エッチ体験談が12,000話を突破しました。

シングルベッド

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彼女は、さっき、湯を沸かしに席を立った。俺は、六畳のフローリングに一人残されて座る。

床にそのまま腰を下ろしていたが、あまり寒さを感じない。外の方が寒かったせいだろう。体温を取り戻すように両手を擦り合わせる。
しばらく、そうしていたが、そっと首を伸ばして彼女の様子を窺った。肩と髪の一部が見えた。他は壁に遮られて見えない。

俺は、急に思い立って静かに腰を浮かせた。あまり広くないキッチンに立つ、彼女の背中に静かに歩み寄る。彼女は、セーターとジーンズ。

色は派手ではない。外出から戻って、ダウンコートを一枚脱いだだけの格好。俺には気付いていない様子だ。

足音を立てないように更に注意して近付くと、そっと脇の下から両手を伸ばして、抱きしめながら胸を掴んだ。彼女は短い悲鳴を上げて、一瞬、震えて立ちすくむ。柔らかい感触を両手に感じながら、首筋に顔を埋めた。

「何?何?」俺の方を向こうとしながら、問い掛けてくる。声が少し上擦っていた。

「しようよ」俺は、ストレートにエッチを要求した。「えっ……だって今、帰って来たばかりだし……」

彼女は恥ずかしそうに顔を伏せる。きっと、照れているのだろう。僅かに首筋が赤い。

よく見ると耳も赤い。「それに……まだ……夕方だし……」「いいじゃん」

午前中から二人で外出して、さっき帰って来たばかりだ。今日は、彼女の買い物がメインだったから、買い入れた荷物を部屋に運び込んで、一息つくと、お茶でも淹れるよ、と彼女がキッチンに向かった所だった。「でも……ゴム……ないよ……」

俺は肩を掴んで振り向かせ、その口を塞いだ。「……んんっ……」彼女は身をよじらせるが形だけの抵抗に見えた。

俺は、後ろに回した手で火を止めると、そのまま両手で尻をがっしりと掴んだ。張り詰めた弾力のある尻を縦横に揉み回す。「……ぅんっ……んっ……」

彼女は胸の前で手を組んで鼻息を漏らしている。少しの間、そうしてキスを繰り返してから俺は言った。「……あるよ」

唇を離して、彼女を見る。訳がわからない、という表情。俺は、更に付け足した。「ゴム」

「ホントに?」俺は、頷いてからジーンズの後ろにあったポケットから財布を出して、そこに入れてあったゴムを取り出して、見せる。「何で持ってるの?」

「用意がいいでしょ?」すると、彼女は何ともいえない表情をした。俺は、それを了承したという答えだと受け取って、急いで財布をしまってから彼女を担ぎ上げる。

両膝の裏と背中を支える形。お姫様抱っこ、という体勢だ。慎重に歩いていく。

1DKなので、ベッドは、すぐそこだった。そのまま一直線に向かって、彼女を下ろした。大学に通う為、彼女は、この部屋で一人暮らしをしていた。

キャンパスは、実家から、そう遠くない位置にあったので一人暮らしをする必要はなかったのだが、自立したい、という彼女の希望を、両親は数回の話し合いの後に、ようやく受け入れ、勉強に支障を来たさない事と定期的に訪問する事を条件に許可をしたのだった。彼女は信頼を裏切る事なく、彼等の出した条件を満たし続けてきた。それも、もう残り僅かで終わりを迎える。

スプリングを軋ませて、彼女の体は静かに弾んだ。そのまま覆い被さって、キスをしながら服を脱がせていく。「…んっ…んっ……」

彼女は、俺のキスに応えながら、脱がされるのに協力していく。あっという間に下着だけになると胸の前で両手を合わせて小さくなった。凍えているようにも見える。

着ているのは、上下揃いの薄いブルー地。派手な装飾もなくシンプルなデザインだ。同調するように、俺も脱いでいく。

まだ空調が利いていなかったから、少し肌寒い。リモコンで設定温度を上げた。それからお互い潜り込んで、あまりベッドから体が出ないようにする。

帰ってから電気を点けずにいたから部屋は明るくない。むしろ、陽が落ちるような時間だったから、薄暗い、と言えた。「……ぃや……んんっ……」

恥ずかしがる彼女のブラを取ると、弾けるように胸が現れた。両手で持ち上げるようにしてから、いきなり乳首に吸い付く。「はぁぁんっ」

彼女が甘い声を上げた。空いた方の乳首は手で転がす。「ぁあん……はぁ……んぁっ……あん……」

手でコロコロ。「ぅふっ…ぅふん…」舌でペロペロ。

更に彼女の反応が増した。もう片方の手を下に伸ばしていくと下着越しではあったが、そこは、もう湿っている様子だ。最後に残った下着を脱がせると、それが、よくわかった。

回転させるように軽く触っただけで、簡単にほぐれていく。それを知ると、彼女の両脚を割って間に潜り込んだ。そっと口を近づけて、うっすらと開いたマンコを舐め始める。

「はぁっ……ああぁん」一段と甘い喘ぎになった。俺は、上下に舐めながら鼻でクリトリスの辺りを押すようにしていく。

すると、更に彼女の声が大きくなる。彼女とは、付き合い出して、まだ日が浅い。知り合ってからは長かったが、色々あって正式な付き合いは始めたばかりだった。

会えるのは、ほとんど週末に限られていたからエッチの回数も、そんなに多くなかった。だからだろうか、彼女と過ごした年月の割りには新鮮な気持ちが残っているように感じていた。何度か舐めた後で、一度指を入れた。

