喫茶店ラブストーリー…主婦軍団に逆セクハラされながらも…

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専門学生の時、市内に出てきて一人暮しをしていた。最初は貯金を食いつぶしてたけど、金は使えばなくなるもので、バイトでもしないと生活ができない状態になり、俺は職探しを始めた。

いざ動き出してみたものの、なかなか思うようなバイトが見つからず、ある休日の日、金もないので自宅周辺をワケもなく散歩していた。そんな時、ある喫茶店を見つけた。ちょうど時間は昼頃になっていて、俺の腹も鳴り始めていた。財布を覗くと、千円札が一枚と小銭がチラホラ…。

少し迷ったが、俺はなぜか惹かれる雰囲気があるその喫茶店へと足を踏み入れた。中は俺好みの、こじんまりしたあまり広くない感じだった。カウンターが一つあり、テーブル席が二つ…。

たった一人でテーブル席を占有するのは気が引けた俺は、カウンター席に座った。「いらっしゃい。何にしましょうか?」カウンターにいた店員の女性が明るく言った。

俺はメニューにざっと目を通し、ツナサンドとホットコーヒーを注文した。店員の女性は「はい、かしこまりました。しばらくお待ちくださいね」と言って、奥のキッチンらしき方へ引っ込んだ。再び俺は店内を見回した。

俺以外に客はいない。場所が住宅地のど真ん中なので、外を行き交う人もあまりいない。俺は心の中で、「こんなんで店、成り立ってんのか?」などと思ってしまった。しばらくして、注文したものが運ばれてきた。俺は空腹のあまり、すぐさまサンドを掴み、口に運んだ。

その瞬間、口の中に何とも言えないうま味が広がった。コンビニなどで買って食べるものなどとは格が違う…。別に特別な味付けがしてある感じはしなかったが、なんとも素朴な味が俺の味覚をモロに刺激した。

「おいしい…」俺はあまりの感動に、小声でそう呟いてしまった。一人暮しの学生にとって、家庭的な味のサンドイッチは激しく心と腹を満たしてくれた。

そんな時、カウンターでクスッと笑う声が聞こえた。ふと目をやると、先程の店員の女性が、無我夢中で食べる俺を面白そうに眺めていた。「あ…はは。すいません…」

俺はなんだか恥ずかしく、変な照れ笑いを浮かべてしまった。すると店員の女性は俺の前に歩み寄り、「お口に合いました?」と聞いてきた。「はい。すごい美味しいです。コーヒーともめちゃ合いますね」

俺は少し照れくさい気持ちで言った。「ありがとう。うれしいです。こんなあからさまに美味しそうに食べてくれるお客さん初めてです」店員の女性は本当に嬉しそうに言った。

俺はその時初めて、その女性の顔をまともに見た。長めの髪を後ろで束ねて、すらっとしていてとても綺麗な人だった。しかし見た感じ、確実に俺よりは年上だった。さしずめ20代後半といったところか。

そのやりとりがなぜか俺とその店員の女性を打ち解けさせた。「お客さんは…高校生かな?」「いや、今年から専門学生の一年です」

「そうなの〜。いや、でもお客さんみたいな若い人がうちに来てくれるの、初めてじゃないかな」そんなやりとりをしながら、俺は店をその店員の女性が一人で切り盛りしている事を知った。それから俺が学校の為に市内に出てきた事などを話したりし、気がつけばもう夕方になっていた。

すると、いきなり店のドアが勢いよく開かれ、数人の客が入ってきた。全て若い女性だった。どうやらその店は、夕方には近所の若い主婦達のたまり場になっているようだった。俺は若干居心地が悪くなり、会計を済まして店を出ようとした。

お釣りを貰おうとした時、一緒に小さな包みを手渡された。「一応うちの手づくりクッキーなの。よかったら食べてね。またお越し下さい」そう笑顔で言った。

俺はなんとも言えない幸せな気分になりながら、店を出て自宅へと帰っていった。その日から、俺は定期的にその喫茶店に通うようになってしまった。一応常連と呼べる程の客となり、そのうちお互いの軽い自己紹介などもした。

店主の女性の名前は、智美さんといった。本当は外食なんてしている余裕はないのだが、少し高くつく昼食のために朝食や夕食をかなり質素なものにしたりもした。高いといっても、その喫茶店は良心的というか、メニューの値段は普通よりはずっと安かった。

コーヒーが200円でツナサンドが300円というから驚きである。ある日、いつものようにサンドイッチとコーヒーを注文し待っていると、頼んでないはずのサラダが目の前に置かれた。「あの…これは…」

少し戸惑った様子の俺に智美さんはにっこり微笑んで、「どうせ家では野菜とか食べてないんでしょ?食事偏ると病気になるわよ。サービスするから、ちゃんと食べてね」と言った。俺は嬉しいとかそういう感情の前に、あかの他人の俺に優しくしてくれる智美さんの温かさに涙が出そうになった。しかしそこはぐっと堪えて、「すみません。ありがとうございます」とお礼を言った。

智美さんの優しさに触れたその日だけは、なんだか俺は無口になってしまい、ただぼぉーとしながらコーヒーを飲んでいた。そんな時、ふと店のドアが開いた。見た感じ業者の人のようだった。食材か何かを配達しにきたのかダンボール箱を二個置いてから、智美さんに伝票のような物を渡し、足早に帰っていった。

さっそく智美さんはその箱を運ぼうとしゃがみ込んだが、重かったのか諦めてキッチンに戻ってしまった。その姿を見た途端、俺の身体は否応なしに動き出した。俺は店のドアの所に行き、ダンボール箱を持ち上げた。

そして「智美さん、これ迷惑じゃなかったらそっちに運んでいいですか?」と言った。智美さんは慌てて奥から出てきた。「ちょっと!お客さんにそんな事してもらえないわよ!置いといて!後で台車で持っていくから!」

智美さんは本当に申し訳ないといった感じで言った。しかし、俺にとってはなんて事はない。それに、サラダのせめてものお礼にもなるかと思った。「別にこれくらいなんでもないですよ。そっちでいいですか?」

そう言うと智美さんは少し困ったように笑い、「もう…本当にごめんなさいね…。じゃあこっちの冷蔵庫の隣にお願いしていい…?」俺はさらにもう一つの箱を積み上げ、キッチンの方に運び込んだ。「ごめんなさいねぇ…。豆だから重かったでしょ?」

「いやいや、全然大丈夫でしたよ。高校ん時バイトであれより重いもんいつも運んでましたから」「そうなの?あぁ、でも○○君、腕とか結構ガッチリしてるもんねぇ。何のバイトしてたの?」「酒屋で日本酒とかビールとかを運びまくってました」

「なるほど。だからねぇ。はぁ…やっぱ男手があると頼りになるねぇ…。ウチを手伝ってよ!」智美さんは冗談っぽく笑いながら言った。でも…もし少しでも可能性があるなら、求職中の俺にとっては願ってもない事だった。

それに、智美さんに雇ってもらえるなど、夢のような話である。「あの…マジで働かせてもらえませんか…?」数分後、俺が智美さんの喫茶店で働く事が決定した…。

次の日、俺はさっそく智美さんの店で働き始めた。しかし、大きな問題があった…。俺は料理というものがからっきしダメだったのである…。軽食を作るだけでも、パンを焦がしたりと、智美さんを手伝うどころか逆に迷惑をかけているように感じた。

しかし、失敗ばかりしてヘコむ俺に智美さんは「なんか○○君は元気な男の子を絵に描いたような人ね」と言って、優しく笑ってくれた。そんな俺も、いろいろ失敗しながらもそれなりに智美さんの手助けができるようになっていった。それに、智美さんの店で働くようになり、食費が全くと言っていい程いらなくなった。

智美さんはとても気立てがいい人で、「給料そんなにあげられないし、せめて食事くらいは…」と言って俺にいつもご飯を作ってくれた。俺は学業そっちのけで、智美さんの店で働く事に大きな幸せを感じていた。もの珍しいからか、自分が客の時には苦手だった、常連の主婦軍団にも気に入られるようになった。

俺は生まれて初めて、逆セクハラというものを経験した。注文品をその人達のテーブルに運ぶと、いつも身体のあちこちを触られた…。欲求不満の集団だったのだろうか…?まぁ、そんな事はどうでもいい…。

ちなみに主婦軍団の中には未婚の人もいた。聞くところによると、智美さんを入れた五人で大学時代の仲良しだったらしい。どおりで親しい感じではあった。ある日、主婦軍団の一人である東条さん(一番強引系な感じの人)が俺を呼び付けた。

「あのね、今日の夜ウチで智美も入れてみんなで食事するのよ。僕も強制参加ね。わかった?」なんとも強引である…。俺は少し助けを求めるように智美さんの方を見た。なにやら怪しげに笑っていた…。

