、Oさんはちょっとした出来心も問答無用で一発アウトにするらしい。それも判定も厳しめ。
別に普段やましいことのない僕ですらそんな上司は勘弁だった。

半年ほど働いたところまでは、とりあえずそのOさんをお目にかかることはなかった。
他の店舗にヘルプに行ったり、時間外の勤務があった時でも会わなかった。
このまま関わらずにいられるかと思っていたが、ある日、出勤してすぐの引き継ぎの時に店内でちょっとしたトラブルがあり、本部に電話報告が必要だったので僕がかけると、電話に出たのはいつもの遅番担当の社員ではなかった。
「はい、○○地区本部、Oです」
その名前を聞いて一気に緊張が走った。と同時に別の予想外のことを知って驚きながら、とりあえず平静を装ってトラブル内容を報告する。
「わかりました、報告書も作成しておくように」
そう冷たく言われてガチャリと切られる電話。
驚いた。
Oさんは、女性だった。
一応、本部の社員は面識がない人もみな苗字と役職は把握していた。Oという人は一人しかいないので、彼女が例のOさんで間違いない。
正直あんなイカツイ男連中の本部に女性が一人でもいたことに驚いた。しかも声の感じでは若かった。20代な気がする。
「えっと、Oさんて女の人なんですか?」
一応先輩に聞いてみる。
「そだよ。あれ? 知らなかったか」
ついでに色々過去の犠牲者にまつわる話を聞いて、さらに僕は怖じ気づいた。先輩はこの時、鉄で出来たような女と言っていた。

それからひと月ほど経った金曜の夜。出勤して少し経った、夜の11時半頃だったと思う。
お客さんの出入りが少々あり、レジ対応にそれなりに追われていた時、入り口からスカートタイプの黒いスーツを着た女性が入ってきた。
丁度レジが空いたので、「いらっしゃいませ」と、そう呼び掛けるやいなや、彼女は迷いなくフロントのすぐ横までやって来た。
思わぬ行動に「あの!」と声を掛けようとしたところで彼女が先に口を開いた。
「本部です。店舗到着の確認の電話お願いします」
ヒヤリとした。
まっすぐ目を見てそう言われ、一瞬体が硬直したのだ。
すでに先輩が本部に確認の電話をかけていて、素早く女性に受話器を渡した。
「Oです。△△店に到着しました。確認よろしくお願いいたします」
僕はその直後にすぐお客さんが来てレジ対応に戻ったため、一瞬しか見なかったのだが……、既にその顔は僕の脳にしっかりと焼き付いていた。
見た瞬間カミソリで指先を切ったようにゾクリとする、ものすごい綺麗な顔だった。
髪は、黒髪を後ろで一つに束ねていて、乱れがまったくない。
年齢は23~4歳ぐらいだろうか、色白で化粧っ気の少ない顔だが、アイラインにだけ紅い色が入っている。そのせいか、それほどつり目ではないものの、どことなく“お狐様”っぽい顔立ちに見えた。
そして背は高くはないのに威圧感を生む、その強い眼差し。
たった一瞬で僕の心は支配された。
一目惚れではない。
そんな良い意味ではない。
レジを操作しながら、先輩とOさんが話しているのが横目に入ってくる。
何故か打ち間違えてしまう。
手が、震えていた。
「今月から遅番担当になりました。よろしくお願いいたします」
先輩にそう言っている。
美しくも、抑揚のない、業務に徹底したような口調だった。
丁度そこでお客さんの出入りが落ち着き、Oさんは店内をチェックしに行った。
先輩は頭をかかえていた。
「まじかよ……」
僕は気が気でなかった。ちょっとでもホコリが落ちていたらめちゃめちゃ怒られるんじゃないか。
それをそのまま先輩に言うと、先輩は首を振った。
「怒るとかはしないよ、あの人はただ注意するだけ。その場ではね。でも処分は下す」
一番嫌なタイプだよと先輩はうなだれた。
そこにOさんが戻ってきて、早速店内の清掃状況でいくつか注意を受けた。
「~するように」「~が○○のままでした」
坦々としたその口調に、さっきの先輩の言っていた言葉が重なってドキドキしてくる。これだけで処分なのだろうか。
が、Oさんは最後に「では、何かあったらすぐ報告するように」とだけ告げて、あっさり出て行った。心臓に悪い。
長かったように感じて時計を見ると、まだ10分と経っていなかった。
はぁ、これからこんな感じか……。
僕の心は深く沈んだ。