「ああっ」という彼女の喘ぎを聞きながら進入させる。奥まで入った所で、グルグルと掻き混ぜてみた。

「ぁあっ……ぃやっ……あん…ぁん……」(結構、濡れてる……)反応の良さに少し驚いた。そのまま、指をゆっくりと抜くと、太腿を抱えて挿入しようとした。

「……あっ……ゴム、ゴム……」マンコの入り口に擦り付けていた俺の腰を押さえて彼女は言う。言われて、やっと気が付いた。

彼女の反応を見る事と、入れる事しか考えてなかったから、ハッとして動きを止める。「ああ……ごめん」近くに落ちていたジーンズの中の財布からゴムを取り出して装着。

改めて腰を落として狙いを定めた。割れ目をなぞるように擦っていくと、「あぁぁん」「はぁはぁ」と喘ぐ彼女。

ゴムの潤滑剤のせいもあり、スルスルと入っていった。ゆっくりと腰を進めて奥まで入れると、一旦動きを止めて彼女を見下ろした。呼吸が荒い。

まだ暖まり切らない部屋に熱い息が漏れる。奥の方を押し上げるようにして押し込むと、「…ああっ……ああっん」と喘ぐ。ゴム越しに膣内の感触がわかる。

柔らかく温かく、粘膜が俺のものを刺激してくるのを、はっきりと感じた。胸を舐めながらゆっくりとしたピストンを開始する。緩慢な動きで、チンコ全体で快感を得るような感じ。

「ああっ……あんあんあん……」彼女は、すぐに反応して、さっきよりも喘いでくる。すると、次の瞬間、何かに気付いたように自分で口を塞いだ。

「どうした?」彼女は、目を開けて言う。「はぁ…おとなり…に……聞こ…ちゃう…から…」

隣りや上の住民を気にしているみたいだ。まだ夜じゃないので外の人通りも気にしていたのかもしれない。彼女の部屋は二階建ての一階にあった。

奥の方に位置していたから隣りは一方向だけしかなかったが、窓の外は、すぐ道路がある。道が細いから滅多に車は通らなかったが人通りは、それなりにある。言われてみれば、隣りと上と、外のどこかに人がいる可能性は高い気がした。

「平気だよ」それでも白けた空気になるのを恐れて俺は安心させるような言葉をかけた。「大丈夫、大丈夫」そう言いながらピストンを再開して、さっきよりも激しく膣内を掻き回す。

「……はぁっ……だめっ……んっ……」ギシギシと軋むベッド。必死に声を殺す彼女。

「だめん……こえ…で…ちゃぁあん……ぁんぁん……」大分、部屋も体も温まってきたから上体を彼女から離して動き出す。少しくらい肌を出しても平気になってきた。

嬉しい事に、さっきからの動きでゴムの表面は根元まで充分に湿ってきて、その存在を感じさせなくなってきた。生で入れているみたいだ。彼女の懸念を否定したのは、そうした自分の盛り上がりに水を差されたくなかったのもある。

調子に乗って、半分位まで引き上げてから、勢いをつけて一気に根元まで押し込む。「ぁぁああん……んっんっ……」トプッと音がしたような湿った感触に気持ち良さが増す。

最奥までチンコが到達した時の彼女の喘ぎが一番色っぽい気がした。それが聞きたくて、もう一度、引き上げる。ズズズッ……と慎重に、抜いていき、再び押し込んだ。

「はぁぁん……あっあっあっん……」さっきよりも声が小さくなっているが、完全に消す事には成功していない。抜いていく。

押し込む。「……ぁぁん……はぁはぁ……」さらに、回転を上げて奥の方をガシガシ突き上げるようにした。

「ぃやっ…はぁ…だめっ……ぅぅん……もっと……」「何?」「……ゆっく……りぃぃ……」

構わず、ピストンピストン。そうして俺は彼女に構わず動いていた。彼女は声を抑えようと必死だったみたい。

数分が過ぎて次第に俺の方も、そろそろ出そうかなぁなんて気がしていた時。どこからか機械的な音が聞こえた。一旦、動きを止める。

耳を澄まして発信源を探す。彼女の鞄からみたいだ。どうやら彼女の携帯が鳴っているらしい。

隣りや外からの音ではない。自分の携帯でもなかった。それを確認すると、俺は彼女に声をかける。

「携帯」「……えっ?…はぁ……はぁ…何?」「鳴ってるよ」

彼女は、ようやく意味が通じたみたいで周囲に視線を走らせる。俺が指差すと、鞄のある方を向いた。彼女が、なかなか動き出さないので、俺は繋がったまま、手だけ伸ばして、辛うじて近くにあった鞄を手繰り寄せる。