「あ…あぁ、じゃあ行かせてもらいます…はい…」俺がそういうと主婦軍団の間で小さな歓声が上がった。すごく嬉しい気持ちはあるが、一体この流されるままの自分の不甲斐なさはなんなんだ?などと思ってしまった。

「じゃあまた後で〜!○○君!絶対来ないとダメだからね!」東条さん達は騒がしく、そして風のように去っていった。「あの子、結婚しても全く変わらないのよねぇ…。なんかごめんなさい…」

智美さんは呆れたように言った。「いや、なんていうか、本当に俺なんかがお邪魔していいんですかね?」俺はおずおずと聞いた。

「私はこうやって店やってるけど、○○(東条さん)はいつも主婦は毎日つまんない!って口ぐせだし、他の子も会社で働いたりしてるから、毎日がおもしろくなさすぎっていうのよ。」何かすごくリアルな悩みだと思った。「そんな時に○○君がウチに来てくれるようになって…あの子たちにはちょっとした日常の変化が嬉しいんだと思う。だから、もし迷惑じゃなかったら付き合ってほしいな。」

智美さんはどうしてこう万物に優しいのだろうか…。親切などという以前に、相当な友達想いでもある…。俺はますます智美さんを尊敬し、好意を抱いた。

そしてそれが、だんだん恋愛感情へと変わりつつある事に、俺自身が気付き始めていた…。その日の晩、俺は東条さんの言い付け通り、智美さんの車に乗せられ、食事会に参加した。東条さんの家は、かなりの豪邸だった。たしかに他の人たちより若干セレブな雰囲気はあったが、本当にセレブな奥様だったのである。

智美さんがインターホンを押すと、すごい勢いで玄関のドアが開いた。そして智美さんの隣にいる俺の姿を見るやいなや、「いやーん!本当に来てくれたのー?嬉しい!」と大声で言って、あろうことか俺におもいっきり熱い抱擁をかましてきたのである…。言葉にできない香水の独特な香りが鼻をついた。

「ちょっと!東条さん!!」俺はどうしていいかわからなくなり、玄関先でジタバタしてしまった。女性にそれ程激しく迫られた事がなかった俺はひたすらうろたえるばかり…。

そんな姿を智美さんを含めた4人の綺麗なお姉さんがほほえましそうに見ている…。なんたる奇妙な構図……。そんなこんなで、俺と智美さんはやっとの事で東条さんのお宅のリビングへと足を踏み入れた。

家の中は外観に合い対し、豪勢な造りだった。ふと棚のような所の写真に目がいった。自分の親父と同じくらいの初老の男性と一緒に写っている東条さん…。

だいぶ歳はとっている感じだったが、なかなかダンディな男性だった。「かっこいいお父さんですね」俺は何気なく東条さんに言った。

しかし、東条さんは何を思ったか、いきなり大笑いした。そして、「アハハハ!それ、私の旦那よ〜」と言った。「すみません!俺知らなかったんで!ホントにすみません!」

俺はすごく失礼な事を言ってしまったと思った。しかし東条さんは笑って、「すっごいジジイでしょ?私との結婚で四回目らしいわ。彼、金持ってたからね〜。で、つい気持ちがフラフラ〜ってなって結婚しちゃったのよ」

返す言葉もなかった…。こういうのを「玉の輿」というのだろうか…?しかし、さすがにそれ以上、プライバシーに関わる事は聞きたくなかった。それ以後はこれといったハプニングもなく、みんなでご飯を食べ始めた。料理は東条さんがほとんど作ったらしいが、智美さんに負けずとも劣らない絶品の味だった。

よくよく聞くと、智美さん達は大学で料理サークルなるものを作っていたらしい。その時に、料理の腕をかなり上げたそうだ。美女5人の料理サークル…きっと男子学生がほっとかなかっただろう…。ま、それもどうでもいい。

食事が済んだ後は流動的にお酒の時間になっていった。俺はまだ二十歳までは3ヶ月程足りなかったので、誘惑に負けそうになりながらもジュースをチビチビと飲んでいた。酒が入ると、やはり男女問わず話題といえば猥談である…。

かなり酔いが回っている東条さんを筆頭に、なかなかどぎつい話題が飛び交う中、俺はただ苦笑いを浮かべていた。俺はふと、智美さんを見た。特に騒ぎ立てもせず、少しお酒で顔を赤らめながらみんなの話にクスクスと笑っている。

この人達は、ずっとこういうスタンスで付き合ってきたんだろうなぁ…。俺は心の中でそう思った。少し天然の朝倉さんが話題をふり、東条さんがさらに話を膨らませて場を掻き回す。それにするどく突っ込む宮岸さん。

その四人のやりとりを優しく嬉しそうに見届けている智美さん……。考えたら、みんなそれぞれ違っていて、素敵なお姉さん達だと思った。そんな時、ふと智美さんと目が合ってしまった。

俺は思わずドキッとしたが、智美さんは少し困ったように苦笑いしていた。でも楽しそうだった。俺もそれに応えて、智美さんに微笑んだ。そんな俺と智美さんのやりとりに気付いた東条さんがいきなり絡んできた。

「ちょっと!何二人でいい感じの雰囲気出してんのよー!ずるいぞぉ…」そう言って東条さんは智美さんを突き飛ばして俺の隣に座り、身体をもたれ掛けたりしてきた…「あ〜いい感じ。ねぇ智美〜。アンタ○○君に給料とは別のご褒美よ…とか言って、いやらしい事とかしてるんじゃないでしょうねぇ?」もはや東条さんの酒ぐせの悪さは明白だった。

「さぁねぇ〜。どうかなぁ。○○君は私が雇ってるんだから、何しようと勝手でしょ〜」珍しく智美さんも冗談を言った。おどけた智美さんも魅力的だった。俺は引っ付いて離れない東条さんをそっと引きはがし、「すみません、ちょっとトイレお借りします」と言ってその場を離れた。

ジュースを飲み過ぎたせいでかなりトイレがちかくなっていた。しばらくして俺はリビングに戻り、再び賑やか輪の中に入った。しかし、ある身体の異変に気がつき始めた。

なにやらトイレから戻ってきてしばらくした辺りから身体が無性に熱い…。それに何か全身がすごく重く、頭も少し痛くなってきていた。そういえば、さっきから飲んでいたコーラが妙な味がする……そう思ったあたりで俺の意識はプツンと音を立てて途切れた…。どれくらいブラックアウトしていただろうか…。

気がつくと、俺はソファに身体を埋めていた。「ここ…どこ?」ふと見ると、身体には毛布がかけられている。俺の物ではない。

俺はガンガンする頭を必死で回転させ、記憶を辿り始めた。しばらくして、そこが東条さんのお宅だという事に気がついた。俺はすぐに跳び起きた。すると、キッチンの方から東条さんがやってきた。

「やっと目覚めた?」どうやら東条さんの酔いは冷めたようで、先程とは違って穏やかな感じだった。「はい…すみません…。なんか俺急にフラフラしてきて…。たぶんコーラに酒が…でもなんでだろう?」

そう言うと東条さんがクスッと笑った。「ごめんなさい、私酔ってたから悪ふざけして、僕がトイレ行ってる間にコーラに一杯ジン入れちゃったのよ。」正直、笑い事じゃねぇだろ!と思った。しかし、今の穏やかなモードの東条さんに文句を言う気分にはなれなかった。

「もう…ひどいじゃないですかぁ…。でも、ご迷惑をおかけしました。こんなとこで寝込んじゃって…」「いいのよ。私こそごめんね。ちょっとはしゃぎすぎたわ」「何か冷たいもの持ってくるわね」

そう言って東条さんはキッチンから水を持ってきてくれた。俺は喉がカラカラだったので、それを一気に飲み干した。一息つき、やっとある事に気がついた。みんないない…。智美さんもいない…。「あの…みなさんは…」

「智美以外はあれから帰ったわ。明日も仕事らしいしね。○○(宮岸さん)なんか幼稚園の送り迎えもあるし」「そうなんですか。」「帰る前にみんなで寝てる○○君にいたずらしちゃおうって話してたんだけど、智美に阻止されちゃった〜」

なんとも恐ろしい…。しかしやはり、智美さんは俺の女神様である…。「智美はしばらく待ってたんだけどね。あんまり起きないから観念して帰っちゃったのよ。」俺はもう少し早く目覚めたかった…。明日は智美さんに謝ろう…そう思った。

「どうしよ、二人きりね…」東条さんが怪しく笑って言った。どう考えても…誘っていた…。するといきなり俺を押し倒すように抱き着いてきた。

「ちょと!勘弁してくださいよ!東条さん!」俺が喚いても、東条さんは離れようとはしない…。「私の旦那、もうずっと家に帰ってきてないのよ…。どうせ今だって、どっかのホテルで私より若い女とお楽しみ中よ、きっと。」