Oさんが遅番になって数ヶ月。あれから彼女は店舗には顔を出さず、電話報告すると向こうで出るだけだった。
「もともと昼間でも店に来る人じゃなかったよ~」
と昼間勤務の先輩は言っていたが、安心は出来なかった。
各店舗の監視カメラは、店内のモニターだけでなく、すべて本部のモニターでも見ることが出来るのだ。
店中にあるカメラを見てはドキドキする。見張られている。あのカメラの向こうで、あの目に。
日々プレッシャーを感じていたのは先輩もそうだったようで、日に日に先輩たちは休みがちになっていった。
もちろん人数はそれなりにいたので店は回っていたのだが、時々ギリギリな日もあった。
そしてそんな時は他の店舗からのヘルプが来ることもあったのだが、ある日、ついに恐れていたことが起きた。
本来の所属店舗でなく、すぐ近所にある小規模な姉妹店舗に僕が入った日のことだった。
「本日は私が店舗勤務に入ります」
出勤して早々にOさんを見かけて薄々勘づいてはいたが、いざ着替え終わってからそう告げられると一気にテンションが下がった。
一晩一緒なのだ。これほどの美人と二人きりで……。それが死ぬほど嬉しくない。
何か起きないかなんて考えは当時1ミリたりとも浮かばなかった。

夜の11時過ぎ、前の番からの引き継ぎも終わり、お客さんの出入りの対応に専念する。
何故か各番の引き継ぎの時間とお客さんの入・退店のラッシュが重なることが多く、この日も僕はOさんとフロントに並んで、ひっきりなしに来るお客さんへの対応に追われていた。
僕は慌てているせいか説明が飛んだり、噛んでお客さんに聞き直されたりしていた。
しかし一方のOさんは常に落ち着いていて、ほぼマニュアル通りの文言で説明をしているのに全く噛まないし、早口じゃないし、丁寧で聞き取りやすくて、その上でちゃんと手短かに済んでいた。
「すげぇ」という思いが浮かび、次いで「恐ろしい」とも思った。
12時近くになってやっと落ち着いてきたところで、僕は通路やドリンクバー付近の清掃に回った。あまり長くOさんとは一緒にいたくない。
Oさんはフロント周りを丁寧に清掃しているようだった。
「ふぁ~あ」
通路やらなんやらの清掃なんてあっという間に終わり、あとはやる時間が決まっている仕事ばっかりになった。
いつもなら、先輩たちがこっそりマンガを読んだりバックヤード等でサボって寝ていたりする時間だったが、普段見張り役という名の真面目店員だった僕でもその時のほうが気が楽だった。同じ状態でもやはり違う。気持ちの問題だ。
レジ点検・トイレ清掃・シャワー清掃……。と、その後も何かをちょっとずつやる中で、Oさんとの会話はない。
基本的にお客さんへの迷惑になるので私語は禁止だが、小声でなら本部社員にも黙認されている。しかしOさんの場合はわからないので、何も話しかけることは出来なかった。
そのうち交代で休憩を取る時間になり、僕は先に休憩室へ向かわされた。
30分経って戻ると、Oさんはフロントでただ立っていた。流石に彼女もやることが無くなったのだとは思うが、あのキビキビとしたOさんが「何もしていない」「立っているだけ」とは、かなりレアな場面な気がする。
なんとなく人間味を感じ、僕は笑顔を見せながらOさんに「交代の時間です」と言って、休憩に行ってもらった。
また30分後……、戻ってきたOさんとフロントに立つ。
横顔を伺うと、何を考えているのかわからない表情でPCの画面の座席表を見つめている。なんとなく話しかけても怒られなさそうな気がして、一応小声のつもりで話しかけた。
「Oさんって、すごく真面目な方ですね。尊敬します」
内容には突っ込まないでほしい。
精一杯だったのだ。
僕もこれでいいのかと思いながらの発言だった。しかしOさんは返答してくれた。
「普通です」
「……」
「……」
……しまった、余計気まずい。
どうしよう。と思っていると、今度はOさんの方から話しかけてきた。
「Kさん(←僕の名前)の方こそ真面目だと思います」
「そうですか?」
「そう思います。……少し不注意はありますが」
「う」
僕が「それはすみません、気をつけます」と頭を掻きながら言うと、彼女は表情のない顔をこちらに向けた。
「私だってあります。大事なのはそこから成長しようとする意思です」
僕はこの瞬間、彼女がちゃんと人間の心を持っていることに気づいた。少なくとも、鉄で出来た女と揶揄されるほどには冷徹な人物とは思わなくなったのだった。
「Oさんって、良い人ですね」
「……初めて言われました」
それから何事もなく、日は開けた。
僕は、Oさんと過ごす時間も悪くないような気がし始めたが、そんなことは他のみんなには言わないようにしていた。
ただそれから、みんなが彼女の陰口を言っているのが妙に気になるようになった。