音がする場所に見当を付けて携帯を取り出した。まだ着信音は止まない。彼女に渡すと躊躇いながら開いて画面を見た。

「電話?」そう訊くと、彼女は頷いた。「誰?」

「友達」「出なよ」「え……でも……」

「急な用件かもしれないじゃない」俺は動きを止めて、彼女を促した。「……うん……」

ずっと携帯を眺めていたが、ようやくボタンを押して左耳に当てる。「もしもし……」「あ、私だけどー。今、何してる?」

電話が繋がると相手の声が俺にも聞こえた。どうやら女性みたいだ。部屋が静かなのと受話音量が大きいせいで、はっきりと聞こえる。

「今、家。……うん……そう……そう」彼女は送話口の辺りを押さえて、余計な音が漏れないようにしている。「えーー、駄目だよー。……うん、ちょっと……人が来てる……」

『人』と言われたのに少し腹が立った。(『彼氏』と言えよ……)しばらく黙っていたが、その苛立ちを解消する意地悪を思い付いた。俺は両手で彼女の腰を掴んで自分の腰を押し上げる。

彼女は腰の方から押されるようにしてベッドの上にずり上がった。「はぁっ……ああんっ」吐息と一緒に喘ぎ出す彼女。

咄嗟に携帯と口を押さえたので、相手に声は漏れなかったらしい。下から、睨みつけられた。電話の相手は、どうやら今から会いたい、という用件らしい。

それを彼女は、何とか断ろうとしているようだ。この状態なら、それも当然か。そう思いながら、挿入部を見た。

しっかりと繋がったまま、チンコは彼女の中に根元まで埋まっている。さっき睨まれたので俺は動かずにいた。すると、何度か遣り取りがあってから、彼女は携帯を押さえ、小声で俺に訊いた。

「ねぇ……これから友達が会いたいって言うんだけど……」「あぁ……いいんじゃないかな」会話は、やはり予想通りの内容だった。

「別に構わないけど」理解のある所を見せようとして優しく微笑んだ。別に、止める理由もない。

その友達というのが男ではないだろうし。それよりも俺が気懸かりなのが下半身の事だった。(最後までいけるのだろうか……)今の俺にとってはエッチが最後まで出来るのか。

出せるのか、そっちの方が切実な問題だった。「そうじゃなくて!」そんな事を考えていると、彼女は俺の誤解を打ち消してきた。

「俺さんも一緒に会いたいんだって」彼女の説明によると、今、彼氏と部屋に居る、という話をしたら、良ければ一緒に食事でもしたい、という提案をしてきたらしい。俺達も夕食は、まだだったから、彼女の友人が、そう言うなら反対する理由はないんじゃないか。

そう思って返事をした。「俺は別にいいよ」下からジッと見詰めてくる彼女に言った。

「……いいの?」「いいよ」「だって、俺さん、会った事ない人だよ」

「そうだね」「平気なの?」「だって……友達なんでしょ?」

「まぁ……ね」「じゃあ、いいよ」彼女の瞳は何かを訴えかけているようにも見えたけど、その時の俺は思考の半分以上を下半身に支配されていて冷静な判断が出来なかった。

そうでなければ、もう少し違った答えをしたかもしれない。などと、後になって思った。それから彼女は細かい打ち合わせをした。

俺は傍で大人しくしている。チンコは立ったままだったが。「どれくらい?」

途中、彼女の会話に割り込んで、友達との待ち合わせまでに、どれくらい時間があるのか訊いた。「あと……三十分ぐらいで駅に着くって」彼女は、俺の質問を、そのまま友達にしてから答えを返してきた。