俺は抵抗の手が止まった…。「別にさ、悲しいとか全くないのよ。だって結婚した時から愛情ゼロだもん。だから今になって気付いちゃったのよね…お金で結婚なんかしたら、絶対最後は馬鹿みるって…」東条さんは少し寂しそうな顔をした。

「東条さん…俺みたいなガキがこんな生意気な事言っていいのかわからないですけど、旦那さんと別れたほうがいいと思います…。東条さん綺麗だし、きっと他にもっといい人見つかりますよ」「あらぁ〜若いクセにマジな事言うじゃない…でもね、この歳になるといろんな事を考えちゃって、潔く物事を片付けられなくなっちゃうの…。でも…ありがとうね」やはり東条さんは大人だなと思った。彼氏彼女の間柄とはワケが違う。簡単に「別れる」などという言葉を口にした自分を恥じた。

「でもね、最近好きな人ができたのよ〜。今私に抱かれてる……○○君!」そう言って再び東条さんは俺を抱きしめてきた。「ねぇ…私としよ?なんでもしてあげるわよ…」

また気を失いそうになった。東条さんは俺の頬に軽いキスをした後、次は激しく唇にキスをしてきた。舌で無理矢理に口をこじ開けられ、息がとまりそうになった。東条さんの髪のにおいが俺の鼻をくすぐり、クラクラした。やがて東条さんはいやらしく笑いながら口を離した。

「キスするの、初めてじゃないわね?」俺は目をそらしながら、無言で頷いた。「セックスは…?」

「高校の時に…でも一人しか…」まるで尋問されてるような気分だった…。「あぁん…初めてじゃなかったんだ…。ちょっと残念…」

もう俺は何も言えなかった…。酒を飲まされた時より顔と身体が熱くなっていた…。やがて東条さんは俺の股間にも手をのばし、ジーンズの上から俺のモノを刺激し始めた…。そんな日に限って、しばらくヌイてない時だったため、すぐに勃起してしまった…。

「フフフ…やっぱ若い子はいいね…」そう言ってベルトに手をかけた。「もう、智美は諦めなさい。私なら気持ちがはっきりしてるじゃない。別に苦労しなくても僕の物になるのよ?」

さすがは東条さん…。俺が智美さんに好意を抱いている事はお見通しだった。「なんで俺の気持ち知ってるのに、こんな事するんですか…?」「単純な事よ。○○君の事が欲しいから。私は智美みたいにお人好しじゃないもん」

確かに、俺は別に智美さんに気持ちを伝えたワケでもなく、俺を男として見てくれている保証もない。しかし、このまま東条さんを抱いてしまったら、俺の気持ちは全て無駄になる…。智美さんの存在がなければ、東条さんのような綺麗な人に迫られれば不倫にはなってしまうが、迷う余地なく本能に任せるだろう。

俺も男だ。しかし、その時の俺には智美さんがいた。智美さんしか見ていなかった。心の中で、智美さんの優しい笑顔が浮かんだ。

俺は身体を起こし、東条さんの身体を離した。「東条さん…俺は東条さんの事好きです。おもしろいし、綺麗だし、ちょっと強引ですけど優しいですし…。なんか本当のお姉さんみたいで…。でも俺は、やっぱ智美さんを諦めて東条さんを抱くことなんてできません。」

俺は東条さんの目をジッと見つめて言った。すると東条さんはニッコリ笑った。「やっぱりね…そういう一途なトコがあるから我慢できなくなるんじゃない…」

東条さんは呆れたように言った。「本当はね、誘いにのるか試してたってのもあるの。でも、作戦失敗って感じね…。せっかく智美から横取りしてやろうと思ったのに…」「すみません…」

「ううん、いいの。やっぱ僕は私は思ってた通りの男だったわ。好きな相手以外の女に誘われても、惑わされないかぁ…。もっと好きになりそう…」いつもの東条さんの調子に戻っていた。俺は少し安心した。「でもね、○○君は知らない事があるの。智美の事でね。」

東条さんが俺に釘を刺すように言った。「なんですか…?」「それは私が言うべき事じゃない。智美自身から聞くか、僕自身が知らないといけない事よ。」

俺はただ、頷いた。「別に脅かすわけじゃないけど、覚悟だけはしておきなさいね…」その言葉の意味がどれだけ重い物なのか、その時の俺はまだ知るよしもなかった…。

「じゃあ俺…そろそろ帰ります。」俺は上着を着て、立ち上がろうとした。「ちょっとココどこかわかってんの?歩いたら僕の家まで一時間半はかかるわよ。今夜はウチに泊まっていきなさい。明日の朝、車で送るから。」

確かに歩いて帰るにはキツい距離だったので、とりあえずその夜は東条さんのお宅に泊まらせてもらう事にした。俺は毛布だけを借りて、ソファーで寝させて欲しいと言った。「ダメよ!風邪ひいたらどうするの!店休まないといけなくなるわよ!?ほら、寝室行くわよ」

東条さんは俺の手を引っ張り、強引に寝室へと俺を連れ出した。「予備の布団なんてないから、ここに寝てくれる?」「すみません…。じゃあ失礼します…」

俺は申し訳ない気持ちでベッドに入った。しかし、ふと気付いた。「東条さんの寝るとこないじゃないですか!やっぱ俺ソファーでいいです」

俺が起きようとすると、東条さんがのしかかってきた。「ねぇ一緒に寝るくらい、かまわないでしょ…?」これが東条さんの必殺技なのか、すごく淋しがりな目をして俺を見た。

「はい…」俺はそれ以上食い下がる事はせず、ただ黙ってベッドに入った。俺はいつ東条さんがベッドに入ってくるのかドキドキしながら、背を向けて横になっていた。

すると、部屋の隅でなにやらゴソゴソとやり始めた。おそるおそる振り向くと、そこには下着姿の東条さんが…!俺は慌てて向き直った。それに東条さんも気がついたのか、「見たいの?別に見ていいのよ〜。なんなら生で見せてあげようか?」「いや…あの、早く服着てください…。」

そのようなジョークに乗れる程、俺は大人ではなかった。いや、もしかしたらジョークじゃなかったかもしれない。ようやくパジャマに着替えた東条さんがベッドに入ってきた。俺はただ無言で、背を向けながら身体を強張らせていた。すると東条さんは後ろから俺にしがみついてきた。

「暖かい…」しかし、それ以上は何もしてこなかった。だから俺も抵抗しなかった。少し落ち着きを始め、少し眠気がやってきた時、東条さんが俺の耳元に口を寄せた。

「智美にフラれたら、私としようね。いつでも取り入るスキ狙ってるから、覚悟してね…」「ちょっと…もう勘弁してくださいよぉ…」東条さんはクスクスと笑って俺を抱く手に力を込め、二人とも眠りに落ちた。

次の日の朝…。目が覚めると横に東条さんはいなかった。俺はのっそりと起き出し、リビングの方に向かった。すると、エプロン姿の東条さんが朝食を作ってくれていた。「お寝坊さん。なかなか起きてこないから起こしにいこうかと思ってたのよ。ほら、早く食べなさいね。」

俺は昨夜のドンチャン騒ぎが嘘のように綺麗に片付けられたリビングに座り、朝食を食べ始めた。やはり…朝から暴力的な旨さだった。別に高級なものが皿にのってるわけじゃない…ただの玉子焼なのに、なんとも美味しかった。智美さんにも朝食を作ってもらった事はなかったので、俺は朝から幸せな気分になった。

もしも東条さんのような姉がいたら、俺の中学や高校時代はもっと潤ったものになっていたかもしれない…。「ごちそうさまでした!すごい美味しかったです。」「よかったわ。ホント、気持ちいいくらい綺麗に食べてくれて…作り甲斐があるわね〜」

そう言って東条さんは嬉しそうに笑った。「誰かに朝ご飯作るなんて久しぶりだったな…。やっぱいいもんね…。でも、あのジジイが帰ってきても朝食なんて作ってやんないけどね!」俺は苦笑いするしかなかった…。

「じゃあ俺、そろそろ支度します。」俺は食器をキッチンの方に運ぼうと立ち上がった。「ねぇ…今日は店定休日でしょ?用事ないんだったらお昼ぐらいまでウチでゆっくりしていきなさいよ〜。ダメ?」

また東条さんが俺に甘い誘惑をしてきた。しかし、今そんなものにのってる場合じゃない。「いや、もうこれ以上長居しちゃ悪いですよ。せっかくですけど帰ります」俺がそう言うと、東条さんはしぶしぶ了解してくれたようだった。

