バイト先の毅然とした巨乳の主婦と道場の女の子 超長編

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何年前だったろうか。
俺は大学に入学し、解放感からアルバイトをはじめることにした。
中学、高校と男子高に通い、女子とまともに口をきけなくなっている自分に気付いた俺は、Mでバイトをはじめることにした。
時給は安かったけど、女が沢山いた。

ほとんどは学生だったけど、時には元OLとか、主婦もおり、女に慣れるには適当な環境だった。

進学校を出て、一応名の通った大学に通っていた俺は、バイト先では余り相手にされなかった。
バイト命の香具師が何人もいて、彼らは女に不自由していなかったけど、一応授業に真面目に出ている俺は、どちらかといえば浮いた存在だった。
それから女への接し方もわからなかった。今から思うと実に下手だった。
女からモーションをそれとなくかけられていたことが何回もあったのだが、その時はそうと気付かず、なぜ彼女はこんな事を言うのだろうと訝しく思ったものだった。

バイト命は、やがてMに就職してゆく。俺はそんな道を歩きたくなかった。
授業に出て、剣道部で稽古して、空いた時間にバイトに入る。
そんな毎日だった。

バイトが2年目にもなると、新人の教育を任されたりするし、時間外でスタッフと打ち合わせをしたりする機会が増える。
俺はトレーナーとして新人の教育に当たりながら、堅物を通していた。

バイト先の数名の主婦は、一応30代前半までだった。
接客もするので、若いほうが良かったし、40代で断られている主婦が何人もいた。バイト熱心ではなかった俺だが、主婦には比較的受けが良かった。
俺みたいな若者が、女を幸福にするのだと言ってくれたりした。

俺は主婦のうち、3人と仲よくなっていった。
彼女達と、打ち合わせたりする機会が多かったから。
また、俺は若い子達に受けるような会話ができなかった。
仕事に関してじっくり打ち合わせることならできたけど、冗談を言ったりできなかった。また、若い女性と親しくなれない、バリヤーの様なものも感じていた。

その点主婦は、俺にとって女というより、姉さんのような感じだった。
話をしているうちに、時にはエロッぽい話になることもあった。
そんな時は、どぎまぎしてしまい、視線をそらせて黙ってしまう俺だった。そんな俺を主婦達は見て笑った。

その一人はSさんという主婦で、36歳だった。21歳で結婚し、双子のお母さんだった。ご主人は大手商社に勤めており、カッコ良くとてももてるらしい。
Sさんは略奪されるように結婚し、あっという間に妊娠、出産。
双子を必死で育てて、ようやく外で仕事ができるようになったのだという。

そんなご主人から略奪されるのだから、彼女も魅力的な女性だった。
小柄で痩せているが、胸は迫力で、柔らかく制服を盛り上げていた。
丸顔で、整った顔つきで、お店にも彼女目当てで来るお客がいた。

お客が来るのは当然と思うかもしれないが、ファストフードのお店で固定客がつくのは結構珍しい。その人は彼女の列に必ず並び、ある時手紙を彼女に渡したという。
そして、彼女が主婦であるとわかってがっかりしたのだろう、やがてお店に来なくなった。

彼女は独身と思われても不思議のない、生活感がなく若く見える人だった。
彼女とすれ違うとき、彼女は視線を僕から外していたが、身体が僕にぶつかりそうになることが度々だった。だが惜しいことに、僕はその都度よけていた。
一度、すれ違う彼女の手の甲が、僕のあそこに当たったことがあった。

僕は慌てて彼女を見たが、黙って彼女は歩いていった。
忙しい時の厨房は、戦争のようなものだから偶然だったかもしれないと思った。
あの時の手の感触は未だに記憶に残っている。

Mでは、時々飲み会が行われた。僕は余り参加しなかった。
しかし、俺が内心好意を持っていた子に誘われたので、参加してみることにした。
試験が近かったのに、よく参加できると思うくらいバイトが参加している。

酒が回ってきて、席を各々変わりはじめる。ここで秘められていたカップルらしきものが浮き出してくる。
俺を誘ってくれた子は、別の男と話し込んでいた。俺は内心がっかりしながらも友人と話していた。その時、フと視線を感じ、見るとSさんが僕を見ていた。

彼女は何となく浮いてしまっている感じだった。仲の良い主婦達が参加していなかったからだろうと思った。主婦はご主人と子供の世話で、夜は出てこられないことが多い。
俺は、話の区切りを見つけてトイレに立ち、帰りに彼女のそばを通った。

「Mさんはどうしたんでしょうね?」と彼女と仲の良い主婦の名前をあげて話しかけた。
「座って・・・」と言われ、「じゃあ」と俺は隣の空いている席に座った。
座った瞬間、彼女の膝が僕の膝にぶつかってきて、片手が僕の片手の上に重ねられた。一見柔らかそうな手なのに、実際は水仕事でがさついた手だった。
彼女は酔っているのかな、と思った。

とりとめのない話をして、お開きとなるとき、彼女から「家まで送って・・・」と甘えたような声で言われた。
今の俺なら、送り狼になるだろうが、その時俺は童貞だった。

チャンスも何も、分からなかった。

女づきあいの勉強などしなかったし、そんな軟派な友人もいなかった。

法学部だったので、試験が近いと気もそぞろだったこともあり、彼女の近所のバイトに、彼女を送ってあげて欲しいと伝えてしまった。
その当時は成績が就職先にひびく時代だったので、気が気ではなかった。

試験が終わり、久し振りにバイトに入った俺に彼女は笑いかけながら、「振られちゃった」と言った。目は笑っていなかった。
ある時、休憩室で二人きりになった。彼女はトイレを掃除していた。

時間があると仕事をする勤勉な女性だった。ドアが開いており、お尻がこちらを向いていた。
彼女はその姿勢のまま僕を振り返り、「色気あるかな?」と聞いてきた。
僕はその時スケジュール表に目を落としていて、言われて振り向き、突き出されたお尻を見た。

「充分に」と答えたが、それでも彼女に欲情しなかったのが我ながら不思議だった。

今から思うと、彼女を性の対象として見ていなかったんだろう。
若い子から同じ事をされたら、多分理性のたがが外れていたと思う。
ある日、帰る時間が一緒になった。着替えて休憩室から出るのも一緒。
階段を並んで下りながら、喋った。二人は二の腕がこすれ合うくらい近かった。
ふと彼女から切り出してきた。

「今度飲みに行かない?」
「いいっすよ」
「約束よ」
「分かった」

俺は約束したのが少々重荷だった。

二人だけよりも、と思い、一緒に友人を誘うことにした。
友人には彼女がおり、可愛い理解のある子だった。
ダブルデートのような形になる。

近場で呑むのは、どこに目があるか分からない。
少々危険な雰囲気も感じていたのだろう、電車で1時間の渋谷で待ち合わせることにした。

彼女との待ち合わせ時間を友人達より30分早めておいた。事前に色々話をして落ち着きたかった。

彼女はニコニコしながら待ち合わせ場所にやって来た。薄手のワンピースが似合っていた。

「電話がなかなかなかったので、今回も振られたかと思ったわ」
「すいません。実は友人カップルも一緒になるんです。いいでしょ」
「うん」彼女はにっこり頷いた。

驚いたことに、ご主人も今日のことを知っているという。
天真爛漫というか・・それを聞いた俺も、動揺も何もしなかったのだから・・・
今から思うと、何ということだったか。

友人カップルと合流し、行きつけの飲み屋で軽くこしらえておいてから、ディスコに行くことにした。
当時は、ディスコが流行っていた。

行くと、彼女は初めてらしく感動している。それを見て可愛いと思った。
踊っているうちに、友人カップルにムードが出てきてしまい、2人で外に行きたいという。ホテル街にしけこむのだろう。

「悪いな」
「ああ、悪くないから好きにしな」

彼らは出て行き、おれとSさんが残された。
2人で水割りをちびちびなめながら、とりとめもないことを話した。

「わたし、今日は独身なんだ」
「今日だけ?」
「そう、今日だけ」
「お酒、強いんだね」
「もう酔っちゃった・・・・」

俺はディスコで踊るのが好きだった。
一晩中踊っていて、翌日足が動かなくなったこともある。

忙しく、滅多に行けないので、たまに行くと踊りまくった。
が、今回は余り踊れない。一緒にいてあげないと、彼女がかわいそうに思えたし、色々バイト先では聞けないことも聞けたし、話が楽しかったのもある。

それでも踊ったけどね、彼女は踊る俺を見ていた。

しばらくすると、チークタイムになった。俺はドリンクと軽食を持って彼女の隣に座り、自然に肩に手を回した。思いの外細くて、骨が俺の腕にこりこり当たった。
襟元が柔らかいワンピースから、豊かな胸の谷間がうっすらと覗けた。

そのまま話し続けた。いつの間にか彼女は俺に寄りかかり、俺の肩には彼女の頬がくっつく感じになる。
次のチークタイムになったとき、彼女が

「一緒に踊ってよ」
「いいの?」
「だって、誘ってくれないんだもん」

俺は少々汗をかいていた。

「服が汗で濡れているけど、いいの?」
「うん、いい」

手と手を取って、お互いに触れるか触れないかの距離を保って踊りはじめた。

最初は、彼女の胸が俺の胸にかすかに触れる程度だったのだけど、段々密着してきて、最後は胸がぴったりと俺の身体に密着した。
俺からは近づいていないので、彼女から近づいてきている。

胸は柔らかかった。彼女の手はいつの間にか俺の背中に回っている。
この時のことは、余り覚えていない。

彼女は俺の反応を楽しんでいたのかもしれないと、今では思う。
こちらは興奮の余り、頭に血が上ってしまい、それでも落ち着いた振りを演出し、彼女をリードしようとしたのだけど、どうにもこうにも支離滅裂になってしまった。

揚げ句の果てに、俺は興奮の余り吐き気がしてきてしまい、もう駄目だと思ってしまった。
席に戻ったとき、彼女は俺の腕に自分の腕を巻き付けた。
俺の腕は彼女の胸に押し当てられる形になり、俺は自分が自分で無くなったように感じた。

俺は彼女を見つめて、「そろそろ出ようか」
彼女はあかんべーをした。
「ごめん、出たいんだ」
外に出て、涼しい空気に触れると少しは吐き気も収まった。

ネオンが光る道を、たくさんの人が流れてゆく。
2人でぶらぶらゆっくり歩きながら、渋谷の駅に向かった。

お互いに無言だった。何を話せばよいのか、沈黙に焦りながらもどうしてよいのか分からなかった。
今まで女として意識していなかった彼女が、いきなり女として俺の前に現われた感じ。童貞の俺はどうしてよいのかさっぱり分からない。その時、俺は勃起していたのかどうかすら思い出せない。

駅に余程近づいたとき、彼女は俺に向かってほほ笑みかけた。
「もう少し歩かない?」
俺は黙って頷いて、歩く方向を変えた。ホテル街へ。

彼女が俺にあの時声を掛けなければ、そのまま駅から電車に乗って以前と変わらない日常を送ったことだろう。
だが、俺は彼女と歩む方向を変えてしまった。

彼女もその意味は感じ取っていただろう。坂をゆるゆると上りはじめる。
彼女は無言で、目は真っ直ぐ前を見ている。

腕は、どうしていただろうか、彼女の腕と組んでいたようにも思えるし、肩に回していたかもしれないし、あるいは手をつないでいただけかもしれない。
はっきり覚えていない。
ホテル街にいつの間にか入った。

いくつものホテルの玄関をパスした。黙って通り過ぎた。
俺の心臓は早鐘のように鳴って、ゆっくり落ち着いたふりして歩くのが苦痛だった。
でも、どうしてよいのか分からない。

分かれ道で、2人一緒にふと立ち止まり、彼女は「向こうの道に行こうか?」と俺に話しかけた。

俺は、その時目の前にあったホテルの入り口に目を留め、「入ろうか?」 すると彼女は、

「厭!」「厭!」

激しい拒絶の言葉だった。
駄目かと思いながらも、俺はずんずん入っていった。
手は放していた。

彼女は「駄目、厭」と言いつつも、俺の後について入り口に入ってきた。
童貞の真面目男に、ホテルの知識などあるわけがない。
入って途方に暮れたが、とにかくホテルの人に案内を頼む。
ホテル代が予算内であってくれたら良いのだが・・・

痩せたおばちゃんが案内してくれた。
Sさんは「イヤだ・・・恐い・・・・」と言いつつも付いてくる。

部屋の前で、おばちゃんが「ごゆっくり」と言ってすたすた歩いてゆく。

こちらをまるで無視している目だったが、その方がこちらとしては気分的に有難かった。

部屋に入って、一応辺りを見回し、部屋の作りなどを確認する。今のラブホと違って、ふつうの家のような造りで、布団は別部屋にあった。
ソファに座って、彼女を隣に座らせる。俺はお茶を入れて落ち着こうとした。
お菓子を食べて、「おいしいよ」と彼女に勧める。

彼女は明らかに息が上がっており、「ねえ、止めよう、止めようね」と言ってきた。
それも、膝を俺の膝にくっつけるようにして、両手を俺の膝の上において言う。
俺は彼女の両手を握り、ふと前を見ると、鏡がソファ全体を写していた。

俺は黙って、彼女の髪をなぜながら、彼女の顔をこちらに向けた。
彼女は、イヤ、イヤとかぶりを振りながらも、俺は彼女に抱きしめられていた。
キスは上手くできなかった。唇を合わせても、イヤイヤと逃げてしまう。が、突き放されるわけでなく、俺は彼女に密着していた。

目の前の鏡に、俺と彼女の姿が映っている。彼女は大きく胸を突きだして深呼吸しながら、手足を軽くバタバタさせていた。俺はどうしてよいやら分からない。

突き出された胸を服の上からもみしだいた。柔らかい。彼女は「ヒッ」と声を出して、固まってしまう。

「止めて、お願い、止めて」と彼女は哀願する。
「今なら許してあげる、ね、貴方を許してあげるから、ここで止めて!」

後で聞いたのだが、彼女はご主人しか知らなかった。

好きな人とキスしたことはあるのだけど、そこまでだったらしい。
本当に当惑していたのだろう。

鏡に映ったsさんの姿を俺は見つめた。
俺に服の上から胸をもまれ、太ももをなで回されて、足をバタバタさせて身もだえしている。

俺はこれから先、どうすれば良いのか分からなかった。

受け入れられていないが、拒否もされていない。本当にイヤなら、突き飛ばすなりするだろう。
しかしそれもない。

とりあえず、俺は胸の辺りのはち切れんばかりのボタンを外し、上からのぞき込んだ。
大きな胸だった。痩せているのに、アンバランスなほど重量感豊かな胸がブラジャーの間にくっきりと谷間を造り、身もだえと一緒に揺れていた。

俺は母親以外の女性の胸をこんなに身近に見るのは初めてだった。
バイト仲間が噂していた胸が、俺の目の前にあった。

「ずっと好きだったんだ」
Sさんは「止めて、止めて」と言い続け、

「私のことを好きなら止めて」
「愛しているよ」
「貴方は私の身体が欲しいだけなのよ」
「心も、身体も好きだ」
「ああ・・・・」

俺はブラジャーの上から胸を触り、その感触にうっとりした。
遂にブラの中に手を滑り込ませた。感動の一瞬だった。
母以外の初めての胸だった。乳首を見つけ、ころころとつまんだ。

「う・・・ふん・・・・」

ため息とも吐息ともつかない変な息をして、彼女の抵抗は少々弱まった。
俺はソファから立ち上がった。彼女を抱きながら。抱き上げられなかったので、小脇に支えるようにして、布団の部屋へ向かった。