それ以降、Oさんが店舗勤務で入ることはほとんど無く、店にもたまに来るだけになったのであるが、やはり何度か会ってみると慣れるもので、正直見た目的には魅力的だった彼女が店に時おり来るのを、僕はいつしか楽しみに感じるようになっていた。
まぁ、ほとんどやましいことがない勤務態度だったので、そのへんに自信があったのもあるだろう。
こっちが何もしなければ、何てことない相手なのだ。

しかし……。
ある日のことだった。
数人で勤務していた時、夜中の2時ちょっと過ぎぐらいに店舗チェックにOさんが来た。
この時、トイレ清掃の時間だったがまだ何もしていなかったので、僕は先輩に言われて男性用トイレに先回りし、「今やってるところですよ感」を出そうとした。
が、トイレの前に「清掃中」の立看板を出そうとしたところで、Oさんがトイレに来てしまった。
「今からですか……。少し、遅いですね」
腕時計を見ながらそう言うので、
「急ぎます」
と準備し始めると、彼女は、
「急ぐよりも、確実に綺麗にするべきです。女性用は私が清掃しますので」
と言いながら、足早に清掃道具を持って女性用トイレに入って行った。
僕は男性用トイレに入って見回る。
幸いなことに全然汚れていない。今日はお客さんも少なく、ほとんど前の番の引き継ぎの清掃が終わった状態のままだった。
ラッキーと思うと同時に、あまり早く出てっても適当に終わらせたと思われそうだなぁとも考える。
するとそこで、そういえば丁度自分も行きたかったんだった。というのを思い出した。
時間あるし、ついでに……。
と、チャックを下ろして男性用の立ち便器で用を足し始めた、その時だった。
いきなりトイレの出入口が開けられ、Oさんの声が聞こえた。
「Kさん、女性用トイレのことですが……」
なんと、使用中と思わなかったのかOさんが開けて顔を覗かせて来たのだ。
突然のことに驚きながら、僕が「あっ、あの!」と慌てていると、思いがけないことに、彼女は一歩トイレに踏み込んできて平然と続けた。
「……トイレットペーパーは個室の何処に置くようにしていますか? この店舗は他と違って、トイレットペーパーの予備を置く台が個室にありませんね」
僕は焦ってしまった。
だが、出始めたものは途中では止められない。
「え? ちょっと待っ……そんな、普通に……!」
僕がそこまで言ったところで、彼女は何ともいえない微笑を含んだ声色で、
「え? 普通にって?」
と言って、なんとそのままスタスタと、用を足している僕のすぐ真横まで近づいてきた。
「何が普通にですかぁ?」
その口調は、いつも通りに聞こえて心なしか狡猾な笑いを秘めた声だった。だが、恐るべきことに表情はまったく普段と変わらずにいる。
ほんの傍ら、肩でも組まれそうな距離で僕の顔を真横から覗き込んでくるOさん。
当然、僕のものは彼女の視界に確実に入っているはずだった。
なのに、である。
なのに、彼女はまた平然と言うのだ。
「すみません、お聞きしたかったんです。……いけませんでしたかぁ?」
やばい、止められない。しかもこの状況に、僕は完全に勃起していた。
そのことはOさんにはわかっているはずだ。
彼女の顔を見れない。目は今、どこを見ている……?
「い、いけなくは……」
そう返答しながら横目で彼女の顔を伺うと、丁度僕の下半身から僕の顔の方に視線を上げて戻したところだった。
み、見られた……。
初めて、女の人に……。
「へぇ、いいんだぁ……」
その瞬間、口元はそのままで目だけが笑ったのがわかった。
にや~っとした目。
笑顔を見たことはなかったが、こんなに悪くてヤらしい笑い方するのか、この人は……。
「いや、その」
「で、トイレットペーパー置く場所は?」