それから俺は東条さんの車に乗せられ、何事もなく自宅まで送ってもらった。次の日、俺はいつものように店へ仕事に出掛けた。学校もうかなり休みが続いている…。いつも智美さんには「学校は大丈夫なの?」と言われているが、はぐらかしている。

本当は全く大丈夫ではない。親に知られたらシバき倒されそうだったが、あえて考えない事にしていた。「おはようございます!」

俺が店のドアを開けると、いつものようにすでに智美さんが準備をしていた。「おはよう。おとついは大変だったね」いつもの智美さんの笑顔がそこにはあった…。

やはり俺には、智美さんしかいないと思った。「私ね、車で連れてったから帰りも送ってあげなきゃって思ってたんだけど、あんまり起きなかったから…。ごめんなさいね」「いや、全然いいですよ。俺が長時間ダウンしすぎたせいなんで」

「ふふっ。スースー寝息たててたもんね。え、じゃあ帰りどうしたの?」「なんとか帰ろうかと思ったんですけど…東条さんが朝になったら送ってくれるって言うんで…」「えっ…じゃあ泊まったの?」

智美さんがいきなり軽食の仕込みの手を止めて俺を見た。「はい。もう時間も遅かったんで」その瞬間、智美さんの顔色が一瞬にして変わったのに、俺は気付いてしまった。

「そうなの…」智美さんはそう言って、何も話さなくなってしまった。馬鹿な俺は、「まさか…やきもち!?」などと思ったが、そんな感じではなかった。

ただ、「そうなの…」という一言に、何か釈然としない感情が含まれていた事だけを強く感じていた。その日は、お互いの間に何か微妙な空気が流れていた。俺は戸惑いの中、黙々とその日の仕事を終えた。

次の日、俺は今だスッキリしない気持ちのまま、店での仕事に勤しんでいた。智美さんの様子は特に変わった事はなかった。しかし、何かが変だった。

俺が意識しすぎていただけだったのかもしれないが、いつもの笑顔がどこか嘘っぽく見えた。夕方になり、フラリと東条さんと宮岸さんがやってきた。俺はすぐ席に駆け寄り、「この前はごちそうさまでした」と、東条さんにお礼を言いにいった。

東条さんはいつもの色っぽい笑顔で、「何かしまってるの?僕は私の料理を食べたんだから、もう他人じゃないのよ?」と冗談を言った。すると智美さんが奥からコーヒーを持ってやってきた。テーブルにコーヒーを置き、なぜか店のドアの札を「準備中」にした。

そして再び戻ってきた。「○○(東条さん)、ちょっとアンタに言っておきたい事があるの。いい…?」智美さんは見た事もないような冷たい顔をしていた。

「ちょっと…何よ?」東条さんも、智美さんのただならぬ雰囲気を感じとったのか、かなり動揺しているようだった。「この前、一緒に食事した時の事だけど、どうして○○君を帰してくれなかったの?」

やはり恐れていた事態だった…。しかし、智美さんがいちいち気にする事でもないような気がする。「いや、帰してって…。別に時間遅かったから、朝までいてもらっただけじゃない。」「どうして?アンタ車乗れるんだし、彼が起きてから送ってあげたらよかったんじゃないの…?」

「ちょっと…智美なに言ってんの?別にアンタがああだこうだ言う事じゃないでしょ?」「あのね、アンタにはわからないかもしれないけど、私は○○君を雇ってる限り、責任があるのよ!ましてやこの子、未成年なのよ?」智美さんは明らかに怒っていた…。

「何よ、それ。アンタ、○○君の保護者にでもなったつもり?」「そうね。そう思ってくれてもいいわ。」「ぶさけた事言ってんじゃないわよ!この子は別にアンタの物でもなんでもないのよ?何お姉ちゃんみたいな気分になってんの?馬鹿みたい!」

「○○!あなたそれでも大人なの?あきれた…そんな事言うなんて…」「アンタに言われたくないわよ!男とのいざこざ一つ解決できないくせして!」東条さんのその一言で智美さんが固まった…「ちょっと…それは関係ないでしょ…?」

先程まで意気込んでいた智美さんが一瞬にして動揺し始めた。「ふふっ、何うろたえてんの?なんなら○○君に話してあげようか?実はアンタが一番ガキっぽい悩み抱えてるって事」「ちょっと…やめなさいよ…。今その事は関係ないでしょ…?」

智美さんの身体が小刻みに震えていた。その瞬間、ずっと黙って座っていた宮岸さんがいきなり立ち上がった。「二人ともいい加減にしなさい!!○○君がいる前でよくこんな事できるわね!!アンタ達二人ともがガキよ!二人してギャーギャー喚きちらして!」

宮岸さんは二人にも勝るぐらいの怒声を吐き、東条さんと智美さんを一瞬にして黙らせた。「○○君、行こう。こんな馬鹿二人の話なんて聞かなくていいわ!」そう言って宮岸さんは俺の手を強引に引っ張り、俺は引きずられるように店を出た。

宮岸さんは俺に車に乗るよう言い、俺は窓から店の中を気にしつつ、宮岸さんの車に乗り込んだ。宮岸さんはすごい怒気を含んだ表情で、あてもなく車を走らせた。俺はただ隣で、言葉を発する事なく状況の整理に追われていた…宮岸さんは15分ほど走った所にあったショッピングモールの駐車場で車を止めた。

「大丈夫…?」宮岸さんは先程とは別人のような優しい口調で俺に言った。「正直…何がなんだか、わからないです…。でも、俺が原因なのはわかります…」

「こらこら、○○君は何も悪くないわよ。あの二人が馬鹿なだけよ。いい歳した大人の女が子供みたいに…ほんと呆れた…。」俺は何も言えなくなってしまった。ただ、じっと足元ばかり見ていた。「あの二人はね、昔からずっとあぁなのよ…」

宮岸さんが静かな口調で語り始めた。「一緒にいたらわかると思うけど、智美は昔からすごく真面目だったの。曲がった事が嫌いで、頑固でね…。おまけにしつけに厳しい家庭で育ったらしくて、やけに規則とかマナーにうるさい子だったよ。」

俺は宮岸さんの話に聞き入っていた。「それに比べて○○(東条さん)は…なんていうか自由奔放でおおざっぱで、とにかく遊び好きでね…。でも智美と違って意固地にならないのがいいトコだったかな」「とにかく、あの二人は全く正反対なのね。だからお互い惹かれあってもいた。でもぶつかる事も多かった…」

いつもおちゃらけている宮岸さんはそこにはいなかった。車の窓から少し冷たい風が入ってきて、宮岸さんのショートヘアを少し揺らした。「類は友を呼ぶ」とはよく言ったもので、この人も東条さんや智美さんに負けないくらい綺麗だった。

あの二人にはない、「働く女性」のテイストを持った人だった。「でもね、あんなにお互いの感情剥き出しに言い合うのは、今までなかったかもしれないわね。」「そうなんですか?」

俺は少し驚いてしまった。「今思えば…ね。私思うんだけど、○○は○○君の事、マジで自分の物にしたいって思ってるかもしれないわね。あの子の独占欲は半端じゃないからね…。あの夜、なんかあったんでしょ?」

俺はしばらく考えたが、無言で頷いた。「大体予想はつくわ。で、○○君の事だから、拒んで結局なんもなかったってトコじゃない?」再び俺は頷いた。

「やっぱり…。私たちがね、○○君を気に入ってるのはそこなのよ。多分、自分自身じゃふがいないとか思ってると思うけど、そうじゃないのよ。普通、男って20歳やそこらになってきたらもうどうしようもなくなるじゃない。でも…君はなんか違う」「なんかね、私達が中学とか高校だった頃に好きだった男の子がそのままいる…みたいな…」

ここまで良く言われてバチが当たらないかなと思った。しかし、その時はただ宮岸さんの言葉に聞き入るだけだった。「でも…智美にとっては違うみたいね。ほんとに弟みたいに思ってるんだと思う。あの子一人娘だから、きっと憧れてたんじゃないかな。」弟みたいに思ってる…。その言葉が俺に重くのしかかってきた。

「まぁ、簡単に言っちゃえば、さっきのやりとりは○○君の取り合いなわけよ!このモテモテ野郎め!」そう言って宮岸さんが俺の頭を指でツンッとつついた。「もう…からかわないでくださいよぉ…」

そう言うと、宮岸さんはいつものように笑った。「まぁ、安心しなさい。あの二人、あぁ見えて根に持つ方じゃないから、熱が冷めたらまた元通りになるよ。私もちゃんと仲取り持つし。安心してね。」宮岸さんが俺の肩をポンッとたたいて言った。