彼女の部屋から駅までは、ゆっくり歩いても十分くらいだろう。顔を寄せて耳元で囁く。「それまでに最後までしていい?」

「……えぇー……」「だって、このままじゃ、つらいよ」「でもぉー……」

「エッチに十分、仕度に十分、それから駅に向かえば、ちょうど三十分じゃない?」それでも、何となく渋る彼女に対して訴えるように軽く腰を突き上げた。「…………っっ」

さらに、力を入れて動かしていく。「ちょ……だめ……ぁぁ……らめっ……」彼女は、送話口を押さえながら携帯を持っている手を枕の下に突っ込んだ。

それから、空いている手で、自分の口を塞ぐ。「……ちょ……まっ……やっやっ……ぁん……」「どうする?」

「あんああん……はぁ、あん……ぁぁん」「返事しないと止まんないよ」「えっ…ぁっ…ぁっ……ぁっ……」

「このまま、出していい?」「もぅ……わかった!」抑えたような声音だった。「…わかっ……た……からぁ……はぁ……」

それを聞くと、俺は動きを止めた。彼女は、枕の下から、ゆっくりと手を出して、友達に返事をする。懸命に呼吸を整えながら、相手には平静を装っている彼女。

その姿が健気で可愛らしく見えた。「……もぅ……エッチなんだからぁ……」電話を切ると、彼女は、そう言って俺の首に手を回してきた。

それから忠告するみたいに言った。「ちゃんと時間通りに終わらせてね」もう、すっかり暗くなって、帰って来た時とは別の部屋のようだ。

光っているのは、電化製品の時刻表示くらい。今度は、正常位で繋がっていた。太腿の裏側に手を当てて腰を上向かせるようにして突いている。

体重を掛けるようにドスッドスッとピストンしていた。彼女の腰は、その振動を全て柔軟に受け入れて、ベッドに伝えている。「……はぁ……はぁ……」

お互い息が荒い。「…もう…時間ないんじゃない?……」俺の動きが止まった時に、彼女が訊いてきた。

携帯を見る。彼女の言う通りだ。もう出す為に動く事にした。

「じゃあ……速くするよ」「……うん」そうして、彼女の太腿から手を離して、抱きしめるようにする。

上半身を密着させて、腰だけを動かすようにした。出し入れの幅は狭くなるけど、奥まで突っ込んでいるから、その分、快感が増す。チンコ全体が包まれているような気になった。

それから挿入のスピードを上げる。「あああん……ぁんぁん……はぁぁん」途端に彼女の声も上がった。

奥まで入っているのが気持ちいいのだろう。「はぁ……ああん……ぃぃ……ぅん……」膣内のヒダがチンコを撫でる。

合わせている胸の隙間に手を入れた。窮屈だが彼女の乳首を弾く。「ぃいぃい……ぁん……それっ……ぃぃ……」

それに合わせて奥が締まってきた。キュンキュンしている感じ。その窮屈な部分に押し込むように奥を突く。

更に、突く。「はぁぁん……ぁあぁ……」(気持ちいい)俺は欲望に任せて腰を動かした。

「ぁぁん、んんんん……んんん……」彼女は、俺の肩に顔を埋めて必死に声を殺している。噛み付きそうな勢いだった。

「ぁぁぁん……ぁん……ぁんぁん……」俺は、わざと声を上げさせるように激しくしていった。「……はぁ…はぁ…はぁ……だめ……はぁ……」

動きを速くしていくと、まるでゴムをしていないみたいに感じられる。チンコを撫でているのは、本当にゴム越しの膣内なんだろうか。念の為、手を伸ばして触ってみる。

確かにゴムは着いていた。戻した手は、べっとり濡れている。ドロドロだった。

それから、彼女を仰向かせてキスをした。口の中もドロドロになる。そのまま、彼女の舌を舐め回してピストンしていたらイキそうになってきた。

「イキそう……」一度、口を離して言う。彼女は声を出さないように、「んーんー」と言った。頷いているのだろう。

俺は、引くよりも押す力を意識してピストン。何度も出し入れしながら最後の快楽を貪るように膣内の感触を堪能した。「あんああん……んっんっんっ……」

「ああぁ……いく…いく…」「ぁぁ……ぃぃ……よぉ……あん」一瞬、背筋に快感が走る。

気付くと放出していた。ゴムを押し広げながらの射精。ビクッ…ビクッ……ビクッと繰り返しゴム内に精液を吐き出す。

でも何だか、中出ししているみたいな気にもなる。そうしながら、少しでも出せるように、奥を何度も押し上げた。子宮を突き上げるイメージ。

「……ぅうん……んんっ……」その度に、軽く彼女は喘ぐ。膣内も小刻みに収縮していた。

俺は、快感が途切れるまで何度も腰を突き上げた。しばらくして、お互い落ち着いてくると、ゆっくりと腰を下げて、チンコを引き抜いた。そして、後始末をする。

彼女は、時間を見てから、すぐにシャワーを浴びた。俺はゴムを外して簡単に拭いてから服を着る。部屋は、すっかり暖まっていた。

「もーー、ギリギリじゃない?」浴室から戻って来ると、彼女は慌てながら、そう言った。計画からすると若干遅れ気味。

仕度の間中、何度も「ヤバイ、ヤバイ」と言っていた。二人揃って急ぎ足で部屋を出る。駅までは小走り。

せっかく部屋の空調とエッチで温まった体が外気で一気に冷えてきた。あと少しで駅、という所まで来たら、間に合いそう、というのがわかったので、歩調を緩める。二人で談笑しながら息を整えた。

駅が見えてくると、土曜の夜のせいか人が多い。色んな人が足早に行き交っている。人並みで見通しが良くない。

約束の場所まで辿り着くと、改札を出て、すぐの所に、目を惹く女がいた。ダウンコートに短いスカート。ロングブーツを履いていた。

肩まで届く髪は真っ直ぐで、僅かに色が抜けて茶色い。薄い化粧なのに、目立つ顔立ちだった。(うわっ……可愛い)思わず視線が止まった後、口の中で、そう呟くと、それが待ち合わせている彼女の友人と知って、二度驚く。