「……た、タンクの上でいいです」
「わかりました、ありがとうございます。……あと、先程シャワールームを見ましたがリンスが無くなりそうでした。この店舗はリンスの在庫は何処に置いてありますか??」
また普通に聞いてくる……。
見るといつもの表情に戻っていた。なんなんだこの人は。
でも何故だろう、ゾクゾクする。
見下ろすと僕のペニスははち切れそうなくらい勃起していて、そのせいで完全に小便の出る勢いが落ちていた。このままでは全然終わらない。
「えっと、リンスは上のフロアの奥の……あの、ちょっと説明しにくい場所なんですが……」
「では待つので案内してください」
再度横目で見ると、Oさんは僕のペニスを目線だけで覗き込むように見つめていた。再び、にや~っと目だけ笑いながら。
少しずつ出なくなってきて、ようやく用を足し終わるまで、その視姦は続いた。
慌ててペニスをしまってチャックを上げようとするが、勃起しているせいで全然しまえない。中に戻ってくれないのだ。
あたふたしている様子を、またいつもの表情に戻ったOさんが見ている。
必死に背を向けてやっとの思いで片付けた僕が振り向くと、Oさんはトイレの出入口まで移動していて、扉を半分開けたまま僕を待っているところだった。
僕は急いで洗面台まで行って手を洗いながら、
「す、すぐ案内しますね」
と顔を向けると、彼女は冷たく言い放った。
「いえ、結構です」
「え?」
「今、丁度思い出しました。なので、大丈夫です」
僕がぽかんとしていると、彼女はまたニタ~っと笑った。しかも今度は口元も笑っている。
僕は最初に会った時とは違った、また別の怖さを、この時改めて感じた。
やっぱり、何を考えてるのかわからない……、この人は……。
一応、返事をする。
「わかり、ました」
Oさんは目元に笑みを残したまま
「では女性用トイレとシャワールームは、私がやっておきますので」
とだけ言って出ていった。
一人残された僕は立ち尽くした。
そこで気づいた。まだ、ズボンの中で勃起している。
思わず手をやる。
落ち着け……、落ち着け……。

そしてこの時の出来事が彼女を意識し始めるきっかけとなるのだが、それと同時に今回のことは、僕に今までにない条件反射を植え付けることにもなった。
これ以降、チャックを下ろしてペニスを出すだけで勃起してしまうようなったのだ。この時を思い出して……。
おかげでトイレにいくたびに大変なので、座ってでないと用を足せなくなってしまった。
だが一方で、一人でいてもチャックを下ろして勃起したペニスを露出させるだけで、気持ちいい気分に浸れるようにもなった。それはその後の人生に出会う別の女性との情事にもその癖が見られる程になったのだが、それはまた別の話……。

話は戻り、Oさんとトイレで色々あった数日後。
いつもどおり遅番で深夜勤務だった僕はその日、朝2時間残業することになっていた。
それ自体は割とあることで、僕は別段気にしていなかったのだが、そこで想定外のことが起きた。
店内でのちょっとしたトラブルで、例のOさんが残り時間わずかというところから店舗に張り付きっぱなしになったのだ。
トラブル内容もあり、上がる頃には僕はヘトヘトになっていた。しかも、僕が帰るのとOさんが本部に戻るタイミングが重なり、途中まで一緒に行く感じになってしまった。
トイレ事件以来でこれは非常に気まずい。
「た、大変でしたね」
「私はそれほどでも。どっちみち本部社員はいつもこの時間までの勤務ですし」
朝11時の繁華街を並んで歩く。
本部社員の勤務時間がバイトより長いのは知っていた。僕が言いたいのはトラブルの方だったのだが、どうやら彼女はトラブル自体も大した苦だとは思っていないようだった。