「あの…俺、この前みなさんが楽しそうに話してるの見て、思ったんです。それぞれ違った魅力があって、素敵な人たちだなって…」「あら〜、嬉しい事言ってくれるじゃん」「いや、別に…。だから、みなさんにはずっと仲良くいてもらいたいです。」

俺は素直な気持ちを話してくれた宮岸さんに触発されてか、自分自身も思っていることがすんなり言葉に出た。「はぁ…こんな優しくていい男の子を前に醜い争い繰り広げなんて、あの女二人もつくづく馬鹿よねぇ〜!」宮岸さんは冗談混じりで笑いながら言った。

「さて、じゃあさ…慰めてあげたんだから、何かお礼してもらおっかな〜」宮岸さんがなにやらニコニコしながら俺に言った。「あ、はい。じゃあよかったらご飯でもご馳走させてもらえますか?」

「う〜ん…それよりね…」宮岸さんがなにやらもったいぶっていた。「ねっ…今からホテル行って、エッチしよっか!それが一番嬉しいわね」

俺は凍り付いた…。「ちょっと!宮岸さん!いつもぶしつけ過ぎですって…勘弁してくださいよぉ…」最後はやはり、宮岸さん節が炸裂してしまったのであった…。

しかし、俺の話はまだ終わっていなかった。どうしても聞いておきたい事があったのだ…。「宮岸さん…さっきあの二人の言い合いで、男といざこざがどうのこうのって…。あれ、どういう事なんですか?」俺は勇気を振り絞り、宮岸さんに尋ねた。

「……言いたくないな」宮岸さんは本当にツラそうな顔をして言った。「俺の知らない智美さんの事実があるみたいな事、東条さんに言われました…。俺、どんな事でも受け止める覚悟はできてるんで…」

俺がそう言うと、宮岸さんは大きく息をはき、俺を見た。「じゃあ条件つきね…。私が何を話しても、智美を避けたりとか智美の前からいなくなったりとかしないって約束する?」俺は恐怖すら感じていたが、それを断ち切るように力強く頷いた。

「…智美にはね…婚約者がいるの」目の前が真っ暗になるとはこの事なのだろうか…。俺は衝撃のあまり、意識を失いそうになった…。「今も婚約者って呼べるのかどうかわからないけど…、まぁそういう男がいるのよ」

宮岸さんは俺の顔を見ず、ただ外をぼぉーっと眺めながら話を続けた。「その男ってのは私たちとも顔見知りでね。大学の時の同期なのよ。いろいろあって、なぜか智美と付き合う事になっちゃってね。まぁそこそこ真面目なやつだったから、智美にはお似合いかなって、みんなで思ってた」

俺の知らない事実がどんどん明らかになってゆく…。「カタブツで奥手な智美にとうとう彼氏ができたって感じで、結構みんなで祝福モードだったのよ。でもね…」宮岸さんは少し言葉に詰まった…。

「彼、悪い友達に誘われたのがきっかけで、とんでもないスロット狂いになっちゃたの…。酷い時には智美の財布からお金むしり取るようにもなったらしいわ」「それで…当時、お互いの親も合意の上で婚約までしてたんだけど、智美が堪えられなくなってね…。もちろん私達も別れる事を勧めたよ。

でも…彼…ていうかあの男、智美を離さなかったのよ」あまりにむごい話に、俺は耳を塞ぎたくなった。「私達が見抜いてやれなかったのよ…。あの男の異常さをね…。

で、智美は逃げるみたいにこっそり引っ越しをして、一からスタートって気持ちで今の店始めたって感じ…。」全ての糸が繋がった気がした。店にいる時、智美さんが時折電話に出て、奥に引っ込む事があった。

そしてしばらくして、何か無性に疲れたような顔をして戻ってきた。俺は何かあったのか聞いたが、ただいつものように笑って、「ううん。なんでもないよ。ありがとう…」と言うばかりだった。きっとあの電話は、その男からだったのだろう。事情を知らない同級生の者なら、智美さんの連絡先を教えたりしてしまう可能性はある。

そうやってその男は再び智美さんに近づこうとした…。目的は金なのか…それとも…。考えるだけで忌ま忌ましい…。とにかく、俺は智美さんの秘密を知ってしまった。しかし、話を聞くうちに俺は妙な安心感を抱いていた。

最初は「婚約者がいる」という言葉に衝撃は受けたが、それは今となっては形だけであり、本当に智美さんの心を捧げた男はもう今はいない…。どうなるかはわからなかったが、俺ができる事なら智美さんを癒し、そして守ってあげたいと強く願う事ができた。「これでもう、隠してる事はない…。大丈夫?」

宮岸さんは心配そうに言ってくれた。「はい…。俺、ずっと智美さんの側にいたいと思います…。望んでもらえるなら…」俺は本気だった…。

そしてこの時、俺の智美さんへの気持ちは「憧れている」から「愛している」に変わった。俺の気持ちが伝わったのか、宮岸さんはニッコリ笑って俺の頬に手を当てた。「ふふっ…○○(東条さん)が、ムキになって君を智美から引き離そうとした気持ち…少しわかるわね…。」

そう言って宮岸さんは、ドキッっとしてしまうようなせつない表情を見せた。「智美がダメなら私のとこに来なさいね…。いっぱい可愛がってあげるんだからね…」「あぁ、その…東条さんにも…そういう事言われました…」

俺がおずおずとそう言うと、宮岸さんが堪えきれないといった感じで吹き出した。「あははっ!私たちダメよねぇ〜。もう、恥ずかしくなっちゃうわよ〜」そう言うと宮岸さんは俺の手をスッと握り、「智美の事…大事にしてあげてね。私達の大切な親友だから…」と呟いた。

俺はじっと宮岸さんの目を見て、「はい…」と言った。「じゃあ今から智美とする前の予行練習いっとこうか!ほら、私に襲い掛かっていいよ…」宮岸さんは結局、宮岸さんのままだった…。

数分後、俺は再び宮岸さんに連れられて店に戻ってきた。宮岸さんとは外で別れ、俺は一人で店のドアを恐る恐る開けた。先程の激しい怒声は跡形もなく消え、店の中は静まり返っていた。そして、智美さんがポツンとカウンター席に座って呆然としていた。ドアの開く音で、智美さんはビクッとして、俺の方を見た。

「……おかえりなさい」智美さんがバツの悪そうな様子で言った。「東条さん、帰ったんですね」

智美さんは無言で頷いた。二人の間に苦痛とも言える沈黙が流れた。しかし、それではらちがあかない。俺は一息つくためにコーヒーを入れてこようと立ち上がった。立ち上がって一歩踏み出した瞬間、俺の身体は動かなくなった。

何者かが、俺の後ろから掴みかかったのだ。しかし、その時店にいるのは俺と智美さんだけ。やがて、背中に柔らかい感触を感じ、それが智美さんだと分かった。「どこ行くの…?」

智美さんが消え入りそうな声で言った。「いや…あ…コーヒー…、入れてこようって…思って」「後にして…」

突然の事で、俺の全身は硬直し、口が渇き、動悸が激しくなる…。「…さっきはごめんなさいね。あんなとこ見せちゃって…」「いえ…気にしてないです…」

「私ね…昔からずっと一人だった。両親はちゃんといたけど、二人とも共働きで、一緒にお出かけしたりとか、一緒に長い時間過ごしたりとか…全然なかったの…」智美さんの身体の震えが伝わってきていた。「兄弟とかもいなくてね。一緒に過ごせる家族にずっと憧れてたの…。○○君がここに来てくれるようになって、私本当に弟ができたみたいな気持ちになって、なんだか夢みたいだった…」

智美さんはだんだん話すうちに涙声になっていった…。「本当に勝手な気持ちだってわかってるの…。でも、○○(東条さん)と一緒にいたっていうのを聞いて、なんだか言葉にならないくらい不安になった…。悔しい気持ちになった…」もうそれ以上、智美さんに辛い言葉を吐かせる気にはなれなかった。俺は腰に巻き付く智美さんの手をほどき、智美さんに向き直った。

目にはたくさん涙が溜まっていた。「智美さん…。俺は地元から出てきて、何かと生活に苦労してました。そんな時に智美さんに出会えて、本当にラッキーだと思いました。俺に親切にしてくれて、あんな暖かい気持ちになったのは初めてでしたよ」智美さんは俺の目をジッと見ていた。

「俺なんかがいるだけで、智美さんが寂しくならないんなら、俺はずっと智美さんの側にいたいです。俺も、たった一人で暮らしてるのに、智美さんと毎日会ってたおかげで、一度も寂しくなった事なんてありませんでしたから…」「ありがとう…○○君…ありがとう…」智美さんは俺に身体を寄り掛からせた。そして、抱きしめてきた。