彼女は身もだえしながらも、俺に引きずられるかのように、イヤイヤしながらも俺に運ばれて行った。
敷いてあるダブルの布団に彼女を優しく投げ出した。

彼女はこちらをきっと見つめ、俺の胸をドカドカと叩いた。
だが、痛くもかゆくもなかった。力では圧倒的にこちらが上だ。
彼女を押し倒し、首筋から口づけをしていった。

そうしながらも、手を動かしてベルトを外し、スカートをたくしあげる。
彼女は足をバタバタさせた。「イヤ、イヤよ」と言いながら。

ストッキングとパンティが目の前にある。手を触れてよいものかどうか迷ったが、すっと体を入れ替えて、両手でストッキングを掴んだ。
「破いてはいけない」とできるだけ柔らかく、ストッキングを外す。

丁寧にできたのは、彼女の抵抗がきつくなかったからでもある。
足はバタバタさせていたが、ストッキングが破れるほどではなく、身体は跳ね回っていたが、力任せではなかった。
ストッキングの後はパンディだったが、すぐには手を出せなかった。
それよりも、ボタンを全部外してゆくことにする。

これには結構手間取った。彼女は暴れていたから。だが、外し終わったとき、彼女の身体がはっきりと見えたとき、抵抗が弱まってきた。俺ははっきり見た。服を脱がせやすいように、彼女は自分の身体を動かした。

俺はパンティーに手をかけた。そして一気に引き下ろした。
彼女の足はバタバタ動いていたが、如何にも弱々しかった。

初めて見る女性自身。毛は薄かった。俺の目線は上から下へだったので、性器自体は見えなかった。
俺は信じられなかった。俺はおののいていた。

手をあそこに延ばした。指が股間に行くと、そこは熱くびしょ濡れであった。
熱湯に手を触れたような感じがして、俺はびくっとして手を引っ込めた。

ブラのホックを外した。彼女はイヤイヤと言いながら、俺が外しやすいように姿勢を決め、動きを止めてくれていた。もはや嫌々は言葉だけだった。
単なる発音で、意味を持っていなかった。

ブラを外した直後、俺は乳首に吸い付いた。童貞の男にとって、あそこよりも乳房に引かれるのではないだろうか。母親以外初めての乳房だ。
俺は夢中でなめ回した。薄い色の、柔らかい乳首だった。母親のそれとは大分違っていた。

彼女の抵抗は完全に止んだ。
俺は自分の服を脱ぎ捨てた。肌と肌で触れ合いたかった。

服を脱ぎ捨てて初めて、自分の息子が痛いくらいにエレクトしていることに気付いた。

彼女はじっとしている。身体は上を向いて、顔は横に向け、目をつむっていた。
今の俺なら、じっくり愛撫をするだろうが、その時はそんな余裕はなかった。

もう一度乳房に吸い付いた。片方の乳房をもみながら、乳首をつまんだりしてその感触を楽しんだ。彼女は「ふむむ・・・」とうめくような声を出して深呼吸した。
乳房の感触で意外だったのは、乳腺がごりごりと感じられたこと。
柔らかいだけではなかった。

俺は、彼女の足を動かした。こちらの思い通りに動く。柔らかく脱力している。
彼女足を左右に広げ、股の付け根に向けて身体を沈めた。

彼女ははっと目を開けて、直にとろんとした眼差しになった。「はうっ」という声にならない声が上がった。
信じられないが、入ったのだ。

暖かくぬるぬるした感触が息子を包み、俺はしばらくじっとしていた。
どこまでも奥深く入ってゆくようにも思えて、思いきり突き込んでみた。
恥骨と恥骨がぶつかった。

童貞は腰の使い方が違う。

その時は、両手で身体を支え、前後にゆする感じでしかできなかった。
決して上手くはないし、なかなか射精にも至れない。それでも俺は夢中だった。

彼女はとろんとした眼差しでこちらを見つめ、「何故なの、何故なの」と繰り返していた。そのうちに「うん、うん」というか、「あ、あ」というような声を出しはじめた。
彼女は布団の端を握りしめたり、俺の背中に手を回して爪を立てたりした。

やがて、「お願い、出して、」と言い始める。俺の腕に噛みついたりして、首を左右に振り、乱れはじめた。
俺はあまり感じなかった。童貞を失ったことに感激はあったけど、射精にまでは至りそうになかった。

首筋にキスをしたり、乳房をもみながら動いた。汗だくだくになる。
腕で身体を支えていたので、自然に腕立て伏せのような形になっており、腕も少々疲れた。

一瞬体を入れ替えて、女性上位にさせた。

彼女はゆっくり動き、俺に口づけをしてくる。最初は、唇を合わせるが口を絶対に開かなかった彼女だった。が、その時には口を開き舌をからませてきた。
そのことが俺を感激させた。俺の唇の左に、右に口づけをして、おもむろに俺の顔を両手のひらで挟んで、ディープキスをしてきた。

彼女の腰は動き続け、乳首が俺の胸に擦れていた。

「愛してる?」
「ああ、愛している」
「本当に?」
「本当に」
「愛しているって言って」
「愛しているよ」
「もっと言って」
「愛している」

と、言葉の愛撫が続いていた。

「う、う・・・」俺が目をつむってうめくと、彼女は「お願い、出して」と言って来る。

さっきまでの感覚と違い、射精への階段を上りはじめた。
キスが良かったのか、そこでカチリとスイッチが入れ替わった感じ。

俺の顔がゆがむ。彼女はますます腰を早く動かしてきた。

「気持ちいい、お願い、出して、ね、お願い」

俺は両手を伸ばして彼女の乳房をわしづかみにして、しばらく堪えていた。
が、遂にトリガーは引かれた。

彼女の体内に、いつまでも拍動が続き体液が注ぎ込まれる感触が続いた。
彼女はぐったりと俺の身体の上に崩れ落ちた。しばらくそのままの姿でいた。

若かったのだろう、俺は一度あれだけ発射していたのに、息子はいきり立ったままだった。
インサートしたまま、彼女は俺の身体の上にぐったりと横になっている。

俺の乳首を彼女は舐めたり、指先でなぞったりしていた。
俺は息子を動かした。力を入れ、ぴくりと動かしたのだが、彼女は同時に敏感に反応した。

クイ、と腰が持ち上がるのだ。未だ感じ続けているようだった。
落ち着いて精液を洗い流し、2人してとりとめもなく語り合った。

彼女とご主人は、お互いに干渉しないようにしているとのこと。
ご主人とのセックスが余り好きでないことなど、しんみりと話してくれた。

恐らく、ご主人は浮気をしているのだろう、が、それは聞かなかった。
話をうんうんと聞いてあげるだけだった。
が、俺の手は彼女の乳房をまさぐり、乳首をいじりながらの会話だった。

段々彼女の声が上ずってきて、俺の手を乳房から払いのけ、「また欲しくなっちゃうでしょ」
俺の息子が未だに元気なのを見て、両手で包み込み、「素敵・・・」
と言ってくれた。

俺は無言で彼女を押し倒し、再び挿入した。「はあっ」と彼女はのけ反った。
今度はこちらも落ち着いていた。腰の使い方も、少し分かってきた。

しっかりと抱きしめながら、ディープキスをしながら、腰を使った。
彼女は俺の背中に爪を立て、後で見たら傷が幾つもついているほどだった。

「愛してる?」
「うん、愛している」
「離さない?」
「ああ」

唇を放してそういう語り合いをして、またディープキス。

今度は雑誌で見たことのあるバックをしてみたかったので、四つんばいになってもらった。初めて彼女のあそこが俺の目の前に広がった。
少々黒ずんでいて、中がピンクで、ぬらぬら濡れていて、ひくひく動いていた。

俺は後ろから息子をあてがった。彼女は、歯を食いしばりながら待っていて、俺の亀頭があそこに触れた途端、強い勢いで俺に尻をぶつけてきた。
早く欲しかったのだろう、尻をぶつけるように俺を迎え入れ、俺の身体に尻を押し付けた。
深く深く、これ以上入らないくらいに。

しばらく動いた後、再び正常位で抱き合った。フェラやクリニングスはしなかった。

そんな気になれなかった。また、おれたちの時代は、AVなどなかったから、そんなテクニックは知らなかった。

タダ、これ以上密着できないくらいくっついて、彼女のあえぐ口を口でふさぎ、お互いの唾液を飲み込みながら、獣のように汗をかきつつ交わった。
上になり下になりして、再び女性上位で俺は射精した。

ホテル代は少々足りなかった。時間オーバーしていたのだ。
彼女が俺の手を押さえて、払ってくれた。

「借りておくよ」という俺の言葉を、彼女は唇で塞いだ。
鏡の前で髪を梳く彼女は、不思議なくらい落ち着いていた。女になっていた感じ。

下着を着たりする着替えを、恥ずかしいといって俺に見せてくれなかった。
帰りの電車の中ではお互いに無言だった。

彼女を見つめると、ふと視線が僕に上がり、視線が合うと慌てて目をそらした。
彼女は少女のようになってしまっていた。

彼女の目を見つめると、充血し、潤んでいた。セックスの後の女の目が分かるようになったのはこの時からだ。

彼女はバイト先では良く働き、重要な仕事もしていた。
本社に研修に出かけたり、女子のバイトの元締め役もしていた。

バイト仲間の間では毅然として振る舞うところもある彼女だったが、俺と2人きりになると、少女になってしまった。
休憩室でも、他のクルーがいると俺達はまるで相手を無視していた。

2人きりになると、俺は仕事をしている彼女の後ろに近づいて、首筋を指でなぞったり、柔らかくバストに触れたりした。彼女はしばらく我慢してデスクワークをしているが、そのうちにため息をついて俺にもたれ掛かってくる。
他のクルーが来たらぱっと離れるのだが、随分スリリングだった。

俺は彼女を抱きたかったし、彼女も恐らく濡れていただろう。
彼女から家に頻繁に電話がかかってくるようになってきた。
母は少々不審に思い始めたようだったが、仕事の話と護摩化した。

また2人だけで会いたい、と向こうから何度も言われ、仕方なく俺のアパートに呼ぶことにした。
俺は自宅にもいたが、近所にアパートを借りていて半分独立のように生活していたのだ。

彼女を下宿に呼んだ。男の部屋だから、殺風景なものだが、彼女は物珍しげに部屋を見回していた。

俺は紅茶を入れて、買ってきていたケーキを出した。彼女とは向かい合って座った。
彼女の肉体が目の前にある。急ぐことはない。
彼女はどこか反応がトンチンカンで、息遣いが少々荒かった。

リラックスしていたのは俺の方で、彼女は普通でなかった。
とりとめもない話をし、時間が流れていった。
彼女がカップを洗ってくれるという。
小さな流しだが、一応備え付けてある。

彼女がカップを洗い始めた。俺に後ろ姿を見せている。
洗う動作がどことなくせわしげで、緊張しているようだった。
俺はそっと立ち上がり、彼女の肩にそっと両手を置き、そのまま抱きしめた。
そして、胸に手を入れて乳首をまさぐった。

「ヒッ」彼女は声にならない声を上げて、身体を堅くした。が、すぐに柔らかくなった。
彼女は緩やかに俺の手をはねのけようとする。
その手の力は段々弱くなり、逆に俺の腕に爪を立て始める。

心地よい痛み。
俺は柔らかく力を入れ、彼女の重心を奪い、身体のバランスを崩す。
そのまま、床にそっと押し倒す。

彼女は「止めて、止めて、・・・・・」と首を振りながら、俺に胸をもまれ続ける。
彼女は言葉の愛撫を好んだ。言葉を聞き、それが繰り返されるとどんどんヒートアップしてゆく。

「愛している」
「素敵だよ」
「素晴らしいよ」
「貴方は最高の女性だ」

書いてみると、歯が浮くような言葉だが、彼女は「本当?」と何度も聞き直し、こちらが繰り返すたびにぬるぬるに濡れてゆく。

スカートを脱がせ、薄手のシャツを脱がせ、下着だけにしたとき、俺の心はときめいた。
彼女は「ああ・・・」と両手で自分の顔を覆った。

俺は急いで敷布団を敷き、手早く裸になった。
息子はいきり立ち、痛いくらい。俺は彼女を抱き上げて、布団に運ぶ。
彼女は素直に運ばれた。

仰向けに寝ている彼女のブラのホックを外すため、背中に手を入れると彼女は背中を浮かせた。ホックは直に外せた。
彼女はパンストを履いていなかった。パンティを脱がしたとき、パンティに愛液が糸を引いていたのを俺は見た。

食器を洗った濡れた手のまま、彼女は俺の腕の中にいた。
蛇口から、糸のように水が流れ続けている。
俺は、彼女の女性自身をのぞき込むことは最後までしなかった。
一瞬見えてしまったことは何度もあったが。

指を入れたことは一度だけ。それも、彼女から「イヤ、イヤ」と言われ止めた。
なめたこともなかった。

彼女は俺の息子を触ってくれたことはしばしだったが、決して口に含もうとしなかった。
気持ちが悪いというか、俺達の世代はそういうタイプが多かったようだ。
一種の美学というか、何でもありではなかった。

その代わり、言葉の愛撫をはじめとするメンタルなものには、じっくり労力をかけた。
優しく身体をなでさすり、首筋や耳の後ろなど丁寧にキスをしていった。

彼女は俺の息子を、玉の袋を優しくなで回してくれた。愛おしげに。
触れられる快感と、丁寧に愛撫される嬉しさに、俺は深い満足を覚えた。
さて、顔を覆っていた彼女は、「ああ、ああ・・・・」と言いつつ荒い呼吸に胸を波打たせていた。

乳首をなめ、髪の毛をなで、顔から手を取り払いキスをする。
彼女の乳首は柔らかかった。固くならない。マシュマロのように柔らかいまま吸うと少しだけ伸びた。彼女は乳首が感じるらしい。びくりと震える。

俺は彼女の体内に入り込んだ。今から思うと、彼女のあそこは結構受け入れられやすかった。
挿入で困ったり、探したりしたことは一度もない。

俺が腰を使い始めると、彼女は「ふうん、ふうん」呼吸をし始め、興が乗ってくると爪を俺の身体に立てた。腕といい、背中といい、あちこちにひっかき傷ができた。言葉の愛撫は続く。

「素敵だ、愛しているよ、もう絶対に離さないからね」
「本当に?」
「ああ、本当だよ」

正常位のまま俺は逝ってしまった。
彼女はぐったりとして、俺の隣にいる。今で言う中出しだ。

精液がドロリと彼女の膣からあふれ出す。
ティッシュペーパーでぬぐい取り、シャワーを浴びる。
良く妊娠しなかったものだと思う。

俺はクルー仲間には、二人の関係を知られないように心掛けていた。
彼女も最初はそうだった。
すれ違うとき、一瞬視線を合わせる。彼女の胸やお尻、二の腕が俺にチッとかすめてゆく。

後はお互いに知らんぷりだが、その一瞬に何かが通っていたと思う。
彼女はスターと呼ばれていた。休憩室に自分のデスクを持っている。
制服も、他のクルーとは違っていた。当然ロッカーも個人のものだ。

Mで彼女は相当信頼されていた。
俺は余りバイトに入らなかったが、連絡を取ることはできた。
休憩室の隣りにもう一戸部屋が借りてあり、そこは彼女が鍵を持っていた。
クルーも入れるが、鍵は持っていない。

俺は彼女の手伝いや打ち合わせで、2人きりになる時をその部屋でもった。
2人きりになると、俺達は隣あって座り、休憩室で休んでいるクルーに内緒で打ち合わせや手伝いをした。彼女を触りながら。
頻繁に打ち合わせがあるわけではない。たまにある時、彼女は時にはノーパンで俺の隣に座った。
彼女も結構スリルを楽しんでいたと思う。

月に2回ほどだが、一緒に飲みに行ったり、ディスコで踊ったりもした。
その後はホテルに入った。俺には余りお金がなかったため、2回に1回は彼女がホテル代を持ってくれた。

彼女と付き合いだして、俺はマスターベーションをする必要がなくなった。
いつでも自由になる女体がある。

彼女は、家庭を壊すつもりはない。俺も、彼女の考え方に口を出さなかった。

4ヶ月が平穏に過ぎた。

平穏が崩れだしたのは、彼女の行動がエスカレートし始めたためだった。
ある時、クルーノートに詩が書いてあった。

クルーノートとは、クルーが思いを書いたり、今日あった出来事を書いたり、色々書き込む雑記帳のようなもので、いつも机の上に置いてあり、全員が読むことができる。
その詩は、一ページを埋めており、まさしく俺達の結ばれた夜のことをデフォルメして書いてあった。