その子は彼女を見つけると、嬉しそうに手を振って駆け寄って来た。「ごめんねー」「おまたせ」

彼女も明るい声で、それに応えた。簡単な遣り取りの後、彼女は、俺を友達に紹介した。「はじめまして」

俺も友達も同じ事を言った。それから、相談して、近くの居酒屋みたいな店に入る。チェーン店ではないが、この辺りでは、それなりに有名で、味もいいし値段も手頃だ。

店内は、それなりに混み合っていたが、待たずに入る事が出来た。繁盛しているようだ。店員に人数を告げると席まで先導していくので、彼について行く。

途中、周りに目を向けると、席は八割方、埋まっていた。案内された席は、店の真中辺りに位置している四人掛けのテーブル席で、奥の方ではないが、壁や仕切りがあるので他の客は目に付かなかった。まずはビールを頼んで乾杯。

それから談笑。咽喉を潤して、適当に、つまみを食べて、一息つくと彼女が友達に訊いた。「そう言えばさー、今日どうしたの?」

俺は、二番目に来た皿から鳥の唐揚げを口に運ぶ。友人は答えた。「うん、何となくねー。こっちの方に来る用事もあったし、なんか顔が見たくなったのもあるしー」

「そっかー、別にいいんだけどさ……、電話鳴って携帯見たらケイコからでさー、急に連絡来たからビックリしたよ」「ごめんね」友達は突然の来訪を詫びる。

それからは、当たり障りのない話が続いたけど、盛り上がった。友達は、彼女と同じ大学で、仲もいいらしい。俺に気を遣って、わからない話は避けてくれているみたいだし、そういう話題に当たった時は、彼女が説明してくれた。

終始そんな感じだったから、俺も友達に変な気を遣う事なく楽しめた。食事が始まって一時間も経つと、友達は既に四杯飲んでいた。(意外に酒飲みなのか?)外見からは飲むような感じには見えなかったが、かなりのペースで酒が進んでいる。

友達が飲んでいるからか、彼女も同じだけ飲んだ。そんなに飲む彼女を見たのは初めてだった。「やっぱりケイコが一緒だと飲んじゃうねー」

彼女の言葉に友達も頷いていた。俺は、その二人の姿に内心、呆れながらも、楽しい酒だし、まぁいいんじゃないか、と思っていた。同時に、帰りを心配して自分は酒を自重した。

最初のビールを入れて、二杯でやめておく。そうして食事もかなり進んだ頃、彼女が席を立った。トイレだろう。

(平気だろうか……)足取りを横目で確認して見送る。何とか目的地に向かっているようだ。「あの……」

テーブルの向こうから控え目な声がした。彼女に向けていた視線を正面に戻す。相手は微妙に上目遣いで、何かを言おうとして言い出せないような、そんな表情だったが、待っていると口を開いた。

「あのー……俺さんて……」「はい」「……結婚……されるんですよね……」

「あぁ……ええ……まぁ……」予想も付かない言葉に驚かされたが、あまり感情を出さずに答える事が出来た。「いつ頃ですか?」

「さぁ…どうでしょう…近い内には……と思っていますけどね。彼女も大事な時期ですし……」慎重に言葉を選ぶ。

相手の発した言葉よりも、その意図の方が気になる。色々な考えが浮かんだ。「わかります。……私も春には就職ですから」

「そうですか……」笑顔で頷きながら続けた。「ですから……お互い落ち着いたら……とは思っています」「そうなんですかぁ……」

「ええ……」周囲は、あまり騒がしくない。隣りのテーブルにも客がいるらしいが、間仕切りの壁が厚いせいか、会話は、ほとんど聞こえない。

時々、店員の足音が後ろでするくらいだ。それらが一塊の音に聞こえてBGMのようになり俺は会話に集中できた。この後、どんな会話に発展するのか、俺は意識的に黙って彼女の返事を待った。

すると相手は、こんな事を言った。「さっき……私の事、同じ大学だって言ったでしょう?」「ええ……そうでしたね」

彼女の言葉を思い出す。「でも、私、高校も同じなんです」「へぇ……」

我ながら何とも間の抜けた返事だ。そうなんですか、と付け足そうとして、他に何か気のきいた事を言った方がいいんじゃないかと思った時、目の前の相手は更に続けた。「私……、俺さんの事も聞いています」

「はぁ……」(何を聞いているのだろう?)戸惑いと驚きが湧いた。更に相手は言葉を継いだ。

まるで一方的に話しているみたいに。「色々、大変だったみたいですね」その言葉に一瞬で動悸が激しくなった気がした。

相手を窺う。俺を同情するような表情にも見えたが、おそらく被害妄想だろう。「もう……お元気なんですよね?」

長い沈黙。考えてみれば、さっきから相手の言葉にまともに返事をしていない自分がいた。それに気付いて、小さく息を吐いた後、ようやく返事をした。

「それも……聞いてるの?」「はい」当然のように言う。

顎を引いて上目遣い。しばらく見詰めあう二人。(知っているんだ……)俺は、それを見て確信した。

おそらく、間違いないだろう。相手は全部、知っている。そう考えた時、思わず身を硬くした自分に気付く。

何故だろう?その理由を考える。きっと、多くの人には知られたくなかったのだろう。それを、決して恥ずかしい事でもないのに自分勝手に恥のように感じていたのかもしれない。