初めて智美さんの体温を、匂いを、吐息を感じた…。しかし、その智美さんが俺に抱く気持ちは全く俺とは逆の物であることに、俺は気付いていた。智美さんにとって俺は「一人の男」ではなく、「弟のような愛しい存在」である事実が、俺に重くのしかかってきた…。

俺は智美さんを胸に抱きながら、ふと窓から外を見た。そして見覚えのある車が、俺の視線から逃げるように走り去った。東条さんの車だった…。

その日の夜、どうしてもと言うので、俺は智美さんの家に行くことになった。今まで何度も智美さんの部屋にお邪魔した事はあったが、その時はなぜか気分的に違う気持ちになっていた。部屋に上がった後も、智美さんはなんとも上機嫌で、俺の身体に触れる事が多かった。

まるで小さな女の子が弟を可愛がるような態度で、俺に接してきた。「ねぇ、ご飯食べよ?あり合わせの物でだけど、美味しいの作ってあげる!」智美さんが俺の腕を掴んで、甘えるように言ってきた。

「はい…。あ、俺もなんか手伝いますよ」「いいのよ。座って待ってなさい。それと…一つ約束してほしいんだけど…」「なんですか…?」

「二人きりの時は、もっと家族みたいに気楽に話し掛けてよ。弟が姉に、です・ますとかで話すの変でしょ?」「それは…無理ですよぉ…」「ダメよ。約束して」

智美さんが真剣な顔をした。「…わかりました」俺はしぶしぶ承諾した。

すると智美さんは嬉しそうに笑って、また俺に抱きついた。そして楽しそうに台所の方に歩いていった。智美さんにこんな一面があるとは、俺は全く気付かなかった。まるで別人のようだった。確かに智美さんが喜ぶ顔を見れると俺も嬉しい。だが、何か違和感を感じていた。しかし、その時はそれを気にしないようにした。ただ智美さんと過ごす時間を、大切にしようと思った…。

食事の後、智美さんと二人でまったりテレビを見ていた。その間も、智美さんは俺にぴったりくっついていた。まるで恋人同士だ…。しかし、実状はそんな物とは程遠い…。「ねぇ、○○君」

ふと智美さんが俺の顔を見て話し掛けてきた。「はい?」俺はテレビに目を向けたまま返事をした。

「一回でいいから、私のこと、『お姉ちゃん』って呼んでくれないかな…?」俺は思わず飛び上がってしまった。「あの…勘弁してもらえませんか…?」

「お願いよ。一回だけ…ダメかな?」あの智美さんが、俺におねだりをするような目を向けた。もしこれが違うおねだりなら…そう考えただけでも、胸が熱くなる。

しかし…この状況は…。何かを期待するように嬉しそうに笑う智美さんとは逆に、俺は困惑するばかりだった。「じゃっ…じゃあ……。お…お姉ちゃん…。」

「なに?」「いや…何って…。あぁ〜もう無理ですって!」俺が耐え切れずにそう言うと、智美さんは大笑いした。

「ごめんごめん!ふふっ…ほんと…優しいね…」智美さんは本当に嬉しそうに笑い、俺の肩に頭をポンっと乗せた。時折、智美さんの胸が触れたりし、俺の『男としての本能』の部分が何度も顔を出しかけたが、智美さんの屈託のない笑顔を見るたびに、それらは一瞬にして萎んでいった。

俺は日付が変わる頃まで智美さんの部屋で過ごし、何事もなく帰宅した。次の日、俺はなんだか恥ずかしい気分で出勤した。いつものように、店の外から智美さんが開店の準備をしているのが見えた。「おはようございます…」

俺は少し照れ臭い気持ちで挨拶をした。「おはよう。昨日は遅くまでごめんなさいね。ほら、早く準備してテーブル拭いていって」いつもの智美さんだった…。

昨夜の甘えんぼうの智美さんはそこにはいなかった。俺はしばらくあっけにとられたが、すぐに気を取り戻し、エプロンをかけて開店準備にかかった。その日の朝から、またいつもの日常が始まった。しかし二人きりになった時の智美さんは、やはり甘えんぼうだった。ただ、店を開けている時は、たとえ二人きりになっても絶対に馴れ馴れしい態度はとらなかった。そういう智美さんのけじめの付け方が、俺は何気に好きだった。

でも…一つだけ、以前と変わった事があった…。東条さんが全く店に来てくれなくなったのだ…。以前は毎日のように店に来て、俺に色っぽい笑顔を見せてくれて、冗談まじりに誘惑してくれる…。俺は智美さんと初めて抱き合ったあの日、窓から見えた東条さんの車が走り去る光景が頭から離れていなかった。

智美さんにも、あれから東条さんとは和解できたのか聞いていなかった。何か腫れ物に触るような気がしたからだ…。東条さんが姿を見せなくなって、すでに二週間近くが過ぎようとしていた。店を閉めてからケータイを見ると、東条さんからの着信があった。俺は智美さんに『友達から急に連絡があったから、今日はすぐ帰ります』と言って、急いで帰宅した。

家に着き、俺はすぐに東条さんに電話をかけた。すぐに電話に出てくれた東条さんは『お話したいから、近くまで車で行くわ』と言った。俺は時間を見計らってから、近くの公園まで歩いていき、東条さんを待った。数分してから、東条さんはやってきた。俺は一礼して、東条さんの車に乗り込んだ。

「ごめんね。急に呼び出したりして…」「いえ、大丈夫です」「…元気にしてた?」

俺はただ頷いた。「…○○(宮岸さん)から智美の事、聞いたんだって?どう思った?」「ただ…智美さんを…守りたいと思いました」

「そっか…。僕らしい感想ね。で、その後抱き合ったわけね?」俺はドキッとした。やはりあの時、東条さんは見ていたのだ…。「智美と…したの?」

俺は首を横に振った。「智美さんに言われたんです…。『本当の弟みたいに思ってる』って…。結局俺は、智美さんにとって『一人の男』にはなれませんでした…」やはり改めて考えてみれば、辛い事だった…。以前にも増して智美さんとは親密になった…しかし、それは俺が求める方向性ではない…。

俺は東条さんの静かな口調に心をえぐられ、目を伏せてしまった…。「智美にそこまで言われて、僕はまだ想い通せるの?」俺は答えにつまり、無言になった。

「前にも言ったけど、私は智美とは違うわ。○○君の事が、ただ純粋に欲しいの。心が手に入らないなら、身体だけでもいい…。私をはけ口にしてもいいのよ?」東条さんはとんでもない事を口にした。「やめてください!なんて事言うんですか!東条さんをそんな風に扱う事なんてできるわけないですよ!」

俺は東条さんのあまりの言葉に語気が荒くなってしまった。「じゃあ…なんでそうやって…私を大事にしてくれるのよぉ…。なんで私の物にならないのに、嫌いにならせてくれないのよぉ…」東条さんはせきが切れたように泣き始めた。

いつもどこか自信たっぷりで、高飛車な雰囲気で満ちている東条さんが、弱々しい声で泣いていた。その時、俺の心の中で何かが弾け飛ぶ音がした…。今まで必死で守ろうとしてきた、少し気を緩めれば壊れてしまう大事な何かが崩壊した音…。もはやそれを止める力は、俺には残されていなかった。智美さんへの想いは叶わないと知った時から、もう俺の気持ちはズタボロだったのかもしれない…。

俺の手は自然と、東条さんの手へと重ねられた…。東条さんはハッとして俺の顔を見つめ、ニッコリ笑って俺に唇を重ねてきた。すごい勢いで口の中に東条さんの舌がねじ込まれた。俺も必死で応えようとして舌を絡めようとするが、全く歯がたたなかった。

いやらしい音が鳴るくらい舌を絡ませ合い、互いの唇を離した時、混ざり合った唾液が糸を引いた。俺の目の前で嬉しそうに笑って舌なめずりする東条さんの表情を見ただけで、俺の心臓は一際大きく高鳴った。「途中でやめるのつらいけど…ここじゃ少し居心地が悪いわ…。僕の部屋、お邪魔していいかしら…?」

「は…はい…。狭いとこですけど…」東条さんはすぐに車を走らせ、俺の住むハイツへ向かった。俺の部屋に着くなり、東条さんはもう歯止めがきかないといった感じで、俺を床に押し倒すようにして再びキスをしてきた。

そして上着を脱ぎ捨て、俺の手首を掴み、自分の胸へと導いた。俺は震える手で、白いブラウスの上から東条さんの胸を触った。「はぁ…ん…。やっと…触ってくれたわね…。気持ちいい…最高よ…」

そう言って東条さんは小さな喘ぎ声を出した。高校生の頃に付き合っていた彼女としか経験がなかった俺は、東条さんの魅力的な身体に完全に溺れてしまう恐怖すら感じた。大きめの胸はなんとも言えない張りがあり、ずっと触っていたいような衝動にかられた。