もちろん性行為の事までは書いていない。が、あの夜が如何に素敵だったか、等々、詩の形をとって書き込んであった。
今でも思い出す。

詩の中の最後のあたりの一節

「社会が無かったら、道徳が無かったら、私を縛る太いロープが無かったら貴方と一緒になれるのに・・・・」
俺は、それを読んで背筋が寒くなった。

この詩はクルー仲間で話題になった。
「これを書いたの、誰だ?」
ご丁寧に、筆跡鑑定を始めるやつがいる。

「Sさんじゃねーか?」
「この部分、どういう意味だ?」
正社員のMgrは、流石に大人で「人生色々あるんじゃないか?」俺も実はこの会話に加わっていた。

冷や汗を流しながらも、できるだけ自然に振る舞い、友の発言に相づちをうったりしていた。
俺は今まで彼女のことを聡明で、自分の安定を壊さない程度に人生を楽しむ術を見つけた女性だと思っていた。
だから、俺にとっても都合の良い彼女だった。

しかし、そうでなくなってきている。
彼女と2人きりになった時、彼女に俺は問いかけた。

「どうしてあんな詩を書いたんだ?」
「さあ、なぜかしら」それから「ふふふ・・・」と笑った。

「皆、あれを見て、あることないこと詮索しているよ」
「やらせておけばいいんじゃない?」

話にならなかった。俺は、誰もいない時を見計らって、あのページをびりびりと破り捨てた。
そういえば、兆しもあった。彼女は、バイト先で俺に突然怒りだすこともあった。
他のクルーには相変わらず愛想がいいが、俺に冷たかったりする。
理由で思い当たる節はなかった。

俺のふとしたしぐさや、仕事の進め方、特に新人の教え方など、気にかかることがあると俺に突っかかってくるらしいというのは、後で分かったことだ。
俺は結構厳しいトレーナーだったし、仕事で甘えるのは嫌いだ。
技術というのは、厳しく教えられなければ身に付かない。

その厳しく接する姿が気にくわないと、怒りだすのだ。が、それは彼女の職分を超えている。
事実、俺は店長にはほめられていた。
要は、彼女はバイト仲間としての一線を超え、俺に彼女が理想とする姿を演じて欲しくなったのだろう。
彼女は俺にひどく甘えてきたり、つっけんどんになったりと俺は彼女に振り回されるようになってきた。

またある時は、休憩室の流しの前の鏡に、俺の名前とハート、それを貫く矢が落書きされていた。
ご丁寧にボンドを使って描いてある。
俺の名だから、がりがりと引っかいて30分位かけて綺麗にした。

後で彼女に「こんな事があって、困ったよ」というと、彼女はクスクス笑い始めた。
俺が目で「君か?」と問い掛けると、彼女はあかんべーをした。
そして、俺に乗りかかってきて激しいキスをして、そのまま俺を抱きしめた。

それは、Mの休憩室の中だった。俺は彼女を優しく離し、唇をぬぐった。
口紅が付いてしまっているはずだ。彼女愛用の口紅の味が、俺の唇にこびりついていた。
彼女は36歳。19歳で結婚し、20歳で出産していた。

目の前にいる、未だ独身と言われてもおかしくない彼女に、俺とそう違わない子供がいるなんて、不思議に思えた。
思わずまじまじと写真を見つめてしまった。
このように恵まれた生活の中、何が好みででMのバイトなどに入っていたのか。
そして、なぜ俺と不倫など始めたのか。

「寂しかったのよ」とぽつりと彼女は漏らした。

自分を無くして、子供達のためだけに生きてきた。子供達は健やかに育ち、一応育て上げへの準備が整ってきたとき、彼女は失われた20代を思い起こしたのだろう。
今になって彼女の気持ちがわかる。

が、当時は分からなかった。彼女の感情の振幅の大きさに、俺は当惑していた。
突然べたべたと甘えてきたり、俺に冷たくなったりする彼女。
彼女を抱いているときは、彼女は従順だった。
彼女には体臭が余りなく、清らかな感じだった。

俺はマスターベーションをいつの間にかしなくなった。我慢していれば、彼女を抱ける。そんな思いがあった。だから、抱くとなると一度に3発など、若かったな、と思う。
彼女はご主人に抱かれるのを好まなかったという。

それが俺には信じられなかったのだが、あの男前だ。浮気も相当だったのだろう。
俺との関係も、ご主人に対する復讐みたいな意味合いがあったのかもしれない。
が、いつの間にか、彼女は本気になり始めた。

言葉の愛撫を彼女は好んだ。これは、毎回そうだった。
愛の言葉を聞きたがり、それを聞くたび濡れていった。
俺は、時に冗談で聞いた。

「ご主人と別れる? 俺と一緒になる?」すると彼女は必ず左右に首を振った。
「そう、所詮俺は君にとって若い燕なんだよね」
彼女は申し訳なさそうに俺の髪をなでた。

が、後半になると、同じ質問をしても返事をしなくなった。
黙って俺の目をじっと見つめたり、視線をそらせたりした。

ノートの件があったのは、その頃だ。

彼女の心は揺れていたのだと思う。最初は遊びだったのだろうが。
そこで俺が彼女の心に応えてあげたら、どうなっただろうか。
が、俺は一歩引いた。

泥沼に引き込まれるような何か恐ろしいものを感じ、鳥肌が立つことがあった。
俺の生活で、Mはごく一部でしかなかった。

彼女の存在も、俺にとって都合の良い関係でしかなかった。
時に一緒に時間を過ごす。そして、セックスする。
彼女は若い男とデートできるし、俺も性欲を満足することができた。

俺のメインの生活基盤は大学で、部活もやっていたので非常に忙しかった。
3年になると、司法試験を受けることができる。

俺の友達は、司法試験目指して目の色を変えている人間が多かった。
俺も、受験を考えていた。受からなくても、勉強すれば成績は上がるし、
成績が上がれば、良い職場に就職すると事ができる。

俺は部活を止め、町道場で剣術を学び始めた。
古流を教える道場で、古流は型を学び反復して身に付ける。
時間があれば、自主稽古できるので、受験生の俺には都合が良かった。

剣術の道場では、俺は真面目な修行者だった。
友達は作ったが、雑談を交わすぐらいでほとんど稽古終了後は帰宅し、机にかじりついた。

稽古も、勉強につかれたときに素振りをしたり、型の練習をしたりで時には汗だくだくになるまで反覆をしたりした。

道場には司法試験の受験生が数名いた。彼らは卒業後、研究室に所属し、試験には毎年落ち続けていた。俺はああはなりたくなかった。
が、T大をはじめとする一流大卒が落ち続けているのを見ると、俺は自分に自信がなくなった。

道場に、可愛い子が入門してきた。

俺は、初心者クラスの指導も行っていたので(当時は)、彼女とはしばしば話をした。
彼女は親しげに俺に指導を求めてくる。俺は、できるかぎり彼女に教える。

それこそ手取り足取りだ。足構えを直すには、太ももに手を触れ、構えを直すには手を取る必要がある。
俺はいつしか、稽古の帰りに彼女と並んで駅まで歩くことが多くなった。

会話は楽しかった。Mでは俺は浮いていた。余りバイトに入らなかったから。
俺がトレーナーでしごいた人間が、いつの間にかMが全ての人間になり、MGRの卵になっていった。ということは、俺より上になっていったのだ。
自然、面白くなくなる。

道場では、Mちゃん(彼女の名)は俺を尊敬の目で見てくれていた。
といっても、一年早く入門しただけの先輩だったのだが。
Mちゃんは、幼児教育学科に所属し、幼稚園の先生になるのが夢といっていた。
いつしか俺はMちゃんとも仲良くなっていった。

俺は、Mちゃんの単なる先輩であった。
Sさんが俺の女性関係のメインだった。が、俺には段々煩わしく、時には恐ろしい人間関係になりつつあった。

俺は、ある日Mちゃんを誘って、飲みに行った。
といっても、金のない俺は居酒屋に誘うくらいしかできなかった。

「T」という、行きつけの居酒屋があった。そこで、彼女をしたたかに飲ませた。
余り呑めないと言っていた彼女が「わたしを酔わせたいの?」と聞いてグラスを口に運んだ。

「ああ、酔ったら家まで連れて行ってあげるよ」その時は俺には下心はなかった。
本気でそう思っていた。

遅くまで飲んで、彼女を電車で送った。車中、彼女は俺の腕にしっかりとしがみついていた。
胸の弾力が俺の肘に押し当てられる。俺もしたたかに酔っていた。

彼女の自宅がある駅についた。さびれた駅で、かなり暗い。夜11時を過ぎていた。
俺は終電車の時間を確認した。後30分ほどだ。俺は、計算をしていた。
彼女を自宅まで歩いて送ってゆくことにした。

暗い道だ。ゆっくり歩いた。彼女は俺に寄り添ってくる。
俺は意識して、暗がりを歩いた。周りに人はいない。住宅街だ。

突然、俺は彼女の型に手を回し、首をこちらにひねって、口づけをした。
彼女は嫌がらなかった。一瞬のことだった。

そこからどうしたのだろうか、俺達は林の中の道を歩いていた。
周りには誰もいない。

「今の僕を、何と言うのでしょう?」
「ふふ、送り狼」
「嫌かい?」
「ううん、ちっとも」

俺は彼女を抱きしめ、胸といい、お尻といい、彼女をなで回した。
彼女は逃げなかった。俺に体重をもたれかけた。パサ、と音がした。
彼女のバックが、草の上に落ちた。
時間を確認すると、終電車の時刻は過ぎていた。

「終電車が、行っちゃった」俺が言う。
彼女は「エ、そう、ごめんなさい、どうしよう」
俺は、「どこか泊るとこない?」と聞いた。
彼女は「分かんないよ、私そんな事に詳しくないもの」
「じゃあ、ラブホテルとかあるかな、そこで泊ってもいいかな」
「なら、一件知ってる」

彼女に案内してもらい、けばけばしいラブホテルの門をくぐる。

俺は彼女に「一人で入るのは変だから、一緒に入ってくれない? 直に帰っていいからさ」
「うん・・・・・」彼女は躊躇したが一緒に入ってくれた。

けばけばしいラブホテルは、室内もけばけばしかった。
俺はソファに彼女を座らせた。
「すこしなら、ゆっくりできるかな?」
水を彼女に飲ませた。俺も、同じコップで水を飲む。
「フー、酔ってしまったね」
彼女は無言だった。

俺は彼女の隣に座り、髪をなぜ始めた。
柔らかく、耳の後ろをなぞったり、うなじをなぞったり、愛撫した。

道場でいつも真剣に俺を見つめ、指導を受けていた彼女の目が、真っ直ぐ前を見て、身体は固まっている。
つぶらな瞳だった。ショートヘアで、丸顔。
どちらかというと肉付きが良くて、俺の好みだった。
身長は156センチ。余り素質はなかったが、俺は丁寧に教えていた。

Mちゃんは、道場のほかの数名からも好かれていた。
笑顔が可愛い子だった。俺も彼女を可愛がっていたのだが、妹のような感じだった。
実は俺もその時大分酔っており、こんな状況になるのは予想していなかった。

躊躇する気持ちもあったが、彼女の胸のボタンを外し始めても抵抗されなかったことで、理性のたがが外れてしまった。
彼女は鳩胸だった。外見ほど乳房にボリュームはなかった。ブラの中に手を入れた。
固い乳房だった。

彼女は、「キャ・・・」と言いつつも首をすくめ、逆に胸を張り出すように背を反らせた。
上着を着せたまま、ブラを外した。
スカートをはかせたまま、太ももをなで回し、パンティの中に手を入れた。

Sさんほどではないが、濡れていた。パンティにしみができていた。
俺は彼女を抱きしめ、あちこちを触りまくった。
彼女はもだえながら「何もしないって、言ったじゃない・・・」
と俺に訴えた。俺は確かに、そういった。

俺の動きが止まった。「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ」
俺は謝った。今から思うと、何というばか正直。

彼女は、俺の手から逃れて、ふー、とため息をついた。
乱れた服を直すでもない。
最初、俺を彼女は見ようとしなかった。が、少しして視線が合った。
俺は軽くほほ笑んだ、彼女はにっこりして、視線をそらせた。

合意の合図と俺は取った。
彼女を抱き上げ、ベッドに運んだ。彼女は抵抗しなかった。
ベッドに横たわり、服を脱がされるままになっていた。

遂に彼女を全裸にした後、俺も裸になった。彼女は横を向いて、身体は上を向いていた。

俺の二人目の女性。
Sさんとの違いに目を見張った。Mちゃんは19歳。
身体は、Sさんに比べ固かった。Sさんは実に柔らかく、ただ今にして思えば、
身体の衰えから来る柔らかさだったと思う。

それに比して彼女の皮膚は、触れると弾き返されるような弾力があり、驚かされた。
体臭は少々きつかった。ほとんど匂いのないSさんに比し、わきの下などツンと来る匂いがあった。
俺も大分酔っていたのだろう。そのあたりの経過はよく覚えていない。

俺が触っても、なでても、彼女は歯を食いしばってじっとしていた。言葉をかけても反応しない。
ただ息遣いがあらかった。
彼女の秘所に指を伸ばしてびっくりした。

濡れてはいるのだが、入り口に何やらある。こりこりしているというか、変な感じだった。
Sさんには無い感じ。それが何だか分からなかった。

愛撫を続けたが、女性の身体は人によって随分違うものだと思わされた。
乳首にせよ、Sさんと彼女では大分違う。彼女の乳首は触れると一瞬にして堅くなり、ツンと立った。俺は乳首を吸い、ディープキスをする。彼女はされるがままだった。
遂に俺は彼女の両足を抱え込み、秘所に亀頭をあてがった。

両足を抱え込んだのは、彼女が両足を開こうとしなかったからだ。ツンと、亀頭を彼女にいれた。
彼女は「痛い!」といって、身体を反らせた。俺は、「落ち着いて、落ち着いて」と伝えながら、彼女をなで回し、彼女の尻が布団に着いたら再び少し挿入した。

すると直に「痛い!」と再び小声で叫び、腰を浮かせた。
もしかすると処女だったのだろうか。

俺達はそんな話をしたことが無かった。当然、処女だの童貞だの話題に上らなかった。

彼女をなだめ落ち着かせ、もう一度彼女が腰を下ろしたとき、俺は一瞬に息子を彼女の中に差し込んだ。
腰が浮かないように、正常位で腰で腰を押さえるようにした。

彼女は「ハー」と大きく息を吐き、動き始めた俺をとろんとした目で見つめ、再び視線をそらせた。

処女喪失の彼女は少々痛々しかった。抵抗はしない。ただし、一緒に楽しむこともしない。
ただ、じっとしていた。俺は終わることができなかった。

彼女に聞いた。「初めてだったの?」
彼女は頷いて、大粒の涙をぽろぽろこぼした。

シャワーを浴びに行った彼女は、「血が出ていたよ・・・・」と再び泣いた。

彼女は俺の胸にすがって泣いた。愛おしかった。

が、次の瞬間、俺は彼女を俺のからだから引き離し、再びインサートした。
今度はバックからだった。

バック、彼女は完全に脱力して布団に横になっているだけだった。
俺は少々腰を持ち上げ、そのまま挿入して彼女を背中から抱きしめた。
彼女には肘を立ててもらいたかった。そうすれば、胸を触りながらピストン運動ができる。

俺の好きな形だったが、彼女はそんな事わからない。
ただ、「イヤ、止めて、痛い、止めて、お願い」などと言葉を口にしていた。
それが言葉だけであると、俺には経験から分かった。

彼女は俺が動き続けている間中、「イヤ、止めて、お願い・・・」と言い続けていた。本当にイヤではないことは、濡れてきているので分かった。
俺が動くたびに、ネチョネチョ音がするようになってきた。