本部の事務所は、僕の働く店舗の最寄り駅のすぐ正面だった。
Oさんは、「それではお疲れ様でした」と言いながらビルに入って行った。
僕は駅の方に行こうとしたが、一瞬考えた。
この前のトイレでのこと……。直接聞けるわけではないが、それでも彼女はいったい普段何を考えてるのだろう。
彼女のことをもっと知りたい。
そう思った瞬間、僕は決めていた。このまま待っていよう。と。
Oさんも勤務時間は終わりなので、一旦事務所に帰っただけでまたすぐ出てくることはわかっていた。案の定、10分ちょっとでスーツ姿のまま出て来た。
Oさんは僕が待っているのを見て、表情は変わらないが驚いているようだった。
「どうしました? 報告し忘れたことでもありましたか?」
そう訊ねる彼女に、僕はドキドキしながら言ってみた。
「えっと。この後、時間ありますか?」
「……そうですね。まぁ、帰宅するだけです」
「一緒に、食事しませんか?」
ダメ元のつもりだったおかげか勇気は必要最低限で済み、すんなりと言葉は出てきた。言いながら断りの返事を待っている自分もいたし。
だが……。
「えぇ、良いですよ」
僕は驚いた。
良いと言ってくれた。やばい、断られなくて逆に後悔し始める。
「あ、……ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ」
僕は頭を掻いた。
微妙な沈黙が流れたような気がする。その空気感が嫌で口を開く。
「じゃあ、えっと、何処にいきましょうか……」
「え?」
Oさんがキョトンとした。
「え……?」
僕もキョトンとする。
「考えてなかったのですか?」
彼女のその言葉に、しまったと思った。気恥ずかしくなって目を反らす。
罰が悪くなって僕が黙ってしまっていると、唐突にOさんが吹き出した。
ビックリして顔を向ける。
彼女は初めて見せるニッコリとした明るい笑顔で、優しく言った。
「ダメだぞっ。女の人誘うんだったら、ちゃんと調べておかないと」
ドキッとした。
今度は、良い意味で。
「す、すみません……」
「わかりました。じゃ、一緒に探しましょうっ」
彼女は、先を歩き始めた。これもまた初めて見る、軽い足取りで。

探し当てたお洒落な雰囲気のイタリアンカフェで、割とリーズナブルなパスタを二人で食べていると、Oさんはとても普通の女性に見えた。
会話も弾むし、よく笑顔になる。
スイッチの切り換えがはっきりしてるだけで、こっちが素の彼女なのだろうか……。
「なんか、意外でした。仕事の時と全然違って……」
思ったことをそのまま話すと、Oさんは柔らかい口調で言った。
「うーん、やっぱり仕事は仕事でしっかりしないとなぁ~って思ってて」
彼女が丸みを帯びた声色で喋っているのが不思議な感じだ。まだ馴れない。
「でもK君、良かったんですか? 今日は疲れてるのでは……」
「疲れてるから一緒にいたかったんです」
それは反射的な応答だった。
自分でも意図せずそんな口説き文句が口をついて、僕は内心ビクリとして顔を伏せた。
からかうな、と怒られるかと思って恐る恐るOさんを見ると、彼女は何も言わずに目を丸くして僕を見つめていた。ゆっくりモグモグしながら。
そして、今度はニコニコしながら続きを食べ始めた。
どう思ったのだろう。
それが馬鹿にした笑顔なのか、嬉しくて笑ったのか、わからなかった。

その日帰ってから寝ていると、Oさんの夢を見た。それも恥ずかしいことに、キスをしている夢だった。
起きてから自分の心に聞いてみる。
はっきりと、これは恋愛感情だという答えが返ってきた。
あんなに苦手だったのに。いつしか僕はOさんを好きになっていたのだ。
携帯の画面に表示されている、交換してもらった連絡先を眺めては、溜め息がこぼれた。

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エッチ体験談投稿募集中

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