「胸好きなの?ずっと触って…もう…」東条さんがさらに俺を挑発するように、卑猥に笑った。「そろそろ直に触って…」

東条さんがブラウスのボタンに指をかけ、スルリと脱いでしまった。そしてブラにも手をかけて、東条さんの胸があらわになった。白い肌に、少し赤みをおびた乳首が俺の目の前であらわになった。東条さんは俺を抱き起こし、俺の頭を抱くような恰好になった。

「お口で吸って…」東条さんに命じられるがまま、俺は乳首を口に含んだ。一際大きな声が東条さんの口から漏れた。口の中で、東条さんの乳首がどんどん硬さを増していくのが分かった。

やがて東条さんは俺の股間に手をのばし、チャックを下ろし、俺のモノを取り出して優しく扱き始めた。俺は不恰好に、腰をガクガクさせてしまった。「ふふっ…逃げたらダメよ…」

そう言って東条さんは俺の腰に手を回して扱き続けた。やがて、あの麻痺したような気持ちいい感覚が襲ってきた。俺のモノは自分のではないような錯覚をおぼえる程、激しく勃起していた。

身体中の血液が、そこに集中していくような感覚になった。「気持ちいい?」「はい…もう…すごいです…」

「じゃあ…もっとすごくなってもらおうかな…」そう言って東条さんは俺の股間に顔を近づけ、俺のモノを口に含んだ。今まで経験した事のない感覚に俺は全身をよじらせた。そんな俺の過敏な反応を気にもせず、東条さんは舌を激しく動かしながら、俺のモノを口で刺激した。

やがて急に絶頂の波が襲っきて、俺は制御不能となって東条さんの口の中で果ててしまった。俺はしばらく快感に全身を震わせたが、すぐに自分のした行為に気付き、身体を伸ばしてティッシュの箱を取った。しかし東条さんは首を横に振り、口の中に溜まっていた俺の出したモノを飲み込んでしまった。

「ずっとこうしたかったの…」そう言って幸せそうに笑う東条さん表情に、俺はもう意識を奪われそうになっていた。東条さんは再び俺に抱き着いてきた。そして先とは違う優しいキスをしてきた…。

今度は俺もキスに答え、何度も東条さんの唇に自分の唇を押し付けた。「まだできる…?」「はい…。でも…、少し休みたいです…」

「ダメ。私もう我慢できないもの」そう言って東条さんは唯一纏っていた衣服であったパンツを脱ぎ、俺に跨がった。「ここでまた復活させてあげる…」

そう言って淫靡な顔をしたかと思うと、東条さんは一気に俺のモノを受け入れた。イッたばかりで敏感になっている俺の神経を、強烈に刺激した。俺は腰に電流が当てられたかのように震わせ、情けない声を出してしまった。「はい…もう私だけのものになったわよ…。絶対離してあげないんだから」

東条さんは悶える俺になど全く構わず、リズミカルに腰を動かした。俺は目の前がチカチカし、本当に星が散らつくような感覚を覚えた。やがて馴染んできたのか、再び気持ち良さを感じ始めた。しかし…それと同時に俺の体力は、排水溝に流れる水のようにどんどんと流れ落ちていった。

やがて二度目の絶頂を迎え、俺は喘ぎともいえる声を発して東条さんの中に全てを吐き出した。初めて高校生の頃の彼女とした時とは、もはや同じ行為とは言い難かった…。あんなものは完全におままごとのようなものでしかなかった…そう実感した。

完全に果てた俺は、そのまま床の上でぐったりした…。やがて東条さんが俺の身体から離れ、俺を引き起こした。「ほら…ベッドまで頑張って…。このまま一緒に寝ちゃいましょ」

俺は東条さんに引きずられるようにしてなんとか立ち上がり、ベッドになだれ込んだ。そして東条さんも隣に寝転び、二人で下着一枚のまま布団に入った。そして、俺の意識は眠りの中に落ちていった…。次の日の朝…。

目が醒めると、東条さんの姿はなかった。俺は部屋中を見回したが、やはりいない。しかし、テーブルの上に書き置きの紙があるのが目に止まった。『昨日の夜はありがとう。あんな満たされた気分になったのは生まれて初めてだったかもしれない。前以上に○○君のこと、好きになったわ。

でも私が1番望んでるのは君の幸せ。もしも今の一時の状況だけで私を選んだら、きっと君は後悔する。智美への想い、大事にしなさい』俺はその書き置きを読みながら、胸の奥から、得体の知れない熱いものが込み上げてきているのを感じた。『私、この間旦那と別れたわ。だから、昨日の事は、○○君にとって別に不倫でもなんでもないから安心しなさい。若い君に不倫なんて汚い物を押し付けるわけにはいかないものね。

私はしばらく実家に帰ります。こっちに戻ってくるかどうかはわからない。けど、昨夜の事は私、一生忘れない。ずっと○○君の事が好きよ。楽しい時間をありがとう。元気でね。』書き置きはそこで終わっていた。俺はその場に崩れ落ちた…。声は出ないのに、涙だけが目からとめどなく流れた。

昨晩の俺は、別に気の迷いや一時の感情で東条さんを抱いたワケではなかった。東条さんが俺を想ってくれる気持ちに触れ、俺は東条さんこそ愛するべき人なのだと確信した。だから東条さんと身体を重ねた…。それなのに…東条さんはすでに覚悟をしていたのだ。真に俺の事を想い、智美さんへの気持ちを貫かせるために自分は身を引いた…。

俺は…何も分かっていなかった。本当に始めから…。智美さんや東条さんのような綺麗な年上の女性と知り合い、そして可愛がられ、ただ有頂天になってた馬鹿な男…。智美さんに想いが伝わらないからといって自分一人で悲劇のヒーローを演じてた…。

自分がもし他人なら、ボコボコに殴りつけてやりたい…。頭の中に、俺の大好きな人たちの顔が浮かんできた…。俺を小突きながらも、包み込むように優しく笑いかけてくれた宮岸さん…。

いつも俺を惑わすような事ばかり言いながら、俺を一途に想ってくれていた東条さん…。そして…、あの時俺がツナサンドにがっつく姿を見てクスクス笑っていたことから全てが始まり、俺を弟とまで思ってくれ、どこまでも深い愛をくれた智美さん…。三人とも、俺の事を本当に愛してくれていた。だが、俺はそれをただ『気分がいい』という感情だけで受け取り、あげくには智美さん達の友情にまで亀裂を走らせた。

俺は一体…なんなんだ…?これだけたくさんの想いを三人から与えられて、俺は何かお返しはできたのか…?もう…なにもかもが壊れていくような気がした…起きたら東条さんがいなくなっていた。その日、俺は初めて智美さんの店での仕事を休んだ。体調不良と智美さんには連絡した。もちろん嘘っぱちだ…。ただその日は、智美さんに平気な顔で会う事ができなかったのだ。

電話口で智美さんは大層心配していた。「店を臨時休業にし、看病しに行く」とまで言ってくれた。しかし…俺はそんな智美さんの優しさが逆に痛かった。「今日一日ゆっくり寝れば、よくなると思いますから…」そう言って智美さんをなんとか安心させようとした。

釈然としないようではあったが、智美さんは「絶対に起きたらダメよ!なんかあったら電話しなさい。すぐにそっち行くから」そう言って電話を切った。俺は大きく溜息をつき、ベッドに倒れ込んだ…。

頭の中でいろんな事が駆け巡った。初めて智美さん達に出会った時の事や、あの楽しかった食事会の夜のドンチャン騒ぎ…。たいして月日も経っていないが、とてつもなく遠い昔のように感じた。「俺は結局…何がしたかったんだ…」

そう心の中で呟いてばかりいた。やがて、意識が遠のいていき、俺は再び眠りに落ちてしまった…。どれ程眠っていただろうか…。気がつくと、外はもう薄暗くなっていた。

ふと時計に目をやると、夕方の4時半すぎだった。俺は重い身体を必死で起こし、ケータイを手に取った。着信が十数件入っていた。全て智美さんの店からだった。俺はすぐに電話をかけ直した。

俺だとわかった智美さんは安心したのか、明るい声だった。「身体はどうなの?店閉めた後、そっちお邪魔してもいい?」正直…その時の俺は誰とも会いたくなかった…智美さんでさえも…。

「大丈夫ですよ。今日一日寝たら、だいぶ楽になりました。明日からまたちゃんと働きますんで」「そう…?ならよかったわ…。じゃあ…また明日の朝にね。まだ本調子じゃなかったら、遠慮なく連絡してくれていいから」そんなやり取りの後、電話を切った。