妄想の中で自分がレイプされているようにイメージし、濡れてきているようにも思えた。
そんな彼女の言葉に、俺のイメージもレイプに近づく。

酔っていたため、なかなか発射まで行かなかったが、それでも引き金が引かれるときが近づいた。
愛おしい彼女だが、犯しているという妄想も悪くはなかった。
彼女に無理やり上体を起こさせ、彼女の肘を立たせた。

俺は後ろから彼女を抱きしめ、羽交い締めにし、後ろから胸を両手でもみしだきつつ俺は動いた。彼女は俺に押さえつけられ、身動きができないまま目をつぶり、
「イヤ・・・止めて・・・痛い」とつぶやき続けた。

遂にトリガーが引かれた。俺は瞬時に息子を引き抜き、彼女の背に体液をぶちまけた。
いつまでも拍動が続き、自分でも驚くくらい大量の体液だった。

彼女の背にまかれた体液を、ティッシュでぬぐった。
俺の息子もぬぐったが、ティッシュは血でうっすら赤く染まった。

彼女は、虚脱状態で、ただ息荒く俺の横にいた。
「○○さん」彼女は俺を呼んだ。涙に潤んだ目で俺を見つめ、近づいてきて俺にキスした。可愛かった。本当に。
もう午前零時近かった。俺は彼女を帰してあげるつもりだった。

タクシーを呼ぼうかと思っていたが、その前に自宅に電話させた。
「もしもし、私。遅くなってごめんなさい。うん、・・・ちゃんの家にいるの。遅くなったから、泊ってゆくね」
向こうで母親が何かを言おうとしているのが分かったが、彼女は電話を切った。

そして、俺にしがみついてきた。俺は彼女の髪をなで続けた。
翌朝、もう一度俺は彼女を抱き、ホテルを後にした。

彼女は昨日までの、子供子供した雰囲気が取れており、俺はびっくりした。
一緒にレストランでモーニングを食べたが、落ち着いた雰囲気が出ており、しぐさにどことなく夫をいたわる妻のそれを漂わせていた。
Sさんがそんな雰囲気を出すと俺はゾッとしたが、Mちゃんのそんな雰囲気を俺は嬉しく思った。

俺は彼女を嫁にもらっても良いかな、とふと思った。
が、次の瞬間Sさんを思い出して、Sさんをどうしたら良いだろうと考え、途方に暮れた。

レストランの窓から朝日が入ってきて、柔らかく彼女の横顔を照らしていた。
幸福そうな、彼女。つぶらな瞳で俺を見つめ、視線が合うとすっと視線をそらせた。
俺はわざと彼女から外に視線をそらす。そして彼女が俺をしげしげと見つめるのを頬に感じていた。

一見幸せなひとときだったろう。
が、俺は幸福ではなかった。Sさんのこと、これから本格的に入らねばならないだろう。

司法試験に心が捕らわれていた。
友人達、真剣に受験を考えている仲間達は、わき目も振らずに勉強していた。

3年になった。
まだまだ先が長いと考えている人間は、結局合格できない。

今年こそ、今年こそと勉強している人間が、数年の努力の末合格してゆく。
残酷な試験だと思う。研究室の優秀な先輩が落ちる。

運の要素も絶対にあると思う。かと思えば、えっと思う人が合格したりする。
今となって思うのは、人間力の試験でもあったということだ。

俺の周りで合格したのは、頭の善し悪しもあったろうが、それよりも真っ直ぐに目標を見つめ、勤め励むことができたかどうかであると思う。
俺より頭が悪いと俺が思っていた人間が、合格した。
悔しいが、彼は精神的にほれぼれするような男振りであった。

俺は、あっちこっちにぶれる生活だった。
Mでバイトを行う。古武道の道場に通う。

それだけならばよい。SさんとMちゃんがいる。お互いがお互いを知らない。俺はそんな事、話していない。
バイトは極力減らした。が、辞めなかった。道場は月謝さえ払えば、ずっと休んでも構わない。

が、おれは週に二回は出かけた。Mちゃんがいるからだ。
道場からの帰り、俺は自転車。彼女は電車。

彼女を駅まで送ってゆく。2人きりになれることは滅多に無い。
何人かの道場生で話しながら帰ってゆくのだ。

Mちゃんは控えめな子だった。練習熱心で、優しかった。俺に熱い視線を投げ掛けることがあったが、他の道場生ともにこやかに話をしていた。
俺にはそんな彼女が好ましく、まぶしかった。

Sさんからは、しばしば電話があった。Mでの出来事など、とりとめもないことを話してくる。
聞いてもらいたいだけなのだろう。が、俺にはいまいましかった。

勉強時間が取られるから。だが、それは口実だったかもしれない。Sさんと余り話したくなかったのだ。
ならばMを辞めればよいのだが、そうはしなかったことに俺のずるさがある。

今から思い起こしても、自分の余りの能天気振りに地団駄踏む思いがする。
俺は、最善の道をとるならば、Sさんと別れて、Mちゃんを大切にしながら受験に全力を傾けるべきではなかったか。
仮に合格できなくても、合格できても、全力を尽くした充実感があったろうし、良い意味での別の人生が開けていただろう。

Sさんと別れなかったのは、Sさんが綺麗だったからだ。男子クルーが、Sさんの話をするのを、俺はしばしば聞いた。
「あの胸に顔を埋めてみたい」「そうだよな、色気あるよな」等々

俺がSさんを自由にしていることを皆知らない。Sさんの乱れた姿、身体の隅々を俺は知っている。云々。そこには愚かな優越感があった。
俺は浅はかだった。

恋愛をして、同時に不倫をして、日本一難しい試験に合格しようなど、できないことは少し考えれば分かることだ。
自分の自由になる肉体、そんなものはない。自由にしたならば、必ず何か見返りが出て行くことは、今になって分かる。

上手にやっている人間もいると思うが、それでも精神の迫力は薄まり、消えてゆく。これは恐ろしいことだと、今は分かる。
模擬試験の成績は、波が激しかった。どん底に落ちてみたり、合格圏をクリアしてみたり。
これは勉強不足に原因がある。知識が体系化されていないため、当たり外れが激しいのだ。

そこを先輩に指摘されながら、俺は何とか机にかじりついた。Mちゃんは俺の状況を理解してくれており、時々手紙をくれるだけだった。
語り合う時間も惜しいだろうから、ということだ。優しい子だった。合格を祈っていると、手紙の最後にいつも結んであった。

Sさんは、そうでなかった。電話をかけてくる。会いたいという。うるさいので、受験一月前に一度会った。
しばらくとりとめもない話をして、その後ホテルに入った。俺はバイトに入っておらず、金がないので、ホテル代は彼女に払ってもらった。

ホテルでは、おれはSさんに襲いかかった。もちろん、丁寧に優しく扱ったが、心の中では彼女に襲いかかりレイプするイメージだった。
「勝手なことばかり言って、俺の状況を全く分かってないじゃないか。今俺は大切な時期なんだ・・・」と心の中では思いつつ。

Sさんは、「会いたかったの、抱いて欲しかったの」と言いつつ、俺の頭をうめき声を上げながら抱きしめた。
俺は彼女を犯すようにして、3回射精した。3回目には激しい疲労感が俺を襲い、腹の辺りがむかむかした。
「私を愛してる?」「ああ」「本当に?」俺は頷いたが、内心の嫌悪感を押さえるのに苦労した。

受験が近づいた。俺は一日10時間以上勉強した。が、実質はそれほどでもなかった。
頭に、別のことがいつもあったからだ。Mちゃんのこと、Sさんとの関係が泥沼になりそうな気配を感じること。
夢中になって勉強してるときは良いが、ふと我に返ると、いつの間にかそんな事を考えていた。

受験が済んだ。合格発表まで、時間がある。きちんとしている受験生は、ここで手を抜かない。
が、俺はMちゃんとデートしたりし始めた。つくづく自分を馬鹿だと思う。

久し振りのデートに、彼女は嬉しそうだった。
俺も、彼女と道場で会うだけでは物足りなかったし、彼女と一緒にいられると思うと、わくわくした。
俺達は原宿に行った。そして、代々木公園や明治神宮を散歩しながら、色々話をした。

俺達のことを、彼女と仲の良い女子道場生はもう知っているという。俺は別に不快ではなかった。
これからは、もっと堂々と恋人同士という感じで歩けるな、と思った。

並んで歩くだけで、どうしてこんなに幸福になれるのだろうか、充実した時間なのだろうか。
色々なお店を冷やかしながら、時には小さな買い物をしながら、彼女は嬉しそうだった。
そんな彼女を見ているだけで、俺も嬉しかった。
短答式試験が終わったという解放感もあっただろう。

いつしか彼女と俺は腕を組み、彼女の胸の感触を肘に楽しみながら、歩いていた。
彼女も、胸を俺の肘に押し付けてきた。ふとしたことで、肘をぎゅっと胸に押し付ける。
もう少し密着して歩きたかったが、そうすると歩けなくなる。

夕食は渋谷だった。渋谷まで歩いてきていた。俺の初体験の場所だ。
Sさんと歩いて、ある程度勝手の分かっているところは、ここしかなかった。
夕食を済ませ、軽くお酒を飲んで、俺は彼女と歩き始めた。

それまでのたわいもない話が途切れがちになり、彼女の目は真剣になった。
ホテル街に入ったのだ。彼女の腕に力が入った。

見ると一件の小奇麗な門のホテルがあった。俺は、彼女の髪をなで、「入ろうか?」とささやいた。
彼女は、黙っていた。

俺がホテルの門をくぐると、彼女は俺の腕を放し、門の外に立っている。
「どうしたの、おいで」と声をかけると、彼女は俺の腕をむんずと掴んで、外に連れ出した。

そして、黙って速足に歩き始めた。俺は引きずられるように付いて行った。
俺は、このまま駅に向かって歩いていっても良いと思った。が、彼女は別方向に歩いていた。

彼女はふと、立ち止まった。少々息が荒い。少し先に別のホテルの門があった。
腕を組んだまま、俺は彼女の腰に手を伸ばし、彼女の身体を俺の身体の側面に柔らかく固定した。

歩きつつ、ホテルの門の前を通った。彼女の目を俺は見たが、硬い表情で、一瞬俺の目を見て、また視線をそらせた。
俺は優しく方向をホテルの門に向けた。彼女は身体を固くし、逆らう様子を見せたが、俺の意志が固いのを見てか、もう逆らおうとしなかった。

初夜の時よりも、彼女は遥かに緊張していた。
部屋に入り、彼女にシャワーを浴びるように伝えた。

俺は彼女が愛おしかった。ホテルの中なのに、俺の息子は余り元気がなかった。息子は正直で、彼女を単なる性欲の対象として見ていないのだ。
俺は自分のこんな反応が、驚きであった。
彼女を抱かずに帰っても良いかな、と俺は思った。

彼女はバスからなかなか出てこなかった。そこで俺は裸になり、バスに入った。
Mちゃんはバスの中に浸かって背中を向けていた。俺は彼女に近づき、背中に優しくお湯をかけてあげた。

彼女は俺に背中を向けながら、しくしく泣いていた。「どうしたの、哀しいの?」彼女は顔を左右に振った。「恥ずかしいよう・・・・」
蚊の鳴くような声だった。

俺は彼女の顎に手をかけて、顔をあげさせた。涙で頬が濡れている。俺は、彼女に優しく口づけした。長い長いキスだった。
キスの後、2人は見つめあった。彼女は涙に潤んだ目でぎごちなくほほ笑んだ。

彼女を先にバスから出して、俺は入念にシャワーを浴びた。
俺がバスから上がると、彼女はベッドに一人横になっていた。

下を向いて、眠るでなく、俺を見つめるでなく、半眼で横になっていた。
布団をはぐと、彼女は浴衣を着ていた。パンティーも、ブラも付けていた。

俺が彼女を愛撫する。浴衣をたくし上げ、パンティを見ると、あそこにしみができていた。
太ももからお尻に向けて愛撫を繰り返す、小さなしみははっきりと濡れに変わってゆく。
身体を起こし、上を向かせる。ブラを外し、浴衣の前を開き、パンティを脱がせた。

彼女は今にも泣きそうに見えた。唇が震えつつ、ヘの字になっている。
彼女の肉体を眺め、俺は触り始めた。張りのある肌。鳩胸なので、乳房はそれほど大きくない。
彼女の乳房を優しく触り、乳首をつまむ。もう一方の乳首は口に含み、舌で押し付けるようにしてなめ回した。

彼女にとって前回は、酒の勢いがあったのだろう。今回は酒が入ってはいたが、ごく少量だった。
「私は禁酒しようと思うの」と彼女は言っていたのだが、無理に少々飲ませてしまったのだが。

うっすら汗をかいた彼女の肌を俺はなで回し、舐めた。
そして、彼女自身に手を伸ばした。

前回は、酔いも入っており、形状などはっきりと意識せずにインサートしてしまったが、今回はじっくりと触ってみた。
Sさんのそれと比べる。随分個人個人で違うものだと思った。

Sさんは毛が薄く、クリトリスも小さかった。入り口も肛門寄りだったが、Mちゃんはクリトリスが大きく、小陰唇も小さかった。なぜ小さいのかと不思議だった。
それは、彼女がいわゆる上付きだったからだろう。

俺は彼女のあそこをじっくり眺めたわけじゃない。あの時代にはAVなど無かったし、その意味でテクニックを学ぶことが難しかった。俺はSさんから教えてもらったものしかない。

Sさんの反応を見ながら、みようみまねで学んでゆくしかなかった。
Sさんは俺自身を舐めたり、自分のものを舐めてもらうなど好まなかった。
俺も当然そんなものだろうと思っていた。

あそこの形状について書き込めるのは、ほとんど全て指で感じたことだけだ。
Mちゃんは、息を荒く弾ませていた。胸が大きく波打っている。
俺が彼女のあそこに指を伸ばしたとき、彼女は両足をぴったりとくっつけた。

「恥ずかしいの?」俺が聞くと、彼女はこっくりと頷く。
「大丈夫だから、力を抜いてごらん」俺は優しく誘導した。
彼女はおずおずと力を抜くが、抜ききれない。

「イヤなの?」彼女はかぶりを振る。が、なかなか力が抜けない。無理強いすることもできない。
そっと両足を広げようとしても、力が入ってしまうので、片足だけをゆっくりと外側に広げた。

「愛しているよ」と俺が言うと、彼女は無言で俺を見つめる。つぶらな目には涙が溜まっていた。

片足も一定角度以上には開かない。それ以上だと力が入る。ちょっと無理な体勢かな、と思った。
俺はそれでも彼女に身体を重ねた。それからSさんと同じあたりに息子自身を押し付けたが、無い。

下にずらすと、肛門になってしまう。「変だな」と思ったが、今度はずっと亀頭を上げてみた。すると、予想よりずっと上の方で俺自身が彼女の中に滑り込んだ。
彼女の足は片足が伸び切り、もう片足がかすかに開いている。それでもインサートできた。

俺がゆっくり動くと、彼女は「はー」と息を吐いた。
俺がゆっくり動くたびに、彼女の身体のこわばりはほぐれていった。

足もきれいに左右に開いた。彼女は感じるまでには至らない。
充分濡れてはいるけれど、息を弾ませてはいるけれど、それだけだった。

「痛む?」ときくと、かすかに「うん」と言う。

俺は彼女をいたわりつつ動き、発射した。膣外射精だった。
俺は彼女のお腹の精液をぬぐい、彼女のあそこもティッシュでぬぐった。
彼女は俺にしがみついてから唇を近づけてきて、俺の唇に押し当てた。
ほてった彼女の肌が暖かく心地よく、俺は彼女を愛おしく思った。

この頃の毎日の生活は、単調だった。月曜から金曜まで、大学に行き授業の無いときは研究室に入り浸る。とにかく一瞬一瞬が大切だった。短答式の結果は出ていなかったが、
論文の勉強を始めねばならなかった。民事訴訟法、財政学、破産法など、学ぶべき事柄は山程あった。