だから、身近でない者に触れられたくない。もしくは、その話題に触れる事で、相手から発せられる上辺だけの同情や慰めの言葉を聞きたくなかったのかもしれない。それは十分、予想される事だ。

だから、それを全部話したのは彼女にだけだった。彼女には聞く権利がある。過去の事だが、おそらく、そうしないと彼女は俺と付き合う事に納得しなかっただろう。

その時、この話をするのは最後だと思った。もうこれ以上、この件を知る必要のある人はいない。ただ、もしいつか、笑い話のように話せる時が来て、その時になって話す必要がある誰かが出来たなら話せばいいじゃないか。

そんな風に考えていた。だが、意外な場所で意外な人から、その話が出て驚かされた。できれば、したくない話だったが知っている人間に隠しても仕方ない。

「ええ……退院してますよ。前以上に元気です」「よかった……」それを聞くと、相手は胸の奥から深い息を吐き出す。

自分の身内の事のように安心しているみたいだ。それから、こんな事も言った。「私……その辺の話も知っていたから……」

睫毛に届きそうな前髪を払って言った。「……だから、私……、二人が付き合っているって聞いて余計に嬉しいんです」そして、頭を下げて、俺に、こんな御願いをした。

「ミホの事、よろしく御願いします。あの子……、あまり表に出さないけど、俺さんとの事、喜んでますよ」「何で、そんな話を?」

複雑な感情が胸に湧いてきたけど、とりあえず、そう答える。その時から目の前の相手への認識が変わっていたように思う。彼女の友達としてではなく、一人の人格が、そこに現れた気がした。

それまでは、目の前の相手を、まるで彼女の付属物のように感じていた。同席して適当に話を合わせて面白おかしく彼女と三人で話をしていればいい、なんて考えていたのだが、どうやら、そうではないらしいぞ、という風に気付かされた。そして、俺は、もう一度、相手を見詰めなおす事にした。

(すごいな……)そういう気持ちで改めて向き合うと、相手の美しさに圧倒されそうになる。一人の女性として対峙すると強烈な魅力を感じないわけにはいかなかった。俺の彼女は、自分が彼氏という立場を除いても可愛い女だ、と思う。

誰に紹介しても恥ずかしくはないし魅力的だ。しかし、人間の魅力を単純に比較する事は難しいが、他人を惹きつけるという点では目の前の友人に敵わないのではないだろうか。瞳は大きく力強いし、鼻筋は通っている。

唇も控えめで血色がよく柔らかそうだ。薄化粧なのに肌の艶もいい。何か体全体の表面から噴き出すような無形の力を感じた。

一言で表現すると「美人」という事になるのだろうが、それだけでは表しきれない魅力があると思った。それに比べると、彼女は少し幼い印象を受ける。何とも言えず控えめだ。

地味ではない。暗くもない。だが、この友達と並ぶと足りない何かがあった。それは、おそらく引力の差だ。

しかし、引力の強い星が必ずしも美しくないように、人の好悪を、その点だけで決められるものでもない。第一、そう思っていても尚、俺の彼女に対する評価は変わらないし、彼女への気持ちも変わらないだろう。ただ、もし仮に二人を並べて多数の男性に「どちらを彼女にしたいか?」や「どちらが魅力的か?」

という質問をしたならば、おそらく俺の彼女は負けるだろう。そういう気がした。「私……さっきも言いましたけど……高校が同じで、あの子とは、ずっと仲良くしてきたんです。

希望の進路も似ていたし大学も同じにしました。サークルとかも同じで……」俺は、黙って相槌を打つ。

「でも、大学入って少ししたら、ちょっとした事があって、お互いギクシャクしてしまって……それから段々、会わなくなってしまったんですよ……」そう言って、水の入ったグラスを取る。中の液体は氷を鳴らしながら体内に消えていった。

「まぁ、元はと言えば、私が原因なんですけど……」伏せた睫毛が何度か瞬いた。「それで、私は彼女とそういう状態になった事を悩んだり後悔もしたけど、なかなか自分からは謝れなくて、どう言ったらいいんだろう、とかばっかり考えていて……」

「それで?」「そうしたら、彼女の方から私を許してくれたんです。私は何も言わなかったのに、色々あったけど、やっぱり友達だから仲良くしたいって……。

それで……元通りになるには時間がかかったけど、段々、昔みたいに会ったり出来るようになりました。……私……」テーブルの一点を見つめていた視線が俺に向く。「私……嬉しいんです。彼女には感謝しています。

そうしたら最近になって俺さんと付き合っているって言うのを聞いて、これは何か言っておかないとーって思ってしまって……」「何かって?」その時の俺の頬は緩んでいたかもしれない。

何となく微笑ましい思いがしていた。「何て言うか……私は応援してるぞーって。絶対、幸せになってねー……って」

酒のせいか頬が赤く染まっている。「私が言っても何にもならないだろうけど、……何となく、そうする事が彼女に対しての罪滅ぼしかなって……思ったんです」「罪滅ぼしって……そんな酷い事したの?」