本当は一日寝て過ごしたくらいじゃ気持ちはおさまっていない…。しかし、このままの状況を続けるワケにもいかない…。次の日の朝、俺は店に向かった。

「おはようございます」全神経を集中させ、俺は平静を装った。「あら!よかった、今日は来てくれたのね!もう平気?」

智美さんは本当に嬉しそうに言った。

(どこまで書いたか忘れたので、適当なトコから…)東条さんが俺に別れを告げてから、もう三ヶ月が経とうとしていた。実は東条さんと智美さん、宮岸さんの三人は、あれからもう一度ちゃんとした形で会い、和解したのだそうだ。

俺は東条さんの事がずっと気にはなっていたが、三人が和解したという事で少しだけ安心していた。そして皮肉にも…東条さんがいなくなった事で、俺と智美さんの距離は少しずつ縮まり始めていた。店が休みの日は必ず二人で過ごすようになり、日によっては智美さんの家に泊まる事もあった。

そして…ある日の夜、店を閉めて二人でゆったりとコーヒーを飲んでいると、いきなり智美さんが俺の手をスッと握った…。「○○君…。私の事…どう思ってるのかな…?」俺は何も答えられなくなり、下を向いて黙り込んでしまった…。

「前はね…ほんとに弟みたいって思ってたのよ…。でも…最近…そんな感じじゃない気がしてきて…」正直、俺は気付きかけていた。以前より、智美さんが俺の前で女らしく振る舞ったり…少し甘えるような態度をとったり…。とにかく俺を意識してくれているのがわかっていた。

俺はふと、智美さんの顔を見た。初めて会った頃とまったく変わらない、優しくて穏やかな瞳…整った顔立ちに、触るのを躊躇してしまう程綺麗な長い髪…。俺の気持ちは、すでに固まっていた。

「智美さん…。今になってこんな事、言っても意味ないと思いますけど…言います。俺、智美さんに初めて出会った時から、ずっと好きでした。それと…尊敬もしてます。今の俺があるのは、智美さんのおかげです。あのまま一人でこっちで暮らしてたら、俺どうなってたか…」すると智美さんは俺にそっと身体を預けた。初めて、智美さんの身体の感触を感じた瞬間だった…。

「それだけ聞ければ十分よ…もう何も言わなくていいよ…。私も…好き…」智美さんは少し背伸びをして俺の頭に手を延ばし、慈しむようにキスをしてくれた。まるで、羽根が触れるような優しく軽いキスだった…。

やがてお互いの背中に手を回し、強く抱き合った。どれくらいそうしていただろうか…智美さんはふと身体を離した。「ね…ウチにおいで。私、キスだけで満足できるほど子供じゃないよ…」

そう言って智美さんは今まで見た事もないような色っぽい笑顔を浮かべた。俺は智美さんに魔法をかけられたようにぼぉっとしながら帰る支度をし、智美さんの車に乗り込み、部屋に向かった。部屋に着くなり、智美さんは我慢の糸が切れたように、俺に抱き着いてきた。そして、俺が経験したこともないキスをしてきた。

まるで、俺が犯されてるようなキスに感じた…。年上ながら、どこかかわいらしさのある智美さんだったが、その時ばかりは、まざまざと大人の女性としての魅力を見せ付けられた気がした…。絡み合うようなキスをした後、智美さんはベッドに座り、服を脱ぎ始めた。

やがて、上はブラだけで、下はスカートのままというなんとも言えない姿になった。俺もすぐに我を取り戻し、ズボンとシャツを脱ぎ、Tシャツとトランクス姿になった。すると智美さんは今度は逆に俺をベッドに座らせた。そして座る俺の前にひざまずいた。

そして手を延ばし、俺のモノを薄いトランクスの上から擦り始めた。しかし、さほど馴れた手つきではなかった…。その時になってやっと、俺は気付いた。智美さんは俺をリードしないといけないという気持ちでいっぱいなんだ、と…。

智美さんは俺の股間を優しくさすり、そしてキスをしてくれた。俺も精一杯の愛を込めて、そのキスに答えた。やがて俺は智美さんをベッドに寝かせ、その上に四つん這いになった。

智美さんは真っ直ぐに俺を見ていた。そしてなぜかクスッとはにかむように笑った。「なんか…弟とするみたいで…禁断の関係みたい感じね…」俺は思わず吹き出してしまった。

「智美さん、こんな雰囲気なのに冗談言うのやめてくださいよ」俺は笑いながら言った。すると智美さんは、ごめんごめんと言って俺の頭を撫でた。

やがて俺は意を決して、智美さんのブラに手をかけた。雪のように白い智美さんのぷっくりした胸があらわになった。その膨らみの頂には、まるで絵に書かれたような綺麗なピンク色の突起があった。そしてゆっくり…それを口に含んだ。

軽く吸い、舌で転がすと、両足をモジモジさせ、吐息混じりの小さな声を出し、乳首がみるみる内に口の中で膨らみ、固さを増すのがわかった。「もう…ここはいいから…。して…?」やがて智美さんは焦れたように言った。

そして自らでスカートと下着を脱ぎ、俺の身体を抱き寄せた。「智美さん…その、俺…持ってないんです…。なんていうか…予測してなかったから…」「ないって…コンドーム…?」

俺は黙って頷いた。「いいよ…。私、大丈夫な日だし…このままで…ね?」俺は、智美さんと初めてするにも関わらず、生でする結果になってしまった…。そして…智美さんと一つになった…。

女性経験があまり豊富でない俺にとって、智美さんとのセックスは言葉にならない程の良さだった。中で強く握られるように締め付けられる一方、熱い愛液が滴るように俺のモノを包み込み、腰が砕けそうになる錯覚を覚えた。初めて付き合った彼女とはお互いに初めてだったが、それと同等の初々しい感触だった…。

やがて、俺も限界がきてしまった。俺は腰を引いて、すぐに抜こうとした。が、あろうことか智美さんは俺の身体を力いっぱい引き寄せ、放そうとしない…。そして…俺は智美さんの中に、全てを吐き出してしまった…。

失神しそうな快感の後、とんでもない自責の念が俺を襲った。「すみません…俺…」俺は智美さんに謝った。

「どうして?気付かなかった?私が放したくなかったの。だからいいのよ…」一抹の不安を抱きつつも、俺は少し安心し、智美さんと長い長いキスをした…。しばらくして、二人とも下着とTシャツだけの姿に着替え、一緒の布団に入って眠りにつくことにした。

俺はとてもじゃないが、眠れなかった…。今まで恋い焦がれ続けていた智美さんを抱いてしまったのだ…。そして今、自分の身体にぴったりとくっついて隣で寝息をたてている…。まるで夢のようだった…。なんとも幸せで、気持ちのいい夢…。

このまま眠って、起きたら夢だった…なんて事だったらどうしよう…。そんな不安さえ生まれた。しかし、俺はたしかに智美さんと晴れて恋人同士になった…。自分がこの世で一番幸せな人間だという気持ちにさえなった。

俺は真っ暗な天井を見つめ、智美さんの寝息の音をBGMに、今までの出来事を思い出していた…。全ての始まりは、俺の気まぐれだった…。ある日、ガラにもなくアパートの近くを散歩していて、偶然見つけた喫茶店。その店はまるで女神様のような人、智美さんが一人で切り盛りしていて、俺に一生忘れられない味のコーヒーとツナサンドを出してくれた…。

やがてなりゆきで俺が店を手伝うようになった。そして東条さん達と出会い、俺に優しくて綺麗なお姉ちゃんが3人もできた。やがて俺は智美さんに恋をし、東条さんは俺を必要としてくれた。人を愛する事、愛される事の喜び、そして辛さを知った…。

本当に…いろんな事があった。たくさん笑った、泣いた、照れた…。それらは、全て今この時に繋がっていたのだと確信できた。「そんな顔してると、スキ見てキスしちゃうわよ?」

俺の心の中に浮かんだ東条さんが、変わらぬ色っぽい笑顔でおなじみの口癖を言った。「大丈夫。私にまかせときなさいよ!なるようになるって!」宮岸さんはいつもこう言って、東条さんと智美さんを温かく見守っていた。そして俺のことも…。

俺は智美さんの方を見た。目を閉じて、静かに眠っていた…。俺は…そっと智美さんの手を握った。すると、妙な興奮は瞬く間におさまり、俺も静かに眠りに落ちた…。

あの後、かなりいろいろあったけど、俺は智美さんと結婚して、今はかわいい娘もできた。東条さんとも再会して、今はかなりいい友人って感じになった。東条さんの実家が営んでる温泉旅館に、毎年遊びに行くのが我が家の楽しみ。

今まで、待たせたのに、支援してくれた人、ありがとうございました。

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