土曜日曜はMにバイトに入った。俺はオープニングのトレーナーだったので、朝6時半には店に入り、オープニングに合わせるために秒単位の仕事にとりかかる。
手順がきちんと行くと、一秒の無駄もなく幾つかの作業を同時並行して進めることができ、それでなければオープンには間に合わない。8時間目一杯仕事をした後、道場に向かう。
道場で3時間の稽古を行い、その頃には肉体的にくたくたになっている。

俺の心中では、Mちゃんがメインで、Sさんはただの都合の良い女性に過ぎなかった。
Sさんとはバイトで出会うが、話を交わすのはクルーのいる中だったので、ありきたりの事柄だけだった。

平日は俺が忙しくしていることをSさんも分かっていたので、無茶は言ってこなかった。ただ、電話は結構かかってきていた。俺がつめたくなったと思っているようで、そんな不安感を訴えてきたこともあった。俺は、そんな事はないと丁寧に伝えたが、心中どきりとさせられた。

短答式の結果が出た。俺は駄目だった。研究室では何人も合格していた。とりわけ、俺の友人が合格していたことが俺にはショックだった。
彼は、余り頭が良いとは俺には思えなかった。が、熱心に勉強していた。視線が真っ直ぐで、俺にはまぶしく思えることのある友人だった。
彼はその年は論文で落ちたが、一年浪人して合格し、今は裁判官をしている。

Sさんが残念会をしようと、食事に招待してくれた。彼女の自宅である。俺は気が進まなかったが、無理やりといった感じで呼ばれていった。
ご主人はいなかったが、子供達がいた。37歳の、独身と言っても不思議の無い彼女に、17歳の堂々たる兄妹がいるとは、信じられなかった。

特に妹は、Sさん似の丸顔で、整った顔立ちだった。洒落っ気はないが、もてるだろうと思った。実際蒼らしい。
話の中で、受験の話になった。2人とも優秀で、兄などは俺の高校時代よりずっとできるだろう。話は随分盛り上がり、細かい受験のノウハウにまで話が行った。

話のついでのように「Hさんに家庭教師をしていただいたらどお?」Sさんが2人に聞く。
2人はまんざらでもなさそうだったが、俺は断った。受験生にそんな余裕はない。
Sさんは「そう、残念ね」と、俺を軽くにらみつけた。

お宅をおいとました後、夜風に当たりながら軽くワインの酔いが回った頭で考えた。
その時ピンと来たのが、Sさんの意図だった。我ながら鈍いと思う。

家庭教師になれば、いつでも家に行けるし、その気になれば・・・・ということだろう。
俺にとっても都合の良い話ではあったろうが、俺は再びぞっとした。
Mちゃんのためにも、早くSさんと手を切らねばならないと、その時思った。

俺は、バイトを辞めることにした。マネージャーにその旨伝え、クルー仲間にも挨拶した。
辞めるとなったらあっさりしたものだ。休憩室を後にして、もうここに来ることはあるまいと思った。
その夜、Sさんから電話があった。怒ったような声だった。実際、彼女は怒っていたのだ。

「Mを辞めたのね」
「うん、そう」
「何故、ひとことも相談してくれなかったの?」
「ごめんね、反対されると思ったし、勉強が忙しいんだ」
「もう、余り会えなくなるじゃないの!」
「電話で話せるじゃないか。いつでも会えるさ」
「電話だけじゃ、寂しいわ」
「僕も我慢しているのだから、Sさんも我慢してくれないかな」

等々会話が続く。文字にすると大した事無いが、語気は荒く、ほとんど喧嘩腰だった。

「今度アパートに行くわ、電話だけじゃ、話にならないから」
「ちょっと待って、僕が忙しいのは、分かっているだろう?アパートには夜にならないと帰らないよ」
「別に、かまいやしないわ」

困るのは俺なんだけども、と思いつつも・・・・

「ご主人や、子供達にはどうするの?」
「あなたには関係ないでしょ」
ガチャン。

俺は、研究室が閉まるギリギリまで粘っていた。自宅やアパートでは、上手く勉強できないのだ。
アパートに帰るのは、夜9時過ぎが普通だった。

真っ暗な道をとぼとぼと歩いてアパートに向かう。寂しげな感じがするが、俺はこういうの嫌いではなかった。
ただ、今回は流石に気が重かった。アパートの前にSさんがいるのではないか、などと考えてしまう。

数日後、俺はアパートで民事訴訟法の勉強をしていた。
忘れもしない、三ヶ月章著の基本書を読んでいたところだった。
三ヶ月先生のこの本は、僕が一番好きな基本書だった。行間に熱気がこもっている。

夜の10時過ぎだった。ドアがノックされた。
俺は弟だと思ってドアを開けた。弟は獣医学部に今年から入学し、時々アパートを訪ねてきていたからだ。

立っていたのはSさんだった。
「やあ」と俺は彼女を招き入れた。俺の顔は少々こわばっていたかもしれない。

彼女はツンとした雰囲気で部屋に入ってきた。それから机の上の本や資料を見つめ、

「お勉強?」
「見れば分かるだろう、そうだよ」
「お邪魔かしら・・・」

邪魔だよと言いたいがぐっと堪えて、俺は、「紅茶でも入れようか」いつもは手伝ってくれるのだが、俺の姿を冷ややかに見ている。

紅茶を入れ、有り合わせのクッキーなどを皿に入れ、テーブルに置いた。
本や資料を崩さないように移動させ、彼女と向かい合っておれは座った。

「ご主人や子供達は?」
「知らないわ、あなたには関係ないでしょ」

最初から戦闘モードであるのに、俺は理不尽さを感じていた。何故Mを辞めただけでこれだけ不機嫌になられなければならないのか。
別れ話は未だおくびにも出していないのに・・・

この状態で、別れ話を切り出すことはできない。何が起こるか分からない。
まず、俺はSさんを落ち着かせるために、じっくり話を聞くことにした。俺が感情的になってはいけない。

彼女は、ぷんぷんしながらも、紅茶に口をつけた。俺のとっておきのアップルティーだった。
とても香りが良い。

既に夜10時を回っている。主婦がこんな時間に、男のアパートにいるなんてどうしても不自然だ。
俺はご主人とは面識が無いが、子供達とは一飯の義理というか、親しみがある。
一体どうするつもりなのだろうか。

「私が嫌いになったのね」としばらくして切り出す。いきなり結論モードだ。

「一体どうしたのさ。ご主人や子供達は、どうしたの?」
「あなたには関係ないと言っているでしょう! それより質問に答えてよ」
「・・・嫌いになったわけじゃないさ。ただ、忙しいし、俺は疲れているんだよ」

我ながら優柔不断だと思う。

しばらく押し問答が続く。彼女の思い込みは強く、それは恐らく女性の直感力だ。
そしてそれは事実でもあるのだが、俺はこの場を上手く丸め込みたいと思ってしまった。

結論は出ているのだが、修羅場の先送りをしたわけだ。

今になって分かることがある。Sさんは、3人姉妹の末っ子で、両親から溺愛されて育ったらしい。実家はそれなりの家庭であった。
意のままにならないことがあると、ヘソを曲げる傾向がある末っ子だ。

要領は良いが、波風に弱い。俺は5人の子持ちなので、子育ての過程で気付いたことだ。実例はイヤというほどある。
また、仕事や勉強時のの聡明さや忍耐力は、必ずしも人生でのそれには結びつかない。

要は、ちやほやされて育ち、仕事でもそれなりに評価されているわがまま娘が、意のままにならない相手に腹を立てたというだけのことだ。。
ただそれは今になって分かることで、その時は彼女の反応の不思議さとどぎまぎで、俺も普通ではいられなかった。

「黙ってMを辞めたのは悪かったよ。そう怒らないで」

本当は、何故怒るのかと聞きたかったのだが、火に油を注ぎそうなので止めておいた。
やがて話はとんでもない方向へ飛んでゆく。

「あなたはいつも、私のことを愛しているって言ってくれたじゃない」

それはそうだ、セックスの時、彼女は言葉の愛撫を好んだし、「愛している」と言ってくれと、何度も俺にせがんだのは彼女の方だ。

「言ったよ」
「それは嘘だったの?」
「・・・いや、本当にそう思っていた」
「だったら何故、もっと一緒にいてくれないの?」

おいおい・・・・
彼女の眼差しは真剣そのものだった。

「ねえ、俺は学生だよ。しかも受験生だ。海のものとも山のものとも分からない、若造だよ。Sさんを好きでも、幸せにしたりすることもできないし、申し訳ないよ」
「そんな事、気にしなくても良いの。私が面倒を見てあげるから。」

俺の背筋に悪寒が走った。

「私、あなたの愛に応えなくっちゃいけないかなと、この頃思うようになっていたの。」

俺は絶句した。

「ご主人は、子供達はどうするの。○○君、○○ちゃんが悲しむよ。ねえ、一体どうしたんだい。家庭を壊したくないといっていたのはSさんの方じゃないか」

彼女は返事をしなかった。

都合よく肉体だけを楽しめる女性だと俺が勝手に思っていたSさんだったが、そうではなかったことがはっきりした。
抱くというのは肉体のことだけにとどまらず、精神も一緒に抱くということなのだと骨身に染みて分かった。

因に、この時の経験がもとで、俺は結婚してから18年間、浮気は一度もしていない。
相手にするとしたら、プロと心に決めている。

俺は冷たい汗をかいていた。運動の心地よい汗しか知らなかった俺は、冷や汗というものが本当にあることを知った。
混乱していた俺だが、ここでの対応を間違えると、俺は人生を過つということだけは分かった。

Mちゃんをどうしようか。Sさんは真剣だ。
「そこまで思っていてくれて、ありがとう」俺の精一杯の演技だ。

俺の目の前に、Sさんの肉体がある。豊かに盛り上がった胸。細い腰。
先日まで、俺が自由にできていた身体だ。小振りだが整った顔つき。目が俺を見つめている。

紅茶が冷めてしまっている。俺は席を外し、ヤカンに水を入れ、間を取った。
落ち着け、落ち着けと俺は自分に言い聞かせた。

お湯が沸くまで時間がかかる。今まで俺と彼女は対座して座っていたが、俺は彼女の隣に座った。
対座だと、対立関係になりがちだ。隣に座って、お互いの体温が感じられるくらいの距離に身体を置く。

「哀しい思いをさせてしまったみたいだね。ごめんね」
「知らない!!!」

しばらくお互いに無言。お湯が湧き始めた。
「私が入れるわ。」勝手知ったる調子で、紅茶のお替わりを彼女が入れてくれる。

ポットにカップ4杯分くらいの紅茶ができ上がった。
もう夜11時を過ぎていた。が、彼女は帰ると言い出さない。

お互いに無言のひとときが続いた。

俺は、今までの経過を反芻したのだが、段々むかむかしてきた。
セックスの時の、女に誘導された男の言葉を真に受けて、愛されていると思い込んでいたなんて、何て馬鹿なんだろうか。
それとも、理屈にならない感情に流されてここまで来ているのか。

何れにせよ、ほとんど子供だ。子供じみていると自分で分かってやっているのなら、コンチクショウである。
急に荒々しい激情が俺を襲った。俺は彼女の腕を荒っぽく掴んだ。

彼女ははっとした目で俺を見つめる。次の瞬間、ギラリと挑発的な視線に変わった。
俺は彼女の視線から敵意に近いものを感じ、敵意に対して敵意で答える衝動が俺のうちに沸き上がった。
俺は間髪をおかず、彼女を畳の上に押し倒した。

お互いに声は出さない。ただ、押し倒されてバタバタと彼女は暴れていた。
動きは大きくはないが、力は今までに経験したことが無い程で、彼女は全力を出していたと思う。
俺の目は血走っていただろうか、と今では思う。

彼女は俺の両手を何とか止めようと、手を使って防いでいた。が、所詮女の力である。
難しいのは、服を破かないようにすることだった。彼女の両手を動かなくするために、彼女にバンザイ型を取らせて、両手首を片手で押さえた。
柔術の呼吸である。そのまま空いている片手で服のボタンを外して行った。暴れる彼女のボタンを外すのは、結構難しかった。胸のボタンが外れた。

「イヤ、止めて、ヤダ」と荒い呼吸に合わせてかすかな声が聞こえる。
彼女に掴まれている痛みはほとんど無いはずだ。痣もできないだろう。その意味で、俺は細心の注意を払っていた。

ボタンの外れたシャツの間から、豊かな胸がのぞいている。今まで何度も愛撫した胸だったが、このような状況で見ると、改めて興奮を誘う胸だった。
シャツの間に手を入れて、ブラの上から胸を揉んだ。彼女は益々「ウグ、ウグ」とノドにこもった声を出しながら、暴れた。

次に俺は彼女にのし掛かり、自分の胴体で跳ね回る彼女の身体を押さえつけた。
上手くいった。次に俺は片足を彼女の股の間に差し込んで、足を広げさせた。

さらさらした生地のスカートだった。俺はさっとスカートをまくり上げ、ストッキングに手をかけた。
手がかかった瞬間に、俺はストッキングを引き下ろした。これも柔術の技をかけるときの呼吸だ。

敵がはっとして防御体制をとる一瞬前に、技をかけてしまう。
ストッキングを全部一度に引き下ろすことはできない。

尻の部分をむき出しにしただけだった。が、ここが外れては彼女は元に戻せない。
彼女の両手は俺が利かなくさせていたからだ。ここから俺はバタバタする足から、じわじわとストッキングを脱がせていった。

俺も片手なので、膝近くまでしか脱がせられない。俺はそこで体を一瞬入れ替えて彼女に馬乗りになり、両手でパンティーごとストッキングをはぎ取った。
彼女は一瞬両手が自由になったが、なす術もなかった。バタバタと俺の背中を叩いただけだった。痛くも何ともない。

俺は一瞬だったがはっきり見た。彼女のあそこがヌルヌルに濡れているのを。

俺が体を外すと、彼女はスカートを下ろしてあそこを隠そうとした。
俺はズボンとパンツを脱ぎ捨て、起き上がろうとする彼女を後ろから羽交い締めにし、胸を揉んだ。
俺の両足は、彼女の腰と足に絡みつき、身動きをとれなくさせていた。

彼女が身体をエビのように前後に動かすたび、俺の手と足は彼女にしっかりと絡みつく。

「ひいっ、むぐ・・・」と彼女は荒い呼吸とともにうめき声ともつかない声を上げた。
「イヤ、イヤ、止めて」と辛うじて言いながら、抵抗するが段々抵抗は弱まっていった。

スカートをたくしあげ、素肌の彼女の下半身に足を絡み付けた。
体を入れ替え、俺の太ももが彼女の股間を押さえつける。俺の太ももが彼女の愛液でぐっしょり濡れる。

そのまま彼女を俺の身体で押さえつけながら、俺は身体を沈めていった。亀頭にヌルッとした感触を感じたと思ったら、あっという間に俺の息子は彼女の体内に沈み込んだ。

俺は動かずに、彼女の身体を押さえつけていた。バタバタ暴れる動きは、止まった。
彼女は横を向いたまま、激しく呼吸していた。俺は生意気な彼女を制圧したように思った。

彼女の表情を見つめる。最初はきつい目だったが、段々とろんとした目に変わっていった。
俺はおもむろに動き始めた。彼女は「あ、あ・・・」と言いながら乱れ始めた。

いつもの彼女だった。2人とも上半身は服を着ており、下半身だけで交わっている。その状況が、何故か刺激的だった。
彼女は「好き、好き」とうわごとのように言い始める。

「ね、出して、お願い」

俺は、なるようになれと思ってしまった。Sさんはゴムが嫌いで、俺はいつも生の外出しだった。
が、今度は彼女をむちゃくちゃにしてやりたいという衝動を、俺は抑えられなかった。