「そうじゃないですけど……何か、あの子の役に立てるかなぁって。……なんか変なテンションで、すみません。私っておかしいですよね?」上目遣いで照れたように笑う。

俺は、自分の気持ちと、今、聞いた話と、それから目の前の相手と、彼女と色んな思いを整理しようとした。そして、今この場に相応しい最適な答えを見付け出そうとした。「何の話?」

もう少しで答えが見付かりそうな気がしていた時、ちょうど彼女が戻って来た。俺の肩に手を置いて顔を覗き込んでくる。「ううん。何でもないよ」

俺は笑顔で答えた。「そう……。なら、いいけど……」そう言って俺の隣りに座った。

俺と友達との話は、それきり途切れた。彼女が戻ってきたので、また三人で元のような賑やかな会話が再開された。それから彼女と友達が一杯ずつ飲み、切り上げるのに適当な雰囲気になってきたので会計をして店を出た。

店を出ると、俺達は友達を駅まで送り、その後、彼女の部屋に戻る事にした。友達は、平気だと言ったけれど、遅い時間だし酔っている事もあり強引についていく。三人で駅まで歩いた。

ほんの少しだが冷気が体に沁みてくる。通り過ぎる人達は、ほとんど減ってないように感じた。改札の前まで来ると、また会おう、という挨拶をして別れた。

友達は、最後に俺達の傍に来て、「似合ってるよ、二人」と言った。小走りに改札へ向かう、その背中を二人で見送った。その足取りは確かだったので安心する。

それから二人で同じ道を引き返した。駅から十分弱の道のりだが半分も過ぎると、辺りは暗くなる。街灯も減って照度が半分くらいになるのだ。

途中で、彼女は手を繋いできた。「ねーー、さっきさー。何、話してたの?」「さっきって?」

「お店で、二人だった時」「え、別に普通の話だよ」「普通って何よ」

唇を尖らせる。それから彼女は何度か言葉を変えて友達との会話の内容を聞きたがった。「学校の話とか……雑談とか……かな」

俺は、そんな感じの曖昧な返事をした。一段と冷たい風が吹いてきて俺達は体を寄せ合った。対面から来る人はいない。

と、言うよりも周りに人影がない。それとも、暗くて気付かないだけなのか。「可愛いでしょ?」

不意に隣りで言った彼女の声は、とてもよく聞こえた。だが、その意味がわからず彼女を見る。俺が不審げな顔をしているので彼女は言葉を補った。

「ケイコ」「さぁ……普通……じゃないかな」「あ、ちょっと、躊躇ったでしょ、今」

「そんな事ないよ」「あーー、……動揺してる!」「してないし」

「惚れちゃった?」「どうして、そうなるかなぁ……」「もーー、だからイヤだったんだよ、会わせるのー」

(イヤだった?)そう言えば電話が来た時、あまり乗り気じゃなかったような態度だったのを思い出す。彼女に説明を求めた。あまり言いたくなさそうだ。

俺達は、道の真ん中で立ち止まった。周りは、少人数用のアパートとかマンションが多く、所々に個人住宅があった。歩いてきたのは、その住宅街を抜ける道だったし、元々人通りなんてなかったから、誰の目にもつかない。

暗いのと寒いのだけが気になった。宥めたりしながら、何とか彼女に話させようとする。ようやく言ったのが、「取られそうな気がした」という台詞だ。

俺は声を抑えて笑い出す。「なによー」彼女は頬を膨らませた。「こっちは、笑い事じゃないんだからね」

眼差しにも口調にも力が入っていた。「じゃあさ……」俺は一度、謝ってから訊いた。「何で、そう思うわけ?」

「だって……」「だって?」「……なんとなく……」

「そんな理由?」「でも可愛いのは確かでしょ?可愛いよね?」「うーん……」

「じゃあ、可愛くない?」「どうかなぁ……」俺は返事をしたくなかった。

正直に言うと事態を悪化させるような気がするし、嘘をつくのも嫌だった。大体、この遣り取りを真面目に続けていって、何か有意義な結果が待っているとも思えなかった。「誤魔化さなくていいから!」

俺の態度に彼女は声を荒げた。彼女のそんな姿を見るのは初めてだった。「慰めなくてもいいし、気を遣わなくてもいいよ。

……みんな、ケイコを可愛いって言うし、私だって、そう思うもん!」「だから……」彼女は、そこで一度、息を吸った。「だから……俺さんの気持ちが行っちゃっても、おかしくないでしょ」

その声が夜の空気を震わせる。静かな振動が波になって伝播していく。木々が揺れる。

街灯が揺れる。「いやー、おかしいと思うけど……」俺は、ようやく、それだけ言った。

風が吹いた。吐く息が白く染まる。凝固した水蒸気は拡散して、ゆっくりと消えていく。

それが何度か繰り返された。道を何かが転がる音がする。落ち葉だろうか。

体調を崩してしまうから、部屋に戻ろう、と言おうとした時だ。「もう……」彼女の声も震えていた。「もう……離れ離れは嫌だよ」

俺の手は潰されんばかりに握られている。そこから、彼女の体温と気持ちが伝わって来る気がした。俺は、必死に言葉を探す。

でも、何と言っていいのか、わからなかった。どうすれば、彼女の言葉に応えられるだろう。どう言えば、彼女は満足するだろう。

散々、時間を使って、俺は結局、「うん」としか言えなかった。それきり黙って立ち尽くしている彼女に、寒いし部屋に戻らないか、と提案した。しばらく俯いていた彼女は、ようやく顔を上げて、小さく頷いた。