「犯してやる、懲らしめてやる」と、激しく彼女の中で動き、俺はめくるめく快感の中、彼女の体内に発射した。初めての中出しだった。

ぐったりした彼女から俺は離れ、一人でシャワーを浴びようとした。
ペニスの先から、糸が引かれ、彼女自身につながっていた。

畳の上は、じゃりじゃりした感じだ。彼女をそのままにしておくのも可哀想なので、俺は布団を敷いてそこに彼女を移した。
俺はシャワーを浴びながら、「やっちゃった、まずい」と深い後悔にさいなまれた。

Mちゃんのことなど、すっかり忘れていた。射精の瞬間、欲望から開放された理性が、元に戻ることがある。
俺は、一体何ということをしてしまったのか。
俺はペニスをきれいに洗った。ヌルヌルした感じがなかなか取れないように思われた。

シャワーから出て、身体を拭きながら、未だにぐったりしているSさんに「シャワーを浴びておいで」と勧めた。

彼女はのろのろと起き上がり、シャワーを浴びに行った。服をぞんざいに脱ぎ捨て、ふらふらしながら。
俺は、こうなった手前彼女に帰るようにも言えず、布団をかぶって寝ようとした。

布団に入るやいなや、俺は激しい疲労を感じ、すぐに夢うつつになった。
夢うつつのまま、彼女が裸のまま俺の隣に入ってきて、俺の腕をしっかりと抱きしめて眠りに入るのを当たり前のことのように錯覚しながら、俺も眠りについた。

あれは夢だったのだろうかと思うことがある。ほとんど夢の中だった。
俺が眠っている間、Sさんが柔らかい身体を押し付けてきて、何度も俺に口づけをしたこと。

俺の乳首をなめたり、俺の胸に頭を載せて、心臓の鼓動に聞き入っていたこと。
明け方、息子に感じる快感で俺はうっすらと夢の世界から抜け出した。

彼女が、柔らかく俺の息子をなで回している。朝立ちもあり、息子は痛いほど反りかえっていた。
彼女は俺にほおずりをして、やがて俺の身体の上に自分の身体を乗せた。

柔らかく、暖かく湿った感じを息子に感じたと思うと、彼女は俺の上で腰を振り始めた。
彼女は口づけをしながら交わるのを好んだ。今回もキスを俺にし続けながら、段々息が荒くなっていった。
俺は快感に身を委ねた。なるようになれという捨て鉢な気持ちが、心を占めていた。

「起きた?」俺は頷いた。「私のこと、好き?」俺は頷く。

「愛している?」
「ああ・・・」
「気持ちいい、気持ちいいの・・・」

彼女は言いつつ、俺にしがみつきながら腰を前後に振り続ける。

昨夜出ていたはずなのに、又しても引き金に指がかかった。俺は彼女の腰を誘導し、益々早く動かすようにした。
「う、うん・・」俺はうめきながら、彼女の体内に発射した。二度目である。

二度目が終わっても、俺の息子は元気だった。今度は彼女を下に組み伏せ、抜かないで俺は動き始めた。
三度目だから時間がかかった。俺は激しく動き、彼女の蜜壺を所かまわず突きまくり、こねくり回した。

彼女はヒーヒー声を上げていた。
三度目も彼女の体内に発射した。

彼女のうちから流れ出すドロリとした俺の体液を、俺は不思議な気持ちで眺めた。
「イヤね、何を見ているの?」彼女は俺に背中を向け、ティッシュで股の間をぬぐった。

シャワーを浴びてきた彼女は、再び裸のまま俺の横に横たわった。
俺は彼女の胸を、乳首をいじる。舐める。彼女は俺にされるがままになっていた。

又しても俺の息子がむくむくと起き上がってきた。彼女は、「すごいのね」と言いつつ、俺自身を自分の中に誘導する。
彼女は充分に潤っていた。

おれはもう一度、彼女の中に体液を放出した。4回目の後の俺は、エネルギーが抜けきった後の気だるい気持ち悪さを感じていた。
未だ明け方の5時であった。

コトコトという音で俺は目を覚ました。俺は全裸だった。いつの間にか、再び眠り込んでしまったようだった。

彼女がまな板で、トマトとキュウリを切っている音だった。
お湯がちんちん湧いている。朝日がカーテンのすき間から差し込んできていた。
良い天気らしい。彼女はいそいそと朝食を作っている。

「起きた? 何もないのね。あるものだけで作ったわ」
トースト、チーズ、コーヒーにトマト、キュウリ、レタスのサラダ。
小さなテーブルに、彼女はてきぱきとそれらを並べた。

同時並行で仕事を進め、でき上がる時間はほぼ同じ。流石に仕事ができる女性だ。俺は変なところで感心した。
彼女は真っ直ぐに俺を見つめてくる。俺は、視線をそらし気味になる。

「嬉しかったわ」と、彼女が言った。「そう?」と俺はあいまいに答えた。
「もう、行かなくっちゃ。授業があるんだ」
「食べてゆかないの?」
俺は、トーストをコーヒーで流し込み、手早く朝食を済ませた。

「ね、合い鍵を頂戴」
「残念だけど、今は手元に無いんだ」
「じゃあ、私が作るから、あなたの鍵を預かるわ」
「イヤ、俺が作るよ」

彼女はここにいるつもりなのか。突っ走り過ぎではないのか。俺達は不倫の仲なんだ。

射精しすぎた疲労からか、禁断の道に踏み込み、人生を狂わせてしまったという後悔からか、俺は吐き気が止まらなかった。
第1、中出ししている。妊娠したらどうするのか。以前読んだことのある「青春の蹉跌」と同じ筋書きじゃないか・・・・

俺は主張した。
「とにかく、一度お家に帰るんだ。良いね。合い鍵は用意しておくから、電話で連絡を取り合えばいい」
彼女はかぶりを振った。「イヤ」

普段、聡明で仕事のできる彼女が、どうしてこんなになってしまうのか、俺には理解できかねた。
まるで駄々っ子である。どうして俺の言うことが理解できないのか。
頭で分かっても、感情が納得しないのか。

女はわからないとつくづく思う。女房や子供を見ても、そう思う。小学生までは分かりやすい娘達だが、思春期を迎えると突然変貌を遂げる。
あんなに父親に甘えかかっていた子供が、中学高学年にもなると突然「お父さんて不潔」となる。
分からんと女房に言うと、「男と女は別人種なのよ・・・」と意味あり気だ。が、これはずっと後の話。

とにかく、俺は彼女を家に帰した。彼女が無断外泊をどうやって護摩化したのか、それは未だに分からない。
説得に時間をかけたので授業には出られず、やり切れなかった。勉強どころではなかった。

中出ししたのも恐怖だった。俺はSさんに初体験と二度目に中出ししている。が、それは幸いに命中しなかった。
彼女が出してといったので、出したのだが、それからは膣外射精に決めていた。

今回は4回連続で中出ししている。彼女が妊娠したら、俺は死のうかと思ったりした。バカは死ななきゃ直らないとはよく言ったものだ。
Mちゃんには申し訳が立たない。俺は泣きたかった。まさしく勉強どころではなかった。

Mちゃんに連絡を入れた。会いたかった。無性に。
俺は駅のホームで彼女と待ちあわせ、彼女は夜だったけれど、家の人を護摩化して出てきてくれた。

俺の姿を見つけると、にっこり笑って小走りに駆けてくる。
可愛らしかった。清潔な、清楚な感じ。それに対してドロドロに汚れた俺。

Sさんを説得しているうちに分かったことがある。
ご主人の浮気がお盛んだったのだ。夫婦仲は、冷えていた。あんなに俺と寝ると乱れるSさんだが、ご主人とのセックスは好きでないと言う。

ご主人とSさんは約束していたという。お互いに干渉しないと。それをSさんは律義に守り、ご主人にクレームを付けなかった。
だから、Sさんもご主人に干渉させないと言っていた。俺の存在はご主人も知っている。そして、深い中になっていることもご主人は知っていたのかもしれないと今では思う。

だが、進んでいる理解しあっている夫婦のように見えて、実際はそうでなかったのだろう。
Sさんは俺に「さびしかったのよ」とぽつんと言ったことがある。
その反動が俺との関係で出たのかもしれない。

夫婦間は、お互いの信頼の上に成り立つものだろうし、それは相手が絶対に浮気しないという信頼に立つものと今では思う。
俺はこの失敗で、多くのことを学ばせてもらった。

その週は、勉強にならなかった。勉強なんかできる状態ではなかった。
一週間ちょっとで、4回Mちゃんとデートした。酒も飲んだ。

Mちゃんは驚いていたが、それでも嬉しそうだった。随分俺の勉強に気兼ねして、我慢していたことを知った。
Sさんと一緒にいると、情が移ることもある。が、Mちゃんと一緒にいると彼女を選ぼうという気持ちになる。そして、Sさんのことを考えると気が重くなった。

Mちゃんを2回抱いた。処女が開発されてゆくプロセスを、見ることができた。
はじめは、反応も見せなかった彼女だが、その内にインサートされると感じるようになってきた。

蜜坪をこねくり回されるのが好きだった。「あ、あ、あ」「アン、アン、アン」と声を上げ、俺にしがみついてくるようになった。
俺はアパートへの帰宅をわざと遅らせ気味にした。研究室に行っても、勉強どころではない。ただ、机に座るだけで、ぼんやり本の活字に目を落とすことができるだけだった。
短答式に合格した人達は、夢中になって勉強していた。論文試験が近づいていた。

研究室のメンバーは、合格者が最終合格に至れるよう助けることになっている。色々な雑用が会ったが、俺はそんな気になれなかった。
だからといって、早く帰るのは恐かった。俺はぐずぐず時間を潰した。
アパートのドアに、手紙が挟まっている。Sさんからのものだ。

丸っこい、少女じみた字だ。クルーノートでしばしば見ていたあの字。
中には合鍵のこと、会えなくて寂しいこと、その他色々書いてある。

俺の誠意を疑うようなことも書いてあったが、今となってははっきり思い出せない。
手紙には切手が張ってなかった。彼女が来て、挟んでいったのだ。

俺は手紙をくしゃくしゃに丸めた。
頭の中を、どうでもよい考えがグルグル回る。

SさんとMちゃんとのこと、俺を信じきっているMちゃん。Sさんも俺との愛を確認できたと思っている。
俺が傷つかず、何とかSさんと別れる手はないものだろうかと、頭をひねった。が、所詮それは無理だ。

アパートを引き払おうか。だが、彼女は俺の実家の場所も電話番号も知っている。
彼女は俺の履歴書の内容など先刻ご承知だ。

もしもSさんが妊娠していたらどうしよう。Sさんからの手紙に、思わせぶりなことも書いてあった。愛の実とか何とか、妊娠と取れなくもないあいまいな言葉。
俺は、氣がおかしくなりそうだった。胃もおかしかった。

何を食べても胃にもたれた。俺は身長177センチ体重70キロで、筋肉質で幾ら食べても太らない体質だった。
が、この2週間余り食べられず、俺はどんどん痩せていった。

実はこの辺りの時間、日にちの感覚がどうも思い出せない。日記もつけていなかった。
思い出したくないことを、不安を確認する作業になる、日記とは。
高一から付け続けていた日記が、この辺りでごっそり欠けている。

合鍵をSさんに渡すしかなかった。彼女は何度も電話をかけてきた。
大家さんは不機嫌になる。一々俺の部屋に電話の取り次ぎに来るのだから。俺は申し訳なさそうに大家さんに頭を下げて、電話に出るとSさんなのだ。

遂に俺は合鍵をSさんに渡した。彼女は俺の部屋に自由に出入りできるようになった。
俺はSさんを抱いたことで、彼女の要求を突っぱねるきっかけを失ったのだ。

あの場合、一回目はほとんどレイプであった。が、彼女にかかると愛の確認の行為になってしまう。
ほとんど馬鹿だとしか、俺には思えなかった。彼女は一途に俺を誤解して、感情に任せておれに迫り、遂に合鍵を手に入れたわけだ。

あの時の彼女の笑みを俺は忘れない。アパートに来てもらいたくはなかったので、彼女と別のところで待ち合わせた。
喫茶店に入り、コーヒーを飲みながらよもやま話をした。

「痩せたんじゃない? 身体は大丈夫なの?」 誰のせいだと思いつつも、俺は笑顔で応える。

「ああ、平気だよ。疲れが溜まっているんだと思うんだ」
「そうなの? だと良いけど。どこかでゆっくり休んでゆく?」
彼女は上体を少しくねらせた。

俺は、嫌悪感を覚えつつも「イヤ、いいんだ」
合鍵の話が出てこなければよいがという淡い期待を持ちつつも、この場から早く離れたいとも思った。

「ところでSさんの体調はどお? 元気そうだけど」

彼女はほほ笑み、

「私は大丈夫、でも、身体は大切にしなくっちゃね、自分だけのものじゃないんだから」

俺は青ざめた。相当な衝撃であった。ガーンという効果音の意味がわかった。

本当はこの時点では、妊娠しているかどうかなど分からない。2、3ヶ月生理がなかったら、その時調べることになるのだが、そんな知識俺にはなかった。

彼女はジュースをすすって、両肘を立てて顎を乗せ、俺を見つめた。
それからゆっくりと俺に片手を伸ばし、手のひらを俺に見せた。俺は観念した。

合鍵を渡す。彼女は両手で鍵を受け取って、大事そうにハンドバックにしまった。
喫茶店の料金は、彼女が持った。俺が持とうとしたのだが、どうしても払わせなかった。

彼女は時々アパートに来た。俺が遅く帰ってみると、部屋がきれいになっていたり、冷蔵庫に食材が入っていることがあった。
合鍵を貰ったことで、彼女は心に余裕ができたのだろう、遅くまで部屋にいて俺を困らせるようなことはなくなった。

ときに俺は彼女を抱いた。中に出してと言われても、絶対に中出しはしなかった。
俺は自分が破滅を先送りしているだけだとはっきり分かっていた。が、どうすることもできなかった。

勉強は全く身が入らなかった。研究室に行くだけでも辛かったので、俺は渋谷や歌舞伎町を夜になるまで歩き回った。
俺は腐ってきていた。
道場には辛うじて行っていた。Mちゃんがいるからだ。

道場には、外国からも稽古生が来る。カナダ出身のJという男がいた。
俺より後に入門し、身長180センチで男前だった。政府機関で働いており、日本には期限を区切って、留学に来ていた。良い男だった。

Jは良いやつだった。稽古に熱心で、本質を捉えることができる男だった。
力を入れず、柔らかく技は使わねばならない。多くの道場生は、それが頭で分かっていても身体に現れない。
Jは本気で技を掴もうとしていたし、師範からも可愛がられていた。

そのJがMちゃんにほれたのだ。が、俺はその時それを知らなかった。
Jは良いやつだったので、おれとMちゃんの関係を邪魔しないようにしてくれていたのだと思う。

鮮烈な気迫、生き生きした生命、透き通った清潔な雰囲気、それらは数値には表わせないが、心で敏感に察知できる。
そして、それらは生き方が真っ直ぐでないと出てこないもののようだ。というよりも、かつて俺が持っていたかもしれないそれらの雰囲気が
俺から失われた。オーラが濁るというか、友人からどうしたのかと問われたりした。

Mちゃんも敏感にそれを察知したのだろう、心配していると手紙をくれたりした。
俺は濁っていた。すぐに手に入る女体がある。彼女を嫌悪しつつも、俺は彼女を突き放すことができなかった。

小遣いをくれると彼女は言う。が、俺はもらわなかった。かすかなプライドが俺を支えていたが、それが崩れるのは時間の問題だったと思う。
随分長い期間だったようにも思うし、短かったようにも思う。俺は彼女の若い燕、愛人になっていたということだ。

Mちゃんの可愛らしさが、清潔感が俺にはまぶしかった。
Sさんはぼってりした感じになってきてしまった。身体が太ったというのではない、心に脂肪がついてしまったのである。

そう、以前の楽しい日々を何度思い出したことだろうか。俺は、友達とも話すし、笑う。
が、心の中は空ろでいつも不安感に苛まれていた。

もしMでSさんと出会わなかったら、初体験の晩、あのまま電車に乗っていれば、いや初体験の後、別れていれば・・・
俺はきっと・・・と思うと涙が出てきた。情けなくて、哀しかった。

論文試験が始まった。友達も受ける。が、俺には遠い世界の事柄に思えた。
妊娠していたら・・・というのが俺の不安の大きな部分を占めていた。

だが、主婦が妊娠することがあるのは当たり前だ。幸いにしてSさんのご主人の血液型は、俺と同じA型だった。
期待して彼女に聞いてみた。

「ご主人との間に赤ちゃんができる可能性もあるよね」

彼女はにっこり笑って俺に応えた。

「ありえないわ。私達はここ3年セックスが無いの」

今となって思うことがある。
あのままSさんのヒモのようになって、受験を続けたらどうなっていただろうと。

事実、Sさんはご主人との離婚も口に出すようになっていた。俺と一緒に暮らしてゆけると彼女は言っていた。
そうなったらどうだったろう。だが、今ははっきり言える。絶対合格できない、と。

女の側にいて、女に養ってもらっていると段々気力が萎えてくる。連日のハードな勉強などできない。
できる人間もいるかもしれないが、俺にはできない。

事実、当時勉強量も稽古量も段違いに落ちた。激しい勉強や稽古ができなくなっていた。
だらだらした時間が流れる。中学から受験に力を入れ、高校、大学と第1希望に通ってきた俺だが、今は疲れ切った感じだった。

だが、これは本当の疲れではない。気力が充実していると、一つの疲れは別の激しい活動で癒されることがわかる。
ただの、怠け者、堕落への一歩を歩み出しただけだった。

それも今となって分かることだが。
俺は主導権を完全に彼女に握られていた。

女とは不思議なものだと思う。セックスという網にかかってしまった哀れな獲物であった俺。

Sさんは蜘蛛だ。セックスという網だけだったら何とか破って抜けられたかもしれないが、妊娠の可能性が俺を縛りつけた。
俺は体力はあったし、力ではベンチプレス90キロを挙げた。俺は頭は悪いが、目的に向かっての熱意、根性はあるかもしれない。

しかし、Sさんが上手だった。彼女は真綿で締めつけるように、俺の自由を奪っていった。俺を骨抜きにする事を通して。
彼女は巧みに俺を操った。彼女が一週間俺の部屋に来なかったことがあった。

それまでは週に2・3回は来ていたのだが。

俺はどうしたのかな、と思っていた。忙しくて来られないということだったので、Mちゃんとデートしたりすることもできた。
実は、その時彼女に生理が来ていたのだ。後になって分かった。

妊娠していなかったのだ。妊娠の可能性を彼女は最大限利用していた。妊娠していたら絶対に堕胎しない、生むと彼女は俺に言い張り、俺はその度青ざめ絶句していた。
そして、生理が来た事実を彼女は俺に隠していた・・・・

Mちゃんをアパートに呼ぶことはできなかった。Sさんと鉢合わせしたら大変だ。
渋谷で彼女と会うことにした。

デートは久し振りだった。俺は楽しかったが、彼女はどこか俺との関係にオブラートが挟まったような感じになっていた。
腕を組み、一緒に歩く。楽しく話をしたが、どこか、彼女はいつもと違っていた。

道場では変化がなかったのに・・・

話をしていると、一瞬視線が宙に舞い、今までの全てを俺に任せきっていた姿が見られなくなっていた。
彼女は、高校の卒業アルバムを持って来ていた。たまたま持っていたのだという。

見せてもらい、彼女の高校時代の姿を一緒に楽しんだ。彼女は卓球部だった。あちこちに彼女のスナップが写っていた。彼女は高校で目立つ子だったようだ。
彼女をホテルに誘った。彼女は着いて来た。これが彼女との最後のセックスになるとは、俺には予想できなかった。

あれから25年が経つ。あの時のことは、比較的はっきり覚えている。

何故か、しばしば思い出し、妻を抱くときにもあの時のイメージを重ねることがあったからだ。

彼女にも、最後になるかもしれないという予感があったのかもしれない。
というのも、Jが彼女に告白し、彼女の心が揺れ始めていたからだ。Jは良い男だったが、所詮は外人だった。

内に秘めておくということができないタイプだった。
愛撫のシーンは除く。

彼女はいわゆる上付だった。ずっと上に膣の入り口があり、尿道口によほど近かった。
俺は48歳になるまで、10人の女性と関係を持ったが(全部結婚前)彼女ほど上付きで、正常位のとき心地よかった女性を知らない。

彼女は俺を積極的に受け入れた。インサートの時はじっとしているが、俺が息子で彼女の内部をかき回し、縦横斜めと突きまくると、「アン、アン、アン」と声を上げつつ俺にしがみついた。

一度発射した俺は、次に彼女を上にした。彼女は、おずおずと動いた。上付なので、俺の息子が入っているのがよく見える。上手く彼女は動けなかった。確かに上付の子の女性上位は、俺の息子にも負担をかけることが分かった。

息子は角度が鈍角になり、快感を覚えるより痛みを覚えた。俺は正常位に切り替え、激しく動いて膣外射精に持っていった。
Sさんに合鍵を渡して、Mちゃんと交わった日までどれほど経っていたのだろう。

日記には記載が無い。論文の試験日からして、一月半ぐらいではないだろうか。
この一月半は、まことに俺にとっての激動の月日だった。そして、俺の混乱の日々も間も無く終わる。

シーンはMに行く。休憩室だ。俺はすでにMにいない。
休憩時間のクルーの会話だ。

人によってはこれをネタだと思うかもしれない。そう思われても仕方ない。
MにはIちゃんという子がいた。彼女が切りだしたらしい。

「ね、ね、この間Hさんが可愛い子と歩いていたのを見ちゃった」

そこにはSさんもいた。

「へー、Hは彼女ができたからMを辞めたのかな?」
「そうかもね、親しそうだったし、腕を組んで歩いていたのよ。うらやましいな」

Iちゃんは良い子だった。俺は彼女と比較的親しくしていて、彼女の初体験の相手も、相談していたので知っている。
彼女との連絡は後々まで続く。後に彼女は、K大の大学院生と結婚し、やがてヨーロッパで新婚生活を送ることになる。

さて、続き。

Sさんがカマをかけたらしい。

「Hさんが、信じられないわ。誰かと間違えたんじゃない?」
「あの人、以外とやり手みたいですよ。Hさんに間違いない。私、後をしばらく歩いてみたんだから」

これらの会話は、後にIちゃんから直接聞いて分かったことだ。
Sさんは俺の服装から、一緒に歩いていたMちゃんの雰囲気まで根掘り葉掘り聞いたという。

俺は、そんな会話があったとは全く知らなかった。

ある日、夜9時頃俺がアパートに戻ると、アパートの電気がついていた。
Sさんがいるなと俺はため息をつく思いでドアを開けた。そして息を飲んだ。

部屋の中が乱雑に荒らされている。机の中身が皆放り出されて、本やら資料やらが散らかっている。
泥棒が入ったのかと一瞬思ったが、そこにはSさんがいる。

俺は流石に驚いて、「一体これは何、君が来たときはこうなっていたの?」と問い掛けたが、彼女は恐ろしい目をして俺をにらみつけた。
彼女の手には、Mちゃんからの手紙が数通握られ、俺の日記が机の前に置かれていた。

「Mちゃんて、誰よ!!!」

彼女は食ってかかるような、恐ろしい目をしていた。

浮気がばれたときの亭主の気持ちがよく分かった。が、浮気をしているのは俺達ではなかったか。

Sさんは大抵、俺の部屋に来るときはノーブラだった。
時にはパンティを履かないでくることもある。俺も雄の性で、服の下で揺れる乳房を見ると、むらむらしてくる。
そんな時、彼女は優しく俺を受け入れてくれた。この一月半、マスターベーションなどする必要がなかった。

彼女は化粧も薄めにしていた。それが俺の好みだったから。
彼女はできるだけ俺に合わせようとしてくれていたのだと、今は分かる。

彼女なりに俺に愛情を注いでくれていたのだ。しかし、それは彼女なりのやり方で、俺の希望とは違っていた。
しばしば来て、部屋を掃除したり、食事を作ってくれたり。また、彼女は自分の好みで部屋の小物を買い始めていた。

少しづつ、殺風景な男の部屋が変わりつつあった。
そうは言っても、彼女に捕まるということは、22歳の男が、37歳の女性と結婚することを意味する。
イヤ、結婚とは言っていないが、たとえ同棲であったとしても、一体何事かと思われる関係だろう。

人の目は、うるさい。また、親や親族は、友人は俺のことを一体どう思うだろうか。
彼女がセックスと妊娠を武器に得ようとしている若い男。それは彼女にとっては、大切な玩具だったのかもしれない。

彼女の怒りをまともに受け止めることはできなかった。いきなりこんな状況になったら、誰でも動揺するだろう。
俺は、返事をしなかった。「落ち着け、落ち着け」と自らに語りかけつつ、早鐘を打つ心臓が静まるのを待った。

視線を合わせることもできない。
「一体、誰なのよ!!!」彼女は叫ぶようにして俺に切り込んだ。

俺は周りを見回した。散らばっているのは机の中のもののようだ。
本などはそれほどでもないが、やはり書棚から放り出されている。

女の嫉妬をまともに俺は受け止めてしまっていた。
俺は黙っていた。彼女の前には俺の日記がある。普通日記を読むか。人のプライバシーに、土足で踏み込むか。

手には手紙がある。よく見つけたものだ。愛の確認の言葉も、もちろん入っているやつだ。
日記を読んだのなら、Mちゃんが誰であるか彼女には承知のはずだ。

また、日記には幸いに、ここ二ヶ月以上の記載が無かった。書く気がしなかったためだ。
俺がSさんに対してどう思っているか、禁断の部分は書かれていない。

故に、彼女は俺の愛情を信じ、俺が彼女に対して浮気をしたと思っているようだった。
この大きな食い違いは一体何なのか。俺は人生に絶望しかけていたのだが、彼女はそんな事などサラサラ知らず、ただMちゃんに対して嫉妬している。

俺の根底が腐り始めているのを、Sさんは全く気付いていなかったのだ。
所詮女だな、と今では思う。解りあえないんだな、と思うのだ。

日記を読まれたと意識したことで、俺は瞬間的に冷えた。人生の仁義を、彼女が裏切ったと思ったのだ。
やってはならないことをした彼女に、俺は最後のところまで話をもって行こうと決心した。
破滅も恐くない。今の状態自体が破滅への着実なステップだったから。

俺は、彼女に「日記を読んだね」と言った。

ちなみに、Mでのことだが、彼氏のアパートで日記を読んでしまい、怒り狂った彼に犯された子がいた。
彼氏もMの人間だった。そんな事をする奴には見えなかったのだが、俺には彼の気持ちが解かった。

日記をつけたことの無い人間には、その辺りの心の動きは解るまい。
とにかく、俺も日記を読まれたことで腹が決まったのだった。

もう、行くところまで行くしかない。絶対に引くまい、修羅場を回避すまいと心に決めた。

彼女は、俺の問い掛けに「どうだっていいでしょ。それよりMちゃんて誰よ!!!」
俺は「日記を読んだんなら、解るはずだろ!」ときつい言い方を返した。

彼女は少しひるんだ。俺がきつい言い方をすることは滅多に無かったからだろう。
切れるということも無かった。少なくとも、それを表面には出さないように注意していた。

「読んでの通りさ。 よい子だよ。」
「彼女のことが好きなのね」俺は頷いた。

彼女は、再び目をむいた。

「私を騙していたのね」
「騙してなんかいない、騙すって、どういうことだ!」
「私を愛しているって、私は最高の女性だって、何度も何度も言ってくれたじゃないの!!」

相手の土俵には上がらない。

「それより、何故日記を読んだんだ。何故手紙を読んだんだ。やってよいことと悪いことがあるんじゃないのか」

彼女は目をそらせた。
理屈が通っているか、どちらに道理があるかなど構っていられない。

「不安があったからって、疑っているからって、日記や手紙を読んでいいのかい」

そこで良心がとがめたのであろうSさんも、俺達旧世代の価値観を持っている人間だった。今ではメールなど読み放題みたいだし、私信を読むことが恥ずかしい行為だという常識も無いようなので、こういう攻め立て方って取れないだろうと思う。

「私を抱いている間に、彼女を抱いていたなんて・・・・卑怯よ。不潔よ」

ご主人を裏切っているSさんも同じ事だと思うのだが、感情が激するままに言葉が出始める。
次々に俺に浴びせられる機関銃のような彼女の言葉、時には聞くに堪えないような言葉。
俺はできるだけ冷静に対処した。理屈にならない理屈を言いながらも。

乱雑になっている部屋を見ると、心がシーンと冷えてゆくような感じがした。
お互いに感情的にはなっているが、怒鳴り合いにはなっていない。2人とも声はあくまで押し殺していた。

感情が高ぶるままに、彼女は涙をこぼしはじめ、しくしく泣き始める。「ヒック、ヒック」と方を震わせていたかと思うと、「エッ、エッ、エッ」とその場にへたり込んで、腕で目を覆い、ボロボロ涙を流し始めた。

波だがぽたぽたと畳の上に落ちる。「エーン、エーン」と声を押し殺しながらも、絶望感に打ちひしがれた姿、幸福を奪い取られた少女の様な姿がそこにあった。
ああ、俺は彼女が可哀想に、愛おしく思えてしまうほど、彼女は幼女のように泣いていた。

化粧がどんどん取れる。鼻の頭と目じり、頬の一部から化粧が取れていった。

「私だって・・・私だって・・・・言えないことがあるんだよ!!!」

俺は彼女の側に行き、肩に手をかけた。ここで、仲直りの言葉を口にしてしまうと、一生離れられなくなると思ったので、俺は黙っていた。
彼女の細い肩は、フルフル震えていた。

俺は、感情を押し殺して「部屋を片付けよう。このままでは困るんだ」
彼女は涙で一杯になった目を前方に向けたまま、コクリと頷いた。

ヒックヒックしゃくり上げながら、「ご免なさい、ご免なさい」と言いながら部屋を片付ける。

俺も一緒に片付けた。お互いに視線を合わせないようにしながら、ゆっくりとだが黙々と働いた。

彼女が何かを片付けていたとき、再びへたり込んで、シクシク泣き始めた。何を手にしていたのだろうか、俺には解らない。が、彼女はそれを泣きながらハンドバッグにしまい込んだ。

俺にはそれが何かは解らなかったが、たとえ俺の大切なものであっても彼女にあげてもよいと思った。大切な思い出の品になるのだろうから・・・・

今になって解ることって、沢山ある。どうして彼女があんな姿を取ったのか、どうして泣いたのか、その場の状況を思い出すと、彼女の心の状態が読めてくるのだ。当時はほとんど解らなかった彼女の心が。

そうすると、彼女のぶつぶつ途切れたような、関係ないように見えた行動が、俺の中で一つになってくる。
だから、彼女の行動の描写に、今まで解らなかった連続性を持たせることができる。

ここに書き込むことで、今まで思い出そうともしなかったことを、できなかったことを思い出さざるを得なくなり、Sさんとの思い出に新しい意味を見出すことができ、有難く思う。
きっと彼女は恐かったのだ。必ず来るだろう別れの時が。俺が不安に思っている以上に、彼女ははらはらしながら、俺とのひとときを細心の注意をもって作り上げてきたのだろう。

そして、それが崩れる時が来た。彼女はそれを察知したのだろう。
俺は、そのようなことはその時分にも考えないでもなかった。ただ、Sさんの切ないまでの胸の内を、当時は実感として感じられなかった。

今は、Sさんの心がある程度解る。今、俺はSさんの心中を思い、涙が出てくるのを止められない。
実際にSさんと話し合っていたこと、Mちゃんとのことなど、何一つ解決していなかった。

2人の話は平行線のまま進んでいた。が、その内容よりも、雰囲気で俺の心を彼女は読み取ったのだろう。もう元には戻れない、終わりの時が来たと彼女は悟ったのだろう。
終わりを迎えることの哀しさ、切なさで彼女は涙が止まらなくなったのだと思う。