顔を上げて歩き出そうとした時、繋いだ手を軽く引かれた。立ち止まって振り返ると、見上げている彼女の表情を街灯が照らし出して、はっきりと見せた。夜の街に、白く浮かび上がるそれを、とても綺麗だと感じた。

「私達……大丈夫だよね?」俺が黙っていたから、彼女は、もう一度、言った。「うまく、やっていけるよね?」

俺は、頷いて彼女の手を強く握り返した。そうすると、彼女は、やっと少しだけ笑う。それから並んで歩き出す。

静かな夜だ。二人の足音をアスファルトが吸収していくみたいに思える。時々どちらかが偶然、蹴った小石が転がっていく。

どこかの壁に当たって、止まった音がした。俺は考える。彼女の真意は理解出来た。

一言で言うと、やはり不安なのだ。これまでの経緯もある。一つ一つ不安要素を挙げていかなくても、彼女が、そう考えるのも不自然ではない、と思う。

しかし、解決策なんてあるだろうか?俺が、今、どんな言葉を掛けても、彼女にとっては慰め程度にしかならないんじゃないだろうか?好きだ、とか、大丈夫だ、とか彼女を納得させられるような色んな言葉が浮かぶけれど、どれだけ言葉を尽くしても、今、彼女を完全に安心させる事なんて出来やしないだろう。結局、彼女への一番の答えは、これからの自分の行動で示していくしかない。そうして、それを繰り返して、重ねていった年月だけが、彼女にとっても俺にとっても説得力を持つに違いない。

そう思った。他にも色々な思いが浮かんできたけど、最後に俺は、いつか今日みたいな思いがしなくてもいい日が来るように、少しずつ努力していこう、と誓った。そんな事を考えていたら、ふと、ある考えが浮かんだ。

隣りを見る。彼女は僅かに俯いて顎を胸につけるようにしていた。「今日さ……」

そう言って立ち止まる。彼女も足を止めた。相変わらず誰も通らない。

俺を見上げる彼女。「泊まっていっていいかな?」そんな事を言うのは初めてだった。

彼女の家に泊まった事はない。「えっ……?」彼女は驚いて返事に困っているみたいだ。

「ダメ?」重ねて訊く。「ダメ……って訳じゃないけど……」

「じゃあ、イヤ?」「イヤじゃない」俺の手を握り直してくる。「だけど……、全然準備してないし……ベッドもシングルだし……それから……」

「それから?」「それから……えっと…………えっとぉ…………」俺は、促すように繋いだ手を動かす。

「あとは………特に………………ない」それだけ言うと、恥ずかしそうに顔を伏せる。「じゃあ、決まりだね」

「いいの?」仰向いた時に前髪が流れて顔がよく見えた。「いいよ。明日も休みだし、一緒にいよう」

「うん!」彼女は力強く頷いた。それから、行き先を変更して駅方向に戻る。

コンビニに寄り、俺は歯ブラシなんかを手に取った。彼女は買い物カゴを片手に商品を物色している。時々、俺の方に寄ってきて、「何か作ろうか?」なんて訊いてくる。

これからの軽い夜食と、明日の朝食の予定を立てて買い物をした。外に出ると、一層、風が強くなったみたいだ。俺は右手に袋を持つ。

彼女は左側にいた。「寒いねー」大量の白い息を吐き出しながら彼女が言った。

「そうだね」「これだけ、寒いとさー……」「うん」

「風邪引いちゃうかもね」「かもね」「でもさ……」縋り付くように彼女が寄り添ってきた。

「一緒にいれば、何があっても大丈夫って思いたいよね」俺の言いたい事を先に言われたような気がした。「私、頑張るから」

「何を?」「ケイコほどには無理かもしれないけど、可愛くなる!」彼女は、両手で握りこぶしを作った。

「それで、他の人に目がいかないくらいにイイ女になる!」「俺、そんな浮気症ですかね?」俺は横目で訴える。

「それとは別問題」彼女は、俺の言葉に構わず宣言するように続ける。「俺さんがどうかは関係ないから。

……うん、決めた!私の『イイ女道』は今日から始まるからね」そうして握ったこぶしを突き上げた。その決意は固いみたいだ。

俺は適当に相槌を打つ。それから彼女の横顔を盗み見た。街灯に照らされた瞳は輝いていて、頬は吐き出す息と同じくらいに白い。

(今でも充分、魅力的だけどなぁ……)という言葉は飲み込んだ。もう彼女の部屋は目の前にある。俺は、彼女の言葉に笑いながら、さっきした誓いを何度も心の中で繰り返していた。

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