その時も彼女はノーブラだった。片付ける間にも彼女の乳房は揺れていた。かすかな乳首のぽっちもわかる。柔らかい乳首だった。
部屋を片付け終わるときには、彼女は泣き止んでいた。

俺は黙って紅茶を入れるためにヤカンに火をかけた。彼女は黙って俺の姿を見ていた。
俺は自分が彼女を受け入れる言葉を言ってしまいそうで、恐かった。

俺は黙っていた。彼女も黙っていた。俺は何かを話さなくては、と気が焦っていたのだが、
何を話せただろう。俺はMちゃんを選びたいと既に言ってしまっていた。

紅茶を入れる俺の姿を彼女は見ていた。俺が視線をあげると、彼女は視線を逸らせた。
何か激しい感情を彼女が押し殺しているのを俺は感じた。

彼女が何を言ってくるだろうか、一体どうすればよいのだろうか、等々俺は考えを巡らせていた。

「もう、お終いね・・・」
彼女が言った。

「そうだね」
「楽しかったわ・・・」
「俺も」

彼女はまた涙ぐんだ。彼女は紅茶を一杯飲んで、ハンドバッグを開けた。
バッグから出した合鍵を机の上に置く。

「これ、返すわ」
「うん」

余りにあっけなく事が運んでゆくので、俺は信じられなかった。

Sさんは俺の部屋を出て行った。

Iちゃんからの電話で、Sさんが半月仕事を休んだと聞いた。でも、出てきたときには、元気な様子で安心したとも聞いた。また、Sさんが優しくなったとも。

翌年、Sさんの2人の子供は共に一流大学に進学したという。
もう、Sさんに会うことはなかった。

数年後、一度デパートでSさんがご主人と一緒に歩いている姿を見た。俺は、素早く隠れて彼女とご主人を見つめた。

眉が太く、恰幅がよく、男らしいご主人だった。そして、Sさんはやはり可愛らしかった。2人はにこやかに買い物をしていた。

何とも言えぬ切なさが俺を襲った。俺にはSさんに幸多かれと祈り、見送るしかなかった。

Sさんがいなくなった部屋で、俺は一人ぽつんとたたずんでいた。
嵐の日々が終わった。彼女との話の中で、彼女が妊娠していなかったことも解った。

きちんと部屋は片付けられていた。彼女の香水の匂い、体温が未だに部屋に残っていた。
俺を縛り、苦しめていた状況から離れることができて、嬉しかったか? イヤ、そうではなかった。

何ともいえぬ寂しさが、俺を落ち込ませていた。
人間とは、勝手なものだと思う。机の引出しを開け、彼女の整理を見る。

几帳面な整理整頓だ。ぶちまけられる前より、余程きれいになっていた。
Sさんと撮った写真が見つからない。俺は無意識に探したが、見つからなかった。

Sさんが持って帰ったのが恐らく写真だったろうことも解った。
写真は数枚しかなかった。一緒に旅行に行ったとか、そんな事はなかったから。
ネガはどこに置いたっけな。

あれだけ苦しかったSさんとの日々が、快楽はあったけれど、人間として腐りつつある空しさが、もう恋しくなってきている。

Sさんが泣いたとき、俺が彼女の肩に手をかけたとき、優しく抱いてあげれば、彼女は応えてくれただろうし、今もこの部屋に彼女はいただろう。その時の一瞬の判断が、2人の人生を分けたのだ。

こんな一瞬は、誰にでもあるだろう。どちらを選ぶにせよ、リスクがあり、人が傷つく決断が。

俺は決断を下した。彼女と別れると。そして、その通りになった。彼女は家庭に戻るだろう。仮面夫婦かもしれないが、安定した落ち着いた暮らし。2人の子供も、いつもと変わらない生活を送るだろう。俺とSさんが我慢すれば、それで他の人達は幸福でいられるのだ。

俺はそう結論し、Mちゃんに思いを馳せ、試験勉強を再開しようと決心した。
俺は研究室にしばらくのご無沙汰を詫び、もう一度仲間に加えていただいた。

道場でも、熱の入った稽古を再開した。身体も頭もこの一月余りにすっかりなまっていた。
道場でMちゃんにも会えて嬉しかった。彼女と久し振りに熱の入った稽古をした。稽古の時は、彼女は真剣な眼差しで俺に対していたが、帰りの時など、どことなくよそよそしかった。

おかしいなとは思ったが、さして深く考えなかった。それよりも、勉強のこと、稽古の技術的なことなどが頭を占めていた。
俺はエゴイストになっていた。が、良い意味でのエゴイストになっていたと思う。

俺は今、自室のデスクの上で、ibookを使ってこのコメントを書き込んでいる。外は雷雨だ。

台所では、家内が夕餉の支度をしている。長女は、山のような宿題に四苦八苦し、長男は部活から帰り、腹が減ったと家内に訴えている。

次女、次男、三女はトランプをしている。どこにでもある平凡な家庭。
だが、あの時の勝負に俺がもし勝っていたなら、全く違う人生が開けていただろう。

結果を先に述べよう。Jとの勝負に俺は負けた。俺は自爆したのだった。
今、Jは政府機関を辞め、民間企業で働いている。順調に出世しているという。

カナダでは、政府機関を辞めたり、また戻ったりということが頻繁に起きるらしい。Jは日本に造詣が深い。また、政府機関で働き、表舞台にに登場することがあるかもしれない。

彼にはカナダと日本の掛け橋として、大いに働いてもらいたいと思う。それだけの力量のある人物だ。
彼を紹介する文が目に浮かぶ。日本に深い理解を持ち、古武道を修業し、日本人の妻を持つJ氏は・・・・

MちゃんはJの妻となり、今カナダで暮らしている。
Mちゃんとのことを夢で見ることがある。いつも物悲しい夢に終わる。
目を覚ますと、「夢だったか」と思う。俺の隣には妻が寝ている。

下の2人の子供も、同じ部屋で眠っている。果たしておれは幸福なのだろうか、そうだ、恐らく幸福なのだ。チルチルミチルの青い鳥ではないが、青い鳥は自宅で飼われているのだ。それに気付かないだけ。

それでも、Mちゃんとの夢を反芻し、どうしようもない切なさ、哀しみを覚えるのを止めることができない。
今、彼女はカナダのどこで何をしているのだろうか。

彼女も、今の俺のように俺のことを思い出すことがあるのだろうか?
Sさんはどうしているだろうか。あれから26年が経っている。彼女は63歳になっているはずだ。

俺は再びMちゃんとデートをするようになった。といっても、週に一度会えるかどうかだ。
俺は勉強と稽古に馬力を入れた。時間は幾らあっても足りなかった。

マクドナルドでのバイトを辞めた俺は、バイト料が入ってこなくなっていた。
小遣いはほとんど無い。両親には模擬試験やら、色々迷惑をかけている。その上、弟の通う獣医学部は、弟の学年から大学院修士を出なければならなくなった。金食い虫である。

自然、デートも公園を散歩したり、喫茶店でお喋りをするくらいになっていた。
ホテルに行こうという気にはなれなかった。Sさんと別れて、Mちゃんを大切に思う気持ちが強くなり、そうなると不思議と抱けなくなる。

Mちゃんのご両親とも会った。しっかりしたご家庭で育てられたことがはっきり解った。
家庭環境というのは、確かに大切だ。立派な、常識を弁えたご両親だった。

Mちゃんについて書かせて欲しい。読み苦しかったら申し訳ない。

彼女は二十歳にしては、大人びた雰囲気を持っていた。古武道を稽古しようとするところなど、余程普通の子達と違っていた。
彼女は読書家だったので、俺の師匠の書いた本を読んで感銘を受け、入門したのだった。今は甲野先生などを通じて古武道が見直されているが、当時は「空手馬鹿一代」の時代で、古武道など見向きもされなかった。

それでも、古武道には日本の本質的なものがあると判断した外人など、入門してきていた。
二十歳でこの門を叩くのだから、それだけでも大したものだった。

彼女は可愛かった。入門してきたとき、俺は初心者クラスの指導を行っていた。
彼女を俺の女房にしようと、一目見て俺は心に思ったのだった。

俺は、あれからずっと同じ道場にいる。途中海外勤務が長かったので、ブランクは大きいが、それでも入門してくる女の子を見ることができる。
俺が見るに、彼女ほどの子、技術ではなく、性格や素直さ、熱心さにおいて彼女ほどの子を未だに見ない。

Jもそれに気付いていた。彼は俺を先輩として立ててくれていたが、恋愛のバトルにおいては平等だと思っていたのだろう。
もちろん、その通りだ。そして、Jは俺とMちゃんの関係は、割り込むことができないものと思っていたらしい。

が、俺にはSさんという弱みがあった。俺が腐り始めた時期を見て、これならばとMちゃんに言い寄り始めたのだ。
的確な状況判断だ。俺はまんまとしてやられた。

当時、Mちゃんの心は揺れていたようだ。俺も再び気合が入り始めていたし、Jはカナダ人だ。
肉体関係は、俺とだけだった。

俺は、彼女とJとの仲に、少しづつだが気付きだした。Mちゃんは以前のように俺に全てをさらけ出すような雰囲気でなくなってきていた。
心にバリヤーがあるというか、たとえば、俺が彼女と肩を組むと、以前は俺の肩に頬をもたれかけてきて、幸福そうにしていたものだったが、そんな事が無くなっていた。

ある時、Mちゃんの口からJとの事を聞いた。そして、迷っているとも聞いた。
Mちゃんが奪われようとしている。おれは、冷静ではいられなかった。薄々解っていたことだったが、やはり本人の口から聞くのは辛い。

どうしたら良いだろうか。今の俺ならば、マメにマメに連絡を取り、言葉をかけ、話を聞き、心を此方につなぎ止める。
愛情とは、相手のために時間を使い、心を使い、労力を使うことだ。相手を理解し、相手を受け入れることだと思う。

だが、俺は自爆した。我ながら馬鹿だったと思う。

SさんとのことをMちゃんに話したのだ。何故話したのかは、今となっては定かに思い出せない。
秘密を持たないことが、相手に対する誠意だと俺は勘違いしていたのだろう。大馬鹿者の考え方だ。

これは単なる話す側の自己満足で、聞かされるほうは良い迷惑だ。
秘密を守り、相手に伝えず、死ぬまで秘しておくのが愛情というものだと今では思う。

若い方がこの文章を読んでおられるかもしれない。このことだけは覚えておいて損はない。
秘密は守り通して、墓場まで持って行くことだ。それこそが、相手に対する愛情なのだと思う。

俺は洗いざらいSさんとのことをMちゃんに話した。そして、MちゃんのためにSさんとの関係を切ったこと等を話した。
Mちゃんは青ざめていた。彼女は「話してくれてありがとう」とは言ったが、その時彼女の心は俺を離れたのだった。

それから数日後、MちゃんはJと結ばれた。それまでは、Jを拒み続けていたらしいのに・・・

次の週、Mちゃんと俺は会った。
場所はサンシャインの地下の喫茶店だった。

そこで、俺はMちゃんからJに付いて行くことにしたと伝えられた。

俺は愚かにも、あれだけの秘密を話したのだから、Mちゃんは意気に感じて俺を選んでくれるだろうと勝手に想像していたのだった。
それを聞いてMちゃんの心がどんなに傷ついたか。Mちゃんを抱いていた同時期にSさんを抱いていた俺という存在を、彼女は許せなかったのだろう。

無理もない。未だ二十歳の純情な子だ。今の俺はMちゃんに心から済まないと思う。
が、その時は俺は動揺するだけだった。外見は落ち着いて見せていたが、トイレに行くと座を立って、公衆電話で友人に電話した。

俺は、友人に話を聞いてもらいたかった。話しながら、俺は泣きだしてしまった。
俺の手元に数枚のMちゃんの写真がある。屈託の無い笑顔で写っている。

実は、この写真は彼女がその時持っていたもので、お母さんが撮ってくれたものだった。
俺は、彼女にこの写真を見せてもらい、せがんで数枚を貰ったのだった。彼女は最初断ったのだが、俺の真剣な目を見て頷いた。

ここまで書いて思い出した。Sさんも俺と一緒の写真を、別れの時持って帰ったのだった。
奇しくも同じ行動を俺もSさんも取っていたことになる。そして、Sさんが写真を見て泣きだした気持ちが今の俺には痛いほど解る。 当時の俺も同じ気持ちだったから。

Mちゃんに最後の説得をした俺は、遂にそれが無駄なあがきだと知った。
その後の記憶が、俺には無い。思い出そうとしても、思い出せない。日記にも詳しい記述が無い。

Sさんとの時のことは、かなり思い出せたのだが、思い出せないということは、ショックが大きかったということだろう。

以上でほとんど終わりました。以下は簡単な事後報告になります。

俺は、4年生の時の短答式試験に合格した。

が、論文で不合格になった。浪人する余裕は家にはなかった。
弟の学費が大きく、俺は働く必要があった。

幾つかの会社の内定を取った。銀行、証券、メーカー、運輸と節操の無い内定の取り方だった。

銀行、証券は断った。友人達からは惜しがられたけれど、内定を取った銀行は後に吸収合併され、証券会社は社会を揺るがす倒産劇を演じた。
運輸の会社に入社した。俺は海外を希望した。そして、会社はその通りに俺を使ってくれた。

海外では古武道の稽古が非常に役に立った。日本人として掴んでいて損の無い教養である。

結婚は30歳の時だった。尊敬する方から紹介された女性だった。

俺は面食いだったが、彼女は不細工で、真ん丸顔で、牛乳瓶の底のようなメガネをかけていた。26歳だった。

6人兄弟の長女で、貧乏牧師の娘だった。写真だけで断ろうと思ったが、紹介してくださった方の手前もあり会うだけ会ってみた。

化粧が下手で、赤くなる癖がある彼女は、見るからにださかった。が、話してゆくうちにその聡明さに俺は引かれるようになった。
俺が尊敬する人も、彼女ならばという太鼓判を押してくれていたし、彼女も俺を気に入ってくれた。

結婚して、つくづく良かったと思った。ブスは三日見れば慣れるというが、実際その通りだと思う。

5人の子宝に恵まれ、苦労も多いが充実した人生を送ってきた。
それでも、思い出す。激動の青春時代のことを。
Sさん、Mちゃん、そして多くの友人達のことを。

もし、あの時このようにしていれば、ああしていればと地団駄踏むような記憶が多い。

人生の分かれ道が幾つもあり、一方の道を決断してきた。それが正しかったのかどうかは、今も解らない。

Sさんと一緒になっていたら、どうなっていただろうか。63歳の老婆と一緒に暮らしていられただろうか。

Mちゃんとだったらどうだったろうか。しかし、それは考えても栓の無いことだ。

Mちゃんと別れた後も、幾つもの女性関係があったが、俺が学んだことはSさん、Mちゃん、妻からが一番多い。

また、これ以上引き伸ばしても意味がないだろうし、Mちゃんとの最後は、思い出すのが辛く簡略な記述にせざるを得なかった。

「何を書いているの?」さっき女房がディスプレーを覗き込みそうになった。俺はすぐにデータを消した。
ここで書かれたことは、女房子供も知らない。誰も知らないことを、書かせていただいた。

死ぬまで黙っていなければならない内容を書き込めたことで、心が軽くなった気分だ。

拙い文章で、推敲も経ていない、無駄な繰り返しが多かったりした文章でしたが、皆様からご支援いただけましたこと
心より感謝申し上げます。途中からスレタイからも外れる部分が多かったですが、ご容赦いただききありがとうございました。

皆様のご健勝をお祈り申し上げ、これで終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。

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コメント

  1. 匿名 より:

    感動です

  2. 匿名 より:

    感動です

  3. 匿名 より:

    最後まで読ませていただきました。
    思い出と人生あの時こうしていれば、今の自分がどうなっていたのか
    考えています

  4. アレクサンダー より:

    いい話だ!

  5. kanndoou より:

    感動!
    あなたみたいな人を私は尊敬する